au回線を使った格安SIMサービス「mineo」(マイネオ)を展開するケイ・オプティコムが、9月からNTTドコモ回線を利用した新プラン「ドコモプラン(Dプラン)」を開始した。これによって国内では珍しいマルチキャリア対応のMVNOとなったが、その利点に迫ってみた。
auとNTTドコモという複数の通信キャリアに対応したmineo
mineoは、auのモバイル回線を利用する数少ない格安SIMサービスとして知られる。そのmineoが、2015年9月1日からNTTドコモの4Gおよび3Gのモバイル回線にも対応し、auとNTTドコモの両方の回線を利用できるマルチキャリア対応のMVNOサービスに生まれ変わった。このように複数の通信キャリアに対応する例としては、かつてのウィルコムが、NTTドコモとイー・モバイルに対応していた例などいくつかあるが、スマートフォン時代の格安SIMとしては珍しい試みと言える。
このマルチキャリア化によって、新たに追加されたのがNTTドコモに対応するドコモプランだ。ドコモプランはデータ通信のみの「シングルタイプ」と、音声通話対応の「デュアルタイプ」の2種類が用意されている。料金は以下の表を参考にしてほしいが、シングルタイプは、「auプラン」とドコモプランに価格差はない。デュアルタイプは、ドコモプランのほうが90円高い。パケットの繰越しも可能で、パケットのチャージ料金は、どちらも100MBで150円と共通だ。
なお、SMSについては、auプランでは無料だが、ドコモプランのシングルタイプでは月額120円かかる(デュアルタイプは無料。SMSの送信にはいずれも別途費用が必要)。また、テザリングについてもドコモプランではiPhoneのみの対応という違いがある。
※料金はいずれも税別。
なお、auプランの料金も9月1日より改定され、シングルプランでは、1GBメニューが850円から800円に、3GBコースが980円から900円に値下げされた。デュアルプランも1GBメニューが1460円から1410円に、3GBメニューが1590円から1510円へ、それぞれ値下げされた。
mineoには、割引プランとして、1ユーザーが最大5回線まで利用する場合、それぞれの基本料金を月額50円割引する「複数回線割」と、3親等までの家族を対象に月額50円を割引する「家族割」が用意されている。ドコモプランでもこれらの割引プランはそのまま利用できる。
なお、マルチキャリアではあるものの、auプランとドコモプランでは、それぞれ利用するSIMカードが別である。そのため、mineoのSIMカードをNTTドコモ系とau系の端末で共有はできず、それぞれに対応するSIMカードを発行してもらうことになる。
SIMカードについては、auプランとドコモプランでは別々の物を利用する
マルチキャリア化のメリットを見てみよう。ひとつは、利用できる端末の選択肢が大幅に広がる点だ。NTTドコモのスマートフォンとauのLTE対応スマートフォン(VoLTE対応機を除く)、そしてSIMフリー機まで対応するので、国内で入手できるスマートフォンの大部分が利用できることになる。
もうひとつのメリットとして、家族でauとドコモのスマートフォンを使っているような場合、mineoに一元化できる点が挙げられる。mineoには家族間で余ったパケット容量を融通しあえる「パケットシェア」や、家族に限らずmineoユーザー間で融通できる「パケットギフト」という仕組みがあり、auプランとドコモプランの間でもそれらが利用可能だ。
パケットシェアやパケットギフトは、ユーザーの管理画面から簡単に行える
3つ目のメリットとして、au⇔NTTドコモ回線へ変更した場合、MNP費用は不要で、2,000円の事務手数料だけで済むことだ。通常、通信キャリアを切り替える場合、MNP転出料として2,000円、事務手数料が3,000円、2年縛りなどの契約解除料がプラスαとしてかかるmineoでは、au⇔NTTドコモの乗り換え費用が安く抑えられるのだ。
mineo内でNTTドコモとau間の回線を変更する場合の手続き費用はわずか2,000円。MNP費用や違約金などはないので、費用やタイミングなどの点で利便性が高い(画像はmineoより引用)
一見無敵なように見えるmineoだが、デメリットもいくつかある。ひとつは、auプランの場合、データ通信で利用するのが4G回線だけなので、3Gしか利用できない旧型スマートフォンでは利用できないことだ。auの4Gネットワークは、カバー率で見る限り十分な広さだが、山間部など人口の少ない場所では圏外になる可能性は覚悟したほうがよい。
ふたつ目のデメリットもauプランに限るが、iOS 8〜iOS 8.4.1に対応するiOS機器(「iPhone 5sおよび5c」、「iPhone 6」および「iPhone 6 Plus」など)には今でも限定的にしか対応していない。Android機器についても「au Nano IC Card 04」を使用するVoLTE対応スマートフォンおよびガラホ、タブレットには現状は非対応だ。結果として、auの最新スマホやタブレットの多くがmineoでは利用できない状況にある。
なお、ドコモプランの場合、4GのXiと3GのFOMA両方に対応しており、通信・通話エリアは、NTTドコモや他社のMVNOと同等だ。iPhoneについてもiPhone 6およびiPhone 6 Plusまで利用可能なので、ほかの格安SIMと技術的な条件は同じと見てよい。
また、au回線とNTTドコモ回線の両方に共通しているが、無料通話分がなく、音声通話料金が30秒で20円(国内通話時)と、キャリアと比較すると割高である。mineoに限らず、格安SIMは音声通話をよく使うユーザーには料金面では不向きなサービスであることは、認識しておきたい。
ドコモプランの提供開始を記念して、新規ユーザーを対象に、6か月間にわたり月額基本料金(1GBコース相当800円)が無料になるキャンペーンを実施中。現行のmineoユーザーについては、SIMカード変更手数料が1回分(2,000円)無料になる。キャンペーンは10月31日まで(画像はmineoより引用)