皆さん、防災対策はしていますか? 筆者は水や非常食、簡易トイレキットなどを用意していますが、今年は本格的な夏に向けてアピックス「Solar Power Fan2 APF-570」(以下、「ソーラーパワーファン2」)も導入しました。
「ソーラーパワーファン2」は折りたたみ式の扇風機ながら太陽光で発電が可能、そのうえモバイルバッテリー機能も搭載しているという珍しい製品です。これがあれば停電時でも涼めるうえ、長期停電時も太陽光発電しながらスマートフォンが充電できるはず。
とはいえ、気になるのが「本当に実用的なレベルで太陽光発電ができるのか?」ということ。そこで、実際に我が家で2週間じっくり検証してみました。
「ソーラーパワーファン2」は太陽光発電機能が特徴的ですが、実は、扇風機としても魅力的な製品です。なかでもうれしいのが、そのコンパクトさ。折りたたむと板のような形状になるので収納の場所を取らず、持ち運びがしやすいというメリットがあります。
折りたたんだ状態のサイズは270(幅)×95(奧行)×315(高さ)mm。使用時は本体を30/60/90度の3段階で開き、この角度で送風角度が変えられます
幅約10cmの隙間があれば収納可能。本棚などにもサッと差し込んで収納できます。この手軽さは普通の扇風機にはありません
本体背面には持ち運び用のハンドルを装備。充電しておけば、電源プラグをコンセントに挿す必要がないので、風呂上がりに脱衣所で使ったり、エアコンが効きにくいキッチンに持って行ったりと、気軽に家中を移動させて使用できます。
ハンドルは深さ2cmほどのくぼみなので、指を引っ掛けて持ち運びします。手が大きいと微妙に安定しませんが、家の中程度の移動なら十分。重量は約1.9kgと比較的軽量なので、指で持つ感じでも負担には感じませんでした
送風能力は「可もなく不可もなく」といったところ。風量は「Lo」「Hi」「Turbo」「Full」の4段階で選択できます。当然ながら「Full」がいちばん涼しいですが、室内では少々音が気になりました。このため、我が家では常に「Hi」で使用。「Hi」でも6畳の部屋の端から端まで4mくらいならばソヨソヨとした風を感じるので、エアコンの設定温度を1〜2度上げても暑さを感じず快適に過ごせました。
「Hi」の運転音は約55dBで、最大パワーの「Full」は約73dBでした。最近のプレミアム扇風機と比較すると運転音はちょっと大きめ
ちなみに、「ソーラーパワーファン2」は2/4/6/8時間で運転を停止するタイマーと、風の強さをランダムに切り替える「リズム風」運転モードも搭載しています。リズム風は風の強さを数秒ごとに変えることで「自然な風を感じられる」モードですが、実際に使ってみると数秒ごとに「ボー……ブオー……ゴー……」と変化する運転音が気になってしまったため、我が家では使われることはありませんでした。
リモコンは付いていないため、本体側面にある操作部で運転のオン/オフ、風量の調節、タイマー設定などを行います。左端にあるのが「リズム風」ボタン。その上にあるLEDはリズム風選択時に点灯するほか、バッテリー残量が10%未満になると点滅します
意外と便利だったのが、庭での利用です。「ソーラーパワーファン2」はIPX4相当(あらゆる方向からの水の飛沫を受けても有害な影響を受けない)の防水仕様なので、屋外でも安心して使用可能。屋外だとフルパワーで使っても運転音は気にならなかったので、ガーデニングやキャンプなどでも役立つでしょう。
ファンやガードを取り外してお手入れできます。ただし、分解にはプラス精密ドライバーが必要。最近は工具不要で分解できる扇風機が増えているので、この点はちょっと残念
ここからが本題! バッテリーへの充電時間とバッテリーの駆動時間を確かめてみました。
「ソーラーパワーファン2」は容量10,000mAhのリチウムバッテリーを搭載しています。本体背面にあるソーラーパネルを使ったソーラー充電と、USB-Cポートに付属のケーブルを接続し、コンセントやパソコンなどから充電する2つの充電方法に対応。付属のACアダプターとUSBケーブルを使用した場合の充電時間は、スペック値で約7時間ですが、USB PDの急速充電に対応しているため、筆者所有の急速充電用の65W出力アダプターを使ったところ、3時間30分ほどで充電は完了しました。
USBケーブルとACアダプターが付属しますが、急速充電したいときは、USB PD対応のUSBケーブルとACアダプターを用意しましょう。充電の進行は、ポート下のランプで確認可能。充電率が24%以下で1つ目が点滅、25〜49%前後で2つ目が点滅、50〜75%前後で3つ目が点滅、75%以上で4つめが点滅し、満充電になるとすべてのランプが点灯します
ちなみに、満充電の状態で、風量「Hi」でバッテリー駆動させると14時間ほど連続運転できました(スペック値の連続使用時間は風量「Full」で約6時間)。
続いて、太陽光での充電をテスト。本体背面にあるソーラーパネルに太陽の光を当てるだけなので、準備は簡単。十分な光が当たるとバッテリー残量表示ランプが点滅します。このとき、太陽光ができるだけ直角にパネルに当たるように角度を調整すると効率よく充電できるそう。日射条件や設置環境などで充電時間は変わるものの、スペック値の充電時間は約14時間です。
仕事に出かける9時に「ソーラーパワーファン2」を庭にセットし、帰宅後17時ごろに回収して、夜にバッテリー駆動で「ソーラーパワーファン2」を使用するという使い方をしていました
すっきりと晴れた日には7時間ほどのソーラー充電で、50〜74%充電でき、バッテリー駆動で8時間送風(風量「Hi」時)できました。ただ、レビューした時期がちょうど梅雨だったため、ソーラー充電に適した条件の日は数日しかなく、ほとんどが曇りか雨。それでも、曇りの日は7時間ほどのソーラー充電で25〜49%前後充電でき、バッテリー駆動で5時間近く送風(風量「Hi」時)できました。我が家の庭は建物に囲まれているため、日当たりのいい環境ならもう少しいい結果になるかもしれません。ちなみに雨の日は、7時間庭に置いておいても30分前後で送風が止まるくらいしか充電できませんでした。
「ソーラーパワーファン2」のバッテリーは送風運転に使うほか、スマートフォンなどに給電できます。USB-C/USB-Aポートにケーブルを接続し、給電したい端末を接続すれば充電がスタート。対応したケーブルを用意すれば、USB PDによる急速給電ができます。
出力が気になったので、電流計で計測してみました。
付属のケーブルで接続して出力を計測
出力した積算電流は満充電時で4,377mAhでした(中央値)。「バッテリー容量が10,000mAhもあるのに4,377mAhしか出力がないの?」と思う人がいるかもしれませんが、モバイルバッテリーはさまざまな理由により、バッテリー容量の5〜6割前後しか出力できません。容量10,000mAhのモバイルバッテリーでも実際の出力は5,000mAh強という製品が多いので、「ソーラーパワーファン2」の4,377mAhという出力はやや弱いもののおかしな数値ではありません。
この出力値を基に、ソーラー充電される充電量を計算してみると……、「晴れの日7時間」は3,189mAh、「曇りの日7時間」は610mAh(中間値)となりました。610mAhという電力量はやや頼りないですが、スマートフォンを節電モードにして最低限の使用に抑えるなどすれば、停電時など緊急時にはそれなりに心強いのではないでしょうか。
コンパクトに収納でき、防水仕様でコードレスでも使えるので、幅広い場所で使用可能。運転音などちょっと気になる点はあるものの、外出時にベランダなどの日当たりのいい場所に置いてソーラー充電しておけば節電に役立ちます。
最近は、コンパクトなソーラーパネルも発売されています。しかし、「発電だけするソーラーパネル」は防災目的で購入しても、いざというとき以外は物置などにしまわれがち。このため、停電時に存在を忘れてしまったり、すぐ使える場所になかったり、使い方がわからなったりと、必要なタイミングで困った話をよく聞きます。その点、「ソーラーパワーファン2」は普段も扇風機として使用可能。日常使いすることで、いざというときもとまどわずに使えるはずです。