Xiaomi(シャオミ)から登場した直販価格39,980円(税込)のプロジェクター「L1 Pro」をレビュー。先行した同29,980円(税込)の「L1」と比較すると、明るさが200ルーメン(ISO)から400ルーメン(ISO)になったのが目立ちます。単純にコスパ勝負になるかと思いきや、むしろ明るさ“以外”で「L1」と大きな違いが。今買うなら断然「L1 Pro」! 10万円以下のプロジェクターを集めて一斉視聴しても十分戦える実力があります。
・設置性よりも画質に全力投資したい
・派手な発色よりも、ナチュラルな色味が好み
・映画もYouTubeも単体で楽しめるGoogle TVに魅力を感じる
Xiaomi(シャオミ)のプロジェクター「L1 Pro」。公式サイトでの販売価格は39,980円(税込)で、弟機「L1」よりもひとまわり大きなモデルです
弟分「L1」と仕様を比較すると、まず明るさが200ルーメン(ISO)から400ルーメン(ISO)に。
「L1 Pro」の主要スペック
●本体色:グレー
●明るさ:400ルーメン(ISO)
●表示解像度:1,920×1,080(フルHD)
●HDR対応:HDR10
●方式:LCD
●光源:LED
●スピーカー出力:5W×2
●寸法:128(幅)×189(奥行)×210(高さ)mm
●重量:約2.0kg
●電源:電源アダプター付属(バッテリーは非搭載)
●投写距離:投写距離:161cm(60インチ)、214cm(80インチ)、221cm(100インチ)※概算表記
●備考:Wi-Fi対応、Bluetooth(5.0)対応
明るさが上がると当然放熱にも気を遣うのでサイズも大きくなります。また、投写距離も「L1」より数cmずつ長くなっていることから考えて、光学系を含めてまったく異なる設計では? と推察されます。
大きな単焦点レンズ。「L1」より少し長焦点で大玉な印象
センサーが前面に。ファンの音は30dB以下とのことで、空気清浄機が動作しているかなというレベル。手をかざしたところ、背面吸気、前面排気で、「L1」より温かい印象
重量は2kgで寸法は128(幅)×189(奥行)×210(高さ)mm。とても軽いのは「L1」同様ですが、片手でヒョイとつかめるサイズではなくなりました(「L1」の高さは176 mm)
電源は「L1」同様、外付けACアダプターに委ねられています。プラグはいわゆる3ピンタイプ。必要に応じて変換プラグを用意しましょう
背面下にHDMI入力1系統を装備。左は3.5mmステレオミニヘッドホン出力
リモコンはBluetooth接続。十字キーメインのシンプルな配置で、歯車が基本設定、上下ボタンが音量調整。YouTubeへのダイレクトキーが便利です
パネルは「L1」同様LCD(液晶)。やはり仰角がない直投(レンズ中心軸から真正面に映像が投写される)タイプでした。台形補正がかかって画素がむだになるのを防ぐため、本でかさ上げして設置しました
初期設定では「自動キーストーン修正」(台形補正)がかかります。画質優先ならばこうした補正はないほうがよいのですが、ライトにネット動画程度を見る分には、多少キーストーン補正がかかっても問題なく楽しめました
ピント合わせは、「オートフォーカス」で。リモコンを使って手動でも調整できますが、ピントが怪しい場合は「フォーカスを実行」でオートフォーカスを適宜し直せば十分でした
「明るさが200ルーメンから400ルーメンに倍増!」とはいえ、正直なところ実際見た印象は“明るさ倍”というほどではありません。また、初期値の「画像モード」(いわゆる画質モード)「標準」の色味も、一般的なDLPプロジェクターにありがちなコッテリ派手めな色とは一線を画した落ち着いたトーンで「L1」と同傾向です。
しかし、「L1」でいちばん気になった、画面四隅のぼけや輝度低下(ユニフォーミティー/画面全体の均一性)が明らかに改善されています。そのうえ、描線自体も「L1」のような線の太さや荒っぽさは影を潜め、横テロップのジャダー(移動にともなうガタつき)もクロマエラーも目立たなくなっています。
この時点で「L1」を買うならもう1万円払って「L1 Pro」にしたほうが絶対よい、と感じました。
プリセットの「画像モード」のメニューを見て、「あっ!」と思ったのは、「ユーザー」が最初にあること。これが「Pro」の証しなのか!?
「画像モード」の初期値は「標準」。そのほか、彩度を上げて青みを持たせた「ビビッド」と、暖色系の「映画」など実用性の高いプリセットを持っています。「ユーザー」は好みに応じて設定を変更するためのモードと言えるでしょう
ともあれ「ユーザー」を選びチマチマいじる必要もない完成されたプリセットです。モードを変えながら見ていくと、明るさが向上しているからか、あえて「ビビッド」にしなくても、気に入ったモードを”お好み”で選べばよいと思えるほど、よくできています。
いちばんうれしいのは、「L1」ではちょっと暗くて厳しかった「映画」モードが、かなり万能に使えるようになったこと。
結論としては、コンテンツに応じて下記の3つを使い分けたいと思いました。
・「標準」(初期値):クセがなく万能ながら、全体にあっさりめ
・「ビビッド」:色温度高め(青っぽい)でわずかにメリハリ画質。バラエティ番組、ライブ、スポーツに好適
・「映画」:色温度低め(茶色がかる)でウォームなトーン。全暗環境で、映画やドラマを見るのに好適
HDR映像を入力すると、このように別メニューが展開されます
ここから作品別にコメントします。
Ultra HDブルーレイ「シビル・ウォー アメリカ最後の日」(4K/Dolby Vison収録作品をフルHD/HDR10で再生)。夜間ワシントンDCに突入する終盤のシーンを、「画像モード」「標準」「ビビッド」「映画」で切り替えて見ます。
「L1」のレビューでおすすめした「ビビッド(HDR)」モードでは、暗闇に、ブルーのライト、グリーンがかった戦闘服、オレンジの閃光といった色が立ち、今どきのクリアーな映像が展開されます。特に最新の直視型ディスプレイ(テレビ)を見慣れた人は、最も好ましく感じられるでしょう。
もっとも、やや明るめの場面は、あっけらかんとしすぎるきらいも。HDR効果が発揮され、明るすぎてしまうからです。私なら「映画(HDR)」モードで見たくなります。ホワイトハウス内部の静まりかえった不気味さ、女性秘書官が青く照らされ“磔(はりつけ)”にされているような画、暗闇に浮かび上がる大統領の白いシャツのコントラストなどなどがグッと印象深くなります。
次に自然界の景色を。「四季 高野山」(4K/HDR10+収録作品をフルHD/HDR10で再生)を見てみます。
明るい夏の映像では、「標準」モードですべてが誇張感なく再生されます。目が覚めるような晴天を見たいなら、「ビビッド」に。紅葉も鮮やかに見え、紅葉しきっていない葉との違いも保ったまま見栄えがよくなります。夕暮れの紅葉は「映画」にすると雰囲気が増し、その場に行ったような空気感を最も引き出してくれました。
部屋の環境(全暗、外光あり、明かりの付いたリビング)を変え、各モードの投写映像を掲載しますので、ご参考に(※ペンタックス「K-3 Mark III」カスタムイメージ「フラット」、焦点距離18mm、F4.5、1/20、ISO800で撮影)。
最後に、Google TVのアプリを使ってAmazonプライム・ビデオを再生します。これならば、Wi-Fiさえあれば、別途プレーヤーなどがなくとも「L1 Pro」だけで映画を再生できます。
「PERFECT DAYS」を「L1」で再生した際は、明るさが物足りない分、「画像モード」を派手な「ビビッド」にすることで味を補って再生しました。
しかし「L1 Pro」では、「映画」モードにすることで無理に色を誇張しなくても魅力ある映像を再現できました。主人公平山(役所広司)のシャツやネオンのブルーの儚さ、悲哀を象徴する夕暮れや街角のネオンのオレンジ具合が、十分繊細に描かれます。「影って、重ねると濃くなるんですかねえ」と役所広司と三浦友和が川辺で初めて心を通わせるシーンでは、2人の心の揺らぎが川の水面に反射する光となって互いの顔をていねいに照らし出す機微まで見て取れます。
「L1 Pro」は、5W×2というアンプ出力のフルレンジステレオスピーカーを内蔵。3W×2の「L1」に比べパワフルです。音を出してみると自然な鳴りっぷりで、ボリュームを上げても破綻しません。
「シビル・ウォー アメリカ最後の日」のようなアクション映画では「ドルビーオーディオ処理」をオンにしたうえで「サウンドモード」を「シネマ」にするとよいでしょう。リッチな音色と余裕のある鳴りっぷりを楽しめます。重低音は出ませんが、ヘリの旋回音や機械音を認識させる広がりがありながら、耳に付くような下品な高域はない、よい塩梅です。
いっぽう、平野綾のブルーレイ「AYA HIRANO SPECIAL LIVE 2010 〜Kiss me〜」のような音楽ライブものでは、「シネマ」でも下品にならず楽しめますが、広がりと高音域を抑えた「音楽」のほうがフラットで素直に声を聴けます。
初期値は「ドルビーオーディオ処理」がオフ。これをオンにすると、複数の「サウンドモード」(音質モード)を選べます
初期値の音質モード「ソフト」はまったくインパクトがないので、「シネマ」か「音楽」がおすすめ
明るさ400ルーメン(ISO)では、テレビのように明るい環境で使うのはさすがに厳しいと言わざるを得ません。しかしながら、カーテンを引いて見る前提の4万円弱大画面として考えれば破格。「L1」で気になった周辺輝度の低下や解像感不足が解消され、十分にプロジェクターの楽しさを味わえます。
これまでも多くの10万円以下プロジェクターを見てきましたが、その中でも屈指の出来だと言えます。この実力を引き出すためには、三脚を使うなどしてプロジェクター視線の高さに近づけること(できるだけ台形補正を使わないこと)です。