掃除にかかる時間や負担を軽減してくれるロボット掃除機は、忙しい現代人のニーズにマッチし、普及が拡大しています。そんな“お助けロボ”に、窓拭き専用モデルがあるのをご存知でしょうか。
窓ガラスを自動でクリーニングする“窓掃除ロボ”は、現在、国内では2社から発売されています。そのうちの1つ、ツカモトエイム「HOBOT-168」はすでにレビュー済み。落下しそうでビビッていたのですが、「HOBOT-168」を使って自信がついたので、今回は残る1つ、エコバックス「WINBOT W710」にチャレンジします。実は、この「WINBOT W710」の価格は「HOBOT-168」の倍! “できること”は同じなのに、なぜ価格が2倍も違うのか実力を調べてみました。
「WINBOT W710」は吸引することで垂直な窓ガラスにピタリとくっつき、移動しながら拭き掃除してくれます。走行コースを考え実行するプログラムが搭載されているので、清掃は“おまかせ”可能。窓の汚れは装着したパッドで拭き取りますが、より仕上がりをよくするために洗浄液とワイパーを利用します。
見た目は、床をキレイにするロボット掃除機と似ています(スクエア型やD字型のもの)。サイズは232(幅)×95(高さ)×225(奥行)mmなので、床用のロボット掃除機よりひと回り小さめ。以前試した“窓掃除ロボ”「HOBOT-168」と比べると、高さが約80mm、奥行が約210mm大きいので吸着が続くのか不安になりましたが、重量が「HOBOT-168」と同じ約2kgなので問題なさそう
上面にはハンドルが装備されており、ここを持って本体を持ち運びできます。ハンドルの指がかかる部分には、トリガーを装備(写真中央)。トリガーを引くと空気が抜け、窓ガラスに貼り付いた本体が外れます
トリガーの反対側には、スイッチを配置。スイッチで切り替えできるのは、電源のON/OFFと内蔵バッテリーへの充電です
バッテリーは内蔵されていますが、稼働はコンセントを差して行います。電源コードの長さは、同梱の延長コードを接続すれば最長約5.3mに。内蔵バッテリーの役割は、あとで説明するので、そちらをチェックしてください
底面の両端に装備されたキャタピラ風のタイヤは、滑りにくく、ガラスに傷が付かない仕様になっています。本体中央にある円状の部分で吸引が行われ、窓に密着。この部分には吸引力を感知する仕組みが施されており、吸引力が弱くなると走行の向きを変えるそう。吸引力の低下は本体の落下につながるので、そのような事態を回避するための仕組みなのかも
本体前方にはバンパーが用意されており、走行中に本体が窓のフレームにぶつかった際の衝撃をやわらげてくれます
3つのステップで実施する清掃システムとは?
“窓拭きロボ”と言う以上、やはり肝心なのは清掃力。「WINBOT W710」の清掃システムは、洗浄液付きのパッドで汚れを浮かせ取った後にワイパーで汚れをかき出し、最後は乾いたパッドで仕上げる3ステップ構成になっています。清掃を始める前の手順とともに、仕組みを見ていきましょう。
底面の前後にある黒い部分に、付属のパッドを装着。面ファスナー(マジックテープのようなもの)のように、くっつく仕様なので手間ではありません。パッドは毛羽立っていませんが、細かい凹凸があり、汚れがよく落ちそうです
清掃ステップの1番目、“洗浄液付きのパッドで汚れを浮かせ取る”ために、同梱の洗浄液を前方のパッドにのみ噴射します
2ステップ目の汚れをかき出すワイパーは、前方のパッド下にあります(写真左)。洗浄液で浮き上がった汚れを、ワイパーで剥がすといった具合でしょうか。その後、後方の乾いたパッドで拭き取るので輝きのある仕上がりになるのだそう
基本的に清掃は、スタートボタンを押すだけでOK。自動で窓全体を移動し、キレイにしてくれます。リモコンには上下左右に動かせるボタンが用意されおり、手動で動かすことも可能
安全対策は?
高所で使うものなので、もちろん落下防止の対策も用意されています。
安全対策のまず1つめは、命綱のように本体をロープでフォローするというもの。本体とつながっている電源コードにロープを取り付け、もう片方のロープの先端を吸盤で窓の上に固定します
もう1つの対策は、内蔵バッテリーです。内蔵バッテリーを充電しておくことで、運転中に停電になった場合でも約15分吸着が継続。バッテリーが空の状態から満充電になるまで、約2時間かかります
本格的な清掃システムに、期待が膨らみます。さっそく窓拭きをしてみようと思いますが、その前に「WINBOT W710」の魅力をもう1つお伝えしておきたい! 実は、「WINBOT W710」は屋外の窓にも使えます。室内側よりも屋外にある面のほうが汚れやすいので、この仕様は非常にありがたいですね。ちなみに、「WINBOT W710」で清掃できる窓は、幅45×高さ60cm以上のサイズで、厚みが3mm以上でなければいけません。窓枠のないものにも対応しないので、注意してください。
内蔵バッテリーを満充電にし、装着したパッド(前方のみ)に洗浄液をかけたら準備完了
命綱となるロープを固定するための吸盤は、走行のじゃまにならないように清掃するガラスの反対側に取り付けます。そのため、窓と窓の間にロープが挟まり、少し開いた状態になります
しかし、どう見ても窓の高さよりロープのほうが長い。この状態では、本体が落下したら地面にまで落ちてしまいます。メーカーに確認したところ、ロープは2階以上の高所で使用する場合に効果を発揮するそう。つまり、今回のケースでは意味がないということに……。内蔵バッテリーだけが頼みの綱です!
※習慣づけのために、ロープは毎回装着することが推奨されています
窓掃除スタート!
電源をONにして、下にある窓枠から10cm以上離した位置に「WINBOT W710」を当てると吸着します。後は、スタートボタンを押せばOK。
明確な清掃プログラムは公表されていませんが、動きを見た感じでは、最初の走行で窓のサイズを測定し、そこから走行コースを導き出しているようです。縦横に規則正しく動くわけではないので取り残しがありそうですが、まんべんなく拭き取れました。
窓拭き中の様子を家の中から見てみると、底面の動きが確認できました(下の動画参照)。パッドがピッタリとガラスに密着しているので、拭く力も強そう。窓枠ギリギリまで、きちんとパッドが届いていることがわかります。運転音は約55dBなので、一般的なサイクロン式掃除機の「強」運転と同等ですが、吸引の音よりもモーター音が大きい。使用場所や時間には配慮が必要でしょう。
最初に「WINBOT W710」を吸着させた位置に近い所で、運転が終了しました。83(幅)×163.5(高さ)cmの窓の掃除には、約7分30秒かかりました。
掃除終了後は電源をOFFにするとともに、トリガーを引いて取り外します
汚れ落ちのほどは?
じっくりと窓の縁まで掃除してくれましたが、その仕上がりがどうのようになったかを紹介します。
1年以上掃除していなかった窓には、水垢や汚れがびっしり。掃除後の状態を外から撮ってみましたが、くすんでいた窓がすごくクリアになりました。窓の縁までキレイです
家の中からも汚れ落ち具合を確認してみましたが、景色が違って見えるほどキレイ! 走行による傷や、拭いた跡もなく、非常に仕上がりがいいですね
ただし、上のほうにはちょっと汚れが残っていました。この部分も走行していたので、もしかすると汚れがガンコ過ぎたのかもしれません
気になる汚れがある場合には、リモコンを利用して手動で汚れのある部分を走行させたり、同梱のクロスで拭いてください
1回の掃除でどのぐらい拭き残しがあるのかを確かめてみました。左が、「WINBOT W710」で掃除した後に窓全体を拭いた雑巾。ほとんど、汚れていません。右は、今回掃除した窓の隣にある窓を拭いた雑巾です。これだけの汚れを、「WINBOT W710」が拭き取ってくれたということになりますね
掃除の後だということがはっきりとわかるほど、パッドが汚れています
パッドは取り外して、洗うことができます
交換用のパッドが2セット用意されているので、汚れが激しくなったら取り替えましょう
前回使用した“窓掃除ロボ”「HOBOT-168」は室内でしか使えないものだったのですが、汚れる度合い、掃除する負担を考えても、やはり外側の窓を掃除してほしいと思いました。その点、「WINBOT W710」は屋外にも対応。これだけでも、非常に価値は高いと思います。それに加えて、洗浄液+ワイパー+パッドを複合した3ステップの清掃システムの仕上がりも上々。1年以上蓄積された汚れが、1回の清掃でキレイに落ちた状態を見た時には感動しました。「HOBOT-168」より約2倍高い価格であることにも、納得がいきます。
今回「WINBOT W710」を使用したのは、使った日の2日後に雪が降るような寒い時期でした。筆者は撮影のため外に出なければなりませんでしたが、同席した母は家の中からその様子をウォッチング。そう! 本来なら、ヌクヌクと家でくつろいでいられるんです。屋外を掃除中の「WINBOT W710」を家の中からリモコンで操作することもできるので、気になった汚れを発見したら座ったままコントロール。1つの窓の掃除が終われば次の窓……と手動で本体を移動させる手間はありますが、手作業で窓拭きするよりも断然ラクです。手が届かないような高所や屋外の窓掃除に困っているなら、「WINBOT W710」は役立つかも!
身長148cmの筆者の母は、普通に窓掃除をしようと思っても、台を用意しないと最上部まで拭くことができません。「WINBOT W710」なら、そんな所もしっかり拭き取ってくれます