11月に入り、朝晩が冷え込むようになってきた。そろそろ暖房が必要な季節。家庭用の暖房機器といえば、エアコン、ガスストーブ、石油ファンヒーターなどがあるが、エアコンはなかなか足下が暖まらないし、ガスストーブはすぐに暖まるけれどガス栓のある部屋でしか使えないし、石油ファンヒーターは経済的だけど補給が面倒だし……と、どれも一長一短。そんな中、どこにでも簡単に移動できる、これまでにないお手軽な家庭用暖房機器が登場。あのカセットガスでお馴染みのイワタニ(岩谷産業)から、カセットガス1本で部屋全体が暖められるファンヒーターが誕生した。その名も「カセットガスファンヒーターCB-FH-1」(以下、CB-FH-1)だ。
まさか、カセットガス1本で部屋全体が暖かくなるなんて! ちょっと半信半疑……ということで、早速試してみることにした。
CB-FH-1の本体サイズは、319(幅)×260(奥行き)×438(高さ)mm。部屋を暖める暖房にしては、かなりコンパクトな印象。そして、なんかスッキリしているなぁ〜と思ったら、そう! 電源コードがないのだ。では、何を燃料で暖めるのかといえば、カセットガス1本! あの、鍋をする時に使うカセットガスだ。しかし、鍋に使うならならまだしも、外部電力を一切使わずに、本当にカセットガス1本で部屋全体が暖まるのだろうか? どうやら、そのためには構造上に独自の技術が盛り込まれているらしい。同社サイトにある解説図をもとに、まずはその仕組みを見ていこう。
ポイントとなるのは、「熱電発電モジュール」という中核部品の存在。「熱電発電モジュール」とは、種類の異なる金属または半導体を組み合わせ、温度差をつけることで電気を発生する原理を用いて作られたもので、同製品では、“カセットガスの燃焼によって加熱される部分”と“加熱されない部分”の間に配置されている。
そして、図のように点火すると、カセットガスの燃焼によって加熱される部分(A)の温度が上がり、加熱されない部分(B)との間に温度差が生じて電気を生み出し、ファンが動き出す。ファンが回転すると、(B)の部分は空冷効果で冷却され、(A)と(B)の部分の温度差はさらに広がる。そして、大きな温度差が継続されることで、安定した発電が行われ、駆動するファンからカセットガスの燃焼熱を「温風」として排出するという。つまり、カセットガスの燃料熱を利用して、この小さな機器の中で自家発電をしているというわけだ。そのため、従来の暖房機器に必要なコンセントも電源コードも電池も不要。「カセットガス」×「熱電発電モジュール」の組み合わせで、世界初のカセットガス式コードレスファンヒーターが実現したのである。
本体正面。上部には温風を排出する排気口、下部には運転モードと点火の大小のツマミが2つ
背面。上部にはモーターとプロペラファン、下部にはカセットガスのセット口がある
上面。「熱電発電モジュール」によってファンが回転すると、温風が上部へと排出される
側面には、移動の時に使う持ち手が。コンパクトサイズなので、持ち運びラクラク♪
基本的な操作は、点火と運転モードの切り替えだけ。運転モードは「標準」と「弱」の2段で切り替え可能
では、早速、その力を試してみよう。
まず、カセットガスをセットする。セットの仕方はカセットコンロと同じ。これから鍋でも食べる気分だ(笑)。ただ、カセットコンロの時のように本体を机の上に置いてセットはできず、また設置場所が本体の下部分にあるので、少しやりづらい感じがした。とはいえ、これは構造上やむを得ないといったところか。
電源コードも電池もいらず、燃料として使うのはこのカセットガス1本だけ!
カセットガスをセットしたら、ツマミ(大)を左に回し点火。すると、ガスの火が確認できる。そして、点火後約50秒すると温風が吹き出し、部屋が一気に暖かくなる。 運転操作はたったこれだけ。あとは室温に合わせて、運転モードを「標準」か「弱」で調節するだけだ。運転中は、特にガスの匂いや運転音が気になることもなかった。サイズがコンパクトなので、ふとその存在を忘れそうになるが、部屋の中は確実に暖かくなっている。
本体裏の下部分にあるカセットガスのセット口を開く
カセットガスをセット。セットの仕方はカセットコンロを使うときと同じだが、CB-FH-1では本体下部にセットするので少々やりにくい
スイッチオン! ツマミ(大)を左に回して点火
運転開始。うまく点火ができていないことがあるので、ガスの火が点いたかどうかしっかり確認してから、その場を離れるようにしよう
説明書によると、カセットガス1本の連続燃焼時間は、標準モードで約100分、弱モードで約130分。範囲の目安は、コンクリートの集合住宅が7畳まで、木造戸建住宅が5畳までとなっているが、実際はそれ以上の力があるように感じた。
ただ、毎日使うメインの暖房機器としては、やや物足りないかもしれない。なぜなら、100分というのは、何か作業をしていると割とあっという間に過ぎてしまうからだ。気が付くと、カセットガスが1本終了してしまっていた。カセットガスのストックがいっぱいあれば、燃料を気にせずにガンガン使えるが、そこまで長時間連続で使うのであれば、従来の暖房機器の方が、コスト面では安いだろう。というわけで、1日中家にいる人が長時間使う物ではないかもしれない。
CB-FH-1のよさは、燃料がカセットガス1本で、入手や交換が簡単にできることのほかにもう1つある。それは、軽くてコンパクトな上に、電源コードのあるなしを気にせずどこでも好きなところへ移動できることだ。
本体の重さは約4.7kgあるが、この程度ならば女性もシニア層も持ち運びに難儀しないだろう。わが家ではいつもは石油ファンヒーターを使っているが、筆者にとっては石油の入ったファンヒーターを移動させることは、かなり骨の折れる作業なのだ。その点CB-FH-1は、とにかく、どんな場所にもひょいひょいっと運べることがうれしい。また、シンプルなデザインなので、和室、洋室、どんな部屋にでも合ってしまう。
和室で使ってみた。11月上旬、少し肌寒い日中に使用。説明書には、木造戸建住宅は5畳が目安とあったが、8畳の和室でも暖かく感じた
とはいえ、やはり部屋全体を暖めるというよりは、足下などワンポイントで使う方がよいだろう
本体の重さは約4.7kg。コンパクトでコードレスなので持ち運びが簡単♪ 石油ファンヒーターだったら、そうはいかない
家のどんな場所でも使えるのが◎。部屋全体を暖めるほど寒くはないが、足下だけちょっと暖めたいという時に重宝する
和室にも洋室にも合うシンプルなデザイン
意外と足元が冷え込むキッチンにも気軽に移動させて使えるのがうれしい!
ただし、コンクリートの集合住宅が7畳まで、木造戸建住宅が5畳までと範囲の制限があることや、カセットガス1本の連続燃焼時間が、標準モードで約100分、弱モードで約130分であることを考えると、やはりメインで使う暖房には、ややパワー不足だと思う。それでも、部屋全体を暖めるほど寒くはなく、足下だけ暖めたいというときや、エアコンやガスストーブなどをわざわざ設置するほどではないけれど、冬場は寒くてできれば行きたくないという場所(わが家では洗面所とか)に、CB-FH-1はもってこいの暖房。使いたい時だけ移動させて使うことができるというのは、かなり重宝しそうだ。
また、カセットガスのストックさえあれば、災害などで電気やガスのライフラインがストップしてしまっても使用できる。その点で、災害用に常備しておくのもいいかもしれない。実際、災害用に常備している家庭や施設がすでにあるという。
電源コードやガス栓を使わず、カセットガス1本で部屋を暖められるCB-FH-1。燃料が手軽に入手&ストックできる点や、持ち運びがラクな点、災害時に活躍する点など、何かとメリットの多く、今後人気が出そう。ただ、カセットガス1本の連続燃焼時間が、標準モードで約100分なので、家庭でメインの暖房器具としてガッツリ使うには少し物足りないかもしれない。しかし、エアコンなどで温風が下に行き届かないときに足下を暖めたり、冬場の洗面所に置いたりとサブとして使うには申し分ない。また、災害用としても、一家に一台あってもいいのではないだろうか。
CB-FH-1は室内用だが、燃料がカセットガス1本なうえ、コンパクトで持ち運びがしやすいため、冬場のグランドでの炊き出し(少年野球チームで時々ある)や町内会の餅つき大会など、野外活動時にも使えたらいいのになぁと本気で思う。
赤ちゃんからお年寄りまで、幅広い年齢の“人”取材を中心に執筆している中、“モノ”取材はいい意味で気分転換に。ズボラ主婦向けのモノが好き。