長年、家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第68回は、これから始まる新米シーズンに需要が上がる炊飯器の最新トレンドを見てみよう。
【図1】価格.com「炊飯器」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)
炊飯器の需要期は冬だ。図1を見ればわかるように、例年、新米が出回り始める9月くらいから需要が急激に伸び始め、年末年始にかけてピークを迎える。これに合わせて、各メーカーも6〜9月くらいの時期に、炊飯器の新モデルを発売し、需要期に備えるのが一般的な流れだ。そういったわけで、この記事を執筆している2025年8月後半は、前年発売の炊飯器が型落ちとなって安くなっており、絶好の買い時と言える。
【図2】価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける売れ筋製品の炊飯方式の割合(2025年7月時点)
ちなみに、価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける売れ筋製品の炊飯方式だが、最も進化した形の「圧力IH」が全体の7割程度を占め、主流となっている(図2)。以前なら圧力IH炊飯器はそこそこ上級のモデルにのみ採用されていたが、最近では中級モデルなどでも圧力IHを採用するモデルが増えており、その裾野は広がっている。
【図3】価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯分布(2025年7月時点)
図3は、価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯分布を示したものだが、これを見ると、4万円以下の製品が全体の半数以上を占めており、多くのモデルは比較的手ごろな価格で購入できる価格帯に属していることがわかる。より詳しく見ると、2万円台と3万円台がともに2割弱のシェアとなっており、このあたりの価格帯が最近の売れ筋製品の中心価格帯となっていることがわかる。逆に、5万円以上の高級炊飯器も全体の3割程度を占めており、こうした高級製品にも一定の需要が存在することが見て取れる。
【図4】価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける売れ筋製品のメーカーシェア(2025年7月時点)
図4は、価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける売れ筋製品のメーカーシェアを示したものだ。これを見ると、象印が圧倒的に高い半数近くのシェアを取っており、次いでタイガー魔法瓶、パナソニックと続く展開となっている。この3社だけで全体の8割近くのシェアになっており、この3社の寡占状態はかなり高まっていることがわかる。
【図5】価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける主要メーカーの閲覧者数推移(過去3年)
このメーカー別の過去3年間における閲覧者数の推移を示したのが図5だ。トップの象印の閲覧者数は3年前から10万人以上と安定しており、2位のタイガー魔法瓶も2022年12月の大きなピークを除けば、6万〜10万人と安定し、3位のパナソニックは4万〜6万人でほぼ横ばいと言っていい。上位3社は、この3年間それほど大きな変化はなく、それぞれの順位をキープしている状況だ。なお、その下の4位グループは、東芝、日立、三菱電機という古参メーカーが入り乱れる状況となっており、多少のアップダウンはあるものの同じような割合でしのぎを削っている。
ちなみに、トップの象印がここまで高い人気を有している理由だが、まず、炊飯器のシリーズ、モデルが非常に多く、多彩なユーザーニーズに応えられていることがあげられる。具体的には、高級シリーズの「炎舞炊き」から、中級シリーズの「豪熱大火力」「極め炊き」まで、実にさまざまな価格帯、スペックのモデルが揃っているのが大きい(逆に言うと、モデルごとの差がわかりづらいという側面もある)。しかも、その大半が今人気の「圧力IH」方式を採用しており、低価格モデルでも炊き上がりは良好というクチコミも多い。こうした点が、象印全体のブランドイメージを押し上げた結果、今のような安定した人気を勝ち得るようになったものと思われる。
【図6】価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける人気製品別の閲覧者数推移(過去半年)
図6は、過去半年の価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける人気製品別に見た閲覧者数推移を示したものだ。「豪熱大火力」シリーズや「炎舞炊き」シリーズなど、人気No.1の象印製品が多いのは一目瞭然だ。なかでも2〜5月くらいまでは「豪熱大火力 NW-YB10」が人気で、これと代わるように5〜8月の時期は「炎舞炊き NW-NA10」が人気となっており、この2製品だけでかなりの人気を得ていることがわかる。
ちなみに「豪熱大火力」というシリーズは、象印の炊飯器ラインアップの中では比較的新しいシリーズで、2023年から始まったものだ。それまでは高級炊飯器の「炎舞炊き」と普及価格帯の「極め炊き」のほぼ2シリーズで展開していたが、2023年より「極め炊き」シリーズの一部をこちらの「豪熱大火力」に置き換えるような形でブランディングし、今は基本的には3シリーズ展開となっている。「豪熱大火力」シリーズは、ネーミングからもわかるように、大火力で釜内に激しい対流を起こすのが特徴で、従来の「極め炊き」に比べて一歩上を行く中級シリーズという位置づけだ。価格.comでの販売価格帯は3万〜4万円台で、本稿の冒頭で見たユーザーニーズにも一致する。一般的な普及価格帯の炊飯器は、2万〜3万円台が中心なので、それよりはやや高いが、5万円以上する高級炊飯器ほどは高くないという絶妙な価格設定も功を奏したのかもしれない。
【図7】価格.com「炊飯器」カテゴリーにおける人気製品別の最安価格推移(過去半年)
図6の人気製品の最安価格推移を示したのが図7だ。これを見ると、すでに見てきたように、多くのモデルが3万円台を中心に分布しており、売れ筋価格帯を形成しているのがわかる。1製品だけ2万円を切っている低価格帯に位置するモデルがあるが、これは象印「極め炊き NW-VJ10」で、「圧力IH」ではない普通のIH炊飯器。逆に言えば、これ以外はすべて「圧力IH炊飯ジャー」ということになる。人気の中心はやはりこの価格帯の圧力IH炊飯器であるということは、このグラフからも見て取れる。なお、このクラスの製品のユーザー評価は★4.0を超えるケースがほとんどで、価格と機能のバランスが非常にいいということもわかる。
いっぽう、上に目を向けると、6万円台の象印「炎舞炊き NW-NA10」と、さらに上、8万円台の「炎舞炊き NW-FC10」の2モデルがある。いずれも象印の高級炊飯器「炎舞炊き」の製品だが、前者が標準モデルで、後者が最上級モデルとなっており、販売価格にもかなりの開きがある。ちなみに、この2モデルの機能差は、主に内釜素材とIHヒーターの数、炊き分けメニューの数の違いとなっており、2025年8月時点では約1.3万円の価格差がある。この機能差が価格に見合うかどうかで選択肢が分かれることになるだろう。
※当記事のデータは、「価格.com DataCompass」を使って作成しています。
「価格.com DataCompass」とは、価格.comのビッグデータを基に購入検討ユーザーの動向を分析できる法人向けのマーケティングサービスです。
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2025年8月21日時点のものです
価格.com最安価格:29,500円
発売日:2024年8月上旬
ユーザー満足度・評価:★4.33(29人)
象印の中級シリーズ「豪熱大火力」の2024年発売モデル。最安価格3万円前後の手ごろさながら、上級シリーズ「炎舞炊き」ゆずりの鉄器コートを採用する「黒まる厚釜」を搭載。大火力でしっかり米を対流させる豪熱大火力で、ごはんをおいしく炊き上げる。「しゃっきり」「ふつう」「すしめし」などの炊き分けが可能で、30時間おいしく保温できる「うるつや保温」も行える。「豪熱大火力 NW-BA10」とスペックは似ているが、こちらのほうがややお買い得だ。
価格.com最安価格:65,800円
発売日:2024年9月上旬
ユーザー満足度・評価:★4.46(28人)
象印の上級シリーズ「炎舞炊き」の2024年発売の標準モデル。IHと相性がよく、発熱効率と蓄熱性が高い鉄素材を、熱伝導率の高いアルミと耐久性にすぐれたステンレスに組み込んだ「鉄-くろがね仕込み- 豪炎かまど釜」を採用。底面に仕込まれた4つのIHヒーターが交互に発熱することで内釜内部の対流をうながし、ふっくらもちもちとした炊き上がりを実現する。好みの炊き上がりにプリセットできる「わが家炊き」は81通りを搭載。上級モデルの「炎舞炊き NW-FC10」とは現時点で1.3万円程度の価格差があるため、こちらのほうがお求めやすい。
価格.com最安価格:42,300円
発売日:2024年6月21日
ユーザー満足度・評価:★4.76(26人)
タイガー魔法瓶のラインアップでは高級シリーズとなる「炊きたて ご泡火炊き」2024年版のエントリーモデル。上位モデルのような土鍋内釜ではないが、その技術を応用した「遠赤9層土鍋かまどコート釜」を採用。細かな圧力調整と大火力によって、一粒一粒が粒だった、ふっくらしたごはんを炊き上げる。炊飯メニューも多彩で、少量でもおいしく炊き上げる「少量旨火炊き」や、「玄米」「雑穀」「麦めし」などの専用メニューなどを搭載。エントリーモデルとはいえ、4万円台で購入できるのは、高級炊飯器としてかなり安い。
価格.com最安価格:16,172円
発売日:2024年8月上旬
ユーザー満足度・評価:★4.71(14人)
象印の普及価格帯シリーズ「極め炊き」の2024年モデル。圧力機能のないIH炊飯器だが、2万円を切る価格の安さと扱いやすさ、炊き上がりのよさなどから人気が高い。低価格帯ながら、強火で炊き続け、旨味を引き出す「豪熱沸とうIH」を採用。「ふつう」、「やわらかめ」、「かため」の3コースから好みの炊き方を選択できる。30時間おいしく保温できる「うるつや保温」も搭載。なるべく予算をかけずに、炊き上がりのいい炊飯器を探しているなら、有力候補となるだろう。