何となく知ってはいるものの、実はよくわかっていない家電の機能はありませんか? この連載では家電ライター歴10年以上の筆者が実際に体験して「これはいい!」と思った、または興味を引かれた機能や構造を超簡単に説明。その機能や構造を搭載している製品も紹介するので、家電選びに役立つはずです。
今回は、パナソニックの除湿機に採用された新しい除湿方式「エコ・ハイブリッド式」について紹介します。
部屋全体の除湿や衣類乾燥できる除湿機に採用されている除湿方式と言えば、「コンプレッサー式」「デシカント式」「ハイブリッド式」の3つが代表的です。
●コンプレッサー式
コンプレッサーでキンキンに冷やした冷却器で空気中の湿気を結露させ、水滴をタンクに溜めて除湿。エアコンの除湿運転のような仕組みなので消費電力は小さいものの、室温が低いと除湿能力が低下します。
●デシカント式
乾燥剤で吸収した湿気をヒーターで蒸発させ、その水蒸気を常温の空気で冷やし、水滴にして除湿。1年中、除湿性能は変わりませんが、ヒーターを使うため消費電力が大きく、室温も大きく上昇します。
●ハイブリッド式
コンプレッサー式とデシカント式を組み合わせた構造なので、空気中の湿気を冷却器で結露させるとともに、乾燥剤でも吸収します。冷却器の除湿能力が低下する時期には、乾燥剤で吸収するので通年で安定した除湿が可能。室温が低いときはヒーターを使いますが、室温が高いときにはヒーターを使わないので電気代は抑えられます。
ハイブリッド式でもパナソニックの構造は、ほかとちょっと違います。詳しくは、「除湿機の「ハイブリッド方式」にこんな違いがあったなんて! パナソニックは“熱”を再利用して節電」の記事でチェックしてみて!
この3つの除湿方式とは異なる、第4の除湿方式として登場したのが「エコ・ハイブリッド式」です。
「エコ・ハイブリッド」ということは、コンプレッサー式とデシカント式を組み合わせた既存の「ハイブリッド式」をエコにしたもの? と思った人もいるかもしれませんが、まったくの別物です。そもそも「ハイブリッド」とは、複数の方式を組み合わせたものやコトなどを指す言葉。「エコ・ハイブリッド」は、コンプレッサー式と空冷除湿式を組み合わせた冷却機構で除湿します。
既存のハイブリッド式とエコ・ハイブリッド式の構造は、ざっくりこんな感じ
コンプレッサーで冷却器と放熱器を冷やしたり、熱くしたりするコンプレッサー式の構造は同じですが、冷却器と放熱器の間にあるものが違います。既存のハイブリッド式には乾燥剤とヒーターがありますが、エコ・ハイブリッドは空冷式熱交換器を搭載。ヒーターを使わないから消費電力が抑えられ、“エコ”ってワケですね!
しかし、ヒーターを使わないことだけが、エコ・ハイブリッド式の“エコ”ではありません! エコ・ハイブリッド式で除湿する流れをチェックしながら、もうひとつの“エコ”な部分を見ていきましょう。
除湿機本体内に吸い込んだ湿った空気をキンキンに冷えた冷却器で結露させ、水にして除湿します。これは、コンプレッサー式と同じ。違うのは、風路が2つあること。冷却器を通過する「メイン風路」とは別に、直接、空冷式熱交換器に向かう「サブ風路」があります。
コンプレッサー式の場合、冷却器で湿気を取り除いた冷たい乾いた風は、放熱器で温められて部屋に放出するだけですが、エコ・ハイブリッドは、その“ただ捨てていた冷たさ”を使って除湿します。とはいえ、冷却器を通過した冷たい乾いた風を再除湿するわけではありません。サブ風路から取り込んだジメジメとした室温の空気が、冷却器を通過した冷たい風と熱交換することで冷やされて結露し、水になって除湿されます。これまでロスしていた冷たい空気を有効的に使用。これもエコですよね! この2つの冷却機構を使うことで、コンプレッサー式よりも高い除湿力を発揮します。
手前にある青い金属のパーツが冷却器、奥にある白いパーツが空冷式熱交換器。空冷式熱交換器の部分で、サブ風路から吸い込んだジメジメした部屋の空気を、冷却器を通過して冷たくなった風で結露させます
さらに、エコ・ハイブリッドには「バイパス風路」という空気の通り道があるのもポイント。室温に応じて、この風路を閉じ開きすることで、室温が高い時期の除湿の効率を高め、室温が低い時期の除湿能力の低下を低減します。
除湿機の冷却器と放熱器の関係は、エアコン冷房運転時の室内機と室外機の関係と似ています。真夏に室外機が熱くなりすぎるとエアコンから冷たい風が出にくくなるのと同じように、除湿機も放熱器が熱くなりすぎると冷却器が冷えにくくなります。そのため、エコ・ハイブリッド式では、室温が高いときはバイパス風路をオープン。バイパス風路から取り込んだ室内の空気を熱交換器に当て、熱を外へ逃がすことで冷却器が冷えやすくなり、除湿量がアップ。さらに、冷却器を通過した風の温度も低くなるため、空冷式熱交換器での除湿量もアップします。
では、室温が低いときはどうでしょう。なぜ、バイパス風路からの空気を冷却器に送るのでしょうか。それは、冷却器が凍るのを防ぐためです!
寒い時期にエアコンの暖房運転が「霜取り運転」で止まることがありますが、それと同じことがコンプレッサーを使った除湿機では起こります。これは、コンプレッサー式はもちろん、ハイブリッド式、そしてエコ・ハイブリッド式でも同様。一定以下の低い室温になると、冷却器に霜が付くため、多くの場合、除湿が一時停止します。室温が低いと冷却器との温度差が小さくなり、結露する量が少なくなることが、「コンプレッサー式は冬場に弱い」と言われる理由ですが、冷却器に霜が付き、除湿できなくなるのも原因のひとつ。
エコ・ハイブリッド式は、室温が低いときにバイパス風路から取り込んだ部屋の空気を冷却器に送ることで風量を増やし、冷却器に霜を付きにくくします。もし、冷却器の霜取り運転が必要になっても空冷除湿で除湿を続けているので、一般的なコンプレッサーに比べ、冬場にも高い除湿が期待できます。
今回紹介したエコ・ハイブリッド式を採用した除湿機は「F-YEX120B」のみ。パナソニックのハイブリッド式の従来モデル「F-YHVX120」と比べ、消費電力は約1/3という省エネ(※1)を実現しています。
定格除湿能力(※2)は(50Hz,60Hz)は10.5L/日,12.5L/日で、消費電力は除湿(自動)が205W(60Hz)、衣類乾燥(標準)が225W(60Hz)です
エコ・ハイブリッド式は、冷却器の凍結を防ぐなどコンプレッサー式の弱点を減らす仕組みを採用していますが、室温が低いときの除湿性能は、乾燥剤(デシカント)がない分、既存のハイブリッド式のほうが上。その半面、ヒーターを使わないので、節電を重視するならエコ・ハイブリッド式に軍配があがります。パナソニックの現行モデルには、ハイブリッド式も2機種あるので、用途や使用する場所・時期、自分が何を優先するかを考えて選びましょう。
ハイブリッド式の定格除湿能力(※2)は、パワフルモデル「F-YHX200B」が15L/日,17L/日(50Hz,60Hz)、コンパクトモデル「F-YHX90B」が6L/日,6.5L/日(50Hz,60Hz)です。エコ・ハイブリッドは、本体サイズや除湿能力が2機種のハイブリッド式の中間。冬場でも、リビングで部屋干しなど、暖房が効いた部屋で使用するならエコ・ハイブリッド式を選んでもいいかも
エコ・ハイブリッド式「F-YEX120B」のサイズは370(幅)×225(奧行)×583(高さ)mm。ハイブリッド式のパワフルモデル「F-YHX200B」と同様に左右で異なるスピードでスイングし、洗濯物と洗濯物の間に風を届ける「ツインルーバー」を搭載。衣類乾燥の時間(目安)は標準モードで90分です
「F-YEX120B」はパナソニックの除湿機の中で唯一、市販のホース(内径15mm)を接続して排水する「連続排水」に対応
※ホースは別途購入
(※1)「F-YEX120B」とパナソニックの従来品「F-YHVX120」における消費電力の比較(JIS基準による)。ただし乾燥時間は長くなります。*
*〈除湿性能〉JIS基準による除湿量12.5L/日の消費電力、F-YEX120B(225W)と従来品「F-YHVX120」(715W)との比較。〈衣類乾燥性能〉JEMA自主基準[JEMA-HD090:2017](60Hz20度・衣類量約2kg)における消費電力量と乾燥時間、「F-YEX120B」(312Wh・約90分)と従来品「F-YHVX120」(885Wh・約75分)との比較。なお、実使用時の乾燥時間は、設置環境や衣類の種類・量・干し方により異なります。
(※2)除湿・強モード時。室温27度、相対湿度60%を維持したときの1日あたりの除湿量。