ASUS「TransBook T90Chi T90CHI-3775」
11月中旬に、アップルの「iPad Pro」、マイクロソフト「Surface Pro 4」という、注目モデルが相次いで発売され、注目が高まってきているタブレット端末であるが、価格.comの「タブレットPC(端末)・PDA 」カテゴリーで、同時期に発売され人気爆発しているのは、これらのメジャー製品ではなく、伏兵とも言うべきASUSのWindows 10搭載タブレット「ASUS TransBook T90Chi T90CHI-3775」(以下、TransBook T90Chi)だった。
図1:「タブレットPC(端末)・PDA 」カテゴリーにおける売れ筋ランキング(2015年11月18日現在)
図2:「タブレットPC(端末)・PDA 」カテゴリーにおける売れ筋ランキング推移(過去3か月)
ASUS「TransBook T90Chi」は、Windows 10を搭載しながらも、発売時の価格が3万円前後という破格のプライスをつけた、8.9型タブレットだ。スペック的には、CPUにインテルの「Atom Z3775」を採用するほか、メモリー2GB、ストレージ64GB(eMMC)、8.9型ディスプレイの解像度は1280×800ドットという、ごく標準的なスペック。しかし、デタッチャブル式のキーボードドックが付属し、「Microsoft Office Mobile」がプリインストールされているなど、Windows 10搭載のミニノートとしても使えることと、販売価格の安さが人気を呼び、2015年11月7日の発売以来、爆発的な人気となっている。「価格.comトレンドサーチ」で見ると、現在、「タブレットPC(端末)・PDA 」カテゴリーにおける売れ筋ランキングでは、異例のロングラン販売を続けているGoogleのAndroidタブレット「Nexus 7(2013年モデル)」を退け、堂々の1位となっている(図1、図2)。なお、11月18日現在の最安価格は28,962円(図3)。
図3:ASUS「TransBook T90Chi」の最安価格推移(過去1か月)
図4:人気タブレット製品5モデルのアクセス推移(過去3か月)
図4は、「タブレットPC(端末)・PDA 」カテゴリーにおける人気製品5モデルのアクセス推移を示したものだが、これを見ると、従来から人気のあったGoogle「Nexus 7(2013年モデル)」、ASUS「MeMO Pad 7」、ソニー「Xperia Z4 Tablet」に加えて、本機ASUS「TransBook T90Chi」と、BLUEDOT「BNT-71W」の人気が急激に高まってきているのがわかる。この中で、Windowsタブレットは、「TransBook T90Chi」のみとなる。なお、現在売れ筋ランキング5位のBLUEDOT「BNT-71W」は、Android 5.1を搭載した7型タブレットで、やはり7,980円という破格のプライスが話題を呼んでいる製品だ。このように、この11月は、絶対的なコストパフォーマンスを実現した2つのタブレットが、大きな人気を呼んでいる展開となっている。
図5:Windowsタブレット人気製品4モデルのアクセス推移(過去3か月)
では、話をWindowsタブレットだけに絞って見るとどうなるだろうか。図5は、Windowsタブレットの人気モデル4製品のアクセス推移を示したものだが、これを見ても、「TransBook T90Chi」の人気の上がり方が群を抜いているのがわかるだろう。Windows 10搭載タブレットの本命モデルであるマイクロソフトの「Surface Pro 4(128GBモデル)」もそこそこ人気を高めてきているが、それに比べても倍近い人気である。なお、Windowsタブレットはここへ来て軒並みアクセスが上昇傾向にあるが、これは従来のWindows 8.1搭載タブレットを購入して、Windows 10に無償アップグレードしようという人が増えていることを示唆している。
図6:「TransBook T90Chi」「Surface Pro 4」「iPad Pro」の3機種のアクセス推移(過去3か月)
図7:「TransBook T90Chi」「Surface Pro 4」「iPad Pro」の3機種の注目ランキング推移(過去3か月)
図8:「TransBook T90Chi」「Surface Pro 4」「iPad Pro」の3機種の売れ筋ランキング推移(過去3か月)
なお、本機「TransBook T90Chi」と、マイクロソフト「Surface Pro 4(128GBモデル)」、アップルの「iPad Pro(128GBモデル)」の3機種のアクセス推移を比べると、図6のようになる。マイクロソフト「Surface Pro 4」とアップルの「iPad Pro」の注目度は同じくらいだが、すでに注目度はピーク入りしつつあり、今後伸びるかどうかはわからない。しかしながら、「TransBook T90Chi」のほうはいまだアクセスが伸びており、この人気はしばらく続きそうだ。なお、この3機種の注目ランキングおよび売れ筋ランキングの順位を見ると、注目ランキングには3機種ともベスト5に入っているものの、売れ筋ランキングでは、本機が1位、「Surface Pro 4」が8位、「iPad Pro」が29位と、大きな隔たりがある(図7、図8)。もっとも「iPad Pro」の場合、一般のネット通販での流通がほとんどないため、正しい比較にはならないことは付け加えておこう。
図9:ASUS「TransBook T90Chi」のユーザー評価
本機「TransBook T90Chi」を購入した人のユーザーレビューを見ると、総合満足度は4.51(4名が評価)となっており、そこそこ満足度は高い。ただし、その内訳を見ると、かなり極端な評価結果になっており、デザイン、携帯性、バッテリの項目は評価が高いが、処理速度、入力機能、液晶、付属ソフトの各項目では、平均を下回る低めの評価となっている(図9)。
レビューの内容を読んでも、「eMMCをIntelのZシリーズCPUを使ってる時点で期待しないほうがいい。」、「ウィンドウを開く・閉じるという日常的な動作にも数秒〜数十秒かかる。電子書籍アプリを開こうものなら、閲覧までに数分待たされることもザラ。」など、処理性能などについては厳しめの意見もある。ただし、本機購入者の多くが、従来のネットブックなどからの乗り換えであるらしく、「テキスト書いたり、オフィスソフト使ったり程度なので十分な速度です。windows10が軽量という事もあって快適と言えます。」といった意見もある。
逆に携帯性については、「素晴らしく軽量です。カバンの中にPCが入っているかどうかハッキリわかるラインと言い換えても良いです。」、「全体の作りとしては大いに満足で、持ち歩き用のサブにはピッタリと言えます。」など、評価は高め。そのほか、「純正キーボードはかなり作りが良い。タブレット部としっかりくっついているので安定感があるし、キーピッチも窮屈さは感じない。超小型ノートPC状態。」のように、キーボードドックの出来のよさを評価する声や、「価格の割に安っぽさが無く、液晶も黄ばんだり青ずんだりせずに良い発色をしています。」のように、液晶画面をはじめとした作りのよさを評価する声もあり、総合的には価格面も含めて、満足感の高い製品となっているようだ。
図10:「タブレットPC(端末)・PDA 」カテゴリーにおけるメーカー別アクセス推移(過去6か月)
実は、価格.comの「タブレットPC(端末)・PDA 」カテゴリーにおけるASUSの人気はかなり根強い。図10は、「タブレットPC(端末)・PDA 」カテゴリーにおけるメーカー別アクセス推移だが、他のメーカーをかなり突き放して、ASUSの人気が突出して続いていることがわかる。2位は「iPad」を擁するアップル、3位は「Surface」を擁するマイクロソフトとなっているが、マイクロソフトはつい先頃までは4位という状況だった。11月に発売された「Surface Pro 4」によって、その人気が高まっていると言えそうだが、それにしても、WindowsタブレットもAndroidタブレットも両方手がけ、破格のプライスのモデルを多数市場に投入してくるASUSの人気は当面揺らぎそうにない。