レビュー

ソニーのノイキャンTWS「WF-C700N」の実力は? 「LinkBuds S」「WF-1000XM4」とコスパ比較も

ソニーが4月21日に発売したノイズキャンセリング機能搭載完全ワイヤレスイヤホン「WF-C700N」が好調だ。

ノイズキャンセリング機能を搭載したソニーの完全ワイヤレスイヤホンと言えば、ロングセラーモデルの「WF-1000XM4」、そして新しいリスニング体験を提案する「LinkBuds」シリーズから登場した「LinkBuds S WF-LS900N」(以下、「LinkBuds S」)といったように、最上位モデルとミドルモデルの2つが存在していたが、そこからさらに下、エントリーモデルに新たに加わったのが「WF-C700N」だ。

ノイズキャンセリング機能を搭載したソニーの完全ワイヤレスイヤホン。写真中央が今回メインに取り上げる「WF-C700N」だ

ノイズキャンセリング機能を搭載したソニーの完全ワイヤレスイヤホン。写真中央が今回メインに取り上げる「WF-C700N」だ

メーカー直販のソニーストアでは、「WF-1000XM4」は3万円台、「LinkBuds S」は2万円台、「WF-C700N」は1万円台のプライスタグが付いており、それぞれの価格帯にノイズキャンセリング機能搭載完全ワイヤレスイヤホンがきれいに投入された形となっている。ただ、これはあくまでもメーカー直販の価格の話。価格.com最安価格では、5月19日時点で「WF-1000XM4」が24,000円、「LinkBuds S」が18,255円、「WF-C700N」が14,491円と、3モデルすべてが10,000円以内の価格差に収まっている。

今回は、この10,000円以内の価格差という部分を踏まえつつ、ソニー最新の完全ワイヤレスイヤホン「WF-C700N」と「WF-1000XM4」「LinkBuds S」の実力の違い、お買い得具合をチェックしていこうと思う。

「WF-C700N」を中心に実機レビュー

「WF-C700N」を中心に実機レビュー

小型サイズで扱いやすい「WF-C700N」。誤操作しにくい物理ボタンを採用

「WF-C700N」のスペックなどの詳しい内容は発表時の記事を参照してほしいが、簡潔にまとめると、小型で4色のカラーバリエーションを展開するエントリー向けモデル。

製品パッケージからチェックしていくと、ソニーらしい高級感のあった上位2モデルと異なり、カジュアル志向の製品であることがよくわかる。プラスチックを廃止したパッケージで、付属イヤーピースを“団子”のように紙製のスティックに止めているところは業界内でも珍しい。

団子のようににまとめられたイヤーピースが付属。イヤーピースはSS/M/LLの3サイズから選べる

団子のようににまとめられたイヤーピースが付属。イヤーピースはSS/M/LLの3サイズから選べる

外見上のサイズ感は「WF-C700N」と「LinkBuds S」はほぼ同じだが……よく見ると「LinkBuds S」のほうが極限までむだを削ぎ落としたコンパクトな形状、「WF-C700N」は丸みのあるデザインで若干ながら大きめだ。

写真左から「WF-1000XM4」、「WF-C700N」、「LinkBuds S」

写真左から「WF-1000XM4」、「WF-C700N」、「LinkBuds S」

「WF-C700N」と「LinkBuds S」のサイズ感は似ているが、「LinkBuds S」が若干小さい

「WF-C700N」と「LinkBuds S」のサイズ感は似ているが、「LinkBuds S」が若干小さい

装着感としては「WF-C700N」「LinkBuds S」の感触は似ていて、耳にコンパクトに収まる。厳密に言うと「WF-C700N」は凸凹も含めフィットを狙う形状、「LinkBuds S」は小ささ全フリだが、どちらが合うかは耳の形状次第。僕は「LinkBuds S」のほうがやや収まりがよかった。「WF-1000XM4」は、今となっては耳からはみ出すサイズに若干ストレスがある。

「WF-C700N」の装着感。今回借用した機材は魅せカラーのラベンダーだが、ホワイトやブラックなどの落ち着いたカラーであればそれほど主張しないはずだ

「WF-C700N」の装着感。今回借用した機材は魅せカラーのラベンダーだが、ホワイトやブラックなどの落ち着いたカラーであればそれほど主張しないはずだ

「WF-C700N」のイヤホン外側にある丸みを帯びたデザインは、押し込み式の物理ボタンが配置されている。タッチセンサー操作ではないため誤操作しにくいメリットがあるし、押し込み強度が適度で装着したままボタンを押しても痛くなることもない。「LinkBuds S」「WF-1000XM4」はタッチセンサー式で操作方法が異なる。

、押し込み式の物理ボタンで操作する形。タッチセンサー操作に比べると誤操作しにくい

、押し込み式の物理ボタンで操作する形。タッチセンサー操作に比べると誤操作しにくい

「WF-C700N」のバッテリー性能は、イヤホン単体・ノイズキャンセリング機能オンで最大7.5時間(ノイズキャンセリング機能オフでは最大10時間)、充電ケース込みで最大15時間(ノイズキャンセリング機能オフの場合は最大20時間)。ちなみに、「LinkBuds S」はノイヤホン単体・ノイズキャンセリング機能オンで最大6時間、「WF-1000XM4」はイヤホン単体・ノイズキャンセリング機能オンで最大8時間だ。

ソニーのイヤホン・ヘッドホン製品でおなじみの専用アプリ「Sony | Headphones Connect」は、「WF-C700N」含め3モデルすべてのモデルが対応する。実績のあるイコライザー機能などを使えるところはソニー製品の強みだ。「360 Reality Audio」認定も全モデル取得済み。

「Sony | Headphones Connect」のアプリも利用可能

「Sony | Headphones Connect」のアプリも利用可能

マルチポイント接続は、「WF-C700N」のみ後日アップデートで対応、「LinkBuds S WF-LS900N」「WF-1000XM4」はすでに対応済みだ。

「WF-C700N」のノイキャン、音質をレビュー。「LinkBuds S」「WF-1000XM4」との違いは?

さっそく、「WF-C700N」「LinkBuds S」「WF-1000XM4」の実機を使用し、実力を詳しくチェックしていこう。

最初は、ユーザーが最も気になるノイズキャンセリング機能から。各モデルのノイズキャンセリング機能の仕様を確認しておくと、「WF-C700N」は1マイク仕様(フィードフォワード方式)、「LinkBuds S」「WF-1000XM4」は「デュアルノイズセンサーマイクテクノロジー」による2マイク仕様(フィードフォワード方式&フィードバック方式のハイブリッド)。実際にどれくらい効果の差があるのか。今回は屋内と屋外の2パターンでチェックを行った。

まずは屋内のテストから。ノイズキャンセリング機能をオンにした状態で、部屋に設置したエアコンから発生するノイズがどれくらい耳に届くかをチェックしてみた、装着してすぐに「WF-C700N」「LinkBuds S」「WF-1000XM4」の効果の違いを確認できた。

部屋に設置したエアコンから発生するノイズがどれくらい聴こえるか各モデルで比較した

部屋に設置したエアコンから発生するノイズがどれくらい聴こえるか各モデルで比較した

「WF-C700N」は、ノイズが全体的に軽くボリュームダウンするような感じで、ノイズキャンセリング特有の詰まるような圧迫感がなく、装着時に違和感がないところは好印象だ。ただ、ノイズキャンセリング機能の効果はやや弱めのようで、エアコンから発生するノイズも低域から高域まで全体的に残ってしまっている。感覚的にはエアコンのノイズを2割程度低減してくれるといったところだろうか。

「LinkBuds S」は、低域側をおおむね低減し、中高域もそれなりに低減してくれるので、ノイズのキツさがだいぶ少なくなる。感覚的には5割減くらいだ。「WF-1000XM4」は低域から高域まで、全体的にさらにノイズを打ち消しているようで、感覚的には7割減くらいだった。

屋外テストは、電車内に実機を持ち込んでノイズ低減効果を確認。「WF-C700N」でもノイズ低減効果は体感できるが……やはりノイズキャンセリング機能の効果はそれほど強くはない。電車内の典型的なノイズである低域側も残っているし、中高域も音の尖りがやや落ちる程度。全体的にノイズが残っている感じは屋内のテストと共通する。

屋外テストは、電車内に実機を持ち込んでチェックを実施

屋外テストは、電車内に実機を持ち込んでチェックを実施

「LinkBuds S」は、「WF-C700N」を上回る高いフィット感で周囲のノイズを物理的にマスクしたうえで、低域から高域までノイズを大幅に低減してくれる。「WF-1000XM4」はさらに低減効果が大きく、特に高域側がしっかり消せていた。低域から中域にかけでのノイズ低減効果は完璧とまでは言えないがものの、ソニーのノイズキャンセリング機能搭載完全ワイヤレスイヤホンとしてはやはり最上級だ。

続いて、各モデルの音質をチェックしてみた。なお、「WF-C700N」は「LinkBuds S」と共通のドライバーユニットを搭載しており、Bluetoothコーデックについては「WF-C700N」はSBCとAAC、「LinkBuds S」「WF-1000XM4」はSBCとAACに加え、LDACコーデックに対応している。

「WF-C700N」「LinkBuds S」「WF-1000XM4」の音質はiPhone/Androidスマートフォンの両方でチェックを実施した

「WF-C700N」「LinkBuds S」「WF-1000XM4」の音質はiPhone/Androidスマートフォンの両方でチェックを実施した

「WF-C700N」は密度感のあるナチュラル志向のサウンド傾向のようだ。歌声を特別クリアに立てるタイプではないが、楽器の音に埋もれることなく存在感もちゃんとあるし、低音のリズムもしっかりと感じられる。欲を言えば音の解像感はもう少しほしいところではあるが、うまくまとめられていると思う。ちなみに、デフォルトのサウンドバランスが地味だと感じるなら「Sony | Headphones Connect」からEQカスタマイズが有効だ。

続いて「LinkBuds S」を聴いてみたが、「WF-C700N」からは大きな音質アップを感じられた。「LinkBuds S」は歌声に伸びやかさが感じられ、空間に浮かぶような情報量もあり、低音の量感もしっかりと再現してくれる。ギターやドラムといった楽器の音色も一気にリアルになる。「WF-1000XM4」については、「LinkBuds S」からさらにグレードアップしており、楽曲全体の解像感、情報量すべてが「LinkBuds S」を上回っていた。歌声も楽器の音色も音の響きもすべてがリアルに聴こえてくる。

ちなみに、LDACコーデック対応のAndroidスマートフォンで聴いた場合のほうがもちろん高音質だが、iPhoneと組み合わせてACCコーデックで聴いても同じ傾向であることは報告しておこう。

【まとめ】「WF-C700N」はそつなくまとめたエントリーモデル。コスパでは「LinkBuds S」が有利か

今回、「WF-C700N」「LinkBuds S」「WF-1000XM4」の3モデルをじっくり比較してみたが、ノイズキャンセリング機能も音質も「WF-1000XM4」>「LinkBuds S」>「WF-C700N」という感じで差があった。これはソニーのラインアップどおり、価格どおりの結果と言える。

3モデルを並べてみると、「WF-C700N」はやはりエントリークラスという位置づけに落ち着く。とはいえ、「WF-C700N」を単独で見ると、ノイズ低減効果をそこそこ実感できるノイズキャンセリング機能とツボを押さえた良音質が揃っており、エントリーとしてはそつなくまとまっていると思う。

では、本稿のもうひとつのテーマである価格.com最安価格を前提とした場合のお買い得具合は?というと、少々悩んでしまう。「WF-C700N」は、ソニーのノイズキャンセリング機能搭載完全ワイヤレスイヤホンとしては確かにいちばん安価なモデルではあるが、2023年5月19日時点で「WF-C700N」と「LinkBuds S」の価格差は4,000円にも満たない。「WF-C700N」は発売してそれほど時間が経っていないという事情もあるだろうが、コスパを考えると「LinkBuds S」を推したいところだ。

ノイズキャンセリング機能や音質を重視するなら、やはりフラッグシップモデルの「WF-1000XM4」が優秀だが、こちらは20,000円を超えてくる。「WF-1000XM4」は本体サイズが大きく、装着感も異なるため、ここは重視するポイント次第といったところだろう。

そう考えると、今すぐに「WF-C700N」に飛びつくのは、ラベンダー、セージグリーンといったカラーバリエーションや、タッチセンサーでなくボタン式操作に価値をどれだけ見出すか次第。もっとも、これはあくまで発売間もない5月19日時点の話。今後時間が経って「WF-C700N」がさらに値下がってくれば、コスパの面で魅力が増してくるはず。そうすれば、おのずと「LinkBuds S」と棲み分ける形になっていくはずだ。

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

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