ロードバイクなどのスポーツタイプの自転車に乗り始めると欲しくなるのが、走行中のデータを記録できるサイクルコンピューターだ。さまざまな製品がリリースされているが、今回は、映像を録画するカメラにもなり、もしもの際にはドライブレコーダーにもなるXplova(エクスプローヴァ)のサイクルコンピューター「X5-Evo」をピックアップ! 実際に自転車に装着し、実力を調査してみた。
サイクルコンピューターにHD解像度(720p/30fps)のカメラを搭載したX5-Evoは、走行距離やスピードなどを測定するとともに、ライディングシーンを動画で記録できる。近年はサイクルコンピューターとアクションカムの両方を自転車に装備している人も増えているが、X5-Evoなら1台でどちらの使い方もできるというわけだ。なお、データや動画は内蔵メモリー(8GB)に記録されるので、編集やデータ共有を行いたい時にはスマートフォンを本機と接続し、アプリ上で行う。詳細についてはのちほどくわしく説明するが、一定の条件に到達すると録画がスタートする機能など、おもしろそうな仕掛けもほどこされている。
サイズは62(幅)×110(奥行)×24(高さ)mmで、重量は120g。サイクルコンピューターとしては大きいが、サイクルコンピューターとアクションカムをひとつにまとめたと考えれば妥当なサイズだろう。なお、バッテリー駆動で、最大約12時間使用できる(Wi-Fi/バックライトオフ時)
自転車への取り付けは、付属のマウントと六角レンチを使用。自転車のハンドルにマウントを装着し、そのマウントにX5-Evoを差し込むだけなので、休憩などで自転車から離れる際には手軽に外して持って行くことができる
ディスプレイが上になるように装着すると、前方にカメラが向く。角度の調整はできないが、レンズは120°と広角なので撮影範囲は十分だろう
本体に装備されたディスプレイは3インチ。周囲の明るさの変化に合わせて輝度を調整するアンビエントセンサーが搭載されている
アンビエントセンサーで明るさが調整されるディスプレイは、日差しの強い日中も日光が反射して見づらく感じることもなく、夜間の視認性もバツグン!
操作はタッチパネルで行う。静電容量式のタッチパネルの反応はよく、最新のスマートフォンレベルの感度だ
表示画面はスワイプで切り替え可能。レイアウトが異なる5種類の画面が用意されている
本体はIPX7の防水機能に対応しているので雨が降ってきても問題ないが、濡れるとタッチ操作ができなくなる。そんな時やグローブを着けて走行する人のために、録画や記録のスタート/ストップを行う物理ボタンも装備
X5-Evoで記録できる主なデータは、速度、平均速度、移動距離、移動時間、ルート、高度情報。データの記録はスタートを押して行うが、GPSで移動を検知すると「記録を開始しますか?」というメッセージが表示されるようになっているので、記録をし忘れることはないだろう。なお、タイヤの回転から速度や距離を計測して「ANT+」で本体に送るサイクルコンピューターもあるが、X5-EvoはGPSとロシアの通信衛星GLONASSで走行距離と速度を測定する仕様となっている。ただし、ANT+通信規格にも対応しているので、センサーを別途用意すればワイヤレス接続での記録も可能だ。
心拍計など各種センサーの接続に対応しているので、ハートレートモニター用のチェストベルトやスピードセンサー、パワーメーターなどを用意すれば、より細かいデータを記録できる
実際に走行して速度の表示をチェックしてみたが、精度は上々。車速の伸びに応じて表示速度も遅れることなく上昇し、GPSで計測しているわりにはレスポンスは優秀だ
ちなみに、ルートを記録したり、現在地を確認するための地図(日本国内)はプリインストールされているが、オンライン(Wi-Fi接続)で世界中のマップをダウンロード(無料)することもできる。ただし、X5-Evoでは目的地を指定してナビゲーションしてもらうことはできない。ナビ機能を使いたい場合は、スマートフォンのアプリ「XplovaConnect」または「Xplova Video」でルートを作成し、そのルートをX5-Evoに送信しておく必要がある。
行った先で何かを検索するような使い方には向かないが、あらかじめルートを設定して出かけることの多いツーリングには十分なナビ機能。休憩場所などをあらかじめ設定しておけば、目的地だけでなく休憩場所までの距離も表示できる
記録されたデータは本体で確認できるほか、スマートフォンのアプリ(「XplovaConnect」または「Xplova Video」)で読み取りも可能。また、データはXplovaの親会社であるAcerのクラウドサービス(無料)に保存もできるほか、「STRAVA」や「TraningPeaks」といった利用者の多い他メーカーのサービスに同期もできる。これまで使っていたサイクルコンピューターやスマートフォンのアプリのデータを継続して管理できるのは、大きなメリットだ。
Wi-Fi接続で同期しておけば、必要なデータだけアプリに転送できる
スマホアプリ「XplovaConnect」ではカレンダーからデータを選んだり、視覚的に操作しやすい。マップも高精細なのでアプリを使うほうがいいだろう
続いては、X5-Evoの最大のウリであるサイクルコンピューターと一体化されたカメラの性能をチェックしてみよう。カメラ機能は大きく2つに分類される。アクションカムのように走行シーンを撮影する「手動モード/自動モード」「タイムラプスモード」と、ドライブレコーダー的な役割を果たす「循環モード」だ。自分で録画スタート/停止を操作する「手動モード」や、一定の間隔で撮影した静止画を組み合わせて動画にする「タイムラプスモード」は一般的だが、「自動モード」がユニーク。速度や心拍数、時間などの数値が設定した値を超えると自動的に録画が開始される仕様となっているので、ツーリング中のハイライト部分を中心に記録できそう。そして、「循環モード」は録画時間2分の動画がループで撮影され、最大10本の動画がストックされる撮影方法となる(10本を超えると古いファイルを上書きして記録)。人や自動車の動きや衝撃を検知して記録がスタートする機能は搭載されていないので、あくまでも万が一に備え、映像を記録しておくといった感じだ。
まずは、天気のいい日中に街中を走ってみた。下の動画を見ればわかるように、カメラの解像度がHD(720p)であるため、4K撮影できるアクションカムと比べると画質的には見劣りするが、道程の記録用と考えれば十分ではないだろうか。
未舗装路での映像も確認すべく林道を走ってみたが、振動を受けやすいシーンはあまり得意ではないようだ(下の動画参照)。特に、振動しながら速度が増すシーンではブレが目立ってしまうので、未舗装路でアクションカム的に使うのは少し厳しいかもしれない。
自転車での走行は昼間だけではない! ということで、夜間の映り具合をチェックしたみたところ、街灯がある道ではそこそこ鮮明な映像が撮れた(下の動画参照)。ただ、灯りの少ない道では対向車のナンバーが識別できないレベルに……。車種は判別できそうだが、当て逃げされた場合の証拠として有効なのか考えると、ドライブレコーダーとしてはやや課題が残る印象だ。
ちなみに、内蔵メモリー(8GB)に録画できる時間は最大1時間15分。SDメモリーカードなどの外部メモリーには対応していないので、ツーリング中の様子を丸ごと録画するというより、「自動モード」や「タイムラプス動画」で見せ場の部分にフォーカスして記録するほうが向いているように感じる。
動画撮影を行うとバッテリー消費も激しくなる。1時間録画した場合、バッテリーは半分消費されるとのこと。動画撮影を長時間行う人は、モバイルバッテリーで給電しながら使ったほうがいいだろう
なお、ここで紹介した動画はスマートフォンのアプリ「Xplova Video」(無料)で読み込み、編集したもの。動画と走行データが紐付いているので、速度や心拍数などのデータをグラフィカルに表示し、動画に重ねることも可能だ(非表示にもできる)。また、アプリからYouTubeやSNSにアップすることもできる。
アイコンをタッチするだけでスピードメーターを表示させたり、BGMを挿入することができる。Xplova Videoで編集できるのは3分以内の動画と制限はあるが(オーバーしたものは事前にトリミングする)、アクションカムの動画編集に比べるととても簡単だ
使用する前はアクションカムのような画質で動画が撮れると思っていたので、正直、がっくりした部分もある。ただ、使い続けてみると、走行データを記録しながらついでに動画も撮るスタンスはなかなかおもしろい。その大きな鍵は、動画編集からアップロードまでが簡単なことにある。動画編集を行うスマートフォンのアプリ「Xplova Video」は編集できる動画の時間が3分以内と決まっているが、近年は短い動画のほうが好まれるので共有するならむしろベスト。それよりも視覚的に操作でき、サクサク進められるほうがいい。Xplova Videoなら、走行データと動画を後で組み合わせる手間がなく、ツーリングの休憩中に編集からアップロードまでできてしまうので、これまでのサイクルコンピューターやアクションカムではただ記録するだけで眠っていたデータも仲間に積極的に共有しやすい。この一連の作業が予想以上に満足度が高く、自転車で映像を記録する楽しさにハマってしまいそうだ。
ただ、何度も記しているとおり、画質はそれなり。クリアでキレイな映像を残したい人には向かないだろう。ドライブレコーダーとしての役割には少々課題があるので、あくまでも補助機能と思っておいたほうがよさそうだ。とはいえ、サイクルコンピューターとしての性能は上々で、GPSでの速度測定もスムーズで気に入っている。最初からさまざまなオプションがついている製品もあるが、「ANT+」に対応し、必要に応じて装備を揃えていくX5-Evoのようなスタイルはムダがない感じでいい。