ただ音楽を楽しむだけではなく、外部の騒音を低減するノイズキャンセリング機能など、さまざまな機能や特徴を備えるイヤホンが登場している中、外部の音が自然に聞こえる“骨伝導タイプ”の注目度が上がっている。在宅勤務でのニーズも増え、骨伝導イヤホンの老舗、Shokz(ショックス)の「OpenComm」は、価格.comの「ヘッドセット」カテゴリーにおける注目ランキングで1位(2022年5月3日時点)に支持されている。
このShokzから、骨伝導イヤホンの最新モデル「OpenRun Pro」が発売された。軽量・防水対応ボディということで運動を行う人向けでもあるが、在宅勤務など仕事にも備える機能性の高さを備える。筆者も同社の骨伝導イヤホン「Aeropex」を愛用しており、その利便性の高さに魅入られてしまったひとり。今回は、この最新モデル「OpenRun Pro」を実際に試し、その使用感などをお届けしよう。
Shokzの骨伝導イヤホン最新モデル「OpenRun Pro」
現在、いくつかのメーカーから骨伝導タイプのイヤホンはリリースされているが、その中でもパイオニアと言えるブランドが、アメリカのShokz(ショックス)だ。(※2021年AfterShokzからブランド名を変更)
筆者はランニングなどのスポーツを趣味としていることもあり、運動中でも外部の音が聞こえる骨伝導イヤホンを3年ほど愛用している。使用しているのはShokzの「Aeropex」。スポーツシーンはもちろん、在宅勤務時でも着けっぱなしにするなどかなりのヘビーユーザーだ。
筆者がShokzを長らく使用している主な理由は「装着感のよさ」と「音質のよさ」の2つ。前モデル「Aeropex」の時点で、1日中着けっぱなしにしていても違和感がなく、きちんと音が聴こえることに驚いた。音楽関連を専門にしているわけではないので、音質には触れないが、一般的な感覚で満足できるレベルにあると思う。もちろん、密閉型のイヤホンに比べれば当然音質は落ちるが、ながら聞き重視の自分にとってはまったく問題がない。
最新モデルの「OpenRun Pro」は、その音質面、特に低音がブラッシュアップされたほか、バッテリー駆動時間が「Aeropex」に比べて2時間長く、合計10時間も持つように進化している。IP55相当の防水・防塵ボディなので、スポーツ時の使用も安心だ。
前モデル「Aeropex」(上)と最新モデル「OpenRun Pro」(下)。耳にあたるアーチ部分の形状に違いはほとんどないが、顔にあたる振動部分が少し小さく薄くなった
重量は「Aeropex」と比べて3g増えているが、装着してみるとほとんど影響はない。それどころか振動部分が薄くなったためか、装着感が向上したようにも感じる
操作方法はほぼ違いがなく、ボタンの配置なども変更なし。充電ポートは急速充電に対応しており、5分間の充電で最大1.5時間の音楽再生が可能だ
骨伝導イヤホンは耳をふさがない分、適切な位置に装着しないと音が聞こえにくくなる傾向があるため、フィット感が重要だ。しかしその半面、密着しすぎると耳の周辺に痛みが出ることもある
「OpenRun Pro」は、両サイドの振動部分から伸びるアーチにはチタン製バンドを採用。ホールド感がほどよく、頭を振ってもズレにくい。違和感がすくなく、長時間使用していると、着けているのを忘れたような感覚になる。
チタン製バンドでちょうどいい着け心地を実現
本体には、電源ケーブルと持ち運び用のケースが付属。「Aeropex」の時は1日中装着していても外す瞬間がまったく訪れないため、ケースの使用もほぼなかったも同然。それはこの「OpenRun Pro」でも変わらない
「マルチポイントペアリング」機能を使用すれば、スマホとタブレット、スマホとPCなどをシームレスに使い分けることができるようになる。筆者は音楽はスマホ、タブレットではリモート会議をすることが多く、その切り替えがスムーズにできるのが便利だ
ここからはランニング中、地下鉄内、リモート会議など、いろいろなシチュエーションで本製品を使用した印象をお伝えしていく。やはり骨伝導イヤホンのよさは、外の音が自然に聞こえることが大きなメリット。特にランニング中は、クルマや自転車など周囲の状況を把握する必要があり、安全にランニングをしたい人には最適なイヤホンと言えるだろう。
装着感が軽く耳への負担はかなり少ない。マスク+サングラス+「OpenRun Pro」を着用してランニングしてみたが痛みなどはまったくなし
地下鉄内で使用してみたところ、「Aeropex」とは聞こえやすさに大きな違いが感じられた。前モデルでは、正直なところ、音量を最大に上げても聞こえにくかった再生音が、OpenRun Proではしっかりと聞こえるように進化している。ポッドキャストなどラジオ的なものも聞き取りやすく、イコライザーで「ボーカル」に設定するとさらに聞き取りやすくなった。ただし、静かな曲調のものは、地下鉄の騒音の中ではちょっと難しいように感じる
このほか、「マルチポイントペアリング」の接続や切り替えがスムーズになったことで、スマホで通話して、その後にタブレットでリモート会議、という使い方ができるようになり、テレワークがさらに快適になった。バッテリーで10時間駆動するのでバッテリー切れの不安もなく、装着性も高いので1日中着けっぱなしでも問題なし。「デュアルノイズキャンセリング」対応のマイクが搭載されており、カフェでリモート会議をしたときも、相手に音声が届かないこともなく、スムーズなコミュニケーションがとれた。
骨伝導イヤホンは音がよくないという印象をもつ人も多いと思うが、この「OpenRun Pro」に関しては、試してみればそれが思い込みということに気づくだろう。ながら聞きでは問題ないくらいの音質になっている。外部の音は聞こえるので小さな音を聴こうとすると音漏れはしてしまうが、大きく気にならないレベルに収まっている。
「安全にランニングをしたい」
「長時間装着でも耳が痛くならない」
「テレワークで使えるマイク付きイヤホンが欲しい」
そんな人にはピッタリの製品と言えるだろう。
ミラソル デポルテ代表。自転車、トライアスロン、アウトドア関連のライターとしても活動中。趣味はロングディスタンスのトライアスロン。