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デバイス形状によってマイク性能はどう変わる? イヤホン・ヘッドホンのマイク性能を徹底検証

デバイス形状によってマイク性能はどう変わる? イヤホン・ヘッドホンのマイク性能を徹底検証

昨今の世の中の事情により、ここ1年はテレワークの機会が増え、Zoomなどのオンラインミーティングで手元のイヤホン・ヘッドホンを活用して会話する機会が多くなってきた。その際、大いに気になるのが“マイク性能”だ。直接対面しての会話ではなく、映像を見ても(資料ならともかく相手の顔を見ても)伝わってくる情報が少ないため、音に頼る部分、マイク性能はとても重要な要素になってくる。マイク性能がよくない場合、何をしゃべっているのかよく聴こえないため、ろくな情報伝達ができなかったりする。しかも、自分のマイク音声が相手にどう聴こえているのか自分自身で確認する手段が少ないため(しかも大半の人は確認すらしていない)、かなり聴き取りづらい状態の人が多く、なかには何をしゃべっているかほとんどわからない人までいたりする。

実際の話として、とあるオーディオ系グランプリの審査員をさせてもらっている関係から、ここ1年で100以上のオンラインミーティングを経験させてもらったが、その大半がプレゼンターの声が聴き取りづらく、1日に5つ6つとミーティングが重なるもうへとへとだった。その中には、コンクリート打ちっぱなしの事務所の反響がひどくて聞きづらいといった環境の問題もあったが、大半がマイク製品の稚拙さからくる聴き取りづらさだった。

特にスマートフォン直というか、スマートフォン内蔵マイクによる会話は、オンラインミーティングではNGにしたほうがよいくらいダメな(聴き取りづらい)ものが多かった。強弱の幅がなく音も割れ気味なため、通話で1対1ならまだしも、会議などではひとり浮いた状態になってしまう。スマートフォン直はできるだけ避けて、イヤホンを接続して活用したほうが絶対に賢明だ。

いっぽうで、意外にも良好なのが比較的新しい世代のノートPCだ。サンプル数が少ないためすべてがそうだとはいえないが、少なくとも今回の取材に使用したMacbookやLG gramは下手なイヤホンよりも良好な音声で伝えてくれた。しかし、逆に古いノートPCだとかなり音声がダメだった経験もある。また、スピーカーの音量によっては、ハウリングを起こす可能性もある。現状では、どこでも気軽に持ち運びできるマイク付きBluetoothワイヤレスイヤホン/ヘッドホンを使用することが、一番無難であることは確かだろう。

そこで気になってくるのが、“どんなタイプのイヤホン・ヘッドホンがテレワーク向きなのだろうか”ということ。使い勝手については個人の好みや使用するシチュエーションの問題もあるが、ことマイク性能に関してはそれぞれどういった特徴があって、どういった指向性を持ち、テレワークでのオンラインミーティングに向いているのか事前に知っておくほうがなにかと便利だ。

今回はそういったデバイス形状によるマイク性能の違いを確認すべく、ソニー製をメインにイヤホン・ヘッドホン各タイプを借用して、実際にZoomミーティングを行ってマイクの音質をチェックしてみた。また、指向性やマイクANC(ノイズキャンセリング)機能の状態を確認するためにも、人の声の聴こえ方に加えて、音楽を再生してもらい、周りの音がどのように聴こえてくるかも確認した。

完全ワイヤレスイヤホン(ANC)−−ソニー「WF-1000XM3」

まずは完全ワイヤレスイヤホンの「WF-1000XM3」から。こちらの製品、ご存じの通りインテリジェントなANC機能付きのTWSイヤホンだが、マイクにも個別のANC機能が効いているようで、ANCのオンオフにかかわらず安定して人の声がはっきり聴こえる。圧縮強めの、ややナローレンジな声質だが、自然な印象は保っているので聴きづらさは皆無だ。

周りで音楽を再生した環境だと、ヒリヒリとした小さな音で歌が聴こえる。ノイズとしてマスクされているようで、会話のじゃまにはならなかった。逆に、音楽を相手に聴かせることもできないが、それは仕方のないことだろう。

完全ワイヤレスイヤホンは、マイク位置としてはかなり不利な状況にあるため結果を心配したが、デジタル調整によってうまくまとめているのか、実際にはマイク音声も最低限のクオリティはしっかり確保されていた。

ベストどころか、ベターともいいにくいが、スマートフォン内蔵マイクに比べれば格段によいので、ほかにもっと(マイク性能の)よい製品がなければ使用を許される範疇には入ってくると思う。

ネックバンド(ANC)−−ソニー「WI-1000XM2」

続いて、ネックバンドタイプの「WI-1000XM2」をチェックしてみる。こちらもANC機能を持つ製品だ。ケーブル部分の途中にマイクが配置されており、決して悪くないマイクポジションを確保できている製品なので期待していたのだが、思ったよりもよくない。声はとてもナローレンジで、声の調子が不自然なのだ。メリハリの幅も狭く、ちょっと声を上げると音が割れてしまったりする。原因がマイクANCのチューニングか、マイク自体の質の問題か、どちらかは判断できなかった。

とはいえ、マイク位置のよさが功を奏しているのか、これだけ音色としての印象が悪くても、相手が何を言っているのかはっきりとわかったりする。通話用としては、かなり良好なのだろう。また、音楽再生による周りの音もほぼ無音にしてくれるなど、ANCの効果としては決して悪くなかった。

メインとしての使用は無理かもしれないが、こちらもスマートフォン内蔵マイクに比べれば格段によいので、非常用としては悪くない範疇といえる。

ヘッドホン(ANC)−−ソニー「WH-1000XM4」

ある意味、一番期待していたのがANC機能を搭載する最新ヘッドホン「WH-1000XM4」だ。ヘッドホンであることがマイク位置的には大変有利だし、最新世代ということもマイク音声のデジタル調整の質、という点で優位性を持ち合わせているのではないかと思ったからだ。

しかし、実際の音を聴いてみるとそれほど良好とはいえないものだった。まず、声がすごくナローレンジで、かつ少々荒れた音になってしまっている。質のよいトランシーバー、といったイメージだろうか。声に厚みがあってしっかり声は届くのだが、音質としては決してよくはない。良質なサウンドを楽しませてくれる完成度の高いヘッドホンだからこそ、マイク音声の質の平凡さが目立ってしまった。ということなのかもしれない。ちなみに、周りの音楽は強めにミュートされてかすかに聴こえる感じ。音量に変な波がある状態よりも好印象を持った。

両手を挙げてオススメできるレベルではないが、スマートフォン内蔵マイクに比べれば圧倒的によく、まずまず使えるレベルといえる。

ヘッドホン(ANCなし/オンイヤー)−−ソニー「WH-H810」

続いて、ANC機能なしオンイヤータイプのワイヤレスヘッドホン「WH-H810」もチェックしてみた。こちらは、「WH-1000XM4」とは違ってかなり良好な印象だった。声は滑舌がよく、声色も自然。話している内容がよくわかるばかりでなく、そのニュアンスまで伝わってくる。音楽を再生するとほとんど聴こえない様子から、マイクANCが効かされていると想像できるのだが、ミーティングが成り立つ、良好な音声だ。

たまたま手元に「WH-H810」があったらとてもラッキーといえる。オンラインミーティングで大いに活躍できる、良好なマイク性能を持つ製品だ。やはり、ヘッドホンはマイク性能でも有利な製品が多い、ということが「WH-H810」で確認できたと思う。

ネックバンド(ANCなし/オープンイヤ)ー−ソニー「SBH82D」

ネックバンドタイプもスタイルの違う製品をもうひとつ試してみた。この「SBH82D」は、オープンエアー型という、周りの音が自然と聴こえるユニークな構造を持つワイヤレスイヤホンだ。装着感にちょっとしたコツが必要だが、カナル型イヤホンとは異なり、周りの音を遮へいしないため、安心して街中でも使用できるという大きなメリットを持っている。

こちらのマイク性能をチェックしたところ、抑揚の幅が狭かったり大声になると声が割れたりするデメリットがあるものの、至って自然な音声を聴くことができた。いっぽうで、音楽再生は音が大きくなったり小さくなったり、安定してくれない。ノイズとして一生懸命キャンセリングしているのだろうが、もう少しインテリジェントであればと残念に感じた。

逆に、「SBH82D」を使う側としてはなかなか好印象だった。相手の声が自然で、周りの音も入ってくるので、違和感なく会話ができるという。逆に、自然すぎて気持ち悪いくらいだったと取材を行った編集はコメントしていた。

オンラインミーティングでの活用は十分にOKといえる。「WI-1000XM2」の結果もふまえ、ネックバンドタイプは“ベストではないかもしれないがまずまず使える”製品が多そうだ。

ブームマイク付きゲーミングヘッドセット−−ロジクール「PRO X Gaming Headset」

ブームタイプのマイク部を持つケーミングヘッドホンは、今回のテストの中でも大本命といえるもの。ソニーはブームマイク付きのヘッドホンラインアップがないため、今回は手持ちのロジクール「G PRO」を使用し、大いに期待しつつマイク性能をテストしてみた。

結果は想像していた通りだった。マイク位置の圧倒的な優位さからくるのだろう、とても自然で、メリハリのはっきりした声が届く。おかげで、話している内容は集中しなくてもしっかりと伝わる。しかも、声のニュアンスまで明確に伝わってくるので、実際に会話をしているかのようなスムーズなやりとりを行うことができる。周りの音楽の聴こえ方も、かなり小さいが自然に聴こえる。完全にマスクはされないが、音量を普通にすればまず拾わないので、BGMを流しつつミーティング、というのも不可能ではない。

ことマイク性能に関しては、今回テストを行った中でベストなスタイルといえる。いや、単にロジクール「G PRO」のマイク性能がよかったという可能性も考えられるが、過去の経験から、ブームマイクを持つケーミングヘッドホンが格段に有利なのは間違いないだろう。

有線イヤホン−−ALPEX「Hi-Unit HSE-A2000PN」

最後に、参考までにマイクANC機能などを持たないシンプルな有線イヤホンのマイク性能もチェックしてみた。テストに使用したのはHi-Unitブランドの「HSE-A2000PN」で、こちらは凛として時雨のピエール中野氏が監修したモデルとなっている。

マイク音声は、滑舌よく、高域にちょっとしたクセを感じる以外は声の調子も自然。マイクにかけられるコストによる限界だろう、相手の口調の細かいニュアンスまでは伝わってこないが、素直な声色なのでとても聴きやすい。周りで音楽をかけてみると、どんな曲かわかるレベルギリギリの音量で伝わってきた。

スマートフォン内蔵マイクや付属品クラスのイヤホンより格段に質がよいし、今回のテストでも十分“使える”範疇に入る製品だと思う。

まとめ

今回のテストではっきりとわかったことがある。それは、マイクのクオリティは形式に左右されることが大きいが、製品の質による違いも顕著に出てくる、ということだ。

まず、形式については、ブームマイクを持つゲーミングヘッドホンが圧倒的に有利で、続いて、かなり離れてヘッドホンとネックバンド式イヤホンが並ぶ、といった印象だ。完全ワイヤレスイヤホンは想像通りかなり不利な製品形状だということがわかったが、その中でも「WF-1000XM3」はなかなかに健闘していると思う。そのほかの完全ワイヤレスイヤホン製品の中で、「WF-1000XM3」のマイク性能がどのような立ち位置になるのか、一度試してみたいところだ。

マイクに関してここまで注目が高まったのはここ1、2年のことなので、最新モデルが圧倒的に優位という風潮があるようにも思えるが、実際には、デバイスの形状だけでなく、製品の質によってもマイク性能が大きく左右されることが今回の取材でわかった。マイク性能は自分ひとりでチェックするのはまず不可能だが、今回の記事などを参考に、ぜひ自分の使い方にあった製品をチョイスしてほしい。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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