レビュー

ソニー4K Mini LED液晶BRAVIA最上位モデル「X95L」シリーズを実機レビュー

日本の高画質テレビの雄として、特に大画面サイズで人気のブランドがソニーの「BRAVIA(ブラビア)」。Google TV搭載ということもあり、ネット動画対応という観点からも人気のシリーズだ。そんなBRAVIAの2023年モデルとして5月20日に発売となった4K液晶の最上位モデル「X95L」シリーズは、認知特性プロセッサー「XR」と「Mini LEDバックライト」を搭載。エンジンとパネルの両方で最高画質が揃う注目モデルだ。今回は、「X95L」シリーズの65V型モデル「65X95L」の実機レビューを届けしよう。

「X95L」シリーズの65V型モデル「65X95L」

「X95L」シリーズの仕様については、以下の発表タイミングの記事で詳しくレポートしている。「X95L」シリーズを簡単に説明すると、認知特性プロセッサー「XR」と「Mini LEDバックライト」および「量子ドット」を搭載した4K液晶BRAVIAの最上位モデル。85V/75V/65V型という大画面モデルが中心ということで、VAパネルに広視野角を実現する独自の「X-Wideアングル」技術が組み合わせされている。画質関連のハードウェア構成は、2022年モデル「X95K」シリーズからの継承がほとんどで、認知特性プロセッサー「XR」のソフトウェアが最新世代にアップデートされ、Mini LEDバックライトのコントロール精度が向上しているのが画質面での進化ポイントとなっている。

さっそく届いた「65X95L」を自宅のリビングにセット。ちなみに僕の自宅リビングにはTVS REGZAの4K有機ELテレビ2022年モデル「65X9400S」がすでに導入済みのため、同じ65V型サイズでMini LEDバックライト搭載の4K液晶テレビと4K有機ELテレビが並ぶことになった。

自宅のリビングに「65X95L」をさっそく設置してみた。写真左に移っているのはTVS REGZAの4K有機ELテレビ「65X9400S」、写真右が今回レビューするソニー「65X95L」

自宅のリビングに「65X95L」をさっそく設置してみた。写真左に移っているのはTVS REGZAの4K有機ELテレビ「65X9400S」、写真右が今回レビューするソニー「65X95L」

「65X95L」は、スタンド部分に3-wayスタンドが採用されており、脚が画面の外側になるスタンド外側、中央寄りのスタンド内側、サウンドバー設置用に画面位置を高くできるサウンドバースタイルという3種類から選択できる。今回は、狭いテレビ台でも対応しやすい、中央寄りのスタンド内側で設置した

「65X95L」は、スタンド部分に3-wayスタンドが採用されており、脚が画面の外側になるスタンド外側、中央寄りのスタンド内側、サウンドバー設置用に画面位置を高くできるサウンドバースタイルという3種類から選択できる。今回は、狭いテレビ台でも対応しやすい、中央寄りのスタンド内側で設置した

ソニーBRAVIAの2023年モデルでは、リモコンのデザインもアップデートされ、ネット動画のアプリダイレクトボタンが全7社+My BRAVIAにまで増えた。なお、BRAVIAはGoogle TV搭載モデルということもあり、リモコンにGoogleアシスタントのダイレクトボタンも搭載。全体的にやや細長いデザインとなっている。

「65X95L」の付属リモコン。長さが約14cmというのは他社のリモコンとそれほど大差はないが、横幅が約4.5cmと細身で持ちやすい

「65X95L」の付属リモコン。長さが約14cmというのは他社のリモコンとそれほど大差はないが、横幅が約4.5cmと細身で持ちやすい

ネット動画のダイレクトボタンはリモコン上部に搭載。「My BRAVIA」は独自のネット動画サービスのポータル画面だ

ネット動画のダイレクトボタンはリモコン上部に搭載。「My BRAVIA」は独自のネット動画サービスのポータル画面だ

Mini LEDによる高輝度化の効果は絶大。VAパネルでも視野角が広い

それでは実際に「65X95L」の画質からチェックしていこう。

「65X95L」を4K有機ELテレビと横並びに設置してすぐに気づいたのが、Mini LEDバックライトらしい画面の圧倒的な明るさ。ソニーは輝度スペックを開示していないが、白10%の状態で照度計を画面に密着させて明るさを計測したところ、照度は約2470luxを記録(スタンダード、ダイナミックとも結果はほぼ同じ)。有機ELテレビと異なり、全白を表示しままでも輝度が落ちないMini LEDバックライトの特性もあって、画面の明るさによる主観的な画質のキレイさは相当なものだ。

有機ELテレビと見比べると、画面全体の明るさの圧倒的な違いに驚く

有機ELテレビと見比べると、画面全体の明るさの圧倒的な違いに驚く

全体としては明るくダイナミックな高画質だが、「65X95L」の色の特徴として、映像モード「スタンダード」でもMini LEDバックライト+量子ドットを採用する他社製品と比べると色は派手に振り切っておらず、自然なバランスに仕上がっていた。ちなみに、鮮やかさを重視するなら、映像モードを「ダイナミック」に変更すれば派手目な画質で視聴することも可能だ。

いっぽうで、明るい大画面がゆえに、YouTubeの動画などを視聴した際にノイズがやや目立っていた。「65X95L」にも搭載されている最新の認知特性プロセッサー「XR」の進化ポイントが「XR Clear Image」によるネット動画等のノイズ低減および、クッキリ感の改善だったはずなのだが……この路線はまだまだ機能向上の余地がありそうだ。

映像メニュー内からノイズリダクション関連も細かく調整可能。ただ、ノイズ量はソースごとに異なるので「オート」以外での運用は非現実的

映像メニュー内からノイズリダクション関連も細かく調整可能。ただ、ノイズ量はソースごとに異なるので「オート」以外での運用は非現実的

ちなみに、「65X95L」はVAパネルだが視野角を広げる独自パネル技術「X-Wideアングル」のおかげで視野角は液晶テレビとしては十分に広い。正面から視聴した際の最高の画質だけでなく、扱いやすさを高めている点でもハイエンド機として優秀だ。

キッチンからリビングに設置したテレビを見た様子。写真左手前が「65X9400S」、写真右奥が「65X95L」だ

キッチンからリビングに設置したテレビを見た様子。写真左手前が「65X9400S」、写真右奥が「65X95L」だ

続いて「PlayStation 5」を接続し、4K HDR映像で画質をチェックしてみたが、やはり非常に明るく鮮やか、そして「スタンダード」の映像モードでは派手さに振りすぎないバランス重視の作り込みが見てとれる。

写真左が「65X9400S」、写真右が「65X95L」

写真左が「65X9400S」、写真右が「65X95L」

照明を消した完全暗室で夜景の映像を視聴してみたが、暗所の沈み込みとピークのまぶしさのバランスが優秀。有機ELテレビと横並びで視聴すると黒色の再現性は及ばないが、ハイライト部のまぶしさの再現で上回る。ちなみに、Mini LEDバックライトの光漏れは、明暗がハッキリしている映像でも正面から視聴する分には極小レベル。斜めから角度を付けて見るとうっすらと確認できたことは報告しておきたい。

夜景の映像で画質チェック。写真左が「65X9400S」、写真右が「65X95L」

夜景の映像で画質チェック。写真左が「65X9400S」、写真右が「65X95L」

写真右手前が「65X95L」。写真ではわかりにくいが、観覧車の周辺でわずかに白くハローが出ている

写真右手前が「65X95L」。写真ではわかりにくいが、観覧車の周辺でわずかに白くハローが出ている

独自の「Acoustic Multi-Audio+」採用のサウンド。ゲーミング向けの新機能も搭載

続いて、「65X95L」のサウンドもチェックしていこう。「X95L」シリーズのサウンド技術の特徴は、本体下部のスピーカーに加えて、本体左右側面にフレームを直接振動させて高音域を再生する「フレームトゥイーター」を、背面にサブウーハーを搭載する「Acoustic Multi-Audio+」を搭載したこと。従来からある「Acoustic Multi-Audio」では、画面側面後方近くに設けた「サウンドポジショニングトゥイーター」を使い、壁の反射音を使って音を持ち上げていたが、「X95L」シリーズに搭載された「Acoustic Multi-Audio+」では、側面のフレームを叩き、そこから発生する音を直接ユーザーに届ける形になっている。

本体側面上部に「フレーム トゥイーター」を搭載。金属製のフレームを直接叩き、振動させて音を発生させる仕組みだ

本体側面上部に「フレーム トゥイーター」を搭載。金属製のフレームを直接叩き、振動させて音を発生させる仕組みだ

本機にはリモコン内蔵マイクを利用した自動音場補正機能があるため、適用したうえで実際にサウンドを体験してみると、確かに音が画面下からではなく、画面のやや高めの位置から聴こえてくる。サウンドバランスとしては高域をキンと響かせていて、ニュースやYouTubeなど人の声を聴いても高域がハキハキと鳴る。ただ音のタイプとしては空間志向に振り切っていて、低音は出るが中域の厚みは若干弱め。「Acoustic Multi-Audio+」による技術的特徴が現れていると言えるだろう。

ほかにも5.1chのホームシアター環境に「X95L」シリーズを組み込む人向きに、テレビ自体をセンタースピーカーとして利用できる専用端子(ビデオ端子から変換)があったり、別売りのWebカメラ「BRAVIA CAM(ブラビアカム)」を設置すると、視聴者の位置認識をして音を補正したりと、ソニーならではの独自機能も搭載。ちなみに、Bluetoothスピーカー・ヘッドホン等との接続も可能だ。

ゲーム関連機能では、ゲーム関連の機能を集約した「ゲームメニュー」を新たに搭載。ゲーム機接続中にリモコンの「操作/録画」ボタンを押すことで呼び出すことができ、VRRや残像低減、ブラックイコライザー、クロスヘアなどをここから設定できる。

ゲーム関連のカスタマイズが可能な「ゲームメニュー」

ゲーム関連のカスタマイズが可能な「ゲームメニュー」

設定内容はゲーミングモニターでおなじみのものが多い。残像低減は画面輝度を落として映像のキレをアップさせる機能、ブラックイコライザーは暗部側を持ち上げて暗がりの敵を見やすくするものだ。ちなみに、「4K Lag Tester」で測定した表示遅延の数字は約13.6msだった。

安定のGoogle TV搭載とソニーらしい使いやすいUI。アプリの起動レスポンスは?

BRAVIAの2023年モデルで特別な新機能があるという訳ではないが、ネット動画関連や操作性、録画系についても紹介しておこう。

「65X95L」のネット機能は、ソニーBRAVIAではおなじみのGoogle TVとなっている。Google Playストアによるアプリの追加導入もできるので、汎用性としては文句ナシ。ちなみに、U-Next/Netflix/Hulu/Amazonプライム・ビデオ/Abema/Disney+/YouTubeをリモコンからダイレクトに起動することも可能だ。

起動までのレスポンスは、電源オフからの初回起動時でホーム画面を表示しきるまで約9秒、YouTube起動まで約7秒、Netflix起動まで約4秒、Amazonプライム・ビデオ起動まで約7秒、番組表は約2秒だった。

Google TVでネット動画との親和性が高い。これだけでBRAVIAを選ぶ理由になる

Google TVでネット動画との親和性が高い。これだけでBRAVIAを選ぶ理由になる

Googleアシスタントは、「OK Google」でテレビがダイレクトに反応するハンズフリーも設定可能。ちなみに、初期設定は本体側のマイクがオフになっている。これはプライバシーへの配慮だろう。

ちなみに、「Google TVだと操作性はどのメーカーでも一緒でしょ?」と思われがちだが、それはあくまでネット動画周りの話。BRAVIAを操作してみると、テレビとしてのUI、特に設定画面などにソニー独自のカスタマイズが施されている。

「クイック設定」の画面はソニーが独自に作り込んでいる。画質モード変更など手軽に切り替えられるのが便利

「クイック設定」の画面はソニーが独自に作り込んでいる。画質モード変更など手軽に切り替えられるのが便利

スマホ連携も「Chromecast built-in対応」はもちろん、「Works with Apple AirPlay」にも対応とiPhoneユーザー向け機能も実装されている。録画機能は、地デジ/BS/4Kの3チューナー搭載で、外付けHDD接続による2番組同時録画対応。録画機能は長時間録画モードのないテレビ向けの仕様だが、日本のメーカーらしく録画系のメニューもよくできている。

「65X95L」番組表。色分けされたデザインが特徴だ

「65X95L」番組表。色分けされたデザインが特徴だ

外付けHDDに録画した番組の表示。こちらもしっかりと作り込まれており、視認性も高くて見やすい

外付けHDDに録画した番組の表示。こちらもしっかりと作り込まれており、視認性も高くて見やすい

まとめ

2023年4K液晶BRAVIAの最上位モデルとなる「X95L」シリーズ。今回は65V型の「65X95L」を使用してレビューしたが、実際に使ってみると、Mini LEDバックライトで明るい画面だが、派手さに振り切らない自然な画質には好感が持てる。VAパネルだが、大画面モデルらしく独自のパネル技術で十分な視野角を確保しているし、スピーカーも「Acoustic Multi-Audio+」で大画面に負けないものに仕上がっていた。Google TV搭載でネット動画に強いことから、わかりやすくソニーBRAVIA最高峰の画質とGoogle TVが揃う「ネット動画重視の人に最適な高画質モデル」というところに落ち着きそうだが、それ以外にも新型リモコンや独自UIの使いやすさ、便利なゲーミング機能など全方面に作り込まれており、ネット動画だけでなく、さまざまなシーンで安心して使える1台なのは間違いない。

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

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