記録的な暑さや大雨・暴風といった異常気象など、地球温暖化の影響は私たちの暮らしに大きな影響を及ぼし始めています。その原因のひとつと言われる二酸化炭素の排出量は、全体の約15%が家庭からの排出分で、そのうちの約65%は家電や給湯などの電力使用によるもの。地球温暖化対策は遠い国や未来のことではなく、自分ごととして考えることが大切です。そこでまずは、家庭でできる「節電」について考えてみましょう。
家庭内ではさまざまな電気製品が電力を消費していますが、そのなかでも冷蔵庫がいちばんの大食らい。365日常に稼働し続けるため、最も多くの電力を消費しています。ただし、その分、節電効果も期待できるということ。ここでは、効率的に省エネできる冷蔵庫の節電術を紹介します。
冷蔵庫の節電ポイントは、庫内を冷やすために余分なエネルギーがかからないようにすることです。具体的には、外部からの熱が冷蔵庫内に入るのを防ぐこと。そして、冷蔵庫内の冷気の循環をよくすることです。また、設定温度の見直しも効果的。毎日使うものだからこそ見落としがちなポイントをしっかりとチェックしていきましょう。
冷蔵室に食品を詰め込みすぎると冷気の流れが妨げられ、庫内が均一に冷えなくなります。その結果、冷却力が低下し、余分な電力を消費します。食品は冷蔵庫の奥の壁が見える程度に、余裕をもって入れましょう。ただし冷凍室は、すき間なく食品を詰めてもかまいません。
■こんなに省エネ!(※1)
冷蔵室に食品を詰め込んだ場合と、その量を半分にした場合の比較
省エネ効果:43.84kWh
CO2削減量:21.4kg
家計のお得:年間で約1,360円の節約
※1:省エネ数値は年間
参考:経済産業省資源エネルギー庁「家庭でできる省エネ」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/howto/kitchen/index.html#1
冷蔵庫内の温度を控えめに設定すると、消費電力が小さくなります。冬は庫内の設定温度を「中」や「弱」にするなど、季節によって温度を調整しましょう。
■こんなに省エネ!(※1)
設定温度を「強」から「中」にした場合(周囲温度22度)
省エネ効果:61.72kWh
CO2削減量:30.1kg
電気代:約1,910円の節約
※1:省エネ数値は年間
参考:経済産業省資源エネルギー庁「家庭でできる省エネ」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/howto/kitchen/index.html#1
冷蔵庫の周囲にほとんどすき間がない状態で設置すると、放熱ができず余分な電力を消費します。一般的に、冷蔵庫の周囲には最低でも左右1cm程度、上部5〜30cm程度のすき間が必要です。直射日光の当たる場所は避け、ガスコンロなどの熱源から遠いほうがより省エネになります。また、冷蔵庫の上に物を置くと放熱のために必要なスペースが確保できず、庫内が冷えにくくなって余分な電力を消費します。最近の冷蔵庫は上面放熱タイプが主流になっているため、冷蔵庫の上に物を置くことは避けましょう。
■こんなに省エネ!(※1)
冷蔵庫の上と両側が壁に接している場合と片側が壁に接している場合の比較
省エネ効果:45.08kWh
CO2削減量:22.0kg
電気代:約1,400円の節約
※1:省エネ数値は年間
参考:経済産業省資源エネルギー庁「家庭でできる省エネ」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/howto/kitchen/index.html#1
ドアの開閉頻度が高かったり、長時間開けっぱなしにしたりすると、冷気が逃げて消費電力が大きくなります。食品の出し入れはなるべくまとめて素早く行いましょう。また、庫内を整理し、ひんぱんに出し入れする食品は手前に置くなど、開閉回数や開閉時間を減らす工夫をしておくとよいでしょう。
■こんなに省エネ!(※1)
旧JIS開閉試験(※2)の開閉を行った場合と、その2倍の回数を行った場合の比較
省エネ効果:10.40kWh
CO2削減量:5.1kg
電気代:年間で約320円の節約
※2:旧JIS開閉試験:冷蔵庫は12分ごとに25回、冷凍庫は40分ごとに8回で、開放時間はいずれも10秒
■こんなに省エネ!(※1)
扉を開けている時間が20秒間の場合と、10秒間の場合の比較
省エネ効果:6.10kWh
CO2削減量:3.0kg
電気代:年間で約190円の節約
*省エネ数値は年間
※1:省エネ数値は年間
参考:経済産業省資源エネルギー庁「家庭でできる省エネ」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/howto/kitchen/index.html#1
しっかりと凍っている食材や冷凍食品は、お互いを冷やし合うため、すき間なく詰めたほうが省エネになります。その際、下から積み重ねると下の物を取り出すときに時間がかかり、冷気が逃げてしまうため、立てて収納するとよいでしょう。食品がひと目でわかり、さっと取り出せます。
調理直後の熱いものをそのまま冷蔵庫に入れてしまうと、庫内の温度が上昇し、余分な冷却運転が必要になります。周りの食品の温度も上がってしまうことがあるため、作り置きした料理などは冷ましてから入れるようにしましょう。
※熱いものを入れても周りの食品に影響を与えにくい製品もあります。
冷蔵庫のパッキンが傷んでいると、そのすき間から冷気が漏れて電気のむだ使いになります。たとえば、名刺やメモ用紙などを挟んでみて、ずり落ちる場合はパッキンを取り替えましょう。
冷蔵庫背面や底面、天面の放熱部周辺にホコリがたまると放熱がうまくいかず、消費電力が増えます。最低でも年に1回は見えない場所にも掃除機をかけるなど手入れをしましょう。
省エネ技術の進歩により、この10年で家電の省エネ性能は飛躍的に向上しています。特に省エネ化が進んだのが冷蔵庫。約10年前の冷蔵庫と比較すると、最新の冷蔵庫は消費電力が約39〜46%削減されています。年間電気代に換算すると約5,300〜7,160円もお得に(※3)。10年近く冷蔵庫を買い替えていない人は、最新の冷蔵庫に買い替えるだけで省エネ効果は抜群。電気代が高騰している今こそ、買い替え時です。
※3:一般財団法人家電製品協会「省エネ家電deスマートライフ」
https://shouene-kaden2.net/learn/eco_tec/freezer.html
冷蔵庫を購入する際には、家庭に合った冷蔵庫の容量を確認しましょう。ポイントは、家族の人数です。一般的に用いられる計算式は「70L×家族の人数+常備用120〜170L+予備100L」。ひとり暮らしや夫婦、自炊をあまりしない方、食べ盛りのお子さんがいる家庭など、家族構成によって必要な容量は変わります。
また、容量と電力消費量は必ずしも比例するわけではありません。容量が大きい冷蔵庫はインバータ制御や真空断熱材を搭載した高性能な製品が多く、省エネ性能や断熱効果が高くなっています。そのため、容量の小さい冷蔵庫よりも大きい冷蔵庫のほうが、電気代が安くなる場合もあります。
「統一省エネラベル」は、製品の省エネルギー性能をわかりやすくラベルで表示したものです。電気料金の目安も表示されているため、製品を比較検討する際はしっかりとチェックしましょう。ここでは、特に注目したいポイントを3つ紹介します。
1.多段階評価点
市場における製品の省エネ性能を、高い順に5.0〜1.0までの41段階で表示しています。★は多段階評価点に応じて表示されます。
2.省エネ基準達成率
省エネ基準をどの程度達成しているかを%で表示しています。電気冷蔵庫は、冷却方式、定格内容積等により分けられた区分ごとに、目標基準値算定式が設定されています。
3.年間の目安電気料金
電気冷蔵庫の平均的な使用実態等(周囲温度32度および16度、冷蔵室および冷凍室への食品の代替となる水の投入等)を基準に算出した年間消費電力量(kWh/年)に27(円/kWh)を乗じたものです。
「統一省エネルギーラベル」に5つ星が付いている家電は価格が高い傾向にありますが、省エネ性能が高いため月々の電気代を抑えられ、トータルコストで考えるとお得になることもあります。環境省のデータによると、2018年の451〜500Lクラスの冷蔵庫(5つ星製品と2つ星製品)を比べると、5つ星の製品のほうが年間の電気代が約4,200円もお得になります。また、このクラスの星別購入比率を見ると、5つ星の製品が最も多くの消費者に選ばれていて、4割以上の方が購入しています(※4)。物価上昇や電気代の高騰などの影響により、消費者の電気代や節電に対する意識が高まってきていると言えるでしょう。
※4:環境省「省エネ家電買換え促進リーフレット」
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/lp2019/
どんなに魅力的な冷蔵庫でも設置できなければ意味がありません。製品を購入する際には、設置予定場所の幅、高さ、奥行きを必ず確認しましょう。また、冷蔵庫を設置する場合には、最低でも左右1cm程度の放熱スペースが必要です。このスペースがないと庫内が冷えにくくなり、余分な電力を消費します。また、ドアの開き方に合わせて設置スペースに余裕を持たせておくと、より快適です。メーカーのホームページやカタログには、据え付け必要寸法や、放熱必要寸法、ドアを開けた際の奥行き寸法などが記載されているので、事前にしっかりと確認しておきましょう。
省エネや節電に取り組むことは、地球温暖化対策に取り組むことでもあります。どちらにも共通する大切なことは、無理なく習慣化すること。はじめから身構えてしまうと、なかなかうまくいきません。そこで、今回紹介したようなちょっとした節電テクニックを実践することから始めてみてください。日々の節電がおっくうなら、冷蔵庫を最新のものに買い替えるだけでもかまいません。ストイックになりすぎず、楽しみながら「節電」に取り組んでみてください。
注:本ページ内の電気代は、令和4年7月公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会 新電力料金目安単価(税込)の31円/kWhから算出しています。