レビュー

AMDのハイエンドGPU「Radeon R9 Fury X」「Radeon R9 Fury」をまとめてチェック

自作PCやPCパワーアップに役立つ情報をお届けする「最新PCパーツラボ」。第55回は、AMDのハイエンドGPUとなる「Radeon R9 Fury X」と「Radeon R9 Fury」を取り上げる。ビデオカードでは初となる広帯域幅のビデオメモリーを採用した、AMDのシングルGPU最上位モデルに位置付けられた「Radeon R9 Fury X」(以下、R9 Fury X)と、その下位モデルとなる「Radeon R9 Fury」(以下、R9 Fury)の実力をチェックしてみた。

リファレンスデザインのRadeon R9 Fury Xビデオカード

リファレンスデザインのRadeon R9 Fury Xビデオカード

ワットパフォーマンスは3倍に! HBMを初めて搭載したGPU

R9 Fury X/Furyはいずれも、開発コードネーム「Fiji」で呼ばれていたAMDの新しいハイエンドGPU。「4Kクラスのゲーミングを快適にプレイできる」をコンセプトに設計されており、前世代のAMDのシングルGPU最上位「Radeon R9 290X」(以下、R9 290X)を上回る性能を実現したモデルだ。

その性能向上に一役かっているのが、ビデオカードで初という、ビデオメモリーに次世代の積層メモリー「HBM(High Bandwidth Memory)」を採用していること。この積層メモリーことHBMとは、High Bandwidthとあるように広帯域幅を実現できるメモリーで、情報を記憶できるDRAMダイをミルフィーユのように垂直に積み重ねた(スタック)構造が特徴。DRAMダイを縦に貫くように信号線を配線するため経路を短くできるほか、データを送受信できるバス幅を大きくとれるというものになっている。Radeon R9 Furyシリーズでは、GPUダイ上に積層メモリーを実装することで、従来315GB/sだった帯域幅を512GB/sへ大幅に拡大している。

さらに、HBMを採用したことで、基板サイズを小さくできるのも大きなポイント。メモリーチップを基板上に実装しなくて済むため、ハイエンドビデオカードながら、基板長はミドルレンジのビデオカードに匹敵する20cm台をキープした。ハイエンドビデオカードでも、小型のミドルタワーケースへ組み込めるようなサイズ感となっているのだ。

もちろん、GPUコアの性能も向上している。GCNアーキテクチャーを採用し、製造プロセスは28nmというところは、前世代のR9 290Xと同じだが、シェーダープロセッサー数はR9 290Xの2816基からR9 Fury Xでは4096基と1.45倍にアップ。GPUのダイサイズも大きくなり、トランジスタ数についても62億から89億へ44%も増えた。1平方ミリあたりのトランジスタ数を求めてみると若干増えており、同じプロセスルールでもさらに密度を高めたものとなっている。

ちなみに、Fury XとFuryの主な仕様をまとめたのが表1だが、このように両者のGPUで大きな違いが、あまりないことがわかる。下位モデルのFuryは、AMDのシングルGPU最上位に位置づけられており、Fury Xのシェーダープロセッサー数やテクスチャユニット数などの一部スペックを落としたモデルとなっている。各GPUの主な仕様は以下のとおり。

ビデオカードの外観をチェック

今回、借用できたのは、リファレンスデザインのRadeon R9 Fury Xビデオカードと、ASUS製のRadeon R9 Furyビデオカード「STRIX-R9FURY-DC3-4G-GAMING」。GPUの性能では大差ないFury XとFuryだが、見た目は大きく異なる。まず、Radeon R9 Fury Xのリファレンスデザインに搭載されているVGAクーラーは、120mmサイズのラジエーターを用いた水冷タイプ。いっぽう、Furyのカードは、基本、各社オリジナルデザインの空冷クーラーを搭載する。ASUS製のRadeon R9 Furyビデオカードでは、3連ファンを装備した大型のオリジナルクーラーが搭載されている。

Radeon R9 Fury X

リファレンスデザインのRadeon R9 Fury Xビデオカード。120mm冷却ファンを1基装備できるラジエーターと比べてみるとわかるとおり、基板長はだいぶ短めに抑えられている

水冷ラジエーターは120mmサイズ。チューブとのジョイント部は取り外しできないような構造だ

水冷ラジエーターは120mmサイズ。チューブとのジョイント部は取り外しできないような構造だ

カードの厚さは2スロット占有型。基板を完全に覆うメタルカバーの表面には、ラバーマットのようなものが装着されている

モニタ出力端子は、HDMI×1、DisplayPort×3。冷却用の水冷チューブは、カード後方から出ている

モニタ出力端子は、HDMI×1、DisplayPort×3。冷却用の水冷チューブは、カード後方から出ている

補助電源コネクター側のカード背面にはいくつかのLEDが用意されている。これはカードの負荷状況に応じて、発光するものとなっている。LED近くにあるDIPスイッチでは、発光色の変更が可能だ

Radeon R9 Fury

小型ファン3基備えたオリジナルクーラーを採用する、ASUS製のRadeon R9 Furyビデオカード

小型ファン3基備えたオリジナルクーラーを採用する、ASUS製のRadeon R9 Furyビデオカード

カードの厚さは2スロット占有型。側面から見える太いヒートパイプが特徴的。Fury Xに比べてスペックがわずかに抑えられているものの、逆に全長は長くなっており、各社ともに強力な空冷クーラーが採用されている

モニタ出力端子は、DisplayPort×3、HDMI×1、DVI×1

モニタ出力端子は、DisplayPort×3、HDMI×1、DVI×1

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