イベントレポート

「秋のヘッドフォン祭2017」を3つのテーマで振り返る

世界最大級のヘッドホンイベント「秋のヘッドフォン祭2017」が、11月3日(金・祝)と4日(土)の2日間にわたり、東京・中野の中野サンプラザで開催された。今年はイベント開催の日程が3連休と重なったこともあり、来場者数は2日間で約1万人を記録。中野サンプラザの6・11・13・14・15階の全5フロアにまたがった会場には、今年も新製品や注目製品が所狭しと並べられていた。ここでは、イベントで展示されていた製品を、3つのテーマに分けて振り返っていきたい。

「秋のヘッドフォン祭2017」を3つのテーマで振り返る

「iPhone X」狙い? 完全ワイヤレスイヤホンが百花繚乱

今回ヘッドフォン祭の会場を取材で回っていて特に感じたのが、Bluetooth対応製品の多さだ。ヘッドフォン祭初日が発売日だった「iPhone X」の登場もおそらく関係しているのではないかと思うが、さまざまなブースでBluetoothヘッドホンやイヤホンの新製品が展示されていた。そのなかでも、左右のイヤホンをつなぐケーブルがない完全ワイヤレスタイプのイヤホンは、ここ最近大きなトレンドになってきているということもあり、メーカー各社がかなり力を入れている様子。会場では、非常に多くの新製品が展示されていた。なかでも、完全ワイヤレスイヤホンの製品が充実していたのが、完実電気とバリュートレードの2社だ。

完実電気は、B&O PLAY、SOL REPUBLIC、YEVOの各ブランドから発売されている完全ワイヤレスイヤホン3機種を一同に並べ、聴き比べできるように展示を行っていたが、3機種の中でも特に注目を集めていたのが、B&O PLAYから発表されたばかりの「Beoplay E8」。Bang&Olufsenの高いデザイン性やサウンドチューニングをしっかりと継承しつつ、イヤホン本体やバッテリー内蔵の専用充電ケースを非常にコンパクトにまとめ上げているところは、さすがB&O PLAYといったところ。また、アップル「AirPods」にも採用された、信号のドロップアウトやノイズによる干渉に強く、左右の音切れが少ないという特徴がある「NFMI(近距離磁界誘導)」を左右イヤホンのペアリング技術に採用するなど、完全ワイヤレスイヤホンのトレンドにもしっかりと対応しており、今後大きな注目を集めそうだ。

「Apollo 7」で有名なERATO(エラート)の完全ワイヤレスイヤホンの国内展開などを手がけるバリュートレードは、「Apollo 7s」の弟分として10月に発売された「VERSE」と、同じく10月に発売されたOptoma/NuForce (オプトマ ニューフォース)社初の完全ワイヤレスイヤホン「BE Free8」の展示を行っていた。特に「VERSE」は、税別14,800円という価格、「Apollo 7」譲りの超小型ボディからは想像できない高音質っぷりから、価格.comでも非常に人気の高いモデルだが、ヘッドフォン祭でも非常に多く人の注目を集めていた。

ここまでに紹介してきた2社以外のブースにも多数の完全ワイヤレスイヤホンが展示されていたが、なかでもエッジが効いていたのが、ゲートのブースで見つけたBRAGI社の「The Dash PRO」。製品のウリは、なんといってもその多機能さ。本体に加速度センサーやジャイロセンサーなどを搭載し、スマートフォンの専用アプリと連携して心拍数や歩行距離などを計測することが可能なほか、本体に4GBのメモリーを搭載し、スマートフォンなしでも音楽再生を楽しむことも可能となっている。また、本体にIPX7相当の防水性能を備えているのもポイント。水深1mまで対応しているので、プールなどでも問題なく使用できるという。ノイズキャンセリングなど、機能性をウリにした完全ワイヤレスイヤホンもポツポツでてきているが、今後、こういった多機能な完全ワイヤレスイヤホンというのもトレンドになりそうだ。

高級ヘッドフォン・イヤホンが久々に豊作!

ハイエンドヘッドホン・イヤホンは、ハイレゾブームがやや落ちついたこともあり、最近は以前に比べるとやや元気がなかったイメージがあったが、そこはヘッドフォン祭。王道ともいえるハイエンドヘッドホン・イヤホンにも、今年も多数の新製品や試作品が展示されていた。

特にヘッドホンについては、ULTRASONEが開放型ヘッドホンフラッグシップモデル「Edition 15」の発表会を、FOCAL(フォーカル)が開放型ヘッドホン「CLEAR」の発表会をそれぞれ実施したほか、オーディオテクニカの開放型ヘッドホンフラッグシップモデル「ATH-ADX5000」も試聴展示されるなど、開放型の高級ヘッドホンがかなり充実していた。また、トップウィングが取り扱いを開始したJPS Lab.社のハイエンドヘッドホンブランドAbyss(アビス)の平面駆動ヘッドホン「AB-1266 Phi」や、final(ファイナル)の平面駆動ヘッドホン「D8000」、MrSpeakers(ミスタースピーカーズ)の静電型ヘッドホン試作機など、従来のダイナミック型ではなく、静電型や平面駆動型を採用する製品も目立っていた。

いずれも共通するのは、ヘッドホンアンプと組み合わせて、本格的なデモンストレーションを行っていたこと。日本市場に限らず、世界的にポータブルオーディオのニーズが依然として高いが、そういった中でメーカー各社がホームリスニング向けもしっかり取り組んでいるというところをアピールしているのがとても印象的だった。

ハイエンドイヤホンは、海外メーカーを中心に高級モデルの展示が目立った。その中でも特に人気を集めていたのが、ミックスウェーブが国内展開を手がけるCampfire Audioの日本向け限定モデル「ANDROMEDA CK - Iceberg Special Edition」。200台の限定生産モデルとしてヘッドフォン祭開催2日前に発売されたばかりのモデルだ。ベースとなっている「ANDROMEDA」も非常に人気の高いモデルだったが、「ANDROMEDA CK - Iceberg Special Edition」はわずか1日で限定数が完売してしまったという。手に入れられなかった人も多かったようで、ブースは試聴を求めて多くのユーザーが訪れていた。

アユートブースで見つけたのは、事前アナウンスがなかったDITAの試作イヤホン。DITAイヤホンの第2世代モデルとして現在開発を進めているモデルとのことで、サウンドチューニングの異なる2種類が試聴展示されていた。実際に試聴してみたが、ひとつはこれまでのDITAサウンドがベース、もうひとつは低域を持ち上げたこれまでのDITAサウンドにはないモデルとなっていた。数量限定だった「DITA Dream」はすでに市場在庫がなく、後継機の登場が待たれているので、今後の新情報にも要注目だ。

コンパクトなミドルレンジ機が充実したポータブルDAC

ヘッドホンやイヤホンだけでなく、音楽リスニングに欠かせないポータブルDAPも、ヘッドフォン祭で展示が多いジャンルだ。この時期は冬のホリデーシーズンに向け、毎年数多くの新製品が発表されるのだが、今年は特にミドルレンジクラスの新製品の展示が多かった。

Astell&Kernブースでは、AKシリーズの最新DAP「AK70 MKII」を中心に展示。前世代モデル「AK70」譲りのコンパクトボディに、フラッグシップモデル「A&ultima SP1000」の開発で得たアンプ回路の思想を取り入れるなど、これまで培ってきた高音質技術を惜しみなく投入し、プレミアムエントリーとして大々的に訴求していた。また、同モデルをベースにした劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」とのコラボモデル「AK70 MKII 劇場版 Fate/stay night [HF]」の実機も初展示。予約も非常に好調に推移しているということだ。

トップウィングのブースでは、すでに発売を開始している世界最小のDSD対応DAP「PAW Pico」のほか、イベント当日に発売開始となった「PAW 5000 MKII JP Edition」、12月発売予定の「PAWGold2017」など、Lotooの最新DAP3機種が展示されていた。なかでも「PAW 5000 MKII JP Edition」は、DACチップに「AK4490EN」を採用。前世代の「PAW 5000」から価格据え置きながら、DSD256(11.2MHz)のネイティブ再生に対応するなど、対応フォーマットが大幅に拡大しており、ハイエントリークラスの注目モデルとなりそうだ。

オンキヨー&パイオニアブースでは、発表されたばかりのオンキヨーブランドの小型DAP“rubato”の最新版「rubato DP-S1(B)」の試聴機が並んでいた。既存モデルからのアップグレードは、「DP-X1」から「DP-X1A」になったときと同じ音質向上がメイン。外観が既存モデルとほぼ同じなため、地味なアップデートに見えるが、実際の音を確かめてみると、音質はしっかりと向上を果たしていた。

エミライブースでは、新たに取り扱いを開始したFiiOのDAP「X7 Mark II」と「X3 Mark III」をさっそく展示。いずれも、「X7」「X3 Mark II」の後継モデルとなるモデルだが、特に注目なのが、「X3 Mark III」だ。エントリークラスの製品ながら、デュアルDACや2.5mm4極のバランス出力対応など、他社のミドルレンジクラスに引けを取らない性能を実現。日本での正式な価格や発売日はまだ決まっていないということだが、価格次第では、エントリーDAPの台風の目になりそうだ。

遠山俊介(編集部)
Writer / Editor
遠山俊介(編集部)
2008年カカクコムに入社、AV家電とガジェット系の記事を主に担当。ポータブルオーディオ沼にはまり、家にあるイヤホン・ヘッドホンコレクションは100オーバーに。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットにも手を出している。家電製品総合アドバイザー資格所有。
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