年末にかけ、ようやく日本国内でもコロナ禍が落ち着き始めた2021年。今年もAV家電はさまざまなトピックがあった。7月に東京五輪が無観客で開催されたものの、スポーツの祭典は残念ながらテレビとネットで観戦する形となり、外出自粛が厳しく求められた期間も多かったことから、YouTubeや各種サブスク映像配信視聴でおうち時間を楽しむ“おうちエンタメ”がますます盛り上がった1年となった。そんな2021年のAV家電のトレンドを、テレビやサウンドバー、プロジェクターのヒット商品とともに振り返っていこう。
※記事内の価格はすべて2021年12月30日時点のものになります。
毎年恒例ではあるが、4Kテレビの価格下落が今年も続いている。製品構成としては、低価格帯は4K液晶テレビ、ハイエンドは4K有機ELテレビという棲みわけがおおむね維持されているが、全体的な価格は値下がり続けているようだ。
価格下落が続く液晶テレビ・有機ELテレビ。価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーのランキング上位も、安価な液晶テレビだけでなく、ハイエンド有機ELテレビも多数ランクインしている
いくつか例をあげると、格安テレビとして定番となったハイセンスの50V型4K液晶テレビ「50U7FG」が価格.com最安価格で6万円代前半。4K液晶テレビのミドルレンジではTVS REGZA「REGZA 55Z670K」が価格.com最安価格で10万円台後半。4K液晶テレビの人気モデル、ソニーの55V型「BRAVIA XRJ-55X90J」が価格.com最安価格で14万円なかばという具合だ。
格安テレビの定番モデルとなっているハイセンス「50U7FG」
TVS REGZA「REGZA 55Z670K」。4K倍速液晶パネルを搭載し、比較的安価なゲーミングモデルとしても注目されている。レポート記事はコチラ
ソニー「BRAVIA XRJ-55X90J」は、最新の認知特性プロセッサー「XR」搭載のプレミアム4K液晶テレビ。レポート記事はコチラ
4Kテレビの上位クラスになると、一気に有機ELテレビが中心の顔ぶれに変わる。パナソニックの4K有機ELテレビを例に取ると、価格重視の「VIERA TH-55JZ1000」が価格.com最安価格で17万円台後半、最上位モデルである「VIERA TH-55JZ2000」が価格.com最安価格で23万円台なかば。比較的手ごろなモデルだと、TVS REGZAの48V型「REGZA 48X8900K」が価格.com最安価格で14万円台前半。薄型テレビ全体としてみると、昨年の同クラスの製品と比べるとおおむね2割ほど値下がりが進行している。大画面の4Kテレビが手ごろな価格で手に入りやすくなっていることは、ユーザーとしては大歓迎と言えるだろう。
パナソニック「VIERA TH-55JZ1000」は、同社有機ELテレビのメインストリームモデル。昨年の上位モデルで導入された技術を投入し、コントラスト性能が飛躍的に向上している。レポート記事はコチラ
パナソニック4K有機テレビのフラッグシップモデル「VIERA TH-55JZ2000」。イネーブルドスピーカーとワイドスピーカーを搭載し、音にも徹底的にこだわった注目のモデルだ。レポート記事はコチラ
4K有機ELテレビの中でもコストパフォーマンスにすぐれたモデルとして注目されているTVS REGZA「REGZA X8900K」シリーズ。コンパクトな48V型「REGZA 48X8900K」はパーソナルユースでも導入しやすい。レビュー記事はコチラ
2021年の4Kテレビの新たなトピックといえば、ミニLED搭載テレビの登場だろう。ミニLEDは、液晶テレビのバックライトに極小のLEDを数千個単位で敷き詰め、それらを細かく分割して制御を行うことで、ローカルディミングを従来にない高精度で行うための技術だ。画面のピーク輝度が高まるだけでなく、有機ELテレビが苦手とする画面全体の平均輝度も高められる。もちろん消灯の精度も上がるため、黒色の表現も従来の液晶テレビより得意だ。
左が従来のLED、右がミニLED。小さなLEDを敷き詰めて緻密にコントロールすることで、高精度なローカルディミングを実現できるほか、LEDの光を拡散させる大掛かりな光学設計が不要となり、パネルを薄型化できるのもミニLEDのメリットだ
ミニLEDはアップルが5月に発売した12.9インチ「iPad Pro」に先取りされる形になったが、6月にLGエレクトロニクスが日本国内に初めてミニLEDを搭載した液晶テレビ「LG QNED MiniLED」シリーズを発表。8Kモデル「QNED99」と4Kモデル「QNED90」シリーズが投入された。そして、日本のテレビメーカーからは、シャープがミニLEDを搭載した液晶テレビ「AQUOS XLED」を製品化。8Kモデル「DX」シリーズ、4Kモデル「DP1」シリーズがすでに発売されている。
シャープは国内テレビメーカーとして初めてミニLEDを搭載した液晶テレビ「AQUOS XLED」を製品化。レポート記事はコチラ
シャープの「AQUOS XLED」は12月発売ということもあって、4K・65V型モデル「AQUOS XLED 4T-C65DP1」は価格.com最安価格で約36万円と、4K液晶テレビとしてはやや高めの値付けとなっているが、ミニLEDは技術的に有機ELテレビより安く作れ、大画面化に向いていると言われており、4K液晶テレビのハイエンドを置き換えていく可能性大だ。
ミニLEDを搭載したシャープの65V型4K液晶テレビ「AQUOS XLED 4T-C65DP1」。価格.com最安価格で約36万円だ
2018年に東芝グループを離れ、ハイセンスのグループ会社となった東芝映像ソリューションは、レグザブランドの発売開始から15周年を迎えた今年3月に、ブランド名を掲げたTVS REGZAへと社名を変更。そんな流れを受けてか、ついにシステムプラットフォーム改革にも着手を始めた。6月に発売した4K有機ELテレビ「X8900K」シリーズ、4K液晶テレビ「Z670K」シリーズ、そして9月に投入した4K液晶テレビ「M550K」シリーズ、「Z570K」シリーズがAndroid TVプラットフォームに移行。Netflixに対応していないという弱点はあるが、レグザでおなじみの録画系サービスの移植も進められている。
TVS REGZAが2021年に投入したミドルクラス以下の製品はすべてAndroid TVプラットフォームに切り替わった。写真は、TVS REGZAの4K有機ELテレビ「X8900K」シリーズ。レビュー記事はコチラ
ただし、Android TVプラットフォームに移行したのはミドルクラス以下のモデルのみで、
レグザのハイエンドはあくまでも従来のプラットフォームのままだ。2月発表の4K液晶テレビ「Z740XS」シリーズ、4月発表の全録対応のタイムシフトマシン4K有機ELテレビ「X9400S」シリーズは、Android TVプラットフォームではなく、従来の独自プラットフォームを継承している。レグザとしても、全面的にAndroid TVにシフトすることは予定していないとコメントしている。今後もハイエンドは独自プラットフォーム、ミドルクラス以下はAndroid TVプラットフォームという形ですみ分けていくか、それともAndroid TVプラットフォームに集約していくのか、真意については今後の新製品が出てみないとわからないところではあるが、当面は両プラットフォームが混在する状況が続きそうだ。
2021年時点では直接製品に関わる内容ではないが、パナソニックが1月に薄型テレビの小型・低価格モデルを中国TCLに生産委託で合意したと報じられている。また、最近は新製品が店頭に並ぶことのなかった三菱電機は、11月にテレビ事業の事業縮小、事実上の撤退を発表した。海外メーカーが勢いを増す中、国内メーカーは事業再編が続いていくことになりそうだ。