長年愛用していた「iPhone」からAndroidスマホの「Pixel 7 Pro」へと乗り換えを実行して約1か月が経過。「iPhone」のヘビーユーザーだったからからこそ、Androidを使うほどに、Androidのよいところとダメなところが見えてきた。今回は、そんな筆者が感じたAndroidの〇と×を紹介する。
なお、今回のレポートは「iPhone 12」から「Pixel 7 Pro」に機種変更したときに感じた○と×になり、「Pixel」シリーズ以外のAndroid端末では該当しないものもあるため、ご了承いただきたい。
「iPhone」ユーザーでありながら、Google系アプリにどっぷりと浸かっている人は多いだろう。筆者もそのひとりなので、Androidスマホに乗り換えたことでのメリットを享受できている。まずはAndroidスマホに乗り換えてよかったと思う6項目を、それぞれ解説する。
・顔認証だけでスマホをアンロック
・ホーム画面にいろいろピン留め
・ケーブルをUSB Type-Cで統一
・寝ながら画面の縦横を自動回転
・複数のデータをコピーできる「クリップボード」
・カーソル位置をボタンで操作可能
Androidスマホのロックを解除するのに指を動かす必要はなく、顔認証だけでホーム画面が立ち上がってくれる。日常生活において、両手が使えないタイミングは意外と多く、料理中だったり、スナック菓子の油で手がベタベタだったりと、そんなときにスマホに触れずにスリープを解けるのは、とても便利だ。
「iPhone」では、顔認証でロックを外せるが、そのあとに下から上向きにスワイプ操作が必要となる。これはセキュリティを高めたいというアップルの強い意思の表れだが、Androidに乗り換えて、このスムーズな立ち上がりを体験したら、面倒くささに気づいてしまった。快適さとセキュリティのどちらを重視するかは、ユーザー次第といったところだろうが、筆者は断然快適派だ。
Androidスマホは、顔認証のみでホーム画面まで一気に到達(左)。「iPhone」は、顔認証によって、ロックが外れるがホーム画面は開かれない(右)
Androidスマホのホーム画面には、いろいろなものが“ピン留め”できる。Webサイトへのショートカット、「Googleドライブ」内の文章やスプレッドシートなどのファイルも設置可能で、よく見るデータへのアクセスをスムーズにできる。極めつけは、「Googleマップ」のルートをピン留めできることだ。自宅から職場への通勤ルートをホーム画面に置いておけば、いちいち検索することなくボタンひとつで、通勤ルートの情報が取得可能となる。
対する「iPhone」でホーム画面に設置できるのは、アプリ(ウィジェット)と、Webサイトへのショートカットのみなので、この点についてはAndoridの優位性を強く感じる部分だ。
Androidスマホのホーム画面によく開くファイルなどを並べている
「iPhone」を充電するためだけに「Lightningケーブル」を持ち歩いていたが、スマホがAndroidになったことで、PC、イヤホン、スマートウォッチなど多くのガジェットと共通の「USB Type-Cケーブル」に統一できた。ケーブル端子の一本化により、身の回りのケーブル類と持ち歩くモバイル周辺機器がかなり減った。
ただし、筆者が使っていたのは「iPhone 12」。「iPhone15」シリーズからは、Lightning端子が廃止となりUSB Type-C端子に統一されている。そのため、「iPhone 15」シリーズのユーザーは、この恩恵は感じられないだろう。
ケーブルをUSB Type-Cに統一できて机回りがスッキリ
「iPhone」を縦に持った状態で寝転ぶと、画面が自動で横表示に回転するため、顔は横向きなのに画面は横表示になり見づらくなる。そのために、「コントロールセンター」を開いて、「画面の縦向きをロック」する。その後、起き上がってから、スマホを横向きで使おうと思ったら、同様の操作を経てロックをオフしなければならない。これはスマホ本体の向きを検知して縦横表示を切り替えているからであり、日常的なストレスとなっていた。
「YouTube」は全画面表示ボタンを利用することで、寝転んだ状態でもロックのオン/オフに関係なく横表示で閲覧できる。また「Prime Video」も、動画選択時は縦表示でも、再生時に横表示に切り替わるなど、アプリ単位で対策がとられているので、動画閲覧に関しては、この問題は解消されつつある。
いっぽうのAndroidスマホは、画面の自動回転機能に「顔検出」を組み込むことによって、寝転んだ状態でも、顔の向きに合わせてスマホ画面の縦横表示を切り替えてくれる。そのため、寝転んだ状態でも画面が自分の顔の向きに適したな表示に回転してくれるのだ。ときにうまく反応しないこともあるが、ストレスは大幅に減少した。
寝たままスマホを操作している時間がきわめて長いグータラな筆者にとって、「顔検出」による画面の自動回転は、“超”重要機能である
文章やURLをコピーして貼り付ける“コピペ”は、スマホで日常的に行う作業だ。そんなコピペ作業に置いて重宝するのが、Androidスマホのキーボードに搭載された「クリップボード」。「クリップボード」は、“複数のコピーしたデータを保持”することが可能で、そこから必要なデータを選択し、貼り付けることができるのだ。
「iPhone」でのコピペ対象は、直近でコピーしたひとつのデータに限られるので、「ひとつ前のコピーしたテキストを貼り付けたかったのにもう、データが変わってる……、またコピーしに行かなきゃ……トホホ」といったことが日常的に起こっていた。
Androidスマホのキーボードの「クリップボード」画面。写真と文字とURLがコピーされた状態だ
Androidスマホのキーボードには、カーソル位置を1文字ずつ前後させられる「←」「→」ボタンが用意されている。対する「iPhone」のキーボードには、これらのボタンが存在せず、カーソル位置を移動したい場合は、該当箇所を指でタップする必要がある。
このタップによるカーソル位置の指定が、思いのほか難しく、狙った場所を指せないことが多い。もうジジイだからなのかも知れないが、だからこそ、タップ操作とボタン操作を併用できるAndroidスマホのキーボードのカーソル指定は実に快適だ。
Androidスマホのキーボードの中段左右にある横向きの三角ボタンが、カーソル移動の「戻る」と「進む」
ここからはAndroidスマホの「Pixel 7 Pro」に乗り換えて、使いづらいと感じる、残念だったポイントを紹介する。今後の改善が望まれる6項目をピックアップしてみた。
・こまめなホーム画面の整理が必須
・ホーム画面のフォルダーに表示されるアプリが4個
・「Google Chrome」はスワイプで“進む”が不可
・記号が見つけづらいキーボード
・見にくい「クイック設定」
・わかりにくいアプリの「通知ドット」
Androidスマホを使い始めて、最初に衝撃を受けたのが、アプリ一覧画面の見づらさだ。ホーム画面で下から上へとスワイプすると、等間隔にすべてのアプリがズラーっと並んだ画面が登場する。ここから使いたいアプリを探すのは、かなり骨の折れる作業なので、ホーム画面を常に整理整頓して、使いやすい状態にしておく必要があるだろう。
いっぽうの「iPhone」では、ホーム画面を横にスワイプしていくと、最終ページとして同様の機能を持つ「アプリライブラリ」が登場する。こちらは、アプリが自動でフォルダー分けされた状態なので、使いたいアプリが見つけやすい。
Androidのアプリ一覧画面(左)と「iPhone」の「アプリライブラリ」(右)
スマホのホーム画面を整理整頓するには、複数のアプリをまとめるフォルダー分けが有効だ。フォルダー分けの機能は両OSともに変わらないが、Androidスマホはフォルダーに表示されるアプリが4個までとなっており、9個のアプリを同時に表示できる「iPhone」のフォルダーよりも情報量が少ない。
アイコンに9個もアプリが表示されると見づらいのでは? とも思われるが、筆者はそこに問題を感じたことはなかったので、より多くのアプリが一瞥できる「iPhone」のフォルダーに一票を投じたい。
Androidのフォルダー(左)と「iPhone」のフォルダー(右)
「iPhone」でWebサイトを閲覧しているとき、右から左へのスワイプで「戻る」、左から右へのスワイプで「進む」の操作は、無意識によく使っていた。しかし、Androidスマホのメインブラウザーである「Google Chrome」では、左右どちらのスワイプも「戻る」に設定されており、スワイプで「進む」ことができないのだ。まだ「iPhone」時代のスワイプ習慣が抜けていない筆者は、見たかったページにたどり着けず、どんどんと「戻る」スワイプを繰り返してしまうことがよくある。
Androidスマホで左から右へスワイプすると、“進み”たくても “戻って”しまう
ちなみに、「Google Chrome」にも「進む」ボタンはある。右上の3点リーダーのメニュー上部の「→」ボタンだ。スワイプ操作に比べると快適とはほど遠いが、必要な場合はボタンをクリックして操作しよう。
「Google Chrome」の三点リーダーメニューの左上「→」ボタンが「進む」ボタンだ
Androidスマホは、初期設定(後で変更も可能)でキーボードの配列を自分で選択する。筆者は、日本語をフリック操作で入力できる「12キー」、英字をPCキーボード配列「QWERTY」を選択しており、左下にある「切り替えボタン」で日本語と英字と数字のキーボードを切り替えながら文字を打っている。
ところが、日本語入力中によく使う記号の「&」が見当たらない。実は、「&」のある場所は、日本語表示中の「地球アイコン」で切り替えたのちに表れる、「QWERTY」配列の2枚目にあたる数字&アルファベットキーボードの中にあるのだ。自分で書いてみても、よくわからなくなっているが、とにかく記号の選択画面の階層が深い。この切り替えが面倒なので、現在は日本語入力のまま「あんど」と入力し、変換候補から選択している。「_」も同様だ。
カスタマイズを得意とするAndoridだからこそ、このあたりもカスタムして調整できるのかも知れないので、追って調べてみたい。
日本語入力中に、「&」のある上の画像の配列を表示するには、「地球アイコン」と左下の「?123」ボタンを押す必要がある
「iPhone」での日本語入力中に「&」を入力するには、「12キー」配列のまま、英字入力画面に切り替えると、「&」がすぐ登場する。「iPhone」時代には、そこまでキーボード配列で悩んだことはなかったので、キーボードの配列は、「iPhone」のほうが使いやすいと感じている。
「iPhone」のキーボードで、日本語入力から「&」を表示するまでのボタン操作は、中段左の「ABC」ボタンを1回押すだけ
インターネット接続、Bluetooth接続、マナーモードやライトなど、よく使う機能を一覧表示したものがAndroidスマホの「クイック設定」だ。とてもよく使うので便利だが、同様の機能をもつ「iPhone」の「コントロールセンター」と比べると、使い勝手が悪いと感じる。「コントロールセンター」は、文字がほとんど使用されておらず、ほぼアイコンだけで構成されたシンプルなUIが魅力だ。直感的に使えるシンプルさは、ぜひAndroidスマホも参考にしてほしい。だが編集部でこの話をしていたところ、「アイコンだけじゃないAndroidの方が使いやすい」という意見もあった。
Androidの「クイック設定」(左)と「iPhone」の「コントロールセンター」(右)
アプリの通知を知らせる「通知ドット」。Androidスマホではアイコンの肩に色の付いた点が載るシンプルなデザインだ。ホーム画面のデザインをじゃませず、スマートでかっこいいが、“通知”という点で言えば、パンチが弱く見逃してしまいがち。
対する「iPhone」のアプリ通知は、アイコンの肩に赤丸が重なり、未読件数が数字で表示される。これはこれで主張が強すぎて鬱陶しいが、通知としての視認性は高い。どちらがよいのかは、意見が割れるところだろう。
Androidの通知は控えめ(左)。対する「iPhone」の通知はよく目立つ(右)
Androidスマホは、「クリップボード」やボタン操作によるカーソル移動などのキーボードの機能性や、ホーム画面への“ピン留め”など、PCゆずりの便利な機能が詰め込まれたデバイスといった印象だ。対する「iPhone」は、アイコンが多く使われていたり、スワイプ操作がイメージどおりだったりと、長い時間をかけて磨かれたスマホならではのUI/UX設計の完成度が魅力に感じられる。
筆者はあまり利用しないが、「AirDrop」がAndroidで使えないのも「iPhone」ユーザーが乗り換えるときに不便に感じる点だろう。Androidにも同様の機能があるが、iOSと共有することはできない。
また、日常的に使用しているPCやタブレットが、AndroidデバイスなのかiOSなのかでも、スマホでの体験は大きく異なってくると思うので、スマホ以外のデバイスとの連携も考慮し、自分にあった楽しいスマホライフを検討してほしい。
今回は素のAndroidを搭載する「Pixel 7 Pro」でAndroidの使い勝手についてレビューしたが、Androidはホーム画面を自由にカスタマイズできるランチャー系のアプリや、そのほか多彩なアプリで今回記載した不満点を解消できる可能性があるため、次回はAndoridのカスタマイズ性に着目した記事をお届けしたい。