近年、“ながら聴きイヤホン”と呼ばれるジャンルが徐々に盛り上がってきています。特にここ最近は、左右のケーブルが一切ない完全ワイヤレスタイプの製品が一気に増加。骨伝導技術を使ったものや、耳の前に小型のイヤースピーカーを配置したもの、イヤーカフのように耳たぶに装着できるものなど、さまざまなタイプの製品から選べるようになってきました。
今回は、そんな完全ワイヤレスタイプのながら聴きイヤホンのひとつ、Boco「PEACE SS-1」をピックアップ。骨伝導+完全ワイヤレスというこれまでにない開放感な付け心地がクセになる注目の1台を詳しくレビューします。
まずは今回取り上げる「PEACE SS-1」の概要を簡単に説明しておきましょう。「PEACE SS-1」は、世界初の完全ワイヤレス骨伝導イヤホン「PEACE TW-1」を手掛けるBoCoが、「PEACE TW-1」を超える装着感や音質、使い勝手を目指して開発した、完全ワイヤレス骨伝導イヤホンの第2世代モデルとなります。
耳たぶにはさんで装着できるイヤーカフスタイルは「PEACE TW-1」と同様ですが、イヤホン本体のデザインは流線形の新形状へと変更。重さも片耳約7gと、「PEACE TW-1」から2gほど軽量化されました。また、バッテリー性能は、「PEACE TW-1」ではイヤホン単体で最大約5時間、充電ケース併用で約12時間でしたが、「PEACE SS-1」はイヤホン単体で最大約8時間、充電ケース併用で最大約24時間と大幅にアップ。ながら聴きイヤホンとして1日中着けっぱなしでも運用できるレベルになった点もポイントと言えるでしょう。
「PEACE SS-1」のイヤホン本体は、丸みを帯びた新デザインになりました
横から見ると、大小2つのパーツがバンドでつながったイヤーカフスタイルであることがよくわかります
重量は実測で約7.7g
充電ケースはオーソドックスなクラムシェル型で、写真のようにイヤホン本体を収めます。バッテリー性能はイヤホン単体で最大約8時間、充電ケース併用で最大約24時間です
使用する際は、耳穴前方に音の出るドライバー(骨伝導アクチュエーター)側、耳たぶの裏側にバッテリーやBluetooth通信用のメイン基板などが入ったそら豆型の本体側がくるような形で装着します。バンドタイプの骨伝導イヤホンと異なり、頭の後ろに余計なバンドがないため、ヘッドレスト付きチェアに座って使用する際に余計な干渉がないのも、完全ワイヤレスタイプならではの利点です。
赤い線で囲った部分にドライバー(骨伝導アクチュエーター)が搭載されています
耳穴の前方にドライバー(骨伝導アクチュエーター)側、耳たぶの裏側にそら豆型の本体側がくるように装着します
実際に「PEACE SS-1」を装着してみましたが、イヤホン本体が耳から落ちないように、ドライバーと本体を結ぶアーチ部分の芯材にチタンを使用し、耳たぶをしっかりと挟んでホールドしてくれます。これが思った以上に強力で、頭を左右に激しくふってもまったくびくともしません。これなら、誤ってイヤホンを落とすようなことはなさそうです。
また、実際に「PEACE SS-1」を装着してみるとわかりますが、耳穴が完全に開放された状態になるので、長時間装着していても耳がまったく蒸れないんです。湿気の多い梅雨時期や汗ばむ夏時期でも快適に装着できる点はうれしいですね。イヤホン本体はIPX7の防水性能も備わっており、高いホールド感と合わせて、汗で濡れるスポーツシーンでも十分活用できそうです。
ちなみに、これだけがっちりホールドされると、長時間着けていて耳が痛くなるのではないかと思われがちですが、「PEACE SS-1」は耳に直接触れる部分がやわらかいシリコンで覆われているため、しっかりとホールド感があるのに長時間装着していても痛くなることはほとんどありませんでした。
このように、イヤーカフスタイルでも耳から外れにくく、長時間でも蒸れずに快適に装着できるなど、装着感周りに関してはよく考えられている「PEACE SS-1」ですが、イヤーカフスタイルであること、そしてしっかりとしたホールド感があるゆえの弱点もあります。それは、イヤホンを簡単に装着できないことです。
イヤーカフスタイルということで、パッケージに付属のマニュアルにも、装着する際に両手を使うことが記載されています。ながら聴きイヤホンなので、身に着けたあとはそのまま1日中着けっぱなしにしておけばOKだし、イヤーカフスタイルなので、最初着けるのに時間がかかるのは仕方ないことだとは思いますが、たとえば屋外で急に装着したいときなど、イヤホン本体を取り出した後に充電ケースをサッと置けない状況だと、充電ケースを手に握ったまま装着する形になり、少々不便に感じるかもしれません。
付属の簡単操作ガイドにも両手を使って装着するようにと書かれています
実際にイヤホンを装着してみるとわかりますが、イヤホンを取り出したあとに充電ケースを置けるスペースがないと結構困ります
また、後ほど音質の紹介部分でも触れますが、「PEACE SS-1」は装着感次第で音質が大きく変わります。慣れると一度でベストなポジションに装着できるのですが、慣れないうちは少々時間がかかるかもしれません。
このほか、操作方法が「PEACE TW-1」で採用されていたタッチ式ボタンではなく、感圧式に変わったのも見逃せないポイントです。耳たぶを挟んで配置されているドライバー側と本体側を軽くつまむように操作するのですが、装着時の誤操作も少なく、操作に合わせてカチっと音でフィードバックがあるので、確実に操作しているのがわかるのが便利でした。
感圧式の操作方法になっており、写真のように耳たぶを挟んで配置されているドライバー側と本体側を軽くつまむようにして操作します。1クリックでボリューム調整、2clickで再生/停止、3クリックで曲送り/曲戻しです。なお、「PEACE SS-1」はアプリなどは用意されていないため、操作方法をカスタマイズすることはできません
ここまで装着感などをレポートしてきましたが、ながら聴きイヤホンということで、音質や音漏れも気になるかと思います。
最新世代の純⾻伝導振動⼦技術を搭載し、最新のaptX Adaptiveコーデックに対応するなど、「PEACE TW-1」から音質面をさらにブラッシュアップした「PEACE SS-1」。さっそく、手持ちのaptX Adaptiveコーデックに対応したスマートフォンと接続して音質をチェックしてみましたが、骨伝導イヤホンとは思えないなかなかバランスのとれたサウンドだと感じました。
特に中高域がくっきりしていて、周囲が騒がしい状況やボリュームを絞った状態でもボーカルなどの人の声が聴き取りやすいのが好印象。骨伝導イヤホンにありがちなフォーカスの滲みも少ないので、音楽リスニングはもちろんですが、ポッドキャストやネットラジオを楽しむのにも向いていそうです。
aptX Adaptiveコーデックに対応したスマートフォンと接続して音質をチェックしました
aptX Adaptiveコーデックに対応したスマートフォンなら、音楽コンテンツや動画コンテンツをより⾼品質・低遅延で楽しめます
また、骨伝導イヤホンというと、仕組み上、どうしても低域が弱く感じられるのですが、「PEACE SS-1」は豊かな低音というほどではないですが、それなりに低音はしっかりと感じられます。ただ、装着感のところでも軽く触れましたが、ドライバー側の位置で音質が大きく左右されます。
特に低音はドライバーの位置が耳の穴に近くなればなるほどしっかりと感じとれるようになるのですが、装着感がベストなポジションから外れると、とたんに聴こえにくくなります。このあたりは耳の形状や装着方法にも左右されるため、ベストなポジションを見つけることが良音質への近道といえそうです。
ながら聴きイヤホンでもうひとつ気になる周囲の音の聴こえ方と音漏れに関してもレポートしておきましょう。まず周囲の音の聴こえ方ですが、耳穴が大きく解放されているので、スマートフォンのボリュームをある程度上げても周囲の音はしっかりと聴き取れます。
音楽もしっかりと楽しめ、周囲の音もしっかりと確認できるという観点だと、スマートフォンの最大ボリュームを100とした場合、オフィスくらいの騒音なら20〜30、オフィスよりももう少し騒がしい幹線道路沿いになると50くらいでしょうか。ここからさらにボリュームを上げていくと、段々と周囲の音がマスクされていくようなイメージです。
音漏れに関してはそれなりにします。静かなオフィスで試してみましたが、ボリューム30前後が境目のようで、ここからさらにボリュームを上げると徐々に音漏れが大きくなります。通勤電車やエレベーターの中など周囲の人との距離が近いときや、図書館などの静かなスペースで利用する際は、多少ボリュームを抑えて運用するのがベターと言えるでしょう。
最後に参考までに。マートフォンの最大ボリュームを100とした場合、ボリュームが70を超えてくると、骨伝導の振動がはっきりと感じられるレベルになり、そのままのボリュームで音楽を聴いていると、耳がくすぐったくなります。もちろん、こんなボリュームだと周囲に盛大に音漏れしています。使用する際は、くれぐれもボリュームを上げ過ぎないように注意してください。
ここまでBocoの完全ワイヤレス骨伝導イヤホン「PEACE SS-1」をレポートしてきましたが、やはり「PEACE SS-1」の最大の魅力は耳まわりの圧倒的な開放感です。イヤーカフスタイルを採用したことで、耳穴をふさぐ部分が圧倒的に少なく、周囲の音もマスクされずに自然に入ってくるし、長時間装着したままでも蒸れないのは「PEACE SS-1」ならではの利点と言えるでしょう。
また、骨伝導イヤホンで多いバンドを使ってこめかみに装着するタイプではなく完全ワイヤレスイヤホンタイプなので、骨伝導イヤホンの圧迫されるような装着感が苦手という人も扱いやすいかと思います。装着するのに多少慣れが必要なこと、専用アプリがなく、マルチポイント接続に対応していないなど、多少気になるポイントはありますが、音質も骨伝導イヤホンとしてはバランスが取れていますし、開放的な装着感に魅力を感じる人なら導入するのもアリだと思います。
AV家電とガジェット系をメインに担当。ポータブルオーディオ沼にどっぷりと浸かっており、家のイヤホン・ヘッドホンコレクションは100を超えました。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットも増えてます。家電製品総合アドバイザー資格所有。