NTTドコモは2016年9月5日に、東日本地区のネットワークを管理する、東京・品川のネットワークオペレーションセンターの記者向け見学会を実施した。災害時にもダウンせずに動き続ける、携帯電話やスマートフォンの通信インフラはどのような仕組みで支えられているのか、その現場を取材した。
災害時にこそ活用したい携帯電話やスマートフォン。それを実現するためのNTTドコモの取り組みを取材した
2011年に起こった東日本大震災では、地震直後に基地局が破壊され、その後の発電所などの被災などによって電力が遮断されるなど、NTTドコモの通信インフラにも大きな傷跡を残した。そんな東日本大震災の教訓を生かし、NTTドコモでは新たな災害対策を定めた。
そんな災害対策のひとつが、重要施設やネットワークのさらなる分散化である。今回取材した「ネットワークオペレーションセンター」は、大阪にあるもうひとつの「西日本オペレーションセンター」とともに、NTTドコモの東西のネットワークやサービスを監視している。この東西のネットワークセンターは震災前から活用されていたが、どちらかの施設がダウンした場合には、即座にもう片方がバックアップとして機能するように、体制が見直されている。また、被災時の電源確保も、アクセスが困難になりやすい離島を中心に徐々に強化がなされている。
また、被災直後に顕著に起こる、通信が集中して不安定になる輻輳(ふくそう)についても、基地局に複数のネットワーク装置を設置し、冗長性を持たせることで、以前よりも安定した通信が行えるようになっているという。
東日本大震災で、被災地近くにあったバックボーンの通信ケーブルが寸断される被害があった。幸いバックアップ回線が機能した事なきを得たが、バックアップ回線をさらにバックアップさせるため、三重化された
ネットワークオペレーションセンターは、大阪にある西日本オペレーションセンターとともに、基地局や交換機などを24時間365日体制で監視している
壁には、60インチのディスプレイが縦に4個、横に9個並んでおり、ネットワークの障害状況などがリアルタイムで表示される
NHKのテレビ放送や、気象情報、地震情報も表示され、情報源として活用されていた
NTTドコモでは、全国で約30万もの基地局を運用している。基地局は定期的に法定点検が行われているが、それらは画面上に障害として表示される。1日約400か所の基地局が停止するので、画面上には多くの障害情報として表示されていた。また、点検による障害のほかに、自然故障が1日に約100件発生するが、その多くはリモートアクセスで対処可能。場合によっては現地のスタッフに連絡し、ハードウェアの交換や修理などの措置が取られる
ネットワークとともに、メールやSMSといったサービスの状態も監視されている。文字通りNTTドコモのネットワークやサービスが一元的に管理されているのだ
なお、2016年4月に起こった熊本地震に際し、NTTドコモのネットワークには、音声通話では通常の36倍、パケット通信では5倍もの通信負荷が発生した。一部の基地局が破壊されて使用不能になったものの、全体として見ると音声通話やパケット通信に通信規制がかかることはなかった。熊本地震については、NTTドコモの携帯電話やスマートフォンを使いたくても使えない、といった事態は最小限に抑えられたという。
ネットワークオペレーションセンターのある「NTTドコモ品川ビル」の地下には、4560kWのガスタービンが5基も設置されており、一般家庭で約11,000世帯分の電力が供給可能となっている。建物そのものの耐久性も高く、372基もの耐震ダンパーが、震度7の地震を押さえ込むという。また、東京湾のすぐ近くという立地に備えた防潮板や、太陽光発電装置も備えられており、考えられる限りの耐久性が備えられていた。
ネットワークオペレーションセンターのあるNTTドコモ品川ビルは、震度7に耐える免震構造や、近くにある東京湾からの津波や高波に備えた防潮板などで、災害に耐えられるようになっている
地下に設置されるガスタービン発電機。廃熱を利用したコジェネレーションシステムとなっており、発電とともにビル内の空調用の熱源としても使われている
平常時では、ガスタービンは2基ずつのローテーションで運用されており、日常的に活用されている
燃料タンクの一部、このほかに、地下に19万リットルの軽油が備蓄されており、20〜30時間分の燃料が確保されている。スペースの都合でこれ以上の備蓄は不可能だが、燃料の供給体制までセットで防災対策が構築されている
こちらは、被災地に配布される最新の無料充電装置。コネクターは、Lightningやmicro USBに加えて、FOMA用やUSB Type-C用まで用意されており、最新のものから旧式まで、さまざまな携帯電話やスマートフォンに対応する