レビュー

定額制の音楽配信サービス「AWA」「LINE MUSIC」「Apple Music」を比較

「AWA」「LINE MUSIC」「Apple Music」と立て続けに定額制の音楽配信サービスが国内でスタートした。いずれも無料のトライアル期間を設けているため、音楽好きの人なら、すでにどっぷりハマっている人も少なくないだろう。定額制の音楽配信サービスには、有線放送のように音楽が勝手に流れるラジオ型と、アーティスト名や曲名を検索して好きな音楽を再生できるオンデマンド型があるが、今回取り上げる3つのサービスは、いずれも後者だ。アップルの「iTunes」のように1曲単位やアルバム単位で音楽を購入するのではなく、膨大なライブラリーの中から好きな音楽をストリーミングで自由に楽しめる。3つのサービスは何が違うのか、「プレイリストとレコメンド」「マルチデバイスとオフライン再生」「ラジオと独自機能」の3つに焦点を絞って比較したい。

左からAWA、Apple Music、LINE MUSIC

左からAWA、Apple Music、LINE MUSIC

聴き放題サービスの肝! プレイリストとレコメンド

膨大なライブラリーから好きな音楽を楽しめる定額制の音楽配信サービスで重要なのがプレイリストだ。今回取り上げる3つのサービスは、好みの曲やアーティストを検索して聴けるオンデマンド型のサービスではあるが、メインの楽しみ方としてはプレイリストを選んで聴くスタイルだ。3サービスともに、プレイリストには力が入っている。「夏に聴きたい曲」「好きな人と一緒に歌いたい曲」「朝・夜に聴きたい曲」など王道のものから、曲を起点としてジャンルや関連性の高い曲をまとめたものまで実に多彩だ。

Apple Musicは、各ジャンルの音楽に精通したApple Musicの担当者が作成したプレイリストがウリだ。Rolling Stone誌やNME誌などの海外メディアが選曲したプレイリストもある。AWAには、利用者がプレイリストを作って、それを「公開」できる機能がある。公開されたプレイリストは、他の利用者も再生できるのが特色だ。LINE MUSICには、音楽ナタリーなど日本のメディアが作成したものがあり、邦楽に強い印象を受ける。7月中にはAWAと同じように、利用者が作成したプレイリストを公開できる機能を実装する予定だ。

AWAはプレイリストを公開して、ほかの人と共有できる(左)。プレイリストは細分化されており、ジャンルやアーティストのほか、「HAPPY」「EXCITED」などムードに合わせたものなど多くのプレイリストを用意する。LINE MUSICのプレイリストは、「胸キュン」など感情やムードに合わせたものが豊富にそろう(中央)。Apple Musicのプレイリストは、専任スタッフが手がけたものや有名音楽雑誌が選曲したものがウリだ。3サービスとも豊富なプレイリストを用意する

プレイリストとともに重要なのがレコメンド機能だ。利用者の好みのアーティストや好きな音楽の傾向などを分析して、興味があると思われる曲をおすすめしてくれる便利な機能である。レコメンド機能は、Apple MusicとAWAにあり、LINE MUSICにはない。Apple Musicはメンバー登録後に好みのジャンルやアーティストを入力し、その結果をもとに利用者の趣向を分析して、「For You」という項目に集約される。その中身はプレイリストやアルバムなどだ。また、好みの曲にハートマークをつけて、Apple Musicに自分の嗜好を教え込むことで、レコメンドの精度も高まってくる。それに対してAWAは、最初に好みのジャンルやアーティストを入力する必要がなく、好きな曲やアーティストにFavoriteマークをつけていくことで、利用者の好みを学習していく。レコメンドの結果は、「DISCOVERY」という項目に表示される。

Apple Musicは、最初に好きな音楽ジャンルとアーティストを登録する。その結果がFor Youに表示される(左)。AWAのレコメンド結果は「DISCOVERY」でチェックできる(右)

利便性のカギ! マルチデバイス対応とオフライン再生

3つのサービスで意外と違うのがマルチデバイスへの対応だ。2015年7月14日時点では、Macやパソコン、iPadで使えるApple Musicが一歩リードしている。今秋にはApple TVとAndroid版もリリースする計画だ。AWAとLINE MUSICは現時点ではスマートフォンでしか利用できないが、順次パソコンなどにも対応する。スマートフォンだけで済む人もいるだろうが、パソコンやタブレットなどでも使えれば、利便性は一気に高まる。

定額制の音楽配信サービスは、ストリーミング(逐次)再生なので、利用するにはインターネットへの接続が必須だ。スマートフォンの場合はモバイル通信で、いつでもどこでも再生できるため、定額制の音楽配信サービスと相性がいい。しかし、長時間再生していると、データ通信量の上限が心配になってくる。そこで、あると便利なのがオフライン再生機能だ。同機能を備えるのは、Apple MusicとLINE MUSICだ。

無制限にダウンロードできるApple Musicは、オフライン再生の自由度が高い(ダウンロードしすぎるとストレージを圧迫するので注意)。曲単位はもちろん、プレイリストを丸ごとオフラインで再生できるのも便利だ。いっぽうのLINE MUSICは、最大500曲まで“キャッシュ”してオフラインで聴ける。注意点はダウンロードではなくキャッシュであること。オフラインで聴けるのは、最後にオンラインで再生してから最大7日間と決められている。Apple Musicのオフライン再生機能と比べると、簡易的な機能と言える。

AWAはオフライン再生に対応していないが、音質(ビットレート)をLow(64kbps)/Normal(96kbps)/High(128kbps)から選択できる。通信量が心配な人はLowで再生するといいだろう。なお、Wi-Fi接続時はビットレートが320kbpsとなる。LINE MUSICも高(320kbps)/中(192kbps)/低(64kbps)の3つの音質が選択可能だ。回線状況を見て音質を決める自動判別も選べる。Apple MusicのビットレートはiTunesと同じ256kbps。詳細は明らかになっていないが、モバイル回線の場合はビットレートを下げているというが、よく聴く曲やプレイリストはオフラインで再生できるようにしておくと安心だ。

Apple Musicは曲単位だけでなく、プレイリストを丸ごとオフラインで再生できる(左)。LINE MUSICのオフライン再生はキャッシュを使ったもので、自由度は低い。最後にオンラインで再生してから7日間経つと再生できなくなる。曲数も500曲までだ(右)

AWA(左)とLINE MUSIC(右)は、音質(ビットレート)のカスタマイズが可能。スマートフォンでの利用を想定した親切な設計だ

意外と使うラジオと独自機能

何となく音楽を楽しみたいときに便利なのがラジオだ。ラジオ機能を備えるのはApple MusicとAWAの2つだ。

Apple Musicのラジオ機能の目玉は、同サービスと同時スタートした「Beats 1」。ロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドンのDJが持ち回りで音楽やアーティストのインタビューなどを24時間配信するインターネットラジオである。Beatsのイメージでいくと、ヒップホップのイメージが先行するかもしれないが、流行りの曲から懐かしい曲までノンジャンルで流れている印象だ。電話でのリクエストも受け付けている。なお、Beats 1は、Apple Musicのメンバーでなくても楽しめる。Beats 1以外にも、「特集ステーション」として、「トゥデイズ J-Pop」「トゥデイズ K-Pop」「2000年ヒッツ」なども用意する。

AWAのラジオは、再生中の曲を起点として、関連した曲を続けて再生できる。Apple Musicのステーションに近いイメージだ。同機能はプレイリストを再生中でも起動できる。このほか、「Pop」「Dance/Electronic」といったジャンルに加え、「2010's」「2000's」…「1960's」といった年代別のステーションも用意する。

AWAのラジオは、再生中の曲に関連した曲を続けて再生できる。ジャンルや年代別のステーションも用意する(左、中央)。Apple Musicのラジオの目玉は無料で楽しめるBeats 1。洋楽が中心だが、流行りの曲から懐かしの曲までノンジャンルで流れている(右)

続いて独自機能を見ていこう。独自色が強いのはLINE MUSICだ。一番の特徴は、メールアプリ「LINE」でつながっている友人やグループに、音楽をスタンプのように送れること。送られた音楽は、LINEアプリ内のトーク・タイムライン上で直接再生できる。受信者は、LINE MUSICアプリをインストールしなくても、iPhoneであれば30秒間試聴できる仕組みだ(Androidはアプリのインストールおよびログインで30秒試聴可能)。「LINEで曲を送ろう!」というメニューには、「夜遊びしちゃう?!」「“どんまい”を送ろう」「好きすきスキ」「ウケル(≧▽≦)ノ」など、LINEでメッセージを送りやすいような曲が分類されている。コミュニケーションに強いLINEならではの機能と言える。

Apple Musicの独自機能は、「Connect」と呼ばれるアーティスト発信のシャーシャル機能だ。アーティストが制作現場の裏側などを発信し、それに対して利用者がコメントをつけたり、ハートをつけたりできる。まだまだ参加アーティストが少なく、情報も少なめで、今後のサービス拡充に期待したいところだ。自分の音楽ライブラリーと統合されるのもほかのサービスにはないユニークな点だ。Apple Musicにはない曲を起点にして、関連した曲を続けて再生できる。Apple Musicの曲かiPhoneに入っている自分の曲(購入したものもしくはCDからとりこんだもの)かは、曲名の一番右の電話マークの有無で確認できる。

AWAの独自機能はプレイリストの公開機能だが、LINE MUSICも同様の機能を7月中に実装することを発表しており、独自色が薄まっている。公開できるのも8曲までと制限がある。正式サービスまでに何かアップデートがあるかもしれないので、注目して待ちたい。

LINE MUSICは、音楽をスタンプのように送れるのが特徴だ。LINEで送りやすいように曲が分類されている(左、中央)。Apple MusicのConnectは、アーティスト発信のソーシャル機能。参加アーティストが少なく、情報もシンプルなので、今後の拡充に期待したい

まとめ

最後に料金をチェックしておきたい。

AWAの料金プランは、オンデマンド再生ができない「Liteプラン」が月額360円(税込)、オンデマンド再生とプレイリストの作成/公開もできる「Premiumプラン」が月額1,080円(税込)。機能制限および利用時間制限のある「Freeプラン」も用意する。

LINE MUSICの料金プランは、30日間500円(税込)の「ベーシックプラン」と30日間1,000円(税込)の「プレミアムプラン」の2種類。2つのプランに機能差はなく、違いは利用できる時間だ。ベーシックプランは30日間で20時間利用できるのに対して、プレミアムプランには時間制限がない。学生の利用者が多いLINEらしく、学割を用意するのもユニークだ。学生であればベーシックプランが300円(税込)、プレミアムプランが600円(税込)で利用できる。

Apple Musicの料金は月額980円(税込)。最大6人までの家族で利用できる「ファミリープラン」も月額1,480円(税込)で用意する。

すべての機能が利用できるプランは3つとも1,000円前後と大きな差はない。AWAとLINE MUSICには機能や利用時間を制限した低価格なプランが用意されており、少ない料金でも楽しめる。

LINE MUSICが矢継ぎ早に機能を強化してきていることからもわかる通り、定額制の音楽配信サービスはどんどん進化している。そこで重要になるのは曲数ではなく、プレイリストの質やレコメンドの精度だろう。AWAは細分化されたプレイリストがウリで、ユーザーインターフェイスも洗練されており、使っていて気持ちがいい。LINE MUSICは音楽をスタンプのように友達に送れるのが魅力だ。プレイリストや前面に押し出している楽曲を見ても、若年層をターゲットにしている印象が強い。ほかの2サービスとはターゲットが明確に異なっており、これはこれでありだと思う。Apple Musicの強みは、利用者がCDから取り込んだ曲やApple MusicにはないiTunesで購入した曲をシームレスに扱えること。「iTunes Match」を利用しているような、ヘビーリスナーにとっては、Apple Musicは魅力的なはずだ。

幸いなことに3つのサービスは無料のトライアル期間中だ。LINE MUSICは8月9日まで無料で使える。AWAは利用開始から90日間、Apple Musicも登録から3か月間無料だ。どのサービスが自分にマッチしているかを見極める時間はたっぷりある。

三浦善弘(編集部)
Writer / Editor
三浦善弘(編集部)
出版社で月刊誌やWebメディアの編集・記者を経験し、2013年にカカクコム入社。「価格.comマガジン」にて、PCやスマートフォン分野を担当。取材歴は20年以上。現在は「価格.comマガジン」全体を統括する。
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