レビュー

どっちが買い? 定番ミッドレンジ対決! コスパのAQUOSかAV機能のXperiaか

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物価高騰が続く中、2025年の下半期は、十分な性能を備え、なおかつ手ごろな価格のミッドレンジスマホが注目を集めた。なかでも人気が高いのが、10月9日に発売されたソニー製の「Xperia 10 VII」と、11月13日に発売されたシャープ製の「AQUOS sense10」だ。いずれも、サイズやスペックが近い定番ブランドの製品で、どちらを買おうかと迷っている人もいることだろう。そこで、メーカーからそれぞれのモデルを借りて、使い勝手をじっくり比べてみた。

スペックはAQUOS sense10がリード

まずは、両モデルの主なスペックを抑えておこう。

両機のサイズは同等で、最近のスマホとしてはコンパクトで軽いことは魅力だ。基本性能の決め手となるチップセットは、いずれも2024年の夏ごろに登場した同世代の製品で、「AQUOS sense10」のほうが格上になる。メインカメラもデュアルカメラであることは同じだが、超広角カメラやインカメラの画素数は「AQUOS sense10」のほうが高い。総じて「AQUOS sense10」のほうがスペックは高い。いっぽう、価格は「Xperia 10 VII」のほうが高価。はたして「Xperia 10 VII」には、その価格に相当する魅力はあるのか?が重要なポイントになるだろう。

左が「AQUOS sense10」、「右がXperia 10 VII」。サイズはほぼ同じ

左が「AQUOS sense10」、「右がXperia 10 VII」。サイズはほぼ同じ

カメラ比較
撮影画質に、それぞれの個性が現れた

カメラの性能を比べてみた。「AQUOS sense10」は広角(約5030万画素/F値2.2)+標準(約5030万画素/F値1.9)という構成。標準カメラには、スマホとしては大きい1/1.55インチのイメージセンサーを採用している。なお、広角カメラの35mm換算の焦点距離は13mm相当で、標準カメラは23mm相当。

「AQUOS sense10」は、自由曲線でデザインされたカメラ部がアイコニックな特徴となっている

「AQUOS sense10」は、自由曲線でデザインされたカメラ部がアイコニックな特徴となっている

いっぽう、「Xperia 10 VII」は16mmの超広角(約1300万画素/F値2.4)+24mmの広角(約5000万画素/F値1.9)という構成。広角カメラには1/1.56インチのセンサーが採用されている。ややこしいが、画角に注目すると「AQUOS sense10」の広角カメラは「Xperia 10 VII」の超広角カメラに、「AQUOS sense10」の標準カメラは「Xperia 10 VII」の広角カメラに相当する。

「Xperia 10 VII」は従来モデルからデザインを一新し、デュアルカメラは横並びになった

「Xperia 10 VII」は従来モデルからデザインを一新し、デュアルカメラは横並びになった

どちらも望遠カメラは搭載していないが、2倍は画像センサーの中央部でとらえた画像を切り出す形で光学ズーム相当の画質で記録できる。デジタルズームを組み合わせた最大倍率は「AQUOS sense10」が8倍、「Xperia 10 VII」が6倍となっている。インカメラは「AQUOS sense10」が約3200万画素で、「Xperia 10 VII」が約800万画素。スペックだけで判断すると、カメラ性能はセンサーが大きく画素数も多い「AQUOS sense10」が上回っている。

実際にさまざまな被写体を撮り比べてみると、画質には結構な差が現れた。ただし、ハードウェアの性能が高い「AQUOS sense10」のほうがすぐれているというわけでなく、絵づくりの考え方の違いが画質に現れている印象だ。

超広角カメラを比較(上がAQUOS sense10、下はXperia 10 VII)

冬の海を撮影、左の「AQUOS sense10」のほうが肉眼の印象に近い。構図四隅のノイズや画質の流れは両機ともミッドレンジ相応

冬の海を撮影、「AQUOS sense10」のほうが肉眼の印象に近い。構図四隅のノイズや画質の流れは両機ともミッドレンジ相応

標準カメラを比較(上がAQUOS sense10、下はXperia 10 VII)

上の超広角カメラと絵作りの傾向は共通で、「Xperia 10 VII」のほうが鮮やか。見たままの印象を撮るなら「AQUOS sense10」のほうが適している

上の超広角カメラと絵作りの傾向は共通で、「Xperia 10 VII」のほうが鮮やか。見たままの印象を撮るなら「AQUOS sense10」のほうが適している

標準カメラの2倍ズームで比較(上がAQUOS sense10、下はXperia 10 VII)

画素数の多い「AQUOS sense10」のほうがズームの画質は有利かと思ったが、2倍程度ではそこまでの違いは感じられない

画素数の多い「AQUOS sense10」のほうがズームの画質は有利かと思ったが、2倍程度ではそこまでの違いは感じられない

標準カメラを最大ズームで撮影(上がAQUOS sense10、下はXperia 10 VII)

最大ズームにすると、石碑の表面の質感で差が現れる。画素数の多い「AQUOS sense10」のほうが有利だ

最大ズームにすると、石碑の表面の質感で差が現れる。画素数の多い「AQUOS sense10」のほうが有利だ

筆者には、「AQUOS sense10」のほうが見たままに近いナチュラルな色や明るさで写り、「Xperia 10 VII」は被写体に合わせた補正が強いようで、空や海がより青く写り、料理写真はホワイトバランスが整えられ、ポートレートでは陰影が強調される。つまり、“映える” 写真となる。どちらを好むかは、ユーザーによって分かれるだろう。

料理の作例を比較(上がAQUOS sense10、下はXperia 10 VII)

下の「Xperia 10 VII」のほうがホワイトバランスが整えられシズル感を強調した瑞々しい色調になった

下の「Xperia 10 VII」のほうがホワイトバランスが整えられシズル感を強調した瑞々しい色調になった

夜景の作例を比較(上がAQUOS sense10、下はXperia 10 VII)

いずれもシャッタースピードは1/8秒で共通、ノイズの量もほぼ同じ

いずれもシャッタースピードは1/8秒で共通、ノイズの量もほぼ同じ

「Xperia 10 VII」は、右側面に「即撮りボタン」を搭載。長押しでカメラを起動でき、シャッターとして使えるボタンだ。片手持ちで押しやすい位置にあり、とりわけ縦向きでの撮影に重宝した。短押しでスクリーンショットを撮れるのも便利だ。

即撮りボタンは短押しで写真、長押しで動画を撮影できる。なお、上位モデルの「Xperia 1 VII」のカメラボタンとは異なり、半押しでピントを固定する機能はない

即撮りボタンは短押しで写真、長押しで動画を撮影できる。なお、上位モデルの「Xperia 1 VII」のカメラボタンとは異なり、半押しでピントを固定する機能はない

いっぽう、「AQUOS sense10」にはシャッターボタンを自由に動かせる「フロティングシャッター」がある。ただし、「AQUOS sense10」は横幅が73mmと細いため、フロティングシャッターを使わなくても、片手持ちでスムーズにシャッターを押せる。必要とする人は限定的だろう。

固定されたシャッターボタンとは別に、任意の場所にフロティングシャッターを置くことができる

固定されたシャッターボタンとは別に、任意の場所にフロティングシャッターを置くことができる

カメラの独自機能として、「AQUOS sense10」には、料理やドキュメントに写り込んだ影を消せる機能がある。写真全体の色や明るさを変えずに影だけがきれいに消えるので、積極的に使えそうだ。「Xperia 10 VII」には撮った写真や動画を作って簡単に動画を編集できる「Video Creator」というアプリがプリインストールされている。SNSなどに投稿する短い動画の作成に重宝しそうだ。

「AQUOS sense10」の「料理・テキストの影を消す」をオフにした場合(左)とオンにした場合(右)

「AQUOS sense10」の「料理・テキストの影を消す」をオフにした場合(左)とオンにした場合(右)

「Xperia 10 VII」の「Video Creator」は、写真や動画を選ぶだけで簡単にショートムービーを作成できる

「Xperia 10 VII」の「Video Creator」は、写真や動画を選ぶだけで簡単にショートムービーを作成できる

ディスプレイ比較
Xperiaのほうが明るく表示されたが……

ディスプレイはどちらも約6.1インチの有機EL。解像度も1080×2340ピクセルで共通している。リフレッシュレートはどちらも最大120Hzの倍速駆動に対応だ。しかし、「AQUOS sense10」は120コマの間に黒い画面を挿入する形で、実質的には最大240Hzを実現している。また、コンテンツに合わせて1〜240Hzで自動で変動する可変リフレッシュレートになっている。いっぽう、「Xperia 10 VII」は60Hzと120Hzの切り替えだけとになるが、視界をさえぎるパンチホールがないのがセールスポイントと言えよう。なお、前モデルの「Xperia 10 VI」までは画面比率が21:9の縦長ディスプレイが特徴だったが、「Xperia 10 VII」は一般的な19.5:9に変更された。16:9の動画をより無駄なく広く表示できるようになった。

画面の明るさを最大にして、Webページ、写真、動画を表示させて比べてみた。「AQUOS sense10」は全白輝度が1500nit、ピーク輝度が2000nit。いっぽう「Xperia 10 VII」の輝度は公表されていない。今回、筆者が見比べた範囲では、「Xperia 10 VII」のほうが明るく表示された。しかし、「AQUOS sense10」は明るさを最大にしても、白い部分が飛んだりせず、むしろ細かい濃淡の描写にすぐれている印象を受けた。両モデルのディスプレイ画質は甲乙つけがたいのが本音だ。

左が「AQUOS sense10」、右が「Xperia 10 VII」。最大輝度にして「Chrome」アプリで「価格.comマガジン」を表示させてみた。Xperiaのほうが明るく表示された

左が「AQUOS sense10」、右が「Xperia 10 VII」。最大輝度にして「Chrome」アプリで「価格.comマガジン」を表示させてみた。Xperiaのほうが明るく表示された

パフォーマンス比較 CPUは異なるが操作感はどちらも良好

スマホの基本性能の決め手となるチップセットは、両モデルともに米クアルコム社製のものを採用している。「AQUOS sense10」はSnapdragon 7s Gen 3(最大2.5GHz)、「Xperia 10 VII」はSnapdragon 6 Gen 3(最大2.4GHz)を搭載。いずれのチップセットも2024年の秋発表で、4nmの製造プロセスを使っている点も同じ世代と言ってよいだろう。

なお、Snapdragonはグレードを数字で表し、6番台はミッドレンジ、7番台はミッドハイにあたる。なお7sに付く「s」は廉価版を表す。つまり、Snapdragon 7s Gen 3のほうがグレードは高いが、両者の序列の差は大きくないと判断できる。実際に使い比べてみても、日常的な操作で操作感に差を感じることはなかった。

ちなみに、「AQUOS sense10」は、RAMが6GBと8GBのモデルから選べるが、筆者が使ったのは8GBモデル。「Xperia 10 VII」のRAMも8GBなので、両モデルのRAM容量は同じだ。

ミッドレンジのスマホにとって、大きな負荷が想像される生成AIの処理速度を比べてみた。「Gemini」を起動し、テキストで指示を出して、イラストと動画を作成してみた。結果は僅差ではあるが、「AQUOS sense10」のほうが生成された画像が表示されるのが早かった。

「AQUOS sense10」でイラストと動画を生成した結果。イラストは約21秒。動画は約1分26秒を要した

「AQUOS sense10」でイラストと動画を生成した結果。イラストは約21秒。動画は約1分26秒を要した

「Xperia 10 VII」でイラストと動画を生成した結果。イラストは約23秒。動画は約1分32秒を要した

「Xperia 10 VII」でイラストと動画を生成した結果。イラストは約23秒。動画は約1分32秒を要した

なお、Snapdragon 6を搭載するスマホの中には、タッチ反応がやや鈍くなる機種があったりするが、「Xperia 10 VII」は基本アプリの操作において、反応が鈍くなることは一切なかった。マルチタスクなど、多少負荷がかかる作業もストレスなくこなせた。パフォーマンスは両モデル同等と評価すべきだろう。

バッテリー比較 電池持ちは「AQUOS sense10」に軍配

バッテリー容量はどちらも5000mAh。ミッドレンジのスマホとしては十分な容量で、長時間動画を見続けたり、ゲームをし続けたりしない限り、1日は余裕で持つはずだ。ただし、筆者が使い比べていると、「AQUOS sense10」のほうが若干電池持ちがいいように感じられた。そこで、フル充電の状態から、同じ動画を再生し、電池の減り方を比べてみた。

両モデルともに画面の明るさを最大にし、リフレッシュレートも高くなるように設定。「YouTube」の同じ動画を高画質(1440p)に設定して再生した。その結果をグラフにした。

2時間経過した時点で、「AQUOS sense10」は88%、「Xperia 10 VII」は83%まで減った。さらに2時間経つと「AQUOS sense10」は75%、「Xperia 10 VII」は65%に。8時間経過では、「AQUOS sense10」は39%、「Xperia 10 VII」は24%まで減った。やはり、「AQUOS sense10」のほうが電池持ちは良好なようだ。

2時間経過した時点で、「AQUOS sense10」は88%、「Xperia 10 VII」は83%まで減った。さらに2時間経つと「AQUOS sense10」は75%、「Xperia 10 VII」は65%に。8時間経過では、「AQUOS sense10」は39%、「Xperia 10 VII」は24%まで減った。やはり、「AQUOS sense10」のほうが電池持ちは良好なようだ。

「AQUOS sense10」には電池を長持ちさせる「長エネスイッチ」と、バッテリー寿命を長くする「インテリジェントチャージ」機能も搭載されている

「AQUOS sense10」には電池を長持ちさせる「長エネスイッチ」と、バッテリー寿命を長くする「インテリジェントチャージ」機能も搭載されている

Xperia 10 VIIにも同様の「STAMINAモード」と「いたわり充電」がある

Xperia 10 VIIにも同様の「STAMINAモード」と「いたわり充電」がある

独自機能を比較
AQUOSは通話機能、Xperiaはサウンド設計に強み

「AQUOS sense10」は、多くの独自機能を備えていることも魅力だ。例えば、画面の右上端または左上端をタップするだけでスクリーンショットが撮れる機能、画面が自動でスクロールされる機能などが従来機種から引き続き搭載されている。そして、この機種から新たに搭載されたのが、AIを使い通話時に自分の声を聞こえやすくする「Vocalist」という機能だ。事前に自分の声を記憶させて、通話時に有効にすると、自分の声以外の音声が除去される仕組みだ。実際に使ってみると効果てきめんで、通話が多い人に重宝しそうだ。

AQUOS sense10に搭載された新機能「Vocalist」は、事前に自分の声を登録しておくと、通話時に自分の声だけを聞こえやすくできる機能だ。近くで人が話している環境で試してみたが、相手には自分の声だけがクリアに聞こえたようだ

AQUOS sense10に搭載された新機能「Vocalist」は、事前に自分の声を登録しておくと、通話時に自分の声だけを聞こえやすくできる機能だ。近くで人が話している環境で試してみたが、相手には自分の声だけがクリアに聞こえたようだ

「Xperia 10 VII」は、先述の「即撮りボタン」を除くと、目立つ独自機能は見当たらなかった。しかし、近ごろ減少しているヘッドホン端子を備えている。あえて有線のヘッドホンで音楽を聴きたい人や、遅延を嫌うゲーマーには大きな優位性となるだろう。

「Xperia 10 VII」には3.5mmのヘッドホン端子を搭載。ソニー独自の「360 Reality Audio」や、圧縮音源を音音質化する「DSEE Ultimate」にも対応している

「Xperia 10 VII」には3.5mmのヘッドホン端子を搭載。ソニー独自の「360 Reality Audio」や、圧縮音源を音音質化する「DSEE Ultimate」にも対応している

ミッドレンジクラスは内蔵スピーカーの性能が軽視されがちだ。しかし、「Xperia 10 VII」は左右均等に配置されたスピーカーを搭載し、音質設計にも配慮されている。音の広がりが感じられ、音量を大きくしても雑味がなく、クリアな音を楽しめるなど、サウンド体験はクラス以上だ。いっぽう、「AQUOS sense10」もステレオスピーカーを搭載しているが、音質は「Xperia 10 VII」に軍配が上がる印象を受けた。

【まとめ】コスパではAQUOS。AV機能を重視するならXperia

どちらもバランスが取れた端末ではあるが、総合力では「AQUOS sense10」が一歩リードしている。AIを使った「Vocalist」や写真に写り込んだ影を除去する機能は実用性が高い。バッテリーも長持ちで、カメラ性能はミッドレンジ以上、ディスプレイの画質も上々である。防水・防塵に加えて、MIL規格に準拠する耐久性も備え、アルコール除菌やハンドソープで洗えるといった付加価値も、幅広いパーソナリティにアピールするだろう。それでいて、62,700円〜の価格はお買い得だ。

いっぽう、「Xperia 10 VII」はソニー製らしくカメラとオーディオ&ビジュアルは出色のできで、音楽や動画を存分に楽しみたい人には、満足度が高い1台となるだろう。また、ヘッドホン端子があるので、本格的なアクションゲームが目的ならこちらのほうが適性は高い。しかし、74,800円という価格は、「AQUOS sense10」より格上の「AQUOS R10」とほとんど変わらないのが気になるところだ。あと1万円ほど安くなれば印象は大いに変わるだろう。

村元正剛
Writer
村元正剛
iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの企画・編集などにも携わっている。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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