シャープ「AQUOS wish5」は、タフネスボディなどの特徴を前機種から受け継いだ、エントリー向けのスマートフォン。得意な点・不得意な点を整理しながら、本機の魅力をレビューします。
シャープ「AQUOS wish5」。2025年6月25日発売。メーカー直販価格は34,980円(税込)
シャープのスマートフォンは、性能重視の「AQUOS R」、普段使いにちょうどよい性能をコンセプトにした「AQUOS sense」、そして価格を重視した本機の属する「AQUOS wish」という3シリーズ構成です。「AQUOS wish5」は、2025年6月25日に、NTTドコモ、楽天モバイル、ワイモバイルの通信事業者、およびSIMフリーモデルが発売された最新モデル。特に、NTTドコモでは、一括払いで27,500円(税込)の低価格で注目されています。
そんな「AQUOS wish5」のボディカラーは5色。特に、パープル系の「ミソラ」や、ピンク系の「ナデシコ」、グリーン系の「ワカバ」のような明るいカラーが豊富なのは魅力です。ボディは表面にしっとりとした感触のマット加工が施されており、すべりにくく実用的。再生プラスチック素材も使用しています。
SIMフリーモデルのカラーバリエーションは5色。左から、ミソラ、ナデシコ、ワカバ、ユキ、スミ。販売ルートによって取り扱うカラーが異なります
ボディサイズは約76(幅)×166(高さ)×8.8(厚さ)mmで、重量は約187g。ディスプレイは1612×720のHD+表示に対応した約6.6インチの液晶で、解像度・サイズは前機種「AQUOS wish4」と同じです。5.7インチディスプレイを搭載する旧機種「AQUOS wish 1〜3」を基準にするとかなり大きくなりましたが、現在のスマートフォンとしては一般的なサイズ感で、約190g以下の重量はむしろ軽いほうでしょう。
指紋認証センサーを内蔵する電源ボタン。センサーに触れ続けることで決済アプリなどを起動できる「Payトリガー」に対応しています。ボタン長押しで任意のアプリを起動することも可能です
このボディは、IP6Xの防塵とIPX9の防水に対応。前機種「AQUOS wish4」と比べると防水性能がIPX8からIPX9に向上しています。IPX9は摂氏80度の熱水を4方向から高圧で吹き付けても耐えるというもの。常温であれば水没に耐えることもできます。加えて、米国国防総省の調達基準「MIL-STD-810H」の18項目をクリアしており、コンクリート床への落下に耐えるほか、ハンドソープでボディを丸洗いしたり、アルコールで拭いたりすることも可能。「AQUOS wish」シリーズの特徴であるタフネス性能をしっかりと継承しています。
機能面では、おサイフケータイやNFCに対応し、マイナンバーカードも使用できます。生体認証は、顔認証と指紋認証の2種類に対応しています。
高圧の熱水を吹き付けても耐えることができます
サウンド性能を見ると、ボディ上面にヘッドホン端子を備えていますが、スピーカーは1基でモノラル出力になります。動画の視聴を考えるとやはりステレオスピーカーは欲しかったところです。
ディスプレイは大画面の割に解像度が低め。しかし、実際の画面では、目立つほどの粗さは感じません。ハイエンドモデルのような120Hzの倍速駆動に対応しているので、残像感の少ない滑らかなスクロールが可能です。ただし、基本性能がそこまで高くないこともあって、同じ120Hz駆動でもハイエンドモデルと比べると滑らかさが持続しない傾向です。また、輝度の自動調整では、画面が暗くなりやすい傾向が目立ちました。最大輝度もそこまで高くないため、明るい屋外で視認性が低下する場合があります。
大画面ですが解像度はHD+と低め。しかし、細かな文字やアイコンなどのエッジの粗さは抑えられています
屋外における視認性をテスト。最大輝度に制約がありあまり鮮明ではありません
カメラの性能を見てみましょう。背面のメインカメラは、約5010万画素センサーと、焦点距離25mm(35mm判換算)のレンズを組み合わせたシングルカメラ。フロントカメラは約800万画素です。
以下に、メインカメラを使った静止画の作例を掲載します。初期設定のままピントを合わせてシャッターを押すだけの撮影を行っています。
蓮のつぼみを撮影。鮮明な写りで不自然な誇張もなく、明るい屋外の撮影では満足できる画質です。背景のボケも大きめです
古風なペンダントライトを下からのぞき込むように撮影、明暗差が大きい構図ですが暗部もしっかりと写っています。フレアも最小限に抑えられており、クラスを考えればかなり健闘していると言えるでしょう
暗い店内で料理を真上から撮影。「AQUOS R10」に備わる影を除去する機能は搭載されていません。感度性能の限界からノイズが現れ始めています
メインカメラはシンプルなシングルカメラですが、価格帯を考えれば画質は安定しています。レスポンスの不満もありません。また、電源ボタンを2回押せばカメラを起動できるオプション設定があり、思い立ったらすぐに撮影できるのも美点です。注意点としては、手ブレ補正が弱めで高感度撮影もあまり強くないので、暗所での撮影ではしっかり構えながら、心持ち多めに撮影しておくのがよいでしょう。
基本性能に迫りましょう。搭載されるSoCは「MediaTek Dimensity 6300」で、メモリーは4GB、ストレージは基本的に128GBですがNTTドコモ版の「SH-52F」に限っては64GBとなっています。なお、microSDメモリーカードスロットは最大2TBまで対応。仮想メモリーを使って最大4GB(合計8GB)の増設が行えます。
SIMトレーにmicroSDXCメモリーカードスロットを備えています
ベンチマークテストの結果は以下となります。前機種「AQUOS wish4」と比較しながらレポートします。
影響力の強いベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)」の結果。総合スコアは386439で、同じアプリで計測した「AQUOS wish4」の結果は373452(価格.comマガジン調べ)なので、微増にとどまっています
CPUの性能を計測するアプリ「GeekBench 6」の結果。シングルコアは729、マルチコアは1847となりました。「AQUOS wish4」の結果はシングルコアが701、マルチコア1966で、項目による差はありますがトータルではほぼ横ばいです
3Dの描画専用のベンチマークアプリ「3DMark(Wild Life)」の結果。スコアは1332で「AQUOS wish4」の結果(1169)から、1割強のスコアアップとなっています
「AQUOS wish5」に搭載されるSoC「MediaTek Dimensity 6300」は、前機種「AQUOS wish4」に搭載されていた「Dimensity 700」の改良版です。両者の違いは、製造プロセスが7nmから6nmに微細化し、発熱が減りバッテリーの消費も抑えられることと、CPUの動作クロックが2.2GHzから2.4GHzに向上したことの2点。ただし、CPUやGPUの設計や構成は変わっておらず、性能の差は動作クロックの違いと言えます。
基本性能がほぼ共通なら、前機種「AQUOS wish4」は本機の有力なライバルと言えるでしょう。ちなみに、OSのバージョンアップ回数とセキュリティアップデートの配布期間をチェックすると、「AQUOS wish5」は OSバージョンアップ回数が2回、セキュリティアップデート期間が発売後4年。「AQUOS wish4」はOSのバージョンアップが2回、セキュリティアップデート期間が発売後3年。セキュリティアップデート期間は「AQUOS wish5」のほうが有利です。なお、「AQUOS wish4」のOSバージョンアップはすでに1回実施済みで、残りは1回。セキュリティアップデートは残り2年になります。長く使うつもりなら、両機のソフトウェアサポートの違いは理解しておく必要がありそうです。
「AQUOS wish5」は、5000mAhのバッテリーを内蔵しています。23時間の動画の連続再生や138時間の音楽再生が可能です。なお、前機種「AQUOS wish4」は21時間の動画の連続再生、約140時間の音楽再生なので、カタログスペックはほぼ横ばいです。
実際のバッテリー持ちは良好で、YouTubeの動画再生はカタログ値とほぼ同じ、1時間に4〜5%のペースでバッテリーが減っていきました。1日に3時間ほど使用した場合、フル充電で4日ほど充電なしで済みました。これだけのバッテリー持ちなら、2泊の旅行でも使い方を多少注意すれば充電器を持たずに済むでしょう。
充電にかかる時間はカタログスペックでは130分、検証では約135分かかりました。なお、27Wという比較的高出力な充電器が使用できますが、出力18Wの安価な充電器でも充電時間に大きな違いはありませんでした。
出力100Wの充電器を使用中のワットチェッカーの数値。電圧は9Vで電流は1.5A、電力13Wあたりで充電が行われており、18W程度の充電器も能力は十分でした
本機のホーム画面は、初期設定の「AQUOS Home」のほかに、子ども向けの「AQUOSジュニアホーム」、文字やアイコンを大きくしたいわゆるシンプルモード「AQUOSかんたんホーム」の3種類を用意しています。特に子供向けの機能はユニークなものが多く、フォントを教科書風に切り替える「TB UD 学参丸ゴシック」や、防犯アラートや電源ボタンを立て続けに5回押すことでブザーや発信を行う「緊急SOS」という機能を備えています。
上が「TB UD 学参丸ゴシック」を使ったWebページの表示です。下の初期設定「たづがね角ゴシック Info」と比べると丸みがあり、読みやすくなります
プリインストールされているホーム画面として、左画面の子ども向けの「AQUOSジュニアホーム」と、右画面の文字やアイコンを大きくしたいわゆるシンプルモード「AQUOSかんたんホーム」を選ぶことができます
左画面の「ジュニアモード」では、上記の「AQUOSジュニアホーム」への切り替えやフォントの変更など、子どもの利用を想定した設定に変えることができます。右画面の「防犯アラート」は振動を感知してブザーを鳴らす機能です
本機はGoogleの生成AI「Gemini」に対応しているのも特徴です。上位機種で対応していた「かこって検索」を使用できます。AI機能はハイエンド向きに思われるかもしれませんが、データ処理にクラウドサーバーを使うタイプのAIサービスなら本機でも利用できます。
Googleの生成AI機能に対応。左はGeminiのプロンプトを使った画像の生成で、右は「かこって検索」を使用例です。「かこって検索」は、表示した画像などを指でかこって検索できます
キャリアに課せられた規制や経済情勢など、国内や海外の諸事情が重なり、スマートフォンの値上がりは収まる気配がありません。そうしたなかで、「AQUOS wish5」は、人気の高いシャープが手掛ける手ごろな価格の製品で、安心感のある1台と言えます。
凝ったカメラや高い処理性能のようなぜいたくな要素はないものの、インターネットの閲覧、デジタルコンテンツの表示・再生、一部のAI機能の利用なら問題なく対応できます。加えて、ボディが丈夫なうえに防犯機能を備えている点は、幅広い層にアピールできるもの。実用品として選ぶのなら、十分に期待に応えてくれる製品と言えるでしょう。