家電選びでは、性能や機能だけでなくデザインも重要なポイント。性能や機能がすぐれていても、外観はもちろん、細かい部分のデザインにピンとこないと購入する気にならない筆者が、「これは!」と思った家電を紹介します。
今回目に留まったのは、シャープ「プラズマクラスターサーキュレーター PK-18S01」です。
部屋の空気を循環させたり、部屋干しの洗濯物を乾かす「衣類乾燥」に使用したり、1年中活躍するサーキュレーター。利用する場所もリビングから個室、サニタリールームなど家中いろいろなところに設置されます。特に、生活空間に置く場合、何かと目に入ってくるもの。そのため、機能や性能はもちろんですが、違和感なく、空間と調和するデザインであることも筆者にとってはきわめて重要です。
そんな中、筆者の目に留まったのが、2024年4月に発売された、シャープ「プラズマクラスターサーキュレーター PK-18S01」(以下、「PK-18S01」)。フクロウの翼を応用した「ネイチャーウイング」を採用し、パワフルな送風力と静音性を両立させるという離れ業をやってくれた製品ですが、デザイン性も秀逸。
全体的な造形は、丸みを帯びたやわらかなフォルムで、主張しすぎず、どの空間においても自然と溶け込みます。さらに、ユニークなのが、送風部が宙に浮いたように見える特徴的な設計。操作部や電源部である台座と送風部の間を2本のアームでつなぐことで、軽やかに見えるように仕上げています。
また、よく見ると、台座は上から下にかけて少し絞られており、スッキリと美しい上品なシルエット。両サイドから伸びるアームも直線ではなく、逆“ハ”の字に伸び、真ん中で逆“く”の字のように折れ、送風部とつながった構造です。この台座から送風部にかけてのなだらかなラインが、とても優美で洗練されています。デザイン担当者によると、このデザインは全体的なボリューム感を抑えるために計算したものだそう。
そして、アームと台座のつなぎ目部分のデザインも特徴的。上から突き刺すようにつなぐことで自然になじませつつ、華奢なアームでありながらも弱々しさを感じさせないように見せる機能美と言える部分でもあります。
確かに、「PK-18S01」はスラっとしたデザインながらも、安っぽさやすぐ壊れそうな印象はありません。サーキュレーターとしては決して安くはありませんが、こうした計算つくされた設計により、高級感がしっかりと表現されていると言えるのでしょう。
初めて目にした際にもうひとつ目に留まったのが、単純な放射状ではない、送風部の前ガードの格子の個性的なデザインです。デザイン担当者によると、ネイチャーウイングを採用した独自の特徴を持つ高性能なサーキュレーターであることを表現するために、高品位な時計の文字盤などを参考にデザインしたそう。
後ろガードの格子も同様。円弧の形状やピッチ(間隔)を調整し、送風へのこだわりを表現しています。
そして、遠目で見ている分にはわからない前ガードと後ろガードの中央部に、樹脂に細かい凹凸や切り込みを入れる「ローレット加工」を施しているのもこだわりです。こうした部分は、コストを抑えるためなおざりにされることが多いですが、チープな印象を与えないように加工したそう。
前ガードの中央にローレット加工でスピン状の模様が描かれています
後ろガードの中央を横断するように配置されたパーツにも、ローレット加工で細かい線が刻まれています
ほかのサーキュレーターと比べたときに、どこか品位を感じるのは、こうした何気ない部分にまで細部に至りこだわったデザインに由来しているからだと思います。
「PK-18S01」は工具不要で、前ガードと後ろガード、羽根を取り外して水洗いできます。その後、前ガードと後ろガードを取り付けるときに目にする装着位置の目印が、主張しないのも「おっ!」と思ったポイント。大きめのマークや文字を記したほうがわかりやすいかもしれませんが、使いづらさは感じません。細かい部分ですが、デザインの統一感が損なわない工夫に感心しました
「PK-18S01」は、ファブリック調のデザインを採用しているのも特徴のひとつ。送風部や台座の外側を布目調に加工することで、やわらかな印象に仕上げています。
加工はプリントではなく、レーザーで金型に特殊な加工を施してパターンを彫り込み、その模様を樹脂に転写しています。高品位な印象に仕上げるために家電や自動車の内装に施されることがよくあるシボ加工という方法ですが、彫り込んでいる模様がポイント。単調な凹凸のザラザラとしたシボ(皺)ではなく、独自の模様(ファブリック調パターン)を彫り込んでいるのです。一般的なシボ加工は皺模様なので規則性はありませんが、「PK-18S01」の模様は品位や風合いを感じられるパターンを模索し、規則性のあるデザインにしたそう。
全体的にプラスチック感が少なく、すべての加工が樹脂の品位を高めることにつながっていることを感じます
なお、塗装レスなので、リサイクル時にもシートを剥がす必要はありません。デザイン性だけでなく、環境負荷も考慮しています。
白物家電に分類されるサーキュレーターは、ひと昔前まではカラーは白というのが鉄板でしたが、近年、消費者の家電デザインに対する意識が高まるにつれ、黒をはじめ、さまざまなカラーが出てきました。
「PK-18S01」は、リビングや小部屋にグレー基調の落ち着いた空間が多く見受けられたことを受け、グレーを基調としたトーン違いの2色を用意。白でも黒でもなく、あえて中間色のグレーを選び、ニュアンスを変えた2色としたのが、“目の付けどころがシャープ”って感じがします。
左がアッシュブラック、右がライトグレー
ライトグレーは白に近いものの真っ白ではなく、清潔感があり、アッシュブラックは黒寄りではあるもののトーンを下げたカラー。どちらも落ち着きがあり、インテリアに調和しやすい色が採用されているのがとても秀逸です。