Googleは2024年9月26日、完全ワイヤレスイヤホン「Google Pixel Buds Pro 2」を発売した。機能としては、固定用アーチの採用や、アクティブノイズキャンセリング(ANC)機能の強化などがトピックだ。実際に試用し、その使用感や音声などについてチェックした。
「Google Pixel Buds Pro 2」、公式ストア価格は36,800円(税込、以下同)、2024年9月26日発売
「Pixel Buds」シリーズは、Google製の完全ワイヤレスイヤホンだ。シリーズの系譜を振り返ると、初代「Pixel Buds」が2017年に発売されたものの、日本市場では未発売だった。その後、2020年に発売された第2世代モデル「Pixel Buds 2」で日本上陸を果たし、2021年に廉価モデルの「Pixel Buds A-Series」が、2022年7月にアクティブノイズキャンセリング(ANC)に対応した「Pixel Buds Pro」が発売された。今回の「Pixel Buds Pro 2」は、この後継機に相当する。
なお現在、同社のイヤホン製品のラインアップは、上位モデルの「Pixel Buds Pro」と「Pixel Buds Pro 2」、廉価モデルの「Pixel Buds A-Series」の3種類から選択できる。
製品本体(Mサイズのイヤーチップを装着済み)のほか、3サイズ(XS/S/L)の交換用イヤーチップと、説明書が同梱される
冒頭でも述べたとおり、「Pixel Buds Pro 2」の価格は36,800円。前世代モデルは発売当時価格23,800円だったので、13,000円ほど値上がりしている。競合であるアップルの「AirPods Pro 2」が、39,800円(アップルストア価格)なので、ノイズキャンセルに対応するフラグシップのワイヤレスイヤホンとしては相場感のある価格設定と言えるだろう。
「Pixel Buds Pro 2」の充電ケースは、前世代モデル同様に平べったい楕円形だ。ベースが白色で、ヒンジ部を除いたフタの境界線が黒くなっているデザインもそのまま。サイズについてはミリ単位での変更はあるが、ほぼ変わっていない。
充電ケースのサイズは、49.9(幅)×63.3(高さ)× 25.0(厚さ)mm
フタの開閉や充電ケーブルの接続などに連動して光るLEDインジケーターや、USB Type-Cポート、Qi規格のワイヤレス充電対応なども前世代モデルから踏襲している。
ケースにインジケーターがあるのは前世代モデルと同じ
充電ケースにはUSB Type-Cポートと、ペアリング操作用のボタンが備わっている
いっぽう、イヤホン本体のサイズは、Mサイズのイヤーチップ使用時で、22.74 × 23.08 × 17.03mm。重量は片方で4.7gだ。前世代モデルでは22.33×22.03×23.72mmの6.2gだったので、コンパクトに改良されているのがわかる。実際の製品で特に大きく変わった(約17mmになった)部分がどこか確認してみると、おそらく耳に装着したときに外に露出する部分(Googleのロゴが記載されている部分)の直径のことだと思われる。
前世代モデルには、シリーズ初期製品にあったようなシリコン製のウィングチップ(耳介にフィットさせるための突起)は備わっていなかったが、「Pixel Buds Pro 2」では、装着時のフィット感を安定させるためのアーチとして改良されつつ復活した。
ちなみに公式サイトでの製品紹介では「ねじって固定」のように表現されているが、これはハイテクなサイズ調整のギミックがあるわけではなく、イヤホン本体に滑らかな出っ張りが備わっているだけだ。要するに「運動時などは、耳の中でイヤホンの向きを手動で回転させることで、固定用アーチがちょうど取れにくい角度にはまるように調整して使おう」という意味である。
こうした仕様の変化によってか、装着時のグラつきはほぼ感じない。装着感としては軽やかで、運動中でも快適に使えそうだ。
イヤホン本体(外面)
イヤホン本体(側面)
イヤホン本体(内面)
充電ケースのカラーは白色のみだが、イヤホン本体のカラーは「Porcelain(ポーセリン)」(白系)、「Hazel(ヘーゼル)」(黒系)、「Wintergreen(ウィンターグリーン)」(薄緑系)、「Peony(ピオニー)」(ピンク系)の4種類から選択できる。
防水性能については、ケースがIPX4、イヤホンがIP54に準拠する。ケースにもしっかりと防水性が担保されていることは安心材料だ。
「Pixel Buds Pro 2」は、Bluetooth 4.0以降に対応したデバイスとペアリングが可能だ。ただし、一部の機能を利用するにはAndroid 6.0以降を搭載したスマートフォンと接続し、インターネット接続がある環境が必要になる。
Android端末とペアリングする場合には、対象のスマートフォンの近くで充電ケースを開くだけで、ペアリング操作用のポップアップ画面「Fast Pair(ファストペア)」が表示される。いっぽう、「iPhone」やほかデバイスとペアリングする際には、ケース裏面にあるボタンを長押しすることで、ペアリングモードに切り替えられる。
Androidスマートフォンとのペアリング手順は、充電ケースを開けて、画面指示のとおりに操作すればOKだ
なお、以下で紹介する手順については、「Pixel Buds Pro 2」を「Pixel 8a」に接続した場合の画面にて紹介する。
イヤホンのペアリング時には「Pixel Buds」アプリをインストールするようにうながされる。画面指示のとおりに操作していくことで、イヤーチップのサイズ変更や、タッチセンサーを使った操作のチュートリアルなどが完了する。
この画面からは、イヤホンのタッチセンサーを長押しする際の挙動をカスタマイズしたり、イヤホンから音を鳴らして位置を捜索したり、といった操作が可能。なお、タッチセンサーでの操作としては、「前方にスワイプ」で音量を上げる、「後方にスワイプ」で音量を下げる——ができるようになっていることも見逃せない。
スマートフォンで開いた「Pixel Buds Pro 2」の設定画面で、タッチセンサーの挙動を変更できる
「Pixel Buds Pro 2」では、Googleの独自チップである「Tensor A1」を初搭載した。これによる本世代の看板機能としては、同社の生成AI「Gemini(ジェミニ)」をハンズフリーで利用できる「Gemini ライブチャット」に対応したことだ。
ただし、残念ながら現時点では「Google Gemini」アプリの言語設定を英語にして、英語で発話する必要がある。具体的には、「Google Play ストア」から「Google Gemini」アプリをインストールし、同アプリ内での言語設定をEnglish(United States)に変更しておく必要がある。
さらに、「Pixel Buds Pro 2」の設定画面で「デジタルアシスタント」の欄をタップし、必要な設定手順を実行する。後は、「Hey Google」などのウェイクワードの後に、指示を伝えればよい。たとえば、「Hey Google, Tell me the recipe for using chicken.(鶏肉を使うレシピを教えて)」のように話しかけると、スマートフォンで「Google Gemini」アプリが起動し、そこに表示されたレシピのメニューに関する情報を音声によって読み上げてもらえる。
「Google Gemini」アプリで、右上のアカウントアイコンをタップし、「設定」を選択。「日本語」と書かれている部分をタップして、設定言語をEnglish(United States)に変更しよう
「Pixel Buds Pro 2」の設定画面で「デジタル アシスタント」の欄をタップし、表示されたスイッチをオンにした後、「次へ」をタップ。画面指示にしたがって、機能を有効化していこう
当然読み上げられる文章は英語で、読み上げスピードもネイティブスピーカーを想定したもの。一応、プロンプトを工夫し、冒頭で「Hey Google, Speak Japanese and, 〜」のように指示することで、日本語のテキストを出力させて読み上げてもらえるが、英語で指示しなければならない状況は変わらない。ポテンシャルは感じるが、多くの日本のユーザーにとってはまだ使いにくい状態だ。
スマートフォンの画面を見ずとも、「Pixel Buds Pro 2」を装着した状態で、英語で「Hey Google, 〜」のように指示を出すと、「Google Gemini」アプリが起動し、回答を読み上げてくれる。ただし、全部英語だ
いっぽうで、チップセット刷新にともなう恩恵としては、音声処理の高速化に注目したい。
「Pixel Buds」シリーズのアクティブノイズキャンセリング(ANC)では、ユーザーの耳の形状に合わせてANCの消音効果を最適化する「Silent Seal」技術が機能している。「Pixel Buds Pro 2」では、このバージョンが2.0に上がっており、1秒あたり最大300万回の処理によってノイズが最適に低減されるという。ANCの効果としては前世代モデルの最大2倍になっているとされ、より幅広い周波数帯でノイズを低減できることもポイントだ。
今回は、前世代モデルと比較しながらANCを検証したわけではないが、新モデルを単体で試用したうえでの印象としては、ANCの質はよいと感じた。当然、ANCをオンにしても、駆動するドライヤーや、シンクに水道を流す音といった生活音がゼロになるわけではないが、聞こえる雑音は高音域のみに制限される。
たとえば、ドライヤーで髪を乾かしながらでも、動画やポッドキャストを楽しむには十分であった。そのほかにも、電車での通勤・通学でリスニングをするのにも適している。ANC利用時に発生する圧迫感のなさも、前世代モデルから引き継いでいる特徴と言えるだろう。
耳に装着した際の見た目のイメージ。小型化して前世代モデルよりもスッキリした印象
また、音質については、先代モデルと同様、11mm口径の大型ドライバーを搭載したうえで、さらに滑らかな高音のための新しい高周波チャンバーが備えられているのがポイントだ。
実際に、「YouTube Music」で楽曲を聴いてみると、低音域の迫力はもちろん、解像感もよく、高音域も軽やかだと感じた。聴く人を選ばず、幅広いジャンルで使いやすい音作りになっていると思う。
このほか機能としては、複数のデバイスとペアリングし、用途に応じて切り替わるマルチポイント接続(※デフォルトではオフ)や、会話検知機能(※デフォルトではオフ)などもサポート。また、指定世代の「Pixel」スマートフォンに接続した場合には、ヘッドトラッキング付き空間オーディオ(Aシリーズを除く「Pixel 6」以降)や、クリア音声通話(「Pixel 7」以降)なども使える。
設定画面の「音」の欄から、イコライザーの設定変更も可能だ。ちなみに、デフォルトではオフになっている「会話検知機能」もここから有効にできる
イヤホン本体の楽曲再生可能時間は、仕様表によれば最長で12時間、ANCをオンにした場合で最長8時間だ。充電ケースを併用した場合には、合計48時間、ANCオンで合計30時間となる。
ちなみに、前世代モデルでは、イヤホン単体で最長11時間、ANCオンで最長7時間、充電ケース併用で合計31時間、ANCありで合計最長20時間だった。つまり、イヤホン本体での使用時間が+1時間ほど、充電ケース併用時の合計使用時間は10時間以上も伸びているのがわかる。
繰り返しとなるが、「Google Pixel Buds Pro 2」の価格は36,800円で、前世代モデルと比べて13,000円ほど値上がりした。「Tensor A1チップ」の搭載と生成AI関連の派手な新機能という看板に目を奪われがちではあるが、現時点ではどちらかと言うと前世代モデルと比べたときの、装着時の安定性や、音質の改良、バッテリー持ちの進化など、堅実なアップデートに魅力を感じる1台だと言えよう。