ダイソンの扇風機のシンプルモデル2機種。「Purifier Hot + Cool Gen1 HP10 WW」(左)と、「Purifier Cool Gen1 TP10 WW」(右)
羽根がないスタイリッシュなデザインのダイソンの扇風機は、掃除がしやすく、小さい子どもやペットがいる家庭でも安心して使いやすいのが特徴です。機種によっては、空気清浄機能やヒーター機能、加湿機能を搭載し、1台で複数の役割を担えます。
ダイソンの扇風機ラインアップの中で、特にお手ごろな価格帯のシンプルモデルが、ヒーター機能付きの「Purifier Hot + Cool Gen1 HP10 WW」と、ヒーター機能なしの「Purifier Cool Gen1 TP10 WW」です。
本稿では、これら2機種のレビューと、ダイソン扇風機の機種別の特徴を解説。ヒーター機能を付けるかどうかで迷っている人は、ぜひ参考にしてみてください。まずは結論から!
・ヒーター機能を使いたい
・狭い部屋で使うので、コンパクトなモデルがよい
・広い部屋で、空気清浄機能を使いたい
・価格の安さを重視する
ダイソンの扇風機にはさまざまな種類が揃っていますが、主な違いはヒーター機能や加湿機能の搭載の有無です。各製品の機能は、以下のように製品名でわかりやすく示されています。なお、現在同社の公式サイトで販売されている扇風機の大半に空気清浄機能が搭載されています。
ダイソン扇風機の製品名の意味
本稿では、下から3番目の「HP 10 WW」といちばん下の「TP 10 WW」を深堀りします。価格.com最安価格は2025年5月12日時点のもの
ダイソンの扇風機は、扇風機機能のみ、ヒーター機能付き、加湿機能付きの3種類に分類され、特に加湿機能搭載モデルは最も高額。商品ラインアップはそれぞれシンプル、スタンダード、プレミアムの2〜3段階のグレードで構成されており、上位モデルほど機能性や価格が高くなります。ただし、発売から時間が経過したモデルは、比較的安価で入手できることも。
プレミアムモデルでは、空気清浄性能が向上し、ホルムアルデヒドの検知・分解機能や二酸化窒素の除去能力が1.5倍に強化。さらに、スマートフォンアプリとの連携機能も充実しています。
なお、第三者機関の調査によると、ダイソンの扇風機は洗濯物の乾燥を大幅に早めることが実証されています。送風で2倍、温風使用で3倍の乾燥速度を実現できるそう。暑い季節はもちろん、梅雨時期の部屋干しの乾燥にも役立ちそうです。
今回レビューする2機種のシンプルモデル「Purifier Hot + Cool Gen1 HP10 WW」と「Purifier Cool Gen1 TP10 WW」は、アプリ機能などが搭載されていない分、価格がお手ごろです。
2機種の間で最も大きな違いはヒーター機能の有無です。価格.comでの最安価格を比較すると、価格差は約3,000円(2025年5月12日時点)です。これから暑い季節を迎えるため、扇風機機能のみのモデルにするか悩む人も多いでしょう。
実際に両機種を使用してみたところ、ヒーター機能の有無以外にも違いがあることがわかりましたので、そのあたりを詳しくレビュー します。
2モデルのスペック比較表
ダイソン「Purifier Hot + Cool Gen1 HP10 WW」
まずは、「HP10 WW」から。
本モデルはヒーター機能を搭載したシンプルモデルで、夏季の使用はもちろん、寒い日には暖房としても活用できます。
本体サイズは24.8(幅)×24.8(奥行)×76(高さ)cmのスリム設計。省スペースでの設置が可能で、インテリアになるようなスタイリッシュなデザインも魅力です。扇風機/ヒーター/空気清浄機の機能を1台に集約しているため、家電をいくつも置くスペースがない人にぴったりでしょう。
操作は付属のリモコンで行うため、本体には操作ボタンが配置されていません。リモコンには8つのボタンを搭載。ボタンにはアイコンのみが表示されているため、最初は操作にとまどうかもしれませんが、複雑な操作ではないため使用していればすぐに慣れるはず。
付属のリモコンで操作。リモコンは本体上部に固定できるため、どこに置いたか忘れてしまうのも防げそう
「HP10 WW」に付属するリモコン。対応する操作は以下のとおり
(1)電源:電源をつける・消す
(2)風量調節:風量の増減を10段階で調整
(3)オード(自動)モード:空気室の状態に応じて設定を自動で調整
(4)首振り:0/45/90/180/350度から首振り角度を調整
(5)情報メニュー:室内の空気の状況などをモニター
(6)温度調節:好みの室温に達するまで暖房運転
(7)涼風モード:涼しい風が出る
(8)ナイトモード&スリープタイマー:静音運転に切り替わり、1/2/4/8時間から自動電源オフにする時間を選べる
「HP10 WW」の扇風機機能を使ってみると、ふんわりとしたやさしい風あたりで、睡眠を妨げるような不快な風は感じませんでした。
風量レベルは1〜10の10段階
風量レベル1はやさしく包み込むような微風。レベル4になると肌に風を感じる適度な強さとなり、1m離れた距離でもそよ風程度を感じられます。レベル10ではパワフルな風量となり、1m離れていても適度な風あたりを覚えます。羽根がないのでパワーが心配でしたが、涼しさはまったく問題なし。
音は全体的に静かな印象です。風量レベル1ではかすかな音のみで、レベル4でもささやき声程度の静かさで、睡眠中や動画視聴時も気にならない程度でした。風量レベル10ともなると換気扇と同程度の音量に。音に関してはファンがないため回転音がなく、耳ざわりを感じにくい点がよかったです。
首振り機能は最大350度の回転が可能。身体を直接冷やすだけでなく、室内の空気を循環させる用途にも向いているでしょう。
上下の角度も調整できるため、洗濯物に直接風を当てる際にも便利。しかし、角度を変えるには本体中央部分を両手で持って、ズラすようにして傾ける必要があり、調整のしづらさが難点でした。
下に向けている様子
上に向けている様子
「ナイトモード」では、静音運転とLCDディスプレイが減光されるため、睡眠時も安心。なお、重量は5.3kgと重め。腕に力がない人がひんぱんに移動させるような使い方をする場合は、気になるポイントになるでしょう。
「情報メニュー」で空気の状態をモニタリングできます。表示できるメニューは「室内温度」「直近の12秒間の空気室データのグラフ」「粒子状物質(PM10)」「粒子状物質(PM2.5)」「フィルター寿命」
温度調節画面
ヒーター機能は、温度調節ボタンで設定温度を選択すると、自動で暖房運転を開始。石油ヒーターのような力強い熱さではなく、ふんわりとした温風の暖かさを感じられます。
レベル10では扇風機機能と同様のパワフルな温風が出ます。6畳の部屋(木造)で風量10で運転したところ、24度から自動運転を開始して、約11分で設定温度の26度に到達しました。広いリビングには不向きですが、暖かさだけで言えば、個室のメインの暖房としても使える印象です。
ただし、暖房使用時の消費電力は最大1400Wとかなり高いため、ブレーカーが落ちる可能性や電気代が高額になりやすい点には注意が必要。省スペース設計を生かして、浴室のヒートショック対策や足元を暖める使い方など、ピンポイントな暖房の用途に特に便利に使えそうです。
ダイソン「Purifier Cool Gen1 TP10 WW」
続いては、ヒーター機能がない分、価格が安い「TP10」のレビューをお届け。
機能面や使い勝手については、ヒーター機能の有無以外はほとんど共通しているため、特徴的な違いのあるポイントに絞って説明します。
リモコンは「温度調節」や「涼風モード」ボタンがない以外は、基本的には同じ。首振り角度の調整機能や「スリープモード」も同様に搭載されています。細かな違いとして、情報表示メニューは「HP10 WW」より1種類少ない4種類で、気温表示機能が含まれていません。
なお、アプリ連携機能は両機種ともなし。
左が「HP10 WW」で右が「TP10 WW」のリモコン
手に当てて風を確認したところ、両機種の風量は同程度でした。ただ、「HP10 WW」は正面に風が集中する傾向があるいっぽう、「TP10 WW」は外側に広がるような滑らかな風という印象を受けました。どちらも清涼感があってやさしいという点は変わりませんが、「TP10 WW」のほうが風が出る幅が大きいため、部屋全体の空気を循環させやすそうです。
写真の赤い線のあたりから風が出ます。「HP10 WW」より風の出る位置が長い分、空気を循環させやすそう
明確な違いで言えば、「TP10 WW」は空気清浄能力が高い点です。「HP10 WW」が8畳を浄化する時間の目安が28分なのに対して、「TP10 WW」は23分。適用床面積も「TP10 WW」のほうが大きいため、広いリビングで空気清浄機としても使用したい場合は「TP10 WW」を選ぶとよさそうです。
なお、どちらも空気清浄機能自体は共通。HEPAフィルターを採用し、PM 0.1レベルの微細な粒子を99.95%除去するので、ハウスダスト、花粉、ウイルスの対策としても効果的です。また、活性炭フィルターにより、有害なガスや気になるニオイも取り除きます。フィルターは定期的な掃除が不要で、約5年に1回の交換だけで済みます。
左が「TP10 WW」(ヒーター機能なし)、右が「HP10 WW」(ヒーター機能付き)
「TP10 WW」の本体サイズは22(幅)×22(奥行)×105(高さ)cm。「HP10 WW」よりもスリムで設置スペースは取らないものの、高さがあるため、狭い部屋に置くとやや圧迫感を覚える印象です。重量は4.7kgと「HP10 WW」より0.5kgほど軽量なものの、「HP10 WW」のほうが背が低い分、体感的に持ち運びやすい印象でした。
また、「TP10 WW」は上下の角度調節はできません。風の当たる範囲が広いため日常使いで気になることはありませんでしたが、室内干しの洗濯物にピンポイントで風を当てたい場合には不便に感じる印象です。
・ヒーター機能を使いたい
・狭い部屋で使うので、コンパクトなモデルがよい
・広い部屋で、空気清浄機能を使いたい
・価格の安さを重視する
実際に使ってみると、単にヒーター機能の有無だけでなく、サイズなども含めてどちらを選ぶかを検討したほうがよさそうです。
空気清浄機能を重視しない場合は、扇風機として使用する用途でも、狭い部屋であれば「HP10 WW」がおすすめです。
ヒーター機能が不要で、空気清浄機能や価格の安さを重視する場合は「TP10 WW」がよいかと思いました。