米アップルは2016年6月13日(現地時間)、開発者向け会議「Worldwide Developers Conference 2016」(WWDC2016)を米国・サンフランシスコで開催し、iPhone/iPad向けの「iOS」、Apple Watch向けの「watchOS」、Mac向けの「macOS」、Apple TV向けの「tvOS」の最新バージョンを発表した。いずれも同日から開発者向けに提供を開始する。パブリックベータ版を7月に公開し、フィードバックを反映した正式版を今秋に提供する予定だ。
iPhone/iPad向けのiOSは、「iOS 10」となり、多くの新機能が盛り込まれる。なかでも注目なのは音声アシスタント機能「Siri」のAPIの公開と「メッセージ」アプリの強化だ。音声でiPhoneを操作できるSiriは、これまでアップル純正のアプリでしか利用できなかったが、APIが公開されたことで、アプリ開発者は自分たちのアプリにSiriの機能を組み込むことができるようになる。基調講演では、中国・テンセントのメッセンジャーアプリ「WeChat」でメッセージを送ったり、配車サービス「Uber」でタクシーを呼んだりするデモが披露された。
iOS 10
メッセージアプリは、「LINE」や「Facebook Messenger」など他社アプリに対抗すべく、より多機能なアプリに生まれ変わる。たとえば、URLを送る場合、これまでは単なるリンクだけだったが、iOS 10では写真やタイトルなどを取得し、ページの内容が直感的にわかるようになる。また、日本発の絵文字も、3倍大きく表示できるようになり、文字が少しずつ大きくなるなどのエフェクトをかけられるようになる。
さまざまなエフェクトが追加されるメッセージアプリ。絵文字を大きく表示する機能も搭載される
メッセージアプリ内に風船を飛ばすことも可能
このほか、「写真」アプリには、日付や場所などをもとにして、自動で写真をまとめられる「Memories」という新機能が追加される。Macの旧写真管理アプリ「iPhoto」に搭載された「イベント」に近い機能と言えそうだ。Memoriesにまとめられた写真や動画は、スライドショーとして見ることもできる。昨年のWWDC2015で発表された音楽の定額配信サービス「Apple Music」は、よりシンプルで直感的なユーザーインターフェイスに変更。再生中の曲の歌詞表示にも対応する。
iOS 10に対応する機種は、iPhone 5、iPhone 5c、iPhone 5s、iPhone 6、iPhone 6 Plus、iPhone 6s、iPhone 6s Plus、iPod touch(第6世代以降)、iPad(第4世代)、iPad Air、iPad Air 2、iPad mini 2、iPad mini 3、iPad mini 4。
写真アプリでは、写っている人、場所などを解析して自動で分類するMemoriesという新機能が搭載される
Apple Watch向けのwatchOSは、「watchOS 3」となり、パフォーマンスが大幅にアップする予定だ。よく利用するアプリをメモリーに常駐させることで、起動を高速化。バックグラウンドで情報のアップデートも実行できるようになる。Dockやコントロールセンターなど、iPhoneに近い機能も実装される。
watchOS 3
また、手書きでメッセージに返信できるようになり、音声で返信しにくいシーンでも使いやすくなる。日本語に対応するかどうかは不明だが、基調講演では中国語で返信する様子が披露されたので、日本語に対応する可能性は高い。
このほか、新しいウォッチフェイスとして、ミニーマウスを追加。サイドボタンを長押しすると緊急電話(米国の911など)につながる機能も追加される。車いすを利用する人向けの機能や、深呼吸を促す機能なども盛り込まれる予定だ。
手書きで文字を入力してメッセージに返信できる
ウォッチフェイスにはミニーマウスなどが追加される
Mac向けOSは、ほかのOSと名称ルールを統一し、「OS X」という名称からmacOSという名称に変更。macOSへの改名後の最初のバージョンは「Sierra」(カリフォルニア州東部の山脈の名前)。最大の強化ポイントは、Siriのサポートだ。音声で写真を探し、その結果から直接、その写真を作成中のドキュメントなどに貼り付けられる。
macOS Sierra
Apple WatchやiPhoneとの連携機能も強化される。Apple Watchを身に着けた状態でMacを開くと自動的にロックが解除され、パスワード入力が不要な「Auto Unlock」を搭載。iOSデバイスとクリップボードが共通化され、iOSデバイスでコピーしたものをMac上で貼り付けるといったことが可能となる。テキストだけでなく、写真や動画もコピー可能だ。
また、国内では利用できないが、同社の決済サービス「Apple Pay」をMac上でも利用できるようになる。対応サイトで商品を購入した場合、iPhoneのApple Payを呼び出し、指紋認証で決済できる。
対応機種はLate 2009以降のMacBookとiMacおよび2010年以降のMacBook Air MacBook Pro Mac mini、Mac Pro。
iPhone経由でApple Payの利用が可能に
Apple TV用のtvOSの最新バージョンでは、動画配信サービスを横断してコンテンツの検索が可能となり、見たいコンテンツを探しやすくなる。また、iPhoneなどのログオン状態をチェックし、各種動画配信サービスへのシングルサインオンに対応。いちいちApple TV上でログインする必要がなくなるので、複数の動画配信サービスを利用しているユーザーにとっては、便利な機能と言えそうだ。
また、iOS向けのリモコンアプリも提供する。専用リモコンの「Siri Remote」と同じようにSiriで操作できるほか、文字入力も可能。ゲームコントローラーとしても利用できる。
tvOS