レビュー
イヤホンとは思えない聴き心地のよいリアルな音色と、自然な音の広がりに注目

FitEar初の静電型ドライバー採用ハイブリッドイヤホン「EST Universal」徹底レビュー

国産カスタムIEMブランドとして日本有数の人気を誇るFitEarから、ユニバーサルタイプのカナル型イヤホン「EST Universal」が7月7日に発売された。

FitEar「EST Universal」

こちら、BA型ドライバーと静電型ツイーターが組み合わされたハイブリッドモデルで、FitEarとしては初の静電型ドライバー採用モデルとなる。一般的な静電型ドライバーとは異なり、静電型ドライバーに1:100の昇圧トランスを組み込むことで、一般的な静電型ドライバー搭載ヘッドホンのように専用の高電圧ヘッドホンアンプを必要とせず、従来のイヤホンと同様の3.5mmステレオ端子等で接続することができる。価格はオープンとされているが、実売は14〜15万円前後が想定されているようだ。

実はこちらの製品、メーカーとしては春の発売を予定していた様子なのだが、サンプル機の作成まではうまくいっていたものの、いざ量産をはじめる段階で静電型ドライバーユニットの能力に問題点が生じ、それを解決すべく発売を延期。このたび、追求していた理想のサウンドを(量産モデルで)実現でき、販売スタートにこぎ着けたという。

7月7日の発売では、ユニバーサルモデル「EST Universal」のみが登場し、カスタムIEM版は現在のところはまだスケジュールが定まっていない様子。ということで、筆者が手にしているカスタムIEM版はあくまでも参考程度にトドメ、「EST Universal」をメインにレビューしていこうと思う。

まず、「EST Universal」はこれまでのFitEar製ユニバーサル・カナル型イヤホン同様、に、イヤーモニター然とした樹脂系筐体を採用している。イヤーモニターである故に、一般的なカナル型イヤホンに比べてやや大柄といえるが、装着感のよさはなかなかのもの。このあたりは、カスタムIEMブランドの面目躍如といったところだろう。

また、筐体のカラーはブラックで、内部のドライバーは直接見ることができない。ダークグレーのフェースプレートが半透明であることから、よく見ればドライバーらしき部品の姿がうかがえるが、詳細まではわからない。

もともと、FitEar製のカナル型イヤホンは、“ドライバー構成を気にせず素直なサウンド表現を楽しんで欲しい”という意図により詳細が公表されていないモデルが多いが、今回の「EST Universal」もそういったポリシーに則った製品ラインアップとなっているのだろう。あくまでも、ドライバーに関してはBA型と静電型のハイブリッドという組み合わせと、BA型ドライバーをフルレンジで使用しているという情報が伝えられているのみだ。

もうひとつ、「EST Universal」ならではの特徴的な部分がある。それは、「オーバルホーンステム」と呼ばれる、オーバル形状に2つのポートを設けた、ノズル部分のデザインだ。こちら、もともとは既存モデル「FitEar Universal」用に生み出されたものだが、それを元に今回「EST Universal」専用のデザインを新設計。外耳道への干渉を抑える楕円形の断面や、高域減衰を抑制するホーン形状の開放部を採用することで、フラットでスムースな周波数特性と、長時間使用でも疲れにくい装着感、高い遮音性などを実現したとアピールする。

オーバル形状に2つのポートを設けた独自の「オーバルホーンステム」を採用することで、高音質と高いフィット感の両立を実現

既存モデルと同じく、ケーブルはFitEar専用の2pinコネクター採用の着脱式となる。また、ケーブル自身は、同社製「FitEar cable 006」が付属されている。SNS等での情報開示を見る限り、さまざまなケーブルをテストした結果としてもっとも良好なサウンドを実現できたため、こちらのケーブルを採用することにしたようだ。その他の付属品として、ペリカンケースやメッシュポーチ、ケーブルクリップ、イヤーチップ、クリーニングブラシなどが同梱されている。

ケーブル端子は、FitEar専用の2pinコネクターを採用。付属ケーブルは「FitEar cable 006」だ

ケーブル端子は、FitEar専用の2pinコネクターを採用。付属ケーブルは「FitEar cable 006」だ

ペリカンケースやメッシュポーチも付属

ペリカンケースやメッシュポーチも付属

ユニバーサルタイプのイヤホンということで、数種類の交換用イヤーピースも付属する

ユニバーサルタイプのイヤホンということで、数種類の交換用イヤーピースも付属する

さて、実際のサウンドはいかがなものだろうか。実は、以前に「EST」のサンプル機を試聴させてもらった際、あまりにもニュートラルなサウンドキャラクターと、まるで開放型ヘッドホンのように自然な広がり感に“最新カナル型イヤホンはここまで表現力のある、クセのないサウンドを実現可能なのか”と大きな衝撃を受けることとなり、その発売を待ち通しにしていた。そんな、大き過ぎるかもしれない期待を抱きつつ試聴を初めたのだが、期待を裏切らない、素晴らしいサウンドを楽しむことができた。

まず、カナル型イヤホンとは思えない、肩の力の抜けた自然なサウンドキャラクターに驚く。チェロは音に厚みがあり、しっかりした存在感を示しつつ、何処か艶やか。さらにピアノは、タッチの軽い煌びやかな演奏を聴かせてくれる。ドラムもキレがよく、特にハイハットやライドのリズムがとても鮮明だ。それでいて、まったく耳に痛くない、聴き心地のよいリアルなサウンドを聴かせてくれるのだ。音の広がり感や定位も素晴らしいほど自然に感じられ、特に定位感の揺るぎなさは驚嘆に値する。結果として、生楽器の演奏はとてつもないリアリティと躍動感を感じることができた。

続いて、デュランデュランのライブ音源を聴いてみる。とても音がクリアで、すべての演奏がしっかりと伝わってくるし、同時に観客の盛り上がりも如実に伝わってくる。音数が多く、きめ細やかなニュアンス表現を持ち合わせているため、ライブ音源を聴いてもリアル=高い臨場感が楽しめるのだ。アース、ウインド&ファイアも素晴らしくいい。ドラムとベースの演奏がとてもソリッドで、グルーヴ感の高い演奏が楽しめるし、何よりもボーカルが素晴らしくリアルに感じられる。質のよいホールで、ライブを見ているかのようだ。

フラットで上質な高域を持ち合わせているので、JポップやJロックとも相性がいい。RADWIMPSを聴くと、ギターやハイハット、シンバルなどの高域成分は鋭く叩きつけてくるものの、耳障りだったり、耳に痛かったりすることがいっさいなく、ノリのよいバードな演奏を存分に楽しむことができる。そうそう、これこれ。思わずそうつぶやいてしまうほど。筆者が開放型ヘッドホンを愛してやまない、聴き心地のよいリアルな音色と、自然な音の広がりを持ち合わせているのだ。イヤホンでこの音が楽しめるなんて、まさに奇跡の製品といっていいだろう。

ある意味、モニターイヤホンというイメージから想像されるサウンドキャラクターとは正反対のサウンドを持つ「EST Universal」だが、上質なヘッドホンにさえ勝るとも劣らない表現力の高さと聴きやすさは、何物にも代え難い唯一無二のもの。イヤホン、ヘッドホンのリファレンスとして多くの人の手元に置いて欲しいと思える製品だ。筆者もひとつ手に入れ、試聴等に大いに活用していきたいと思う。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

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