レビュー

こんなに多機能なのにアンダー2万円! いろいろ遊べるストリーミングBOX「WiiM Pro」

機能豊富な新時代のネットワークプレーヤーが登場

「オーディオ」に最低限必要なデバイス/コンポーネントといえば、アンプにスピーカー、そしてプレーヤー。この3種を取っ替え引っ替えするのがオーディオの醍醐味、愉楽であると言っていい。しかし、再生・増幅・出力というその役割は変わらねど、世の動向に従い姿形は変わっていいはず。

今回取り上げる「WiiM Pro」は、そんな新時代に適応したネットワークプレーヤーだ。リモコンは付属せず(オプション)、すべての操作はスマートフォンのアプリで行う。Amazon Musicなど各種ストリーミングサービスを音源として利用できるほか、スマートフォン上のファイル再生にも対応する。出力先はラインのほか同軸デジタル、S/PDIF、さらにはBluetoothも選択可という柔軟な使いかたが可能になる。“Versatile Audiophile-grade Music Streamer”という製品キャッチコピーは伊達ではない。

「WiiM Pro」の本体

まずはシステム構成から紹介しよう。「Apple TV」のような四隅が丸くなった天面が正方形のデバイスには、情報非公開の小型コンピューターシステムが搭載され、そこでWiiM OSと呼ばれるオーディオ特化型OSが動作する。WiiM OSはDAC(Burr-Brown PCM5121)を駆動し、ファイルのデコードやサーバーとの通信(ストリーミングの受信)を行い、AirPlay 2やChromecast Audioといった常駐型のサービスを提供する、といった処理を行う。

デコード/受信したオーディオ信号は、ラインとCOAX(デジタル同軸)、S/PDIF、Bluetoothの4系統から出力できる。ユニークなのはBluetooth出力機能で、Bluetoothスピーカーをペアリングすれば電源以外のケーブルを一切使わず音楽を再生できる。

「WiiM Pro」の本体。付属のケーブルと比べると、そのコンパクトさがわかる

「WiiM Pro」の本体。付属のケーブルと比べると、そのコンパクトさがわかる

「WiiM Pro」のリアパネル。接続インターフェイスはすべてこちらに集約されている

「WiiM Pro」のリアパネル。接続インターフェイスはすべてこちらに集約されている

Bluetooth出力も可能(写真はTribit StormBox Pro)

Bluetooth出力も可能(写真はTribit StormBox Pro)

対応するネットワーク機能は、Wi-Fi(IEEE 802.11 b/g/n/ac)とBluetooth、そしてEthernet(100BASE-T)。オーディオ系のプロトコルはAirPlay 2とChromecast Audio、DLNA、Spotify Connect、TIDAL Connect、Amazon Music Castingをサポートするというから、スマートフォンを中心としたリスニングスタイルで不満を感じることはなさそうだ。

コントロールアプリ「WiiM Home」の動作環境は、iPhone/iOS 10以降およびAndroid 7.0以降。それ以外にも、Mac用とWindows用のアプリがベータ版として提供されている。後述するが、登場から間もないにもかかわらず機能が山盛りでマルチプラットフォーム対応というのだから、展開の速さには舌を巻かざるをえない。

“箱庭環境”の音源として大活躍

「WiiM Pro」のセットアップは、とてもシンプル。スマートフォンにダウンロードしたコントロールアプリ「WiiM Home」を起動し、「WiiM Pro」背面のUSB Type-C端子に電源(モバイルバッテリー使用可)をつないで待つだけでいい。あとは画面の指示に従いWi-Fi接続などの設定を行えばOK、3分もあれば準備完了だ。

出力はラインとCOAX、S/PDIF、Bluetoothの4系統から選べるが、とりあえずメインのシステムで聴くべくCOAXをチョイス。サンプリングレートとビット深度は手動で選べるので、ベストな条件の192kHz/24bitを選択しておいた。テスト音源で再生を確認できるという細かい配慮がうれしい。

COAX出力はサンプリングレートとビット深度を調整できる

COAX出力はサンプリングレートとビット深度を調整できる

音が出ることを確認したあと、オーディオ出力をラインに切り替え、“箱庭オーディオ”を意識しアクティブスピーカーで聴くことにした。選んだのはEDIFIERの「ED-MR4」、4インチバスユニットと1インチツイーターユニットからなる、2ウェイのアクティブスピーカーだ。RCAケーブルで「WiiM Pro」と接続すれば、あとは音楽再生を開始するだけとなる。

ソースに利用したのはAmazon Musicで、コントロールアプリ「WiiM Home」上でサービスにサインインすれば準備完了。普段よく聴くECM系の音源から試聴を開始したが、とても総額4万円以下のシステムとは思えない。「ED-MR4」はモニタースピーカーをうたうだけあり、一音一音の際が明瞭でスピード感も上々、ピアノアタックもシンバルクラッシュも緻密に描き出す。電源ボタン2度押しでスピーカーモードに切り替えると、高域と低域を調整したややドンシャリな音となるところはリビングオーディオ向きだ。

EDIFIERのアクティブスピーカー「ED-MR4」と組み合わせてみた

EDIFIERのアクティブスピーカー「ED-MR4」と組み合わせてみた

Amazon MusicやSpotifyなどのストリーミングサービスは専用アプリ「WiiM Home」から利用する形だ

Amazon MusicやSpotifyなどのストリーミングサービスは専用アプリ「WiiM Home」から利用する形だ

Amazon Musicを再生したところ(音源は96kHz/24bit)

Amazon Musicを再生したところ(音源は96kHz/24bit)

試しに、iPhone上のAmazon Musicアプリから同じ192kHz/24bitの音源をAirPlay(出力は最大48kHz/16bit)で「WiiM Pro」へ出力してみたが、ステージの広さと奥行き感、輪郭の細やかさという点で「WiiM Pro」での再生と違いを感じる。情報量の差は明らか、AirPlayでは補いきれない直接再生のアドバンテージがある。

ただし、AirPlayのようなワイヤレスレシーバー機能はとても重宝する。Apple Musicなど、「WiiM Pro」では直接再生できない音源でも再生できてしまうからだ。AirPlayの場合、CDクオリティであればロスレス再生OKなわけだから、活用しない手はない。96kHz/24bit伝送に対応するChromecast Audioであればなおさらだ。

なんとRoon Ready対応(予定)!

「WiiM Pro」を使い始めて1週間経過したが、現在のところ大きな不満はない。対応するストリーミングサービスにApple Musicがあれば言うことなしだが、Amazon MusicとSpotify、TIDALを押さえているのだから、非Apple製品としては満点の対応と言っていいだろう。オーディオ出力がラインに加えてCOAXがあることも、既存のコンポで使いたいユーザーにとってはうれしい情報だ。SiriやAlexaといった音声アシスタントで再生指示できるところも面白い。

Roon Ready対応にも注目だ。2023年6月現在、Roonによる認証作業中であり、認証を獲得次第Webサイトとコントロールアプリ「WiiM Home」をアップデートするとのことだが、そうなると格安のRoon Readyネットワークプレーヤー(Output)が世に出現することになる。

気になる点があるとすれば、「DAC」だろうか。Burr-Brown PCM5121は(ARM系Linux OSでは)ドライバーソフトウェアが実績豊富で扱いやすいということもあるだろうが、DSD非対応でPCMサンプリングレートも384kHz止まりと、現在の水準としてはスペック的に物足りなさを感じてしまう。ファイル再生がメインのユーザーにとっては、ここがネックになるかもしれない。

「物量」も気になる。「WiiM Pro」の筐体は樹脂製で約330gと軽く、リアパネルに並ぶ端子類も簡素な印象を受ける。もう少し値が張ってもいいから、金属製で共振を抑えた設計の重量感・重厚感ある上位モデルの設定がほしいところだ。

それにしても、これだけの機能と豊富な音源のサポートで実売価格2万円以下、というプライスタグは驚愕のひと言。そのうえRoon Ready対応(予定)というギフトも付いてくる。ネットワークプレーヤー入門機として既存のコンポに加えるもよし、小型アクティブスピーカーと組み合わせ“箱庭オーディオ”として使うもよし、いろいろ遊べるストリーミングBOXだ。

海上 忍

海上 忍

IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。

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