ソニーの大人気ノイズキャンセリングヘッドホン「WH-1000X」シリーズもついに第6世代に! 待望の最新モデル「WH-1000XM6」が5月30日に発売されます。
ソニー「WH-1000XM6」(写真はブラック)。5月30日発売で、ソニーストア直販価格は59,400円
2022年に登場した「WH-1000XM5」も「WH-1000XM4」から見た目がガラリと変わり、中身も全方位にわたって進化を遂げて大きな話題となりましたが、今回登場する「WH-1000XM6」は見た目も中身も「WH-1000XM5」からさらにパワーアップ!
「WH-1000XM5」からどのような進化を遂げたのか? 実機の写真を交えながら「WH-1000XM6」の特徴を詳しく見ていきましょう。
まずはヘッドホンの要とも言える音質部分から詳しくみていきましょう。
ソニー「WH-1000X」シリーズと言えば、すぐれたノイズキャンセリング性能と高音質を武器に“ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホンでも高音質”という流れを創り出し、ノイズキャンセリングヘッドホンの代名詞となっています。
歴代のソニー「WH-1000X」シリーズ
そんな「WH-1000X」シリーズにおいて最も重要なのは音質です。今回の「WH-1000XM6」の開発では、“ソニーが考える高音質”を示すため、これまでにないまったく新しい手法を取り入れたそうです。
それが“マスタリングエンジニアと共創”です。音楽制作ではさまざまなフェーズで多くの人が関わっていますが、その中でも最終的な音のバランスを調整するマスタリングエンジニアは、アーティストやクリエイターが本当に届けたい音を最も理解している人物。
マスタリングエンジニアの知見を取り入れることで、ソニーが目指す理想の高音質体験により近づけるのではないかと考え、ランディ・メリルやクリス・ゲーリンジャー、マイケル・ロマノフスキ、マイク・ピアセンティーニといった数々の名作を世に送り出してきた世界的なスタジオに所属する著名なエンジニアと開発段階から意見交換を行い、音作りを行ったそうです。
もちろん、音作りに加えてハードウェアのアップデートもしっかりと実施している。音作りの要となるドライバーユニットには、「WH-1000XM6」専用設計のφ30mmのものを採用。独自開発の穴を設けたボイスコイルボビン構造を採用することで、滑らかで伸びのある高音域再生を実現したそうです。
「WH-1000XM6」専用設計のφ30mmドライバーユニット
また、最新の高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN3」の高い処理能力を生かし、D/A変換技術を発展させた新開発の「先読み型ノイズシェーパー」を搭載したのもポイント。最適な量子化ノイズを先読み計算してフィードフォワード処理することで、音の立ち上がりに対する応答性を改善、迫力のある低音のエネルギー感やクリアでスピード感のある高音質を実現したそうです。
実際に「WH-1000XM5」と「WH-1000XM6」を比較試聴してみましたが、「WH-1000XM5」も十分高音質ではありましたが、「WH-1000XM6」のほうがジャンルを選ばないバランスのよさがアップしている印象でした。
たとえばヒップホップの楽曲。「WH-1000XM5」では女性のラップに低音域が若干重なるようなイメージがありましたが、「WH-1000XM6」では低音域をタイトな沈み込みと量感でていねいに描写することで、低音域をしっかり感じられるのにラップもより鮮明になって聴き取りやすく感じられました。
また、広がりや定位感も向上しており、アコースティック楽曲ではそれぞれの楽器の音色がさらにわかりやすくなっていました。ワイヤレスヘッドホンは音楽リスニングだけでなく、動画コンテンツの視聴などにも使われるケースが多くなっており、「WH-1000XM6」の聴きやすさ重視のバランスのよい高音質が生きてくるケースは多そうです。
「WH-1000X」シリーズのもうひとつの重要な要素であるノイズキャンセリング機能。先代の「WH-1000XM5」では、高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN1」と統合プロセッサー「V1」のデュアルチップ構成を採用し、外側に左右あわせて6基、内側に左右あわせて2基の計8基のマイクを活用した「マルチノイズセンサーテクノロジー」でノイズキャンセリング機能を実現していましたが、新モデルの「WH-1000XM6」はここからさらにアップデートされました。
具体的には、高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN3」と統合プロセッサー「V2」のデュアルチップ構成を採用、「マルチノイズセンサーテクノロジー」が外側に左右あわせて8基、内側に左右あわせて4基の計12基のマイクを活用したものに切り替わっています。
なかでも注目は、ノイズキャンセリング用マイク制御を行っている高音質ノイズキャンセリングプロセッサーが新開発の「QN3」に切り替わったことでしょう。高音質ノイズキャンセリングプロセッサーが新規のものに切り替わるのは実に約7年ぶり。「QN1」から7倍以上となる処理速度を実現したことで、計12基のマイクを的確に制御できるようになりました。特にフィードバックマイクを左右それぞれ2基に強化したことで、ノイズ状況をより正確に判別して効果の高いノイズキャンセリング機能を提供できるようになったそうです。
「WH-1000XM6」に搭載されている高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN3」。「QN1」は「WH-1000XM3」に初搭載され、「WH-1000XM5」まで3世代にわたって使われてきましたが、今回約7年ぶりにアップデートされました
画像の黄色い部分が「WH-1000XM6」のマイク搭載位置。外側に左右あわせて8基、内側に左右あわせて4基の計12基のマイクが搭載されています
また、高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN3」と統合プロセッサー「V2」のデュアルチップ構成になったことで、周囲のノイズ状況やヘッドホンの装着状態をモニタリングして自動でノイズキャンセリング機能を最適化する「オートNCオプティマイザー」が「アダプティブNCオプティマイザー」へと強化。モニタリング回数が増え、従来の「オートNCオプティマイザー」よりもさらに精度の高いノイズキャンセリング機能を提供できるようになったのもポイントと言えるでしょう。
続いてデザインについてチェックしていきましょう。
先代の「WH-1000XM5」は、「WH-1000XM4」から見た目がガラリと変わり、装着感のよさと装着時のスマートな見た目を意識したデザインに仕上げていました。装着感や見た目のデザインという点ではかなり好印象でしたが、いっぽうで装着感を追求するために折りたたみ機構が廃止され、キャリングケースも若干大きくなったことで、カバンに入れて持ち運びすることの多い人によっては若干マイナスポイントになっていたのも事実です。
そこで、最新の「WH-1000XM6」では装着感をさらに向上させつつ、課題となっていた携帯性をアップするため、廃止された折りたたみ機構を復活。パッと見た感じのデザインは「WH-1000XM5」に近いですが、ヘッドバンドの幅を広げたり、イヤーパッドを厚くしながら見た目がスリムになるように一部形状を見直すなど、装着時の快適性や安定性を高める工夫が随所に盛り込まれています。
ソニー「WH-1000XM6」(ホワイト)。見た目は「WH-1000XM5」に近いですが、細かい部分でかなり変わっています
写真左が「WH-1000XM6」、右が「WH-1000XM5」です。折りたたんだ際のイヤーカップの取り付け角度が異なります。ちなみに、「WH-1000XM5」は首掛け時にイヤーパッドが外側に向くよう回転していましたが、「WH-1000XM6」では内側に回転するようになっています
写真左が「WH-1000XM6」のヘッドバンド、右が「WH-1000XM5」のヘッドバンド。ヘッドバンド幅が広がっているのがひと目でわかります
写真左が「WH-1000XM6」、右が「WH-1000XM5」(2025年5月16日10:40修正:画像とキャプションを修正しました。訂正しお詫びいたします。)
イヤーパッド自体はむしろ肉厚になっており、装着時の快適性は「WH-1000XM5」から向上しています
「WH-1000XM6」を装着したところ。右のハウジング部にタッチセンサーコントロールパネルを搭載
ちなみに、折りたたみ機構の復活に合わせて、キャリングケースもリニューアル。ケース自体がコンパクトになったほか、開閉部分がファスナー式ではなくマグネットロック式に、ワンタッチで開閉できるようになったことで、より手軽にキャリングケースからの出し入れができるようになりました。キャリングケースに入れて持ち運ぶことが多い人にとっては地味にうれしい改良点と言えます。
「WH-1000XM6」のキャリングケース。マグネットロック式になり、ワンタッチで開閉が可能に
写真左が「WH-1000XM6」、右が「WH-1000XM5」のキャリングケース。ひと回りほどコンパクトになりました
ここまで音質やノイズキャンセリング機能、デザインに関してみてきましたが、最後にそのほかの進化ポイントをまとめて紹介します。
独自のリアルタイム信号処理のより、ステレオ音源を映画館で聴いているような臨場感ある立体的な音場に変換してくれる機能。アプリ「Sony | Sound Connect」からオン/オフを設定でき、再生アプリの種別を問わず利用できます。
「360 Reality Audio Upmix for Cinema」の切り替えはアプリから操作する形です
「WH-1000XM5」ではマルチポイント接続時の再生仕様が先に接続したデバイス側が優先になっており、マルチポイント接続している別の機器を使用する場合は再生中の機器を停止する必要がありました。「WH-1000XM6」では、マルチポイント接続時の再生仕様が後勝ちとなり、再生中の機器を停止しなくても、マルチポイント接続している別の機器を操作すれば切り替えができるようになりました。
LE Audioで接続した際の通話時に従来の2倍の帯域で音声伝送が行えるスーパーワイドバンドに対応。対応スマートフォンと組み合わせることで、音声がより自然でクリアに聞こえるようになります。
ビームフォーミング技術とAIを活用して騒がしい環境下でもクリアな通話品質を確保する「AIビームフォーミング」。「WH-1000XM5」では左右4基のマイクを活用したAIビームフォーミングでしたが、「WH-1000XM6」では左右6基のマイクを活用したものにアップデート。より鋭い指向性とノイズリダクションAIのアルゴリズム進化により、さらにクリアな通話が可能となっています。
アプリ「Sony | Sound Connect」から機能を有効化することで、ヘッドホン本体の「NC/AMB」ボタンを2回押すだけでマイクのオン/オフを切り替えができるように。オンラインミーティング中、とっさにマイクをオフにしたいときに重宝しそうな機能です。
「WH-1000XM6」では、ヘッドホン本体にある「NC/AMB」ボタンの操作でマイクのオン/オフの切り替えが行えます
ソニー「WH-1000XM6」と「WH-1000XM5」のスペック比較表
「WH-1000XM5」から約3年ぶりに登場するソニーノイズキャンセリングヘッドホンの新しいフラッグシップモデル「WH-1000XM6」。音質やノイズキャンセリング機能、デザインや使い勝手など、ノイズキャンセリングヘッドホンのトップランナーならではのこだわりが詰まった完成度の高い1台に仕上がっていました。
ソニーストアでの直販価格は59,400円(税込)となかなか強気の価格設定です。昨今、物価高の影響で、ソニーの「WH-1000X」シリーズをはじめ、各社のノイズキャンセリングヘッドホンの上位モデルは軒並み価格が上昇しています。「WH-1000XM5」の登場時の価格と比べると約1万円アップです。「WH-1000XM5」からの進化点を考えると価格上昇は致し方ないところではありますが、なかなか手が出しにくい価格になってきたのも事実。“さすがソニー”と呼べるだけの出来だけに、価格面が頭を悩ませる問題のひとつになりそうです。
とはいえ、ワイヤレスヘッドホンはワイヤレスイヤホンよりも高音質で音楽を楽しめるケースが多く、身に着けたときにファッションアイテムにもなってくれることから、愛用者も徐々に増えています。長く愛用できる高機能なノイズキャンセリングヘッドホンを探している人は、「WH-1000XM6」は候補のひとつに必ずあがってくるでしょう。