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まだオワコンじゃない! 地味に進化してる「液晶(LCD)」の今と昔

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最近はテレビもスマホも、ハイエンド製品を中心に有機EL(OLED)パネル搭載製品が増え、その高画質が広く認知されるようになった。しかし身のまわりを見渡すと、テレビやスマホ、タブレットなど、いまだ液晶パネル(以降、「液晶」と略す)を搭載した機器が圧倒的に主流と言える。というのも、液晶も地味ながら進化を続けていて、有機ELに勝る特徴が存在するからだ。というわけで、最近は有機ELの話題の影に隠れがちな「液晶」(LCD)について、基礎知識、特徴、将来への展望を解説しよう。

まだだ、まだ終わらんよ! 液晶の世界は今も引き続き発展中

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画期的だった薄型テレビを軸に、液晶の歩みを振り返る

液晶の基礎知識として、まずはその歴史を振り返ってみたい。そもそも液晶がここまで普及した理由がわかると、より理解が深まるはずだ。シャープの公式サイトを引用すると、液晶とは「固体と液体の中間にある物質の状態(例えば石鹸水など)を指す言葉」「液晶に電気的な刺激を与えると、光の通し方が変わる」(引用元:シャープ「液晶の世界」)。その性質を応用したディスプレイ搭載製品として開発されたのが、1973年に登場した同社の電卓だ。

そして、90年代後半から一般家庭に普及が加速した「パソコン」のディスプレイに採用され、デジタル放送時代に向けて登場した「薄型テレビ」の表示技術として主流となったのは、みなさんもご存じの通り。以下、この薄型テレビの世界を軸に、液晶の歩みを語っていこう。

液晶方式を採用したテレビが、ブラウン管テレビに取って代わったのは、2000年前後のこと。劇的な薄型化が話題を呼び、SF映画のワンシーンが実現したかのような衝撃を与えた。その後、テレビの世界はブラウン管では不可能だった37型以上の大画面時代に突入し、ディスプレイ方式は「液晶方式」と「プラズマ方式」の2者がしのぎを削ることとなる。当時、液晶は「比較的低コストで、小型化や高精細化に適した技術」、プラズマは「高画質で超大画面に向く方式」として、一定の住み分けができていた。

液晶方式の大型テレビを世に送り出したのがシャープ。2004年に登場した「LC-45GD1」は、45型という大画面サイズで、当時業界最高レベルのフルスペックハイビジョン液晶テレビだった

かつて液晶方式とテレビ界における主力の座を争ったプラズマテレビ。その色域の広さやコントラストの高さといった画質面での優位性にはファンも多かった。画像は2010年に発売されたパナソニック「VIERA TH-P50V2」

長らく「液晶VSプラズマ」の図式で語られていたテレビの映像方式だが、2013年にパナソニックがプラズマパネル事業からの撤退を発表し、日本国内市場におけるプラズマテレビは終焉を迎えた。

液晶がプラズマを駆逐したきっかけは、いろいろな要素があるが、ズバリ「4K」時代の到来が大きい。高精細化に不向きなプラズマは撤退を余儀なくされた格好だ。その後、液晶はさらなる高精細化のほか、高輝度で低消費電力といった特性に磨きをかけるように、地道に進化を続けてきた。

液晶の進化を現す4つのポイント

テレビ、スマホ、ノートPC、カーナビやデジカメのモニターに至るまで、我々は液晶搭載機器に囲まれて暮らしている。もはや、液晶がなければ我々の生活はなり立たないと言っても過言ではない。ここまで普及したのは、液晶が元々持っていた欠点を克服しながら、同時に長所を伸ばしてきたという技術開発のたまものである。

ここでは、代表的な液晶の進化ポイントをあげ、くわしく解説しよう。製品選びの際、カタログに記載されているキーワードを読み解くうえでも参考になるはずだ。

▼1.倍速駆動・4倍速駆動

そもそも液晶は「ホールド型」という表示特性を備えており、静止画表示に適している。ホールド型とは、次の映像(コマ)が来るまで、前のコマを維持(ホールド)するという意味。パソコンで写真表示をさせるといった、同じ映像を数秒間映し出す必要がある場合、ホールド型の液晶はチラツキが少なくて好都合なのだ。

しかし、動画を表示する際は1秒間に24〜60コマの静止画を更新することで動きを表現する。液晶は、ホールド型の特性に加え、パネルの応答に少し時間がかかる面もあり、このせいで前のコマが残像として見えてしまうのが元々の弱点だった。

この残像問題を低減するべく、パネルの応答速度の向上に加えて登場したのが、コマ数を2倍にする「倍速駆動」や、4倍にする「4倍速駆動」といった技術だ。コマとコマの間に中間の映像を生成して挿入し、高速に更新することで、残像を短く目立たなくする仕組みである。ただし、元の映像にはない中間コマをテレビに搭載される映像エンジンが生成するので、高度な技術が必要であり、まさにここが製品ごとの“画質差”となって現れる。液晶テレビ選びで特に注目すべきポイントだ。

倍速駆動、4倍速駆動の原理イメージ。テレビ側がコマとコマの間に画像を生成してはさみ込む(画像:ソニー“BRAVIA”製品サイトより:https://www.sony.jp/bravia/products/KJ-X9500E/feature_1.html)

そのほか、残像を低減する技術としては、ブラウン管のように一瞬だけ光る仕組みを模して、コマとコマの間に黒画面を挿入する「インパルス駆動」という方法もある。ただし、視聴者にとってはブラウン管と同様のチラツキを感じやすく、映像も暗く見えやすいというデメリットがある。

全消灯のフレームをはさみ込む「インパルス駆動」の原理イメージ

全消灯のフレームをはさみ込む「インパルス駆動」の原理イメージ(東芝“REGZA”の発表会にて撮影)

その後、倍速駆動とインパルス駆動を併用した「バックライトスキャン」などの手法による高度な残像低減技術も登場。こちらは主にハイエンドモデルで採用されており、上述の弱点を克服している。

倍速駆動とインパルス駆動を併用したソニー「モーションフロー」技術の原理イメージ(画像:ソニー“BRAVIA”製品サイトより:https://www.sony.jp/bravia/products/KJ-X9500E/feature_1.html)

上述の「モーションフロー」技術を搭載するソニーの液晶テレビ「BRAVIA X9500E」シリーズ

上述の「モーションフロー」技術を搭載するソニーの液晶テレビ「BRAVIA X9500E」シリーズ

▼2.LEDバックライト

液晶テレビの歴史で大きな節目となったのが、LEDバックライトの実用化だ。液晶テレビは登場当初、バックライトにCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp/冷陰極蛍光管)を利用していたが、光源として新たに白色LEDが登場し、その白色LEDの高輝度化と低コスト化が進んだことで置き換わった。

LEDバックライトによる液晶方式の仕組みイメージ。液晶シャッターを開閉させることで、LEDバックライトの透過量をコントロールする

LEDは、CCFLのままでは不可能だったと思われる「液晶の低コスト化」「低消費電力化」「薄型化」に大きく貢献した。そのため、LEDバックライトを採用した液晶テレビを「LEDテレビ」と呼ぶメーカーも少なくない。また、LEDならではの特性を生かした液晶テレビの高画質化(後述)も、枚挙にいとまがない。

写真は、東芝のREGZAシリーズで採用されている全面直下(直下型)LEDバックライト

写真は、東芝“REGZA”シリーズで採用されている全面直下(直下型)LEDバックライト

▼3. バックライト分割駆動(ローカルディミング/エリア駆動)

そのLEDならではの高画質化技術の代表的なものが、この分割駆動だ。バックライトに多数のLEDを配置し、映像の画柄に応じてLEDの明暗をエリアごとに独立して点灯させる技術である。

液晶方式の弱点として、バックライトが映像の黒部分のシャッターを透過してしまうことにより、本来「黒」であるべき部分がグレーに見え、階調も失われる「黒浮き」(あるいは白浮き)と呼ばれる現象がある。パネル全体を照らすCCFLは明暗の調整が困難で、「黒浮き」は避けられない問題だった。

その点、応答速度の速いLEDは、明暗のコントロールが自在で、映像の暗い部分に対応するLEDを部分的に減光(あるいは消灯)することができる。これで、明るい部分の輝度は維持したまま、「黒浮き」を抑えられるのだ。ハイエンドモデルでは、液晶パネルの背面に独立してコントロールできる数百基のLEDを「直下型」として配置し、画柄にあわせてきめ細やかにコントロールできる製品が多い。

パナソニックの液晶テレビ“VIERA”の直下型多分割駆動のデモ。夜空に浮かぶ花火を表示しているときのバックライトの状態だ。画柄が想像できるだろう

直下型とエッジ型の画質差のイメージ。直下型のハイエンドモデルに対し、スタンダードモデルでは、画面の上下あるいは左右にLED光源を配置する「エッジ型」のモデルが多数(東芝“REGZA”の発表会にて撮影)

もちろん、LEDの分割数が多いほど高コストになりがちだが、画柄を細やかに再現でき、明るい部分の周囲にバックライトの光が漏れる黒浮き=フレアのような現象を少なくできるので有利だ。暗部で抑えた分の電力を、輝度の高い部分に注ぎ込み、ピーク感を高める応用技術もある。

また、上の項で紹介した残像を低減する技術「バックライトスキャン」も、LEDの高速点滅といった特性や分割駆動のなせる業。部分消灯により、チラツキを抑えつつ、黒画面を挿入するのと近い残像軽減効果をもたらす。

▼4. VAとIPS

液晶テレビのカタログでよく目にするのが、「VA」または「IPS」という記述である。これは液晶パネルの表示方式だ。

VA(Vertical Alignment)方式は、液晶分子を垂直方向に回転させる構造。映像をナナメ横から見るとコントラストが低下したり、色味が変化して見えるのが弱点だが、正面から見た際のコントラストが高いという利点がある。

VA方式パネルを採用する東芝「REGZA Z810X」。「前面直下LEDバックライト」「直下型LEDハイブリッドエリアコントロール」を搭載し、映像の表現力を高めていることが特徴

IPS(In Plane Switching)方式は、液晶分子を水平方向に回転させる構造。液晶の「視野角が狭い」という弱点を補うべく登場した方式だ。液晶シャッターの動作をパネルに対して平行にすることで、正面からの見た際のコントラストは犠牲になるものの、広視野角を実現している。

IPS液晶を搭載するパナソニック「VIERA FX800」。バックライトを分割駆動する「バックライトエリア制御」と微細なエリアごとに信号を制御する「エリアコントラスト制御」で明暗の表現力を高めている

実際の映像の見え方だが、良質なVAパネルは視野角改善に取り組んでいて、IPSに大きく引けを取らない製品も多い。いっぽうのIPSも、パネル自体の改善、バックライトの高輝度化および分割駆動を含む画像処理技術の工夫で、コントラスト比を高めている。もはやカタログスペックの視野角(コントラスト比が10:1以下になる角度)は意味をなさない段階になっているので、製品を選ぶ際は自身で実機を確認したり、クチコミやレビューを参考にするのがよい。

進化する液晶。3つの最新技術と動向を紹介

ここからは、地味ながら進化を続ける液晶ディスプレイの最新動向を紹介していこう。

▼1.IGZO

シャープ製品関連で、「IGZO」(イグゾー)の名を知っている読者も多いだろう。IGZOはインジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、酸素(O)を結晶化させ、一般的なアモルファスシリコンに比べ、20〜50倍の電流を流すことができる画期的な半導体技術だ。

IGZOの特性を液晶パネルに生かすと、さらなる高精細化、低消費電力化が可能になる。さらにスマホでは、静止画表示時に駆動を休止することでノイズを低減し、タッチ操作の感度向上にもつながる。IGZO液晶搭載スマホはすでにいくつもの製品が登場しており、実際に体感したユーザーからは好評の声が多く上がっている。

IGZO液晶を搭載するコンパクトなスマホ「AQUOS R compact」。後述する「IGZOフリーフォームディスプレイ」を採用したことにより、ベゼルレスデザインを採用していることもポイント

▼2. 量子ドット技術(Quantum Dot)

バックライトの蛍光体にナノ技術を利用することで、光の波長変換を行う技術。液晶テレビに応用すると、輝度のロスを抑えながら白色バックライトから高純度なR(赤)、G(緑)、B(青)色を取り出せるので、広色域化や低消費電力化が期待できる。

サムスンでは、量子ドット技術を適用したLED液晶テレビを「QLED」と呼称し、グローバル展開している。4K/8K放送では、HDテレビ時代のRec.709よりも色域が広いBT.2020規格が採用され、より色鮮やかな表現へと向かっている。量子ドットテレビは、このBT.2020色域のカバー率を高められるメリットがあり、さらなる進化や応用が期待されている。

サムスンの「QLED TV」。写真は65型のカーブドモデル「Q8C」。近年の同社の液晶テレビは、この量子ドット技術をメインで採用してきていた

▼3.フチなしで自由形状

先述のIGZO技術を応用したのが、シャープの「フリーフォームディスプレイ」。液晶駆動回路を表示領域内に分散して配置することで、形状が自由でフチなしの液晶ディスプレイを実現した。自動車の情報表示パネルなど、デザイン性が求められる用途で注目されている。将来は、丸型や三角のスマホが登場するかもしれない。

シャープがCEATEC 2015で展示した車載用情報表示を想定したフリーフォームディスプレイのデモ。ディスプレイの形状が自由になれば、製品のデザイン性を高めることもできる

最後に:液晶は有機ELに駆逐されるか?

最近、テレビ界では有機ELがもてはやされているが、これは液晶に比べて根本的にすぐれた特性を備えているからだ。その大きな特徴は、“自発光”であること。かつて、液晶とディスプレイ方式の覇権を争ったプラズマも、同じ自発光式だった。

現在市販されている有機ELテレビのパネルは全て、カラーフィルターを使った方式だが、サブピクセル単位で光量がコントロールできるという自発光に近い表示方式により、暗部の沈みと階調表現の高さ、そして暗部の色純度の向上を実現している。視野角特性にもすぐれ、残像が少ないのも、テレビとしては大きなアドバンテージだ。

いよいよ一般に普及し始めた有機ELテレビ。画像はLGエレクトロニクスの「OLED55B6P」。有機ELの大きな特徴は“自発光”パネルであること

しかし、いっぽうの液晶も、現時点では大量生産によるコストメリットが大きい。高輝度なので、日中に直射日光が差し込むような明るい環境でも鮮明な映像が得られ、寿命面での実績もあり、当面はディスプレイ方式として主力の座を維持するだろう。

2017年、世界初の8Kテレビは、シャープの液晶テレビ“AQUOS”として登場した

2017年、世界初の8Kテレビは、シャープの液晶テレビ“AQUOS”として登場した

将来、大型の有機ELパネルの大量生産が始まると、製造工程がシンプルで使用する部材が少ないことから、液晶よりも低価格にできる可能性がある。輝度の向上や寿命の問題も解決しつつあり、液晶がプラズマを駆逐したように、数年以内に有機ELが液晶を駆逐する可能性は十分にある。

もちろん、有機ELが究極というわけではない。新方式の「マイクロLED」も、実用化を促進する基礎技術が大幅に進展していて、ある日突然主役に躍り出るかもしれない。ほかにも、最近は影が薄いがシャープが開発に関わる「MEMSシャッターディスプレイ」という方式も存在し、こちらも要注目だ。

2018年にサムスンが発表した“マイクロLEDテレビ”は、液晶、有機ELに続く第3の新世代テレビと言われる。自発光するLEDモジュールを搭載する

液晶がさらに進化を続けるのか、有機ELが取って代わるのか、あるいはほかの新方式が台頭するのか? テレビの高画質化と低価格化の進展は、消費者の願いでもある。今後も、ディプレイ技術の進化から目が離せない。

鴻池賢三

鴻池賢三

オーディオ・ビジュアル評論家として活躍する傍ら、スマート家電グランプリ(KGP)審査員、家電製品総合アドバイザーの肩書きを持ち、家電の賢い選び方&使いこなし術を発信中。

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