日本でもサウンドバーの人気が徐々に高まってきている。テレビの大画面化に加え、映像配信サービスの普及で自宅にいながらさまざまなコンテンツにアクセスできるようになったことや、コロナ禍によっておうち時間が増えたことも追い風になっているようだ。また、日本は壁の多い特殊な住環境が多いということもあり、導入ハードルの高い本格的なホームシアタースピーカーよりも、簡単に接続して手軽に自宅のテレビの音をアップグレードグレードできるサウンドバーと相性がよかったというのも一因と言えるだろう。
日本ではサウンドバーの中でも特に1本バータイプのサウンドバーが人気のようで、価格.comの「ホームシアター スピーカー」の人気売れ筋ランキングでも、トップ20のうち16製品が1本バータイプの製品となっている。1本バータイプのサウンドバーといえば、ひと昔前までは手ごろな価格のエントリーモデルが中心だったが、最近ではイネーブルドスピーカーを搭載し、本格的な立体音響を楽しめるハイエンド製品が大手メーカーから登場してきている。
ハイエンドな1本バータイプのサウンドバーの中でも価格.comで特に人気なのが、2021年8月に発売されたソニーサウンドバーのフラッグシップモデル「HT-A7000」だ。1本バーだけでリアルな立体音響を実現するため、7.1.2ch構成のスピーカーユニットを搭載、「Dolby Atmos」「DTS:X」「360 Reality Audio」という3つの立体音響に対応、別売りのリアスピーカーと組み合わせてソニー独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」に対応するなど、フラッグシップモデルらしい非常に多機能な製品だ。価格.com最安価格でも139,887円(2022年8月23日時点)というかなり高価な製品だが、発売から1年近く経った今なおランキング上位をキープし続ける人気の製品となっている。
そんな「HT-A7000」の弟分として、上位モデルの機能性をコンパクトに凝縮した1本バータイプのサウンドバーの新モデル「HT-A5000」「HT-A3000」が本日発表された。発売日は「HT-A5000」が10月22日、「HT-A3000」が9月10日、市場想定価格は「HT-A5000」が121,000円前後、「HT-A3000」が88,000円前後だ。
ソニーサウンドバーの新モデル「HT-A5000」「HT-A3000」
「HT-A5000」は、5.1.2ch構成のスピーカーユニットを搭載したハイミドルモデル。フロントスピーカーの数こそ「HT-A7000」の7基から5基に削減されているが、天井に反射して立体感のあるサラウンドを実現するイネーブルドスピーカーや、横方向のビームツイーターは「HT-A7000」と同様で、サウンドバー天面に配置されたイネーブルドスピーカーによる天井反射、サウンドバーの両サイドに水平方向25°の傾斜を付けて配置されたビームツイーターによる壁反射、高さ方向の音を再現するバーチャルサラウンド技術「Vertical Surround Engine」、横方向の音の広がりを再現する「S-Force PRO フロントサラウンド」を高次元に融合することで、1本バータイプの製品ながら、没入感の高いサラウンドを楽しめるようになっている。
ソニー「HT-A5000」
スピーカーユニットは5.1.2ch構成。「HT-A7000」同様、天井に反射して立体感のあるサラウンドを実現するイネーブルドスピーカーや、横方向のビームツイーターなどを搭載する
立体音響については、「Dolby Atmos」「DTS:X」「360 Reality Audio」をサポート。自動音場補正機能も搭載する。なお、「HT-A7000」同様、別売りのリアスピーカーやサブウーハーとの接続にも対応しており、リアスピーカーを組み合わせた際にはソニー独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」にも対応する。
自動音場補正機能も搭載
リアスピーカーを組み合わせた際にはソニー独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」にも対応
本体サイズは1210(幅)×67(高さ)×140(奥行)mmで、フロントスピーカーの数が減ったことで「HT-A7000」よりも横幅が抑えられており、65V型のテレビなどにも組み合わせやすくなっているのもポイントだ。イネーブルドスピーカーのグリルも、「HT-A7000」のファブリック素材からパンチングメタルに変更されており、メンテナンス性も向上している。
本体天面に用意されているイネーブルドスピーカー。グリルはパンチングメタル仕様だ
インターフェイスは、HDMI入力×1、HDMI出力×1、光デジタル入力×1、USB×1。対応するブラビアをセンタースピーカーとして活用し、画音一体をさらに高める「アコースティックセンターシンク」で利用する専用端子も備わっている。ワイヤレス接続は、IEEE802.11 a/b/g/n/ac対応Wi-FiとBluetooth(受信:SBC/AAC/LDAC、送信:SBC/LDAC)を搭載。ネットワーク機能は、Chromecast built-in、Spotify Connect、Works with Google アシスタント、Airplay 2などをサポートする。
背面にHDMI入力×1、HDMI出力×1、光デジタル入力×1、USB×1が並ぶ
「HT-A5000」の付属リモコン
実際に「HT-A5000」のサウンドを体験してみたが、単体では「HT-A7000」に比べると、前方方向からの音圧がややおとなしくなったようなイメージにシフト。とてもニュートラルなサウンドで、ド派手なアクションシーンの多いコンテンツだけでなく、ドラマやライブ映像など、どんなジャンルのコンテンツにもマッチしてくれそうだ。リアスピーカー「SA-RS5」とサブウーハー「SA-SW5」を組み合わせた「360 Spatial Sound Mapping」も同様で、「HT-A7000」に比べると空間の中でのフロントの主張が薄れ、「HT-A9」に近いイメージになり、空間にシームレスに入り込むことができた。
上位モデル「HT-A7000」の機能性をしっかりと受け継いできた「HT-A5000」。本体サイズも小さくなり、これまで設置場所やテレビのスタント形状の関係で「HT-A7000」が設置できなかったという人も、「HT-A5000」なら設置スペース面のハードルも低い。「SA-RS5」とセットなら20万円以下で導入でき、サウンドバーで「360 Spatial Sound Mapping」を試してみたいという人にもうってつけの1台と言えそうだ。
「HT-A3000」は、「HT-A5000」よりもさらにひとつ下のグレードに位置するミドルクラスの製品だ。スピーカー構成は3.1ch。イネーブルドスピーカーは非搭載で、高さ方向の音を再現するバーチャルサラウンド技術「Vertical Surround Engine」、横方向の音の広がりを再現する「S-Force PRO フロントサラウンド」を用いてサラウンド音場を生成する形だ。
ソニー「HT-A3000」
スピーカー構成は3.1ch
本体サイズは950(幅)×64(高さ)×128(奥行)mmで、横幅1mを切る比較的コンパクトなサイズ感を実現。イネーブルドスピーカーがない分、高さも抑えられており、55V型のテレビの前など、設置の自由度が高いのは大きなポイントと言えそうだ。
一番上が「HT-A3000」、中央が「HT-A5000」、一番下が「HT-A7000」。「HT-A3000」のコンパクトさが際立つ
イネーブルドスピーカーがないことで本体の高さが低く抑えられており、テレビ前に設置した際に画面かぶりが起きにくいのもポイント
ブラビアの前に設置したところ。写真のテレビは65V型だが、横幅を抑えたことで、55V型のスタンドの間にも収まるという
コンパクトモデルとはいえ、立体音響については、「Dolby Atmos」「DTS:X」「360 Reality Audio」をしっかりとサポート。上位モデルの「HT-A5000」と同じく、別売りのリアスピーカーやサブウーハーとの接続にも対応し、リアスピーカーを組み合わせた際にはソニー独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」にも対応する。
インターフェイスは、HDMI出力×1、光デジタル入力×1、USB×1、「アコースティックセンターシンク」専用端子×1。本体サイズと実用度を優先するため、「HT-A5000」にあったHDMI入力こそ省かれているが、HDMIはeARCにも対応しているため、実用面では問題はなさそう。ワイヤレス接続やネットワーク機能は、「HT-A5000」とまったく同じだ。
「HT-A3000」の背面インターフェイス。HDMIは1系統のみ
「HT-A3000」の付属リモコン
対応ブラビアと組み合わせたときは、ブラビアのリモコンからクイックメニュー経由で操作も可能
1mを切る横幅になったことで、55V型ブラビアのスタンドの間にも設置できるようになった「HT-A3000」。対応ブラビアをセンタースピーカーとして使える「アコースティックセンターシンク」や、ブラビアのクイック設定にシアターメニューを追加できる機能なども備わっており、ぜひブラビアと組み合わせて使いたいところだ。
AV家電とガジェット系をメインに担当。ポータブルオーディオ沼にどっぷりと浸かっており、家のイヤホン・ヘッドホンコレクションは100を超えました。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットも増えてます。家電製品総合アドバイザー資格所有。