長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第53回は、現在日本中で大流行しているインフルエンザの影響で、一気に需要が増加している加湿器市場の最新トレンドについて解説する。
【図1】「加湿器」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)
加湿器の最新トレンドについては、すでに2024年11月時点であらかた解説しているが、その後の12月以降に、日本全国で大流行しているインフルエンザの影響で、加湿器市場の状況自体も大きく変化している。図1は、価格.com「加湿器」カテゴリーの過去3年における閲覧者数推移を示したもの。2024年も11月までは過去とさして変わらない数字だったが、12月になるとその数字が大きく上昇しているのがわかる。過去3年と比較しても2倍近い上昇率となっており、需要が相当に伸びていることがわかるだろう。
【図2】「加湿器」カテゴリーの閲覧者数推移(過去半年)
さらにこのグラフを細かくした図2を見ると、「加湿器」カテゴリーのアクセスが大きく伸び始めたのは、11月25日週くらいからであることがわかる(季節的な自然増を除いて大きく伸びてきた時期)。今シーズン猛威を振るっているインフルエンザが流行し始めたのもまさにこの週くらいであるから、インフルエンザの流行とともに加湿器の需要が上がってきているのは間違いないところだ。
【図3】「加湿器」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3か月/日別)
しかも、この異例とも言える高いアクセスは、年を越して1月になっても衰えずに続いている。図3は直近の「加湿器」カテゴリーの閲覧者数を日別で表したものだが、通常であれば需要が落ち着きそうな年末年始にも、その数字は落ちるどころかむしろ上がっている。おそらく、年末年始にインフルエンザに罹患した人が駆け込み需要的に加湿器を求めたり、インフルエンザの大流行のニュースを聞いた人が予防措置として加湿器を求めたりしたものと思われる。
このように、昨年末より全国的に大流行してきたインフルエンザの影響で、その予防策として有望とされている加湿器も、その需要を大きく伸ばしている。その勢いたるや、例年の2倍程度の伸びとなっており、加湿器市場はコロナ禍以来の大きな盛り上がりを迎えているのだ。
このような加湿器への急激な需要増を受け、今加湿器が売れに売れているわけだが、人気モデルでは売り切れの店舗も続出しており、流通在庫もかなり少なくなっている。いくつかの例を見てみよう。
象印「EE-TA60-BM」価格推移
昨年秋に発売され人気を呼んでいた象印のスチーム式加湿器の最上位モデル「EE-TA60-BM」は、11月中旬くらいまでは最安価格で23,000円台を付けていたが、12月後半に3万円を超えて35,000円程度まで上昇。年が明けるとさらに高くなり4万円弱の最安価格を付けるにいたっている。初値からの価格上昇率は約74%だ。
象印「EE-DE50-WA」価格推移
象印のスチーム式加湿器の主力モデルである「EE-DE50-WA」も、11月後半までは16,000円台の最安価格で購入できたが、12月に入ってから2万円を超えるようになり、直近では24,000円近い最安価格を付けるにいたった。初値からの価格上昇率は約43%。
アイリスオーヤマ「AHM-MH60-W」価格推移
「AHM-MH60-W」は、1万円台前半で購入可能な安さで人気のスチーム式加湿器。11月中は12,000円台でほぼ推移していたが、12月に入ってから14,000円前後の最安価格を付けることが増え、1月6日を最後に価格.com上のショップでは在庫切れとなった。初値からの価格上昇率は約14%。
ダイニチ「ダイニチプラス HD-LX1224(W)」価格推移
ダイニチの気化式ハイブリッドモデル「ダイニチプラス HD-LX1224(W)」。最大33畳の広い部屋に対応する大型モデルだ。気化式モデルはスチーム式ほどの価格上昇は見られないが、本モデルの場合、11月後半に付けていた3万円強の最安価格が、12月に入ると一気に43,000円台に急騰し、その後一度は下げたがまた上昇に転じ、直近では4万円前後の最安価格に落ち着いている。初値からの価格上昇率は約30%。
このように、加湿器は人気モデルを中心に12月に急激な需要増により、大きな販売価格上昇が起こり、なかには70%を超えるような価格上昇も見られるほどになった。また流通在庫が底をつく「売り切れ」状態になるモデルも出てきており、欲しい製品を適正な価格で購入できるという状況ではなくなりつつあるのがわかるだろう。
【図4】「加湿器」カテゴリーの主要製品別閲覧者数推移(2024年9月〜)
いっぽうで、人気モデル以外ではまださほど価格上昇も見られないものもある。図4は、「加湿器」カテゴリーにおける主要製品別の閲覧者数推移を示したものだが、上にあげた象印やアイリスオーヤマのスチーム式モデルはいずれも人気が大きく伸びて、在庫薄となったあげく価格も大幅上昇したが、逆に、気化式ハイブリッドのシャープ「HV-T55」などは、最安価格の上昇もほとんど見られない。このように、気化式や超音波式の加湿器であれば、まだ適正価格で購入できる製品もあるので、インフルエンザの予防用に今からでも加湿器を導入したいと思っているなら、こうした製品の購入を考えたほうがいいかもしれない。
※当記事のデータは、「価格.com DataCompass」を使って作成しています。
「価格.com DataCompass」とは、価格.comのビッグデータを基に購入検討ユーザーの動向を分析できる法人向けのマーケティングサービスです
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2025年1月10日 時点のものです
価格.com最安価格:22,800円
発売日:2024年9月上旬
ユーザー満足度・評価:★4.40(14人)
加湿方式:スチーム式
適用畳数:木造和室/8畳、プレハブ洋室/13畳
価格.com最安価格:24,200円
発売日:2024年9月上旬
ユーザー満足度・評価:★4.79(4人)
加湿方式:スチーム式
適用畳数:木造和室/8畳、プレハブ洋室/13畳
象印の「EE-DE50-WA」と「EE-RT50-WA」は、いずれもプレハブ洋室で13畳に対応する象印のミドルレンジモデルで、加湿能力は480mL/h。「EE-DE50」のほうがやや機能が多く操作しやすいのと、長時間の加湿モードが備わっている点などが異なるが、基本スペックはほぼ同じと考えていい姉妹モデルだ。「転倒湯もれ防止構造」など、長年、湯沸かしポットを手掛けてきた象印ならではの安全設計も魅力。人気モデルにつき販売価格が上昇気味なので、購入するなら早めが吉だ。
価格.com最安価格:7,661円
発売日: 2023年9月
ユーザー満足度・評価:★4.50(4人)
加湿方式:スチーム式
適用畳数:木造和室/6畳、プレハブ洋室/10畳
三菱重工が製造する加湿器の小型モデル。一般的なスチーム式加湿器とは異なり、水全体を一気に熱してスチームを出すのではなく、水タンクから必要な分だけを熱して蒸発布と言われる布に吸い込ませたうえで気化させるため、熱効率性が高く、スチーム式でネックとなる消費電力が抑えられるのが特徴。吹き出し温度も55度以下なので、やけどの心配も少ない。1度単位のデジタル湿度計も装備。機能の割に価格が安く、お買い得だ。
価格.com最安価格:29,900円
発売日:2024年8月27日
ユーザー満足度・評価:★4.52(2人)
加湿方式:ハイブリッド式(温風気化式)
適用畳数:木造和室/12畳、プレハブ洋室/19畳
気化式ハイブリッド(温風気化式)を幅広く展開するダイニチ製加湿器。そのうち上級シリーズに当たる洋室19畳対応モデル。風量が強く、大きなリビングでも対応できる700mL/hの加湿性能を持つ。気化式モデルで問題となりやすいお手入れの面倒さを極力排除しており、水トレイは抗菌処理されているうえ、使い捨てのトレイカバーを使うことで、清掃の手間が一気に省ける。気化フィルターも使い捨てタイプとすることで、毎年清潔な状態で使える。スチーム式より電気代もかからないので、家計にもやさしい。
価格.com最安価格:18,468円
発売日:2024年9月
ユーザー満足度・評価:★5.00(1人)
加湿方式:ハイブリッド式(温風気化式)
適用畳数:木造和室/9畳、プレハブ洋室/15畳
シャープが製造する気化式ハイブリッド(温風気化式)加湿器。シャープ独自のスリムな縦型ボディで、「プラズマクラスター7000」にも対応。吸水方法が、底面の水トレイを取り出して吸水する方法と、上の吸水口から注ぎ込む方法の2通り用意されているのがユニークだ。対応畳数は洋室15畳で、加湿性能は550mL/h。一般的なリビングでも使いやすく、静音設計なので寝室利用にも向いている。販売価格の上昇はあまり見られないが、流通在庫が減ってきているので、購入検討するなら早いほうがよさそうだ。