デノン製Hi-Fiコンポーネントの新モデルとして、販売価格6〜7万円台を実現するエントリークラスの「800NE」シリーズが登場した。プリメインアンプ「PMA-800NE」、CDプレーヤー「DCD-800NE」、ネットワークオーディオプレーヤー「DNP-800NE」をラインアップする。デノンが“エントリーグレードの枠を超えた”とアピールする3機種の特徴をご紹介しよう。
新時代=New Eraのサウンドを鳴らすコンセプトの「NE」シリーズに、エントリーライン「800NE」が新登場。2018年8月中旬から順次発売を開始する
デノンが手がける「NE」シリーズは、「新時代=New Eraのサウンド」を実現するHi-Fiコンポーネントとして開発されてきた製品群。現在、上位モデルに「2500NE」「1600NE」の各シリーズをラインアップする。シリーズ全体を通して、ビビッド感のある“スペーシャス”なサウンドチューニングを特徴としている。
そのエントリーラインとしてリリースされたのが、今回発表された「800NE」シリーズ。内部回路のシンプル化を行いつつ、上位機種に共通する設計を投入することで、“クラスを超えるサウンド”をめざした。
上位機種と同じビビッドでスペーシャスなサウンドを、エントリーラインでもしっかりと実現するべく開発されたという800NEシリーズ
まずは、PMA-800NEから詳細を見ていこう。本機は、定格出力50W+50W(8Ω、20Hz〜20kHz、THD 0.07%)を確保するプリメインアンプ。
音声入力端子としてアナログRCAアンバランスを4系統のほか、同軸デジタルを1系統と光デジタルを3系統装備。最大192kHz/24bit PCMまでの入力ソースに対応する。オーディオプレーヤーはもちろん、デジタル光デジタル経由でテレビと、同軸デジタル経由でApple TVと接続するといった使い方も可能だ。
さらにMM/MC対応のフォノ入力を備えており、アナログレコードプレーヤーとも接続できる。デジタルからアナログまで、ニーズが多様化する現代のソース機器に対応できる仕様となっている。
本体サイズは434(幅)×122(高さ)×307(奥行)mmで、重量は7.5kg。音声出力端子は、スピーカー出力とRCAアンバランスに加え、フロントにヘッドホン出力も備えている
内部には、一般的なトランジスタの3倍のピーク電流供給能力を持つというHCトランジスタを、シングルプッシュプルで使用する「Advanced UHC-MOSシングルプッシュプル回路」を採用。入力カップリングコンデンサを使わないシンプルでストレートな構成とすることで、音質への悪影響を極力抑え、鮮度の高いサウンド再生を図った。
また増幅回路は、上位モデル「PMA-2500NE」「PMA-1600NE」と同じく、プリアンプでの増幅を行わず1段構成のハイゲインパワーアンプのみで増幅する「ハイゲインアンプ構成」としている。
プリアンプ回路とパワーアンプ回路、フォノ回路など、各回路間の相互干渉を抑えるため、それぞれのレイアウトを分離して構成。また、入力から出力までの経路を最短化する「ミニマム・シグナル・パス回路」を作用し、信号の劣化や色づけを極力抑えているほか、ソースの切り替えをリレー式とすることで信号ラインを最短化した
MM/MC対応のフォノイコライザーは、上位モデルと同様の回路構成。初段にデュアルFETを3パラレルで使用し、低ノイズ型のデュアルオペアンプと組み合わせている。なお、各種アナログ信号の入力時には、デジタル入力回路への給電を行わず停止させる「アナログモード」での動作が可能。アナログモード設定中は、光/同軸デジタル入力は使用不可
HCシングルプッシュプル回路の能力を最大限に引き出せるよう、電源回路もブラッシュアップ。大型EIコアトランスと、専用開発された8,200μF容量のカスタムブロック電解コンデンサー、大容量整流ダイオードを採用している。また、デノンのフラッグシッププリメインアンプ「PMX-SX1」の技術を汲むカスタムコンデンサーなど、エントリークラスながら高音質パーツを多数投入しているのもポイントだ。
電源回路も専用開発の大容量コンデンサーを使用するなどして、安定性を高めている
続いては、DCD-800NEをご紹介しよう。製品のカテゴリーとしてはCDプレーヤーだが、フロントにUSB-Aポートを1系統備えており、USBメモリー内音源の再生も行えるモデルだ。USB入力経由で、最大192kHz/24bit PCM、5.6MHz DSDまでのハイレゾファイル再生に対応する。
本体サイズは434(幅)×107(高さ)×275(奥行)mmで、重量は4.5kg
内部の音声処理技術には、独自のアップサンプリング&ビット拡張技術「Advanced AL32 Processing Plus」を搭載。デノンの“お家芸”とも言えるものだ。CD再生の場合、44.1kHz/16bitのデータを705.6kHz/32bitにアップサンプリング&ビット拡張して、本来のアナログ波形に近づけるべく高品位な補間処理を行う。
DAC部には、上位モデルと同じ192kHz/32bit対応の「PCM1795」を採用。デノン製CDプレーヤーのエントリーモデルとして、このクラスのDACチップを搭載するのは本機が初となる。DAC内蔵のデジタルフィルターではなく、上述の「Advanced AL32 Processing Plus」によってデジタルフィルター処理を行う構成も、上位モデルから引き継いだ特徴だ。
DACをマスターとして、FPGAやDSPなどをスレーブとして動作させ、デジタル回路全体の同期を高精度に行う「DACマスター・クロック・デザイン」を採用。クロック発信器をDACの直近に配置することでジッターの発生を抑える
デノンのお家芸「Advanced AL32 Processing Plus」による処理の効果イメージ。デジタル音声データを本来のアナログ波形に近づける
また、上位モデルであるDCD-1600NEの回路構成を受け継ぎ、回路全体をシンプル&ストレート化しているのがポイント。基板上の信号の引き回しを最短化しており、これによって回路間や左右チャンネル間の干渉を最小化し、クリーンで透明感のあるサウンド再生を図っている。
そのほか、電源部にはオリジナルの3,300μFブロックコンデンサーを採用。さらに上述のPMA-800NEと同じく、フラッグシップライン SX1の技術を汲むカスタムコンデンサーを搭載するなど、内部には高音質パーツを多数投入している。
最後に紹介するのは、DNP-800NE。最大192kHz/24bit PCM、5.6MHz DSDまでの入力ソースに対応するネットワークオーディオプレーヤーだ。ホームネットワーク経由でPCやNAS内にある音源を再生できるのはもちろん、AirPlayや、Spotify/Amazon Musicなどの音楽ストリーミングサービス、インターネットラジオの聴取も可能。デノン独自のネットワーク機能「HEOS」にも対応する。
また、Bluetooth機能も搭載しており、Bluetooth接続したデバイスからの音楽再生も可能だ。さらに、本機もフロントにUSB-Aポートを1系統備えており、USBメモリー内音源の再生が行える。
本体サイズは434(幅)×107(高さ)×312(奥行)mm(アンテナを寝かせた場合)で、重量は3.9kg
音声出力端子として、アナログRCAアンバランス(ボリューム固定/可変)、光デジタル、ヘッドホンを装備。ヘッドホン出力は3段階のゲイン切り替え機能を搭載し、高インピーダンスヘッドホンの接続にも対応する。
内部設計は上述のDCD-800NEと共通するポイントが多く、独自のアップサンプリング&ビット拡張技術「Advanced AL32 Processing Plus」を採用し、DACチップには192kHz/32bit対応の「PCM1795」を搭載する。また本機もDCD-1600NEの回路構成を受け継いでおり、回路全体をシンプル&ストレート化して基板上の信号経路を最短化。「SX1」の技術を汲むカスタムコンデンサーなど高音質パーツを採用する。
DCD-800NEと同じく、デジタル回路全体の同期を高精度に行う「DACマスター・クロック・デザイン」も採用
そのほか、上述のPMA-800NEやDCD-800NEと本機を、付属のIRコントロールケーブルで接続すれば、専用アプリ「Denon Hi-Fi Remote」を使ってスマホ/タブレットから操作が行えるようになる。
なお機能面では、デノン独自のネットワーク機能「HEOS」に対応しているので、専用のHEOSアプリを使用してスマートフォン/タブレットから簡単にセットアップや操作が行えるのもポイント。また、本機で再生中の音楽を同じホームネットワーク内にあるそのHEOS機能対応機器に配信して、ストリーミング再生するといったこともできる。
Hi-Fiエントリーユーザーが購入しやすいエントリーモデルでありつつ、将来的にマルチルーム再生も見据えてシステムを拡充する楽しみも持っている1台だ。
マルチソースに対応しながら、ゆくゆくは「HEOS」対応機器との連携拡充も図れるエントリーライン
オーディオ&ビジュアル専門サイトの記者/編集を経て価格.comマガジンへ。私生活はJ-POP好きで朝ドラウォッチャー、愛読書は月刊ムーで時計はセイコー5……と、なかなか趣味が一貫しないミーハーです。