サムスンから登場した約1万円の低価格スマートウォッチ「Galaxy Fit3」は、とにかく軽くてコンパクト。だからこそ、睡眠モニタリングで健康管理をしたいけれど、スマートウォッチを着けたまま寝られない、という人の強い味方になってくれそう。短い期間ではあるが、着用したまま過ごした日々のレビューをお届けしよう。では、おやすみなさい。
サムスン「Galaxy Fit3」、公式サイト販売価格9,900円(税込)、2025年1月31日発売
ちなみに、「Galaxy Fit3」はAndroidデバイスとのペアリングが必要。iPhoneでは使用できないのであしからず。
サムスンからはひんぱんにスマートウォッチが発売されている印象だったが、実は低価格のスマートバンドは、2020年に発売された前世代モデル「Galaxy Fit2」以来の約4年ぶり。そんな待望の低価格ウォッチは、さっそく、価格.comの「スマートウォッチ・ウェアラブル端末 人気売れ筋ランキング」で1位(2025年3月4日時点)を獲得し、注目度の高さを見せている。
シンプルでミニマルなデザインの「Galaxy Fit3」
各社スマートウォッチの多くが24時間着用したままでの終日モニタリングを目的に、センサー精度を磨き続けてきた。だが同時に、機能の充実と快適な操作性を求めた結果、画面の大型化が進んでおり、日中の着用では特に問題ないが、いざ、着けたまま寝られるかというと、この問題は顕著に表れる。
そんな折に登場した「Galaxy Fit3」は、装着感が抜群によい。筆者の主観だが、今までスマートウォッチ(バンド)を着けていてあまり感じることがなかった、“着けていることを忘れる瞬間”がとても多かった。すなわち、装着でのストレスをほぼ感じずに過ごしている証しだろう。
そんな「Galaxy Fit3」の装着感のよさを生んでいる要因のひとつは、コンパクトなボディにある。本体サイズは、約28.8(幅)×42.9(高さ)×9.9(厚さ)と小さい。そのうえ、睡眠中の使用を想定し、本体の角が丸まっていることもポイントだ。
どこから見ても角のない丸みのあるデザイン
物理ボタンは、本体横の1つのみで、本体から大きく飛び出すことなくフラットに収まっている。そのおかげで、腕時計のリューズのように腕にあたるようなことがない。特に、スポーツの最中や、PCでタイピング作業をしている間は、このフラットさがありがたい。
物理ボタンは本体右サイドに1つ。正面から見ると、わからないほど薄い
ディスプレイは1.6インチと、昨今のスマートウォッチの中では、決して大きいサイズではない。とはいえ、従来のスマートバンドらしい細長いディスプレイだった前世代モデル「Galaxy Fit2」と比較すると、ディスプレイサイズは45%も大きくなっており、見やすさと操作性が大幅に向上している。
1.6インチの有機ELディスプレイを搭載
ボディ素材には、耐久性のあるアルミニウムを採用し、重量は約18.5gととても軽い。だが着用してみると、金属ならではの安定感があり、腕に着けた状態でウォッチがむだにブレることが少なかった。
重量は軽いが、腕にフィットしブレが少ない
筆者は仕事柄、スマートウォッチを着けて寝る日が多いが、決して、心地よいと感じたことはない。「着けたまま寝てもそこまで嫌じゃない」ぐらいでも、睡眠モニタリングを実行するスマートウォッチとしては上出来だと思っていた。
ところが、きわめて装着感のよい「Galaxy Fit3」は、着用感がないことで、昼夜問わず着用ストレスがほぼなかった。朝起きたときには、着けていることを忘れたまま睡眠できたことに驚いたほどだ。
さて、そんな装着感のよい「Galaxy Fit3」だからこそ、24時間着けっぱなしでの終日健康モニタリング機能が生きてくる。モニタリングできる健康指標は、睡眠、心拍数、ストレスレベル、血中酸素レベル、生理周期。昨今の一般的なスマートウォッチでモニタリングできる指標はほぼ揃っていると思ってよい。
ウォッチ上では、リアルタイムの健康指標がチェックできる
健康指標は、スマホアプリ「Samsung Health」でより細かく確認可能。体重、血圧、血糖値は、「Galaxy Fit3」では取得できないデータのため、体組成計との接続や手入力が必要となる
なかでも、睡眠モニタリング機能は充実している。「睡眠の段階」は、深い睡眠、浅い睡眠、レム睡眠、非睡眠状態と、4段階のステージのログを確認できる。さらに、「睡眠スコア」では、睡眠の計測結果を基に、100点満点で数値化したものだ。ほかにも、睡眠中のいびき、血中酸素レベルの取得も可能となっている。
取得した睡眠データは、ウォッチのディスプレイでも確認できる
スマホアプリ「Samsung Health」では、より詳細な睡眠データと日々の記録を確認できる
今回のレビューでは、モニタリング日数が足りず確認できなかったが、「睡眠コーチング」機能が搭載されている。この機能は、睡眠の記録データを基に、よりよい睡眠のためのアドバイスを提供してくれるというもの。ただ睡眠のログをとるだけでなく、睡眠の改善をするためには、貴重な機能だろう。
中段に表示される「睡眠コーチング」を使用するには、7日間の睡眠データが必要となる
また、「Galaxy Fit3」のワークアウトには、ランニングやサイクリング、水泳など100種類以上のメニューが用意されている。初期設定では、本体のボタンを2回押すことでメニューを選択できるうえ、人気のメニューは、自動認識にも対応しているので、メニューを選択し忘れても、ウォッチが自動でワークアウトのメニューを判断してログを取得できるので便利だ。
ウォッチ本体にGPSは内蔵されていないが、スマホのGPSに接続することで位置情報を取得できる。スマホを携帯せずに運動することが多い人は、注意が必要だ。ちなみに筆者は、運動中でも基本的にはスマホを携帯しているので、この点はあまり気にならなかった。
ワークアウトの実施後に、活動時間、消費カロリー、平均心拍数を確認
スマホアプリ「Samsung Health」では、心拍数ゾーンの変化をグラフで確認できる
ちなみに、バッテリーの持続時間は、標準的な使用で約13日間持つとのこと。搭載されるすべてのモニタリング機能をフル稼働させた状態で5日間ほど試用してみたが、約50%までバッテリーが消費した。バッテリー消費の大きいモニタリング機能も実施していたことから、バッテリーの持続時間は、ほぼメーカーの公称値どおりと思ってよさそうだ。
「Galaxy Fit3」には、健康管理以外にもスマートウォッチとしての充実した機能が搭載されている。スマホへの電話の着信やメールの受信を知らせてくれたり、手元で天気やスケジュールを確認できたりといった、スマホを取り出さずに手元でできると便利だなという機能が搭載されている。
アプリのオンオフは、スマホアプリ「Galaxy Wearable」からも操作できる
さらに、画面を上から下にスワイプすると現れる「クイックパネル」では、睡眠モード(画面が暗くなり通知オフ)、通知のオンオフ、ディスプレイの常時表示、バイブ、ライト、シアターモード、ウォーターロック、といった設定が操作できる。
各機能のオンオフは「クイックパネル」で操作する。スマホアプリ「Galaxy Wearable」では各ボタンの表示位置が変更できる
左右へスワイプすると、「タイル」と呼ばれるアプリを切り替えることが可能。これらタイルの表示順も好みや用途に合わせてカスタマイズできる
搭載されているアプリの並び替え程度のカスタマイズはできるが、フラッグシップ「Galaxy Watch」シリーズに搭載される「Wear OS Powered by Samsung」のように、Google系アプリやサードパーティー製アプリのインストールができないことは理解しておこう。
さらに、残念ながら、「Galaxy Fit3」にスマホへの着信の通知機能はあるが、ウォッチ本体で着信に応答できる「Bluetooth通話」は、搭載されていない。また、タッチ決済や「モバイルSuica」なども非対応であるが、価格相応のスペックだと考えてよいだろう。
「Galaxy Fit3」は、一般的なスマートウォッチとしての機能がほぼ搭載されているうえ、約1万円という価格も手ごろだ。そのうえで、着けていることを忘れられるほどの着用感は、ほかのスマートウォッチにはない「Galaxy Fit3」ならではの魅力と言える。もし、スマートウォッチを着けたまま、できるだけ快適に睡眠したいのなら、トライしてみる価値のある一台だ。