左の3つが「EF-21」で、右の2つが「EF-22」
エプソンがレーザー光源搭載の3LCD(透過型液晶)フルHDプロジェクター「EF-21」「EF-22」を発表した。どちらもOSはGoogle TVで、NetflixやYouTubeなどの動画コンテンツを単体で楽しめるいわゆる「スマートプロジェクター」。
基本的なスペックは両モデル共通で、横360度、縦(上下)150度に回転するスタンドの有無が大きな違いだ。市場想定価格は「EF-21」が108,900円(税込)前後、「EF-22」が137,500円(税込)前後で、いずれも2024年10月24日発売予定。
3種のポップなカラーバリエーションから選べる「EF-21」と、スタンド一体型で天井への投写も簡単な「EF-22」。どちらもリアルタイムでの自動台形補正に対応し、手軽に使えることを訴求するエントリーモデルと言える
「EF-21」「EF-22」はいわば双子の製品で、それぞれ「EF-11」「EF-12」の後継モデルとして考えられているようだ。「EF-11」「EF-12」もレーザー光源プロジェクターだったが、スペック的にはかなり洗練され、より使いやすくなったと言えそうだ。
従来モデルとのスペック比較表は以下の写真のとおり。使いやすさに直結する大きな変更点は主に3つ。「EF-22」にスタンドが付いたこと、TOF(Time Of Flight)センサーによるリアルタイム自動台形補正/自動フォーカス合わせに対応したこと、OSがGoogle TVに変更されたことだ。
スペックは充実しても、価格は従来モデルとほぼ変わらない点も特筆しておくべきだろう。
従来モデルも含めたスペック比較表。厳密に言えば、「EF-21」と「EF-22」はスピーカーシステムも異なる。「EF-22」は音質的にもよりすぐれたモデルとして位置づけられているとのこと
スタンド一体型の「EF-22」。台が360度回転するだけでなく、上下にも150度動くため、天井投写をスムーズに行える。微妙な色の違いだが、左がネイビーで右がブラック
ここから、大きな変更点3つをそれぞれ見ていこう。まずはスタンド一体型である「EF-22」について。こうした形状のプロジェクターはJMGOやXGIMIの製品で存在していたが、エプソンとしては初。
「EF-11」にしても「EF-12」にしても、手軽に使えることや天井を含む360度投写可能であることを訴求していたわけで、スタンド一体型というこの形はユーザーにとっても待望と言えるスペックアップだろう。
「EF-22」の電源端子はスタンドに設置されている
「EF-22」の電源アダプター。「EF-21」は電源を本体の中に内蔵しているタイプで、実はこの点も両モデルの違いの1つ。このことが理由で、「EF-22」の騒音レベルは1dB静かになっている
電源以外の接続端子は「EF-21」「EF-22」で共通。HDMI入力1系統、ヘッドホン出力(3.5mmステレオミニ)を装備する
「EF-21」はスタンドが付いていないが、電源を内蔵していることもあり、すっきりと設置できる。左からホワイト、ベージュローズ、スモークアイスグリーンという爽やかな本体色を揃えることも大きな特徴だ
障害物の自動回避や、スクリーンを検知して自動でフィットさせる「自動スクリーンフィット」機能も搭載
従来モデル「EF-12」にも自動台形補正機能はあったのだが、こちらは補正のためのパターンが画面に現れ 、どうしても待ち時間が発生していた。「EF-21」「EF-22」ではTOF(Time Of Flight)センサーと呼ばれるシステムを導入したため、ほぼリアルタイムで素早い自動台形補正が可能になった。
他メーカーのプロジェクターでもリアルタイムで投写位置に合わせてヌルヌルと自動台形補正をしてくれるモデルがあるが、基本的には同様の技術を使っているようだ。実際に動作を確認すると、台形補正、フォーカス合わせは非常にスムーズ。特に「EF-11」にはこうした自動補正機能はなかったわけで、この点の進化も見逃せないポイントだ。
OSはGoogle TVであるため、Netflixを含むさまざまなネット動画サービスに直接アクセス可能。ステレオスピーカーも内蔵しているので、プロジェクターひとつあればそれだけで映画などを楽しめる
最後のポイントが、Google TV搭載であること。YouTubeやAmazonプライム・ビデオのほか、Netflixなども含めて自由にアクセスできるようになった。また、Google Castを使えばスマートフォンからのミラーリングも簡単に行える。
「EF-11」で各種ネット動画サービスを利用するには、オプションで用意されるドングル型のAndroid TV端末を接続する必要があったことを考えれば、ここも大きな進化だ。
シンプルなリモコンが付属。YouTubeとNetflixについてはダイレクトアクセスボタンも用意されている
「EF-21」および「EF-22」の実機に少しだけ触れられたのだが、3LCDの安定した画質はさすが。そもそも世の中の多くの家庭用プロジェクターはDLP方式であり、その場合どうしてもカラーブレイキング(色割れ)ノイズが気になってしまうところがある。「EF-21」「EF-22」にはカラーブレイキングノイズとは無縁の原理的なスムーズさがあり、わざとらしさのない自然な画調なのだ。これにとても安心した。
画素ずらしなどの技術が投入されていないシンプルなフルHDプロジェクターではあるが、何のてらいもないよい製品であることを強く印象づけられた次第だ。
「EF-21」「EF-22」だけでなく、エプソンのプロジェクターは自然な再現性、清廉な画調が魅力だ。ともすれば非常に地味、色が薄いと感じられるかもしれないが、味付けが濃いことが高画質とは限らないことは改めてお伝えしておきたい。
特に、筆者のようにカラーブレイキングノイズが気になるという人にとっては、非常にありがたい選択肢が生まれたと言えるだろう。このコンセプトのハイグレード版、つまり「4Kエンハンスメントテクノロジー」で4K表示に対応した製品の登場も期待せずにはいられない。
なお、エプソンでは「EF-21」「EF-22」にメーカー3年保証を付けるという。また、修理については日本国内で行うこと、そもそものコア部分である3LCDパネルが自社開発・製造であることを前面に押し出してマーケティングをしていくようだ。エプソンはプロジェクターのレンタルサービス(有料)を実施しているので、購入前、購入後のサポート体制は万全というわけだ。画質にとどまらない、総合的な安心感のあるプロジェクターを検討するならば、まずはエプソンの製品を調べてみるとよいだろう。