“穴のない洗濯槽”が特徴的なシャープの縦型洗濯乾燥機に2016年度モデルが登場。洗濯機で洗う前に軽く手洗いしている人に役立つ「サッと予洗い」コースが搭載されたほか、毛布やカーテンなどの大物やまとめ洗いできるように大容量にしてほしいというユーザーの声を受け、前モデルにはなかった洗濯・脱水容量10kgタイプが追加された。最上の位置付けとなる10kgタイプ「ES-PX10A」はモーターのパワーが異なるほか、頑固な汚れを落ちやすくする“温める機能”や槽内を見やすくするライトが装備されている。今回は、説明会で見てきた従来からの進化点を中心に紹介しよう。
ラインアップされるのは3機種で、右から洗濯・脱水10kg/乾燥5kg「ES-PX10A」(市場想定価格:20万円)、洗濯・脱水9kg/乾燥4.5kg「ES-GX9A」(市場想定価格:17万円)、洗濯・脱水8kg/乾燥4.5kg「ES-GX8A」(市場想定価格:16万円)。いずれも、2016年6月23日発売予定となっている
洗濯槽やパルセーターを回転させて洗うのが縦型洗濯機の基本的な洗浄方法だが、本製品は給水と同時に洗剤液の混じった水をシャワー状にして洗濯物に放出するのがポイント。これにより水面に衣類がプカプカと浮いて、洗剤液に浸らない状況を防ぐことができる。これは前モデルでも搭載されていた手法だが、新モデルには汚れを軽く洗い流してくれる「サッと予洗い」コースが搭載された。サッと予洗いコースは普通の洗濯工程で放出される衣類にふりかけるためのシャワーを利用し、洗剤は使わず、水だけで汚れを落とすというもの。洗濯〜脱水までを約5分で行う手軽なものなので、洗濯機に入れる前に手洗いしたい衣類はサッと予洗いコースで洗ってしまえばいい。
通常の給水口(水色の囲み)とは別に、シャワーが出る口(緑色の囲み)が用意されている。ちなみに、真ん中にあるのは乾燥時などに温風が出る部分
勢いのあるシャワーを衣類に当たることで通常の洗濯工程では衣類をしっかり洗剤液に浸し、洗剤の効果を早く引き出して汚れを落ちやすくする。いっぽう、サッと予洗いコースでは強力なシャワーの力だけで汚れ浮かして洗い流す
サッと予洗いコースは洗剤を使わずシャワーの勢いで汚れを落とすため、衣類の汚れた面を上にしてシャワーが当たるようにしなければならない
サッと予洗いコースを行うと汗を模した汚れが、シャワーの勢いで落ちていく(下の動画参照)。シャワーが出ている1分30秒間は常に排水されており、その後、水を溜めてすすぎを行ったあと脱水される。1度に対応できる洗濯量は多くはないが、ほかの衣類と一緒に洗濯するには躊躇する汚れが“おまかせ”で落とせるのは便利だ。
説明会では汗を模した液体を噴きかけたTシャツと、食べこぼしで汚れた前掛けをサッと予洗いコースで洗う実演が行われた。約5分後、どちらも汚れは視認できないレベルに! この程度までキレイになれば、ほかの衣類と一緒に洗濯できる
従来からの踏襲となるが、洗浄や乾燥など基本性能に大きく影響する洗濯槽について軽く説明しておく。シャープの洗濯機は洗濯槽に穴を設けない独自仕様を採用しており、槽外側の汚れや黒カビが槽内に侵入しないというメリットがある。さらに、“穴なし槽”は洗濯時に槽の外に水が逃げないため節水効果があり、乾燥時は内槽に熱を閉じ込めることができるのでスピーディーに乾かせるという。
洗濯槽に穴が空いていないから、外側や底から水と一緒にカビや汚れが槽内に入ってこない
穴の有無で節水性能がどれほど変わるのかを、擬似装置で検証してみよう。それぞれで同じ量の給水を行った状況を作りだすため、装置を上下で反転させると……
穴あり槽と穴なし槽が左右逆になってしまったが、水を洗濯槽に入れた状態が完成した。同量の給水にもかかわらず、槽に溜まった水の量には差が! 穴あり槽は内槽から水が外槽に漏れるため、同じ水位にするためには穴なし槽よりも多くの水が必要なのだ
ここまで紹介した洗浄は3機種とも共通だが、10kgタイプ「ES-PX10A」には洗濯工程の前に衣類と洗浄液を温めることで汚れ落ちを高める「ガンコ汚れ」コースが用意されている。そのほか、モーターもパワーが強いものが採用されており、パルセーターのトルクが前モデルよりも20%アップ。槽内で強力な水流が生み出し、汚れを落とす。
温風がプラスされるのは、「ガンコ汚れ」コースのみ。乾燥運転の時に放出される温風を、洗濯時に利用するというものだ。洗濯槽を回転させて洗う工程の前に、洗濯槽内の衣類が約40℃になるように温めるという
衣類や洗剤液が温まることで、洗剤の酵素が活性化。洗剤のチカラを最大限に発揮するコースとなる。展示されていた汚れ落ちの検証では、色素が残りやすいケチャップも真っ白に!
一般的に皮脂は約37℃で溶解するため、Yシャツの首まわりや袖口に付いた皮脂汚れもバッチリ落とせる。皮脂汚れが残っていると黄ばみになってしまうので、定期的にガンコ汚れコースを利用するとよさそう
泥汚れもガンコ汚れコースで、きれいに落とせる
パルセーターは3機種とも同じで、イルカの尾びれの形状を応用することで竜巻のような巻き上げる水流を作りだす。10kgタイプ「ES-PX10A」はモーターがパワフルなため、さらに強力な水流となる
槽壁の凸凹も水流を加速させるための工夫だという。もちろん、この凸凹に衣類が当たることで、こすり洗い効果も発揮される
イルカの尾びれを模倣したパルセーターで生み出される水流は、上下に衣類を入れ替えて洗うことができる。その様子は、下の動画で見てほしい。水面に浮いていたボールが、水中に沈んだり上のほうに動いたりと大きく攪拌されている。きちんと攪拌できない洗濯機の場合、同じような検証をしてもボールは水面に浮いたままとなってしまう。槽の回転にあわせて回るだけでは、高い洗浄力は望めない。
しっかり攪拌しながら洗うことができるので、標準コースでも醤油や焼肉のタレ、赤ワイン、コーヒーなどの汚れも落とせるという
10kgタイプ「ES-PX10A」にだけ用意されている洗濯コースを魅力に感じても、容量が増したことで洗濯機自体のサイズも大きくなってしまうのではないかと懸念される方もいるだろう。だが、安心してほしい。ES-PX10Aは洗濯槽の上部にあるバランサーを薄型化することで洗濯容量をアップしながら、外寸は8kg/9kgタイプと同じとした。従来から採用している内フタレスの仕様も3機種共通となっており、大物の洗濯物の出し入れのしやすさもバッチリ。ただし、洗濯槽の中を見やすくするLEDライトが装備されているのはES-PX10Aのみとなる。
内フタがあると、投入口の上のほうのスペースが占領されて圧迫感がある
見るからに内フタがないほうが、取り出しやすそう
毛布を洗う場合は専用ネットに入れて行うが、出し入れのしやすさを検証するためにあえてネットはなしで試してみた。内フタがあると、投入口に毛布が引っかかり出すのも入れるのも一苦労。実際に洗濯すると取り出し時は濡れて重量が増す。投入口が広く、取り出しやすいことは非常に重要だ
新モデルは、ボタンを押すとフタが開くようになった
10kgタイプ「ES-PX10A」のみの仕様となるが、槽内を照らすLEDライトを装備。槽内が見やすくなる
LEDライトはフタを閉めていても点灯可能。点灯すると、洗濯中の様子を見ることができる