マランツから、ネットワーク対応プリメインアンプの新モデル「MODEL 40n」が発表された。メーカー希望小売価格は286,000円(税込)で、2022年3月下旬発売を予定している。ネットワーク機能やBluetooth再生、レコードプレーヤーとの接続に対応する全方位型のモデルで、さらにテレビとHDMI接続できる仕様になっているのも大きな特徴だ。
簡単に言うと、テレビやネットワーク機器など多くのデバイスと接続でき、リビングや書斎などライフスタイルに合わせてさまざまな場所に設置しやすい高品位な2chアンプという位置付け。テレビ周りの音声環境を高品位にグレードアップしたい人や、長らく愛用していたアンプの買い換えを機にネットワーク対応環境を構築したいと思っている人などにも、ぜひ注目していただきたい。
MODEL 40nのスペックについてご紹介する前に、まずその外観について軽く触れておきたい。本機は、マランツHi-Fiコンポーネントの最新世代を象徴するデザインを採用している。詳しい方はよくご存じだと思うが、2020年に登場したプリメインアンプ「MODEL 30」と共通の外観で、かつての“オールドマランツ”を彷彿とさせるクラシカルな趣も備えつつ、現代的なイメージも同居する新世代のデザインとなる。
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上述の通り、本機は多くのデバイスと接続できるプリメインアンプであることから、往年の“オーディオ然”としたデザインではなく、リビングから書斎、オーディオルームまで、ライフスタイルやシーンに合わせてさまざまな場所に設置しやすいことを意識した意匠となっている。
本体サイズは443(幅)×130(高さ)×432(奥行)mm(ロッドアンテナを寝かせた場合)、重量は16.7kg。カラーはシルバーゴールドとブラックの2色で、壁紙やインテリアの色に合わせて選択できる
音声入力端子はアンバランス×3、PHONO(MM)×1、POWER AMP IN×1、HDMI(ARC)×1、同軸デジタル×1、光デジタル×1、USB-A×1、音声出力端子はスピーカーのほか、サブウーハープリアウト×1、RECアウト×1、ヘッドホン×1を装備。そのほか、ネットワーク接続用のLAN端子や、BluetoothおよびWi-Fi接続用のアンテナを備えている
スタイリッシュなシルバーゴールドを、ブックシェルフスピーカーと組み合わせてリビングや書斎の棚に
テレビ周りに設置するなら、テレビや周辺機器とカラーがなじみやすいブラックも○
続いては、基本スペックおよび機能面を見ていこう。MODEL 40nのプリメインアンプとしての基本スペックは、定格出力が100W+100W(4Ω、20Hz〜20kHz)/70W+70W(8Ω、20Hz〜20kHz)。上述の通り、ネットワーク機能やBluetooth接続をサポートし、ネットワーク/USB経由で最大192kHz/24bit PCMおよび5.6MHz DSDまでのハイレゾ再生に対応するほか、「Amazon Music HD」「Spotify」といった音楽ストリーミングサービスの聴取も行える。また「AirPlay 2」での再生や、Alexa搭載デバイスからの音声コントロールにも対応している。
さらにMM型対応のフォノイコライザーも搭載しており、レコードプレーヤーも接続することができる。そして、ARCに準拠するHDMIポートを1系統備えており、テレビとHDMIケーブル1本で接続できることが特徴だ。テレビの音声を高品位にグレードアップすることができる(リニアPCM/2ch)。
なお、細かいところではあるが、このHDMI部の設計にもマランツらしさが見て取れる。と言うのも本機は、HDMIケーブルを通してテレビ側から伝送されるオーディオ信号入力について、内部のHDMIインターフェイスデバイスをバイパスして、デジタルオーディオセレクター(DIR)に直接入力する仕様になっているのだ。さらに、デジタルオーディオ回路の電源の強化や低ノイズ化、グラウンドの強化等の徹底した音質チューニングを施しているとのことで、ほかのデジタル入力同様にHDMI入力時も高品位な再生が行えるように工夫されている。
テレビリモコンからの連携操作が行えるようHDMI-CEC機能は使用するので、MODEL 40n内部のHDMIインターフェイスデバイスはもちろんアクティブになっているが、オーディオ信号はそこをバイパスする仕組みになっている
続いては、本体および内部の設計を見ていこう。最新世代のデザインに合わせて、機構設計や使用パーツにいたるまで高音質化を図っているのが特徴となる。なお、上述の通り外観はMODEL 30とほぼ同じなのだが、MODEL 30ではパワー部がクラスDアンプだったところをMODEL 40nではアナログアンプとするなど、細部がよりグレードアップしている。
ハウジングを構成するメインシャーシに用いられる鋼板の厚みは12シリーズと同等とし、アルミ製サイドカバーについては12シリーズを凌駕する最厚部5.7mmの高剛性なアルミパネルを採用している
メインシャーシに加えて3mm厚のボトムプレートを追加。インシュレーターや電源トランスの固定に特に太いネジを用いるなど、細部に至るまで徹底した改善を行った
プリ部には、同社独自のHDAM+HDAM-SA2搭載可変ゲイン型プリアンプを採用。日清紡マイクロデバイス製の最高グレードのボリュームコントロールIC「MUSES 72323」に、同社独自のモジュール「HDAM」と「HDAM-SA2」を組み合わせた設計で、高性能なリニアコントロール・ボリューム回路を構成している。一般的に使用頻度の高い音量の範囲内ではプリアンプでの増幅を行わずに、パワーアンプのみで増幅する可変ゲイン型とすることにより、大幅なノイズ低減を図っているのがポイントとなる。
そしてパワーアンプには、マランツ独自のHDAM-SA3を用いたフルディスクリート構成の電流帰還型増幅回路を採用。出力段をパラレルプッシュプルで構成することにより、瞬時電流供給能力を従来モデル「PM8006」の約1.5倍となる68Aまで引き上げ、スピーカー駆動力を大きく向上させている。
プリ部のHDAM回路を改良したことにより、従来モデル「PM8006」比で45%のノイズ低減効果を実現
パワー部には、フルディスクリート電流帰還型パラレルプッシュプル・パワーアンプを採用。トランジスタから発生する熱を素早く拡散&放熱して、トランジスタの動作を安定させるため、肉厚なアルミ押し出し材のヒートシンクに銅製のプレートを追加する設計としている
プリアンプ回路やD/A変換回路、フォノイコライザー回路には、上位モデルでも採用されている銅箔フィルムコンデンサーや高音質フィルムコンデンサー、高音質電解コンデンサー、精密メルフ抵抗、金属皮膜抵抗など、リスニングテストによって厳選された高音質パーツを贅沢に使用
もちろん電源部にもこだわっており、クラス最大級のトロイダルトランスとカスタムコンデンサーによりハイスピードかつ余裕のある電源供給を行う
フォノ部には、MMカートリッジ対応のNF-CR型フォノイコライザー「Marantz Musical Phono EQ」を搭載。1段あたりのゲインを下げた2ステージアンプ構成と可聴帯域内コンスタント・カレントフィードバック回路により低歪を実現
ネットワーク・モジュールやデジタルオーディオ回路、電源回路などから発生するノイズによる音声信号への干渉を最小限に抑えると同時に、外来のノイズによる影響を防止するために入念なノイズ対策を施している
というわけで若干駆け足になったが、MODEL 40nの特徴をご紹介してきた。ネットワークオーディオ機能、Bluetooth再生、アナログレコードプレーヤー接続、さらにテレビも含めてマルチにつながる最新世代の機能性を備えつつ、マランツの高音質技術を投入した高品位アンプであることがおわかりいただけたと思う。リビングのラックに設置してテレビの音質グレードアップを実現するもよし、寝室や書斎の棚にブックシェルフスピーカーと組み合わせて設置するもよし、もちろん、最新のネットワーク対応機としてオーディオルームで長年活躍したアンプと置き換えるもよし。ユーザーのライフスタイルに合わせて、さまざまなシーンで活躍してくれそうな1台だ。
オーディオ&ビジュアル専門サイトの記者/編集を経て価格.comマガジンへ。私生活はJ-POP好きで朝ドラウォッチャー、愛読書は月刊ムーで時計はセイコー5……と、なかなか趣味が一貫しないミーハーです。