ヤマハから、2.2.2chワンバー完結タイプのサウンドバー「SR-X40A」が発表された。2023年11月30日発売で、市場想定価格は70,400円(税込)。
2.2.2ch仕様のサウンドバー「SR-X40A」。サブウーハーの追加などには対応しない
海外では先行して、サラウンド(リア)スピーカーやサブウーハーが無線でつながる「True X」シリーズというサウンドバーが発表されていたが、「SR-X40A」はあくまでワンバータイプ。ベースとなるモデルは同じようだが、チューニング部分でも手を入れられた日本独自モデルだ。
ヤマハのサウンドバーと言えば、弟モデルにあたる「SR-B30A」や「SR-B40A」が発売されたばかり。シンプルにテレビの音質を強化できるこちらもすでに人気だが、「SR-X40A」ではハイト(イネーブルド)スピーカーを搭載していることが大きな違いだ。
かつてはデジタル・シネマ・プロジェクター「YSP」シリーズで一世を風靡したヤマハがようやくハイトスピーカー搭載の新製品を出してきた……。これだけでも期待が高まるというもの。主要スペックは以下のとおり。
「SR-X40A」の主なスペック
●スピーカー構成:2.2.2ch
●アンプ出力:30W×2(L/R)+30W×2(ハイト)+30W×2(サブウーハー)
●接続端子:HDMI入力1系統、HDMI出力1系統(eARC/ARC対応)、デジタル音声入力(光)1系統
●Bluetooth対応:Ver.5.0(対応コーデックはSBC、AAC)
●寸法:1,015(幅)×63(高さ)×112(奥行)mm
●重量:3.9kg
●対応音声フォーマット:Dolby Digital、Dolby Digital Plus、Dolby TrueHD、Dolby Atmos、MPEG-2 AAC、リニアPCM
●備考:AirPlay 2、Spotify Connect、Amazon Alexa対応
天面に各種ハードウェアキーを装備
接続端子はHDMI入出力1系統と光デジタル音声入力が1系統。もちろん、eARC/ARCに対応する
付属のリモコンで再生モードの切り替えなどを行える。このほか、専用アプリ「Sound Bar Controller」でも操作可能だ
ヤマハのオーディオ製品とあって、独自の「TRUE SOUND」を目指すのはいつものとおり。
トーナルバランス(音色)、ダイナミクス、サウンドイメージ、それぞれを高水準で達成し、ヤマハが考える高音質を実現しようというコンセプトだ。そのために、今回「SR-X40A」で採用されたのがあくまでワンバーで完結する2.2.2chシステム。
シンプルながらも内部設計にこだわり、映画やゲームなど、各種コンテンツをより深く楽しんでもらうことが目的のサウンドバーだという。
ヤマハのオーディオ機器に共通した音質コンセプトが「TRUE SOUND」
フロントスピーカーは楕円形の46×66mmユニット、ハイトスピーカーはコーン型の52mmユニット、サブウーハーはコーン型の75mmユニット、左右で合計6ユニットを搭載。背圧をうまく逃がすために、ユニットの裏側にバックチャンバーを設けている。これが音質チューニングでのポイントになっているという
バスレフポートは本体横
ヤマハの試聴室で「SR-X40A」、既発売の「SR-B30A」「SR-B40A」を比較する機会を得られたので、そのインプレッションをお伝えする。
高コスパで人気の「SR-B30A」
まず聴いたのはワンバータイプの弟機「SR-B30A」。定番のUltra HDブルーレイ「トップガン マーヴェリック」のチャプター2を再生すると、ガレージの中で行き交う会話の残響がきれいに広がる。それでいてセリフの明瞭度は保たれているのだから、ヤマハサウンドバーの魅力は響きのコントロールにあるなと実感させられる。「SR-B30A」では、迫力を演出する「MOVIE」モードが似合う。
右(後ろ)が「SR-X40A」で、左(前)が「SR-B30A」。「SR-X40A」は横幅が長めだが、奥行きは短め
サブウーハーがセットになった「SR-B40A」
続いて「SR-B40A」で「トップガン マーヴェリック」を再生すると、サブウーハーの効果があらたか。ただ、こちらを「MOVIE」モードで再生すると低域過多感があるので、「STANDARD」モードが好ましいと感じた。
ただし、それなりに上の帯域までサブウーハーに音が振られているのだろう。音がサブウーハーのある場所に引っ張られる印象はあるので、この点には注意したい。とはいえ迫力は段違いなので、住環境が許せば「SR-B40A」はよい選択肢になりそうだ。
「SR-X40A」
そして「SR-X40A」はどうか。同じシーンを見ていくと、劇伴の広がり方から良好。帯域バランスが整って、3機種の中で聴きやすい。低音の迫力という意味では、サブウーハー付きの「SR-B40A」にはかなわないわけだが、それを補ってあまりあるほど「SR-X40A」の帯域バランスの整いのよさが際立っている。
それに、そもそも住環境的にサブウーハーの設置が難しい人も多いだろう。本来であればダークスターの離陸は部屋を震わせるほどの低音(LFE)が入っているが、「SR-X40A」でも「そういう設計がしてあるんだろう」とはわかるので、実用上は問題ないはず。
ダークスターがケイン少将の頭上を通り抜けるシーンでは、音が視聴位置の上側に広がるのがわかる。これはほかの2モデルでは感じられない音の広がりだった。
「SR-X40A」の音質モード切り替えについては、帯域バランスの変化だけでなく音場の再現も大きく変わるのが面白い。Dolby Atmosの音が広がるだけではなく、「音場を作る」ときにもハイトスピーカーが活用されているのだろう。ダイレクト感のある「STANDARD」、広がりと臨場感の出る「MOVIE」どちらも捨てがたい。ユーザーはぜひこの使い分けで遊んでみてほしい。
価格を考えれば当然だが、別格の完成度を見せてくれた「SR-X40A」。ぜひともこのままハイエンドモデルの発売まで進んでほしいもの。
「トップガン マーヴェリック」では、本来は文字どおりダークスターがケイン少将の頭上を通り抜けるよう音響設計がされている。これをサウンドバーで再現するためには、かつてのハイエンド「YSP-5600」のように、ビームスピーカーでDolby Atmos再生を実現する必要があるだろう。