映画やゲームにぴったりな画質のよい4Kテレビが欲しいけれど、種類が多すぎてどれを選べばよいかわからない……と悩んでいませんか? 本記事では、4Kテレビの基本的な特徴や選び方、そしておすすめ製品を紹介します。価格.comの人気製品を実際に見て、聴いて「これは買い!」という製品を選出したので、ぜひ購入の参考にしてみてください。
〈レビュー・監修〉ホームシアターコンシェルジュ 遠藤義人
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。
【価格.comマガジンがおすすめする理由】
高コントラスト(メリハリのある)画質で、どんなコンテンツも安心して楽しめる
有機ELテレビとしては手ごろな価格
48V型から77V型まで、有機ELテレビとしてはサイズ展開が豊富
【ただし、こんな人には向きません】
全録機能である「タイムシフトマシン」が使いたい人
43V型(インチ)以下の小型モデルが欲しい人
実際に視聴した2025年モデル4Kテレビのなかで、コスパの観点から最もおすすめにあげたいのがTVS REGZAの有機ELテレビ「X8(X8900R)」シリーズです。
液晶テレビが高画質&大画面化するなか、55、65 V型(インチ)のボリュームゾーンでの最高画質という点では、まだ有機ELにアドバンテージがあるのも事実。価格.com最安価格を見ると非常に手ごろで、まさに狙い目と言えます。
TVS REGZAの「X8(X8900R)」シリーズは、同社のスタンダードモデルに位置づけられる有機ELテレビです。
さらに画質のよい有機ELテレビとして「X9(X9900R)」シリーズがあり、こちらは「タイムシフトマシン」(指定した6チャンネルの「全録」機能)まで使える“全部入り”の仕様。この「X9」シリーズの影に隠れがちな存在ではありますが、画質・音質のよさに対しての価格という意味で「X8」シリーズのコストパフォーマンスの高さは抜きん出ています。
確かに「X9」シリーズと比べれば画質・音質ともに差はありますが、最新有機ELパネルの基礎体力の高さを最大限生かした素直な表現力はさすがのひと言。有機ELならではと言える高コントラスト(メリハリのある)映像を映し出すだけでなく、放送番組など粗めの素材も安定して高画質化してくれます。
4Kテレビとは、水平(横)方向に4,000画素(実際には3,840)を持ったテレビのこと。従来の一般製品で採用されていたフルHD(1,920×1,080)よりも約4倍細かく、高精細な映像を映し出せます。地デジ放送の解像度はHD(1,440×1,080)なので、4Kは必要ないと思われるかもしれません。それでもこれからテレビを購入するならば、4Kテレビがおすすめです。
その大きな理由は、42V型以上の最新テレビは、基本的にすべて4K解像度だから。あえて旧モデルなどの低解像度のテレビを選ぶ必要はありませんし、低解像度の大型テレビが安いということもありません。つまり、42V型以上の4Kテレビを選ぶことにデメリットはありません。また、4K放送を見ないのであれば、専用アンテナの設置は不要です。
今やAmazonプライム・ビデオやNetflix、YouTubeなどでは4K解像度のコンテンツは珍しくありません。それらを100%楽しめるのが4Kテレビなのです。さらに、地デジ放送などHD以下の解像度コンテンツであっても、4Kテレビは映像の解像度を4Kに変換(アップコンバート/アップスケーリング)して高精細化します。
すぐれた映像処理能力を持っていることも4Kテレビのよいところ。4Kテレビに買い替えれば、何気なく見ていたいつものコンテンツをより楽しめるかもしれません。
42V型以上の最新テレビは基本的にすべて4Kテレビです。今や4Kテレビは当たり前の存在ですが、41V型より小さな4Kテレビは発売されていません。小型テレビが欲しい人は4Kテレビを選べないことには留意しましょう。
まずは基本的な4Kテレビの選び方を確認してみましょう。これから選ぶならば、まずは4Kテレビを検討すべきです。そのうえで高画質を求めるならば55V型以上がおすすめ。小さいテレビが欲しい場合の有力候補は43V型です。
部屋の広さや用途に合ったサイズを選ぶのが基本ですが、サイズによって選べる製品が異なることに注意しましょう。
テレビを選ぶときに真っ先に考えるのは、サイズのことではないでしょうか。
最新のテレビは画面周辺の額(ベゼル)が細くなっており、とても省スペース。もし10年ほど前のテレビからの買い替えならば、思っていたよりも大きなサイズが候補になるはずです。
具体的には、
・6畳ほどの部屋であれば43V型まで
・8〜10畳ほどの部屋であれば43〜60V型
・12畳以上の広い部屋出あれば60V型以上
がひとつの目安になるでしょう。
テレビのサイズ選びには「適正視距離」から逆算するという考え方もあります。これは、画面に近づいた場合にテレビのメッシュ状の画素が見えない(最短)距離のこと。たとえば、4Kテレビを視聴する位置が画面から1m程度の場合、55V型以上が「適正」となります。
最も大きな没入感を得られる距離、ならびにサイズ選びの方法とは言えるのですが、普段使いの距離としてはあまりに近くなります。推奨サイズも過度に大きくなりがちなため、実生活や部屋に合ったサイズから考えたほうが現実的でしょう。
※データは2025年6月時点のもの
部屋の広さ以外にも、テレビのサイズ選びで重要なことがあります。高画質・高音質のテレビを求めるならば、メーカーの主力と言える55V型以上のモデルがおすすめです。
テレビは年々大型化していて、現在メーカーの主力サイズは55V型と65V型。高画質モデルはそもそも55V型もしくは65V型以上のモデルしか展開されていないこともよくあります。50V型以下のサイズを検討すると選択肢が減ってしまうため、コストパフォーマンスと高画質を考えるなら、いちばん有力になるのが55V型以上のサイズです。
メーカーが力を入れているのは55V型と65V型。最高画質・音質のテレビを求めるならば55V型以上のサイズを選ぶ必要があります。
55V型が大きすぎると考える人にちょうどよいのが43V型の4Kテレビ。4K液晶テレビとしては最小サイズであり、選択肢が多く、価格もリーズナブルだからです。
40V型よりも小さなサイズのテレビは、解像度がフルHD(1,920×1,080)以下になります。なお、4Kテレビとしての最小サイズは42V型モデルですが、これは有機ELテレビのサイズ。かなり割高になることは注意しましょう。
テレビのサイズが小さくても、録画やネット動画の再生機能など、できることには大きな差がないことがほとんど。価格を抑えたいという場合にも、43V型の4Kテレビが狙い目と言えます。
たとえば40V型テレビの場合、最高解像度は2K(フルHD)。少し大きめの43V型4Kテレビを選んだほうが、解像度が高く画質的に有利と言えます。
現在のテレビは、有機ELと液晶の大きく2つに分けられます。2つを分けるのは発光方式の違い。詳細はともかく、とにかく画質がよいテレビを求めるならば有機EL、コストパフォーマンスを求めるならば液晶を選ぶとよいでしょう。
有機ELテレビは総じて画質がよく、グレーではない黒らしい黒を再現できることが特徴です。正確な光の表現ができるため、映像に臨場感が出るのです。また、視野角が広い(斜めから見ても色が変わりにくい)ことも大きな特徴です。ひと昔前の有機ELテレビは液晶テレビよりも暗いと言われていましたが、最新モデルでは明るさに不足はなく、どのような環境でも使いやすいテレビだと言えます。
有機ELテレビの画質のよさは、主に黒の再現性、局所的な明るさのコントロール力にあります。この有機ELテレビのよさを100%生かすならば「部屋を暗くして」「映画を見る」とよいでしょう。
高画質テレビの最新技術として注目されているのがmini LEDバックライトを搭載した液晶テレビです。
有機ELテレビには「焼き付き」と呼ばれる現象(※)や寿命の面で心配する声もあります。そこで、価格的に有利な液晶テレビのなかで高画質を実現するための技術が注目されているのです。実際に、mini LEDバックライトを搭載した液晶テレビは、有機ELテレビよりも安い(一般の液晶テレビよりは高い)ことがほとんど。画質とコストのバランスがよい選択肢だと言えます。
※同じ画像を長時間表示し続けた場合、その部分に残像が生じたり、劣化が進行したりする症状のこと。最新製品での実使用上はそれほど気にする必要はありません。
液晶テレビは画面の裏に設置されたバックライト(光源)で映像の明暗を再現します。このバックライトを細かく区切り、エリアごとに別々に動かす(ローカルディミングする)ことで、コントラストの高い(明暗差がはっきりした)映像を表示できるのです。
mini LEDバックライトの分割エリア数は数百から数千。画素単位(4Kならば約800万画素)で光をコントロールする有機ELテレビには及びませんが、映像の明暗のより正確な再現性を期待できます。
最新のテレビでは、外付け(別売)HDDを接続すれば地デジなどの番組を録画できます。テレビ番組を録画する方法としてはDVD・ブルーレイレコーダーを使う方法もありますが、録画番組をディスクに残したり、DVDなどのディスクを再生したりという予定がないならば、テレビだけでも十分でしょう。
DVD・ブルーレイレコーダーを使わずに録画機能を充実させたい場合は、3チューナーを搭載したテレビがおすすめ。3チューナーのテレビならば、テレビと外付けHDDを接続するだけで2番組の同時録画(と同時の別番組視聴)が可能。録画したい番組が重なる場合でも困ることがありません。
最新のテレビは、基本的にほとんどがネット動画の視聴に対応しています。つまりDVDプレーヤーやFire TV Stick、Chromecastなどのストリーミング端末がなくても、NetflixやAmazonプライム・ビデオ、YouTubeなどの動画を楽しめるということ。
上記3つはすべての製品が対応していると思って間違いありませんが、TVerやDAZNなどに対応しているかどうかは製品次第。リモコンにショートカットボタンを搭載していることもあるので、自分が利用するサービスに対応しているかどうか、リモコンにボタンがあるかどうか、確認するとよいでしょう。
ひと昔前はこうした製品を「スマートテレビ」と呼びましたが、今ではそう呼ぶことは少なくなりました。世の中のテレビほとんどが「スマートテレビ」化したからです。
地デジなどの放送番組を見ない人は、地上デジタル放送、CS/BS放送の受信機能を持たない「チューナーレステレビ」を選ぶという方法もあります。放送番組の受信はできませんが、インターネット環境があればネット動画は手軽に視聴できます。一般的なテレビと比べるとやや価格が抑えられてはいますが、画質・音質を含めた機能性も控えめ。
Xiaomiの「Xiaomi TV A Pro 43 2025」は価格.comの人気モデル。発売からしばらく経ったこともあり、2025年11月14日時点での価格.com最安価格は30,800円。43V型の4Kテレビが驚くほどの低価格で購入できます。
ここからは、ホームシアターコンシェルジュ遠藤義人さんが実際に見て聴いて、“これは買い!”とおすすめする製品を紹介します。
・〈基準1〉放送番組やYouTubeの画質がすぐれているか
映像表示の「モード」を自動調整や「標準」「スタンダード」などにして、放送番組やYouTubeを視聴。自然な補正や色再現ができているかをチェックしました。
・〈基準2〉映画の画質がすぐれているか
映像表示の「モード」を映画再生向きの「映画」や「シネマ」などにして、Ultra HDブルーレイを中心に再生。4K解像度のコンテンツを自然な解像感、色再現で見せられるかをチェックしました。
・〈基準3〉視野角がすぐれているか
画面を斜めから見たときにも色が大きく変わらないかをチェックしました。視野角が広い(斜めから見ても色が変わりにくい)と、リビングルームなど広めの部屋でも使いやすいと言えます。
・〈基準4〉音質がすぐれているか
ニュースやドラマでの人の声が聴き取りやすいか、スポーツ中継や音楽ライブに臨場感があるか、映画での低音に迫力があるかをチェックしました。
・〈基準5〉操作性がすぐれているか
操作時の動作が機敏か、リモコンの利便性がよいか、インターフェイスは使いやすいかをチェックしました。
| 製品 価格.com最安価格 | 画像 | ショップリンク | 画面サイズ | 解像度 | 種類 | 地デジチューナー数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ![]() | Amazon楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 有機EL | 3 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 3 |
| ![]() | Amazon楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 3 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶 | 2 |
| ![]() | Amazon楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 9(全録対応) |
| ![]() | 楽天市場 | 55V型(インチ) | 4K | 有機EL | 3 |
| ![]() | 楽天市場Yahoo! | 55V型(インチ) | 4K | 液晶(mini LED) | 3 |

「X8(X8900R)」シリーズは、TVS REGZAの有機ELテレビのスタンダードクラスに位置づけられます。高級液晶テレビ並みの価格で高画質有機ELテレビが手にできるわけで、お値打ち以外のなにものでもありません。
同社有機ELテレビの高級モデル「X9(X9900R)」シリーズとの最大の違いは、パネル自体がワンランク下がるのと、「タイムシフトマシン」(指定した6チャンネルの「全録」機能)が非搭載であること。スピーカーシステムもシンプルで、比べるとやや広がりが乏しい印象はありますが、基本音質には遜色ありません。
まったく隙のない官能表現を見せる「X9」シリーズの前ではあれこれ注文を付けたくもなりますが、スタンダードな有機ELパネルの基礎体力を最大限生かした素直な表現力はさすがのひと言。人肌の血の通った顔色や化粧のノリ、衣装の素材感、ギターの弦の震えや照明に反射するボディの光や細かい傷跡までが明瞭で、テロップや斜め線の描写も安定してこなします。スポーツ中継では選手の背後の芝がザラザラと破綻しませんし、映画では夜間の戦闘シーンでも街灯や光線の色の違いをきちんと描き分けます。
サウンドは、「X9」シリーズと比べると、若干低音域が軽いものの、ステレオ(左右2chスピーカー)を大事にした位相が揃った落ち着きのあるバランスのよさで聞かせます。

ソニーmini LEDバックライト搭載液晶テレビシリーズの末弟「BRAVIA 5(XR50)」シリーズは、2025年夏に追加された唯一の最新モデルです。
2023年モデル「X90L」シリーズと同程度の価格に抑えつつ、画質の印象は上位モデル「BRAVIA 7(XR70)」シリーズに近く、コストパフォーマンスはかなり高いと言えます。したがって、予算を抑えつつより大型のソニーmini LEDテレビを狙う人にぴったり。
実際に「BRAVIA 7」シリーズと見比べても、赤いドレスのドレープが作る影やくすんだ小豆色、青空と白いユニフォームといった色の鮮やかな描き分けは、「BRAVIA 7」シリーズに劣るとまでは言えません。
倍速パネルの素のよさをそのまま生かし映像補間を控えめにした処理も自然で、過度な書き割り感もありません。視野角による色味の低下や外光の映り込みは、最上位モデルである「BRAVIA 9(XR90)」シリーズと比べると確かに感じられますが、それでも十分実用の範囲に収まっています。
サウンドシステムは「BRAVIA 7」シリーズ同等というスペックどおり、音域を中域中心に絞ることで人の声をしっかり聴かせて好印象です。

ハインセスの「U8R」シリーズは、mini LEDバックライトを搭載した液晶テレビ。同社最上位モデル「U9R」シリーズ譲りの画質と音質ながら、価格をグッと抑えた高コスパモデルです。
絵作り自体は「U9R」シリーズと同様。クッキリした赤を中心とした正確な色の描き分けができています。「U9R」よりも絶対的な明るさは控えめですが、人肌の色は正しく自然に表現されています。
こちらも低反射パネル(50V型を除く)ですが、「U9R」ほど強力ではありません。それでも明るい部屋でも映り込みが少なく快適。視野角はとても広く、「U9R」とさほど遜色ありませんでした。
スピーカーシステムは「2.1.2」chのサラウンド仕様。広がりは感じますが、セリフがややこもり気味なのが残念。もっとも、映画の戦闘シーンでの爆発音などは迫力があります。65V型よりも100V型のほうが、アクションシーンでのガラスが割れる音や発砲音といった効果音が刺激的でした。

mini LEDのようなハイスペックは必要ないけれど、画質がよいモデルが欲しい、という人におすすめなのがTCLの「P8K」シリーズ。
「P8K」シリーズはあくまでスタンダードな液晶テレビで、mini LEDバックライトを搭載しませんし、LEDバックライトをエリアに分けて個別に制御する「ローカルディミング」にも対応していません。そのため、暗い部屋で映画を再生すると本来は黒の部分がグレーっぽく“浮いて”しまいます。
しかし、明るい部屋で地デジなどの番組を見るような一般的なシーンでは、mini LEDバックライト搭載モデル「C6K」シリーズよりもむしろ忠実な色再現を見せてくれます。ちなみにもっと安価な「P7K」シリーズ以下は明らかに従来の液晶テレビっぽい白浮きや尾引、動きボケが目立ちます。
もっとも、暗いシーンが多い映画の鑑賞に力点がある方は、ハロ(不要部分への光漏れ)を抑えられるmini LEDバックライトを採用した「C6K」や「C7K」シリーズ(いずれもTCL)を選択肢にするとよいでしょう。それでも、普段使いのテレビとして熟れた絵作りを求めるなら「P8K」がおすすめです。

mini LEDバックライトを搭載したうえ、「タイムシフトマシン」(指定した6チャンネルの「全録」)にも対応したコストパフォーマンスの高さでは群を抜くモデルがTVS REGZAの「Z8(Z875R/Z870R)」シリーズ。同社の上位グレードモデル「Z9(Z970R)」シリーズのサイズは65V型からですが、こちらは43V型や50V型、55V型もラインアップ。予算やサイズ選択の都合で「Z9」を選べない、という人におすすめです。
TVS REGZAのハイグレードクラスに属するだけあって、フォーカス感と色の多彩さは上位グレードの「Z9」シリーズ譲り。明るいリビングで一般的なテレビ放送を中心に見るならば、正確な発色や自然な動き、輪郭の処理などは「Z9」シリーズと遜色なく、視野角の広さも十分(斜めから見ても色が変わりにくい)。
「Z9」シリーズと差が出るのは、部屋を暗くして暗いシーンの多い映画を観るような、液晶テレビにとってシビアな状況ぐらいです。
音質は、下位モデル(「Z7」「Z6」シリーズ)よりも広がりと伸びやかさを感じさせるもの。ヘリの旋回音もスムーズでした。
特に注目なのは、mini LEDテレビとしては小型の43V型「43Z870R」があること。同じ「Z8」シリーズでも低反射コートと広視野角対応がない点で55V型以上のモデル「Z875」とは異なりますが、大きなテレビを置きたくない(置けない)場合でも画質を諦めずに済む好例です。解像度はそのままに画面が小さい分、引き締まって見えるという利点もあります。書斎のデスクトップモニターとしてぜいたくに使うのにもぴったりでしょう。

コストパフォーマンスの高い有機ELテレビを狙っているならば、LGエレクトロニクスのスタンダードモデル「C5」シリーズもおすすめ。有機ELテレビとしては“小型”の42V型が選べることもうれしいポイントです。
LGエレクトロニクスの上位グレード品である「G5」シリーズと比べても、絵作り(画質)の方向性自体に大きな違いはなく、パネルの性能に応じて「身の丈に合った」正確な再現を求める人にぴったり。ことさら高性能をアピールすることなく、正確に再現しようという上品さが「C5」シリーズにも通底しています。
明るい環境で映像モード「標準」を試すと、スタジオ出演者を血色よく再現します。女性の白い手に血が通い健康的なトーンです。もっとも、地デジ放送番組のような解像感のない映像のスケーリング(解像度変換表示)の点では、「G5」シリーズとの落差を感じました。映像がパン(カメラの横移動)する際の斜め線の処理(家具のエッジ、弦の震え、白黒の鍵盤の処理など)に際して、ややぎくしゃくしたシーンが見受けられました。
「FILMMAKER MODE」で見る映画作品では、黒がしっかり沈み、暗いシーンでも色数が豊富。まさに映画館で見るかのように、暗闇に青やオレンジの閃光だけが横切る世界観を堪能できます。
スピーカーシステムを比べると、「G5」シリーズよりも小規模にまとめられています。実際に聴いた印象としては、やや高音域がキツいかと感じる場面があるぐらいで、さほど格差はありませんでした。スタジアムの歓声も、野太い男性の声もテレビとしては十分で、ミリタリーアクション映画においても戦車のキャタピラー音や爆撃音も「G5」シリーズに遜色ないのは、AIによるバーチャル立体音響処理のおかげでしょう。

大画面のmini LEDテレビを比較的安価に購入したいならば、「HV1」シリーズがおすすめ。「HV1」シリーズは、シャープのmini LEDバックライト搭載液晶テレビのスタンダードグレードモデル。確認したのは最大サイズの85V型「4T-C85HV1」ですが、75V型、65V型、55V型とサイズ展開は豊富です。
「HV1」シリーズの特徴は、mini LED液晶テレビらしい明るさがあること。上位モデル「HP1」「HP2」シリーズと比べると眩しさや色の鮮やかさでは及びませんが、85V型くらい画面が大きいのならば、少し薄いぐらいがちょうどよいかなとも思わせます。
予想以上によかったのが、部屋を暗くして見た映画。「映画」モードで見た夜間の戦闘シーンは、液晶っぽい黒浮きが少なく、明るいところを“飛ばす”こともありません。また、暗いところをしっかり見ようとする人の視覚特性を考慮した絶妙な塩梅で明暗と色の濃さをコントロールしています。先行して発売された「HP1」「HP2」シリーズのノウハウが生かされていると感じます。
「4T-C85HV1」のスピーカーシステムを見ると、アンプは総合出力40Wと控えめのシンプルな2.1ch仕様ですが、無理をしない自然な音作り。しっかりと戦闘シーンの衝撃音を再現してくれました。男性アナウンサーの声も、アコースティックギターの音色も中低域がしっかりとニュアンスを伝えます。
ネームバリューと性能を重視すると、上で紹介したソニーのmini LEDバックライト搭載機「BRAVIA 5(XR50)」シリーズとよきライバルと言えそうです。
国内外でさまざまなメーカーのテレビは、できることがまったく違うということはありません。いっぽうでメーカーごとにしっかりと個性を持っていることも確か。以下に主要メーカーの特徴を紹介しましょう。有機EL/液晶を問わないおすすめ製品をピックアップした記事、液晶テレビのおすすめ製品に特化した記事もありますので、ぜひ参考にしてください。
TVS REGZAは、REGZA(レグザ)ブランドでテレビやブルーレイレコーダーなどを販売するメーカーです。かつては東芝映像ソリューションという名称でしたが、現在の社名はTVS REGZA。中国ハイセンスグループの傘下にありますが、環境に合わせて画質を常に最適化する「おまかせ」機能などは「東芝」から継承されています。高級モデルに搭載されている「タイムシフトマシン」(全録)機能もREGZAならでは。指定した放送チャンネルの番組をすべて録画できるというほかにない特徴を持っています。
ハイセンスグループはTVS REGZAの親会社にあたります。両社はテレビ作りで協業しており、ハイセンスの映像処理エンジンはTVS REGZAと共同開発されています。ハードウェアのベーシックな部分は共用と思われますが、REGZAとハイセンスはあくまで別ブランド。TVS REGZAは有機ELとmini LEDバックライト搭載液晶テレビ両方を展開するいっぽう、ハイセンスはmini LED“推し”。明るさを生かした自然な映像再現性が特徴で、質のよいmini LEDテレビが手ごろな価格で手に入ります。
総合家電メーカーパナソニックはVIERA(ビエラ)というブランド名でテレビを販売しています。プラズマテレビの時代から自発光デバイスにこだわり、高級モデルでは画質を追求してきたため、現在も最上位モデルは自発光デバイスの有機ELテレビ。暗室で映画を見るための「ディスプレイ」としても定評があります。2024年モデルからはOSにFire TVを搭載したことがトピック。Amazonプライム・ビデオなど、サブスクの動画サービスとの親和性が高いテレビをラインアップしています。
ソニーのテレビはBRAVIA(ブラビア)というブランドで展開されています。認知特性プロセッサー「XR」などの映像処理エンジンを搭載することが特徴で、再生する映像を分析しつつ、表示の最適化を図ります。安定した品質が魅力ですが、価格設定が高めではあります。また、液晶テレビ、有機ELテレビともにラインアップしていますが、日本での製品リリースは鈍化しており、他社比較で必ずしも「最新」仕様でないことには留意しましょう。
シャープも日本でおなじみのテレビメーカーのひとつです。テレビ向けの液晶パネル生産は終了しましたが、テレビの展開はしっかり継続しています。シャープの製品で注目したいのは有機ELテレビ。最上位モデルには、発色のよさが特徴の量子ドット技術を使った有機ELパネル「QD-OLED」を採用しているのです。このパネルで毎年最新製品をリリースしているのは、日本国内ではシャープだけです。
TCLは、中国を本拠とする総合家電メーカーです。日本での知名度は高くありませんが、グローバル市場を見れば日本発祥のメーカーよりも大手だと言えます。そのスケールメリットを生かした製品価格、関連会社で液晶・有機ELパネル製造も行う技術力がTCLの特徴。ハイセンス同様にmini LEDバックライトを搭載した大画面テレビを手の届きやすい価格で多数展開し、日本でも少しずつシェアを拡大しています。高コントラストの映像がほしいけれど、価格は抑えたい、という人が注目するとよいでしょう。
韓国のLGエレクトロニクスは、すでに日本でおなじみの家電メーカーになったと言ってよいでしょう。グループ会社にLGディスプレイという液晶・有機ELパネルのメーカーを持つメリットを生かし、最新仕様のパネルを製品化し続けています。特に力を入れているのは有機EL。テレビだけでなく、PCモニターでも多くの有機EL製品を展開するメーカーとして注目される存在です。チューナー部分が別体となった「トゥルーワイヤレス」テレビシリーズなど、独自の製品企画にも積極的なため、有機ELテレビを検討するならば一度ラインアップを確認してみるとよいでしょう。
4KテレビはフルHD(1,920×1,080)の4倍の画素数を持っているため、4K対応のゲームをプレイした場合、より高解像度で没入感の高い映像美を期待できます。
また、最新の4KテレビはVRR(Variable Refresh Rate/可変リフレッシュレート=ゲーム機の出力に合わせてディスプレイのリフレッシュレートをリアルタイムで可変する技術)に対応していることが多く、4Kで120Hzや144Hz、フルHDで240Hzまでのリフレッシュレートに対応していることもあります。この機能を生かせば、動きの速いゲームで高品質な映像を期待できます。
ただし、PCで4Kや高リフレッシュレートのゲームをする場合、PCに相応の処理能力が求められることには留意しましょう。
解像度がフルHD以下の映像を出力する古いゲーム機やDVDプレーヤーと4Kテレビをつないだ場合、最終的に4Kテレビが映像を「アップコンバート」し、4K解像度の映像を表示します。この場合には劇的な効果とはいきませんが、より高精細な映像を期待できます。
暗部の再現性という意味での画質、動きの速い映像への追従性という2点で有機ELが有利です。ただし、それは“比較すれば”の話。どちらを選んでも大きな問題はありません。
液晶テレビでも有機ELテレビでも最新テレビの多くは「ゲームモード」を搭載しています。これは主に低遅延を実現したモードのことで、操作と映像表示のズレを最小に抑えようとするもの。ゲーム時はこの機能を利用するとよいでしょう。
基本的には可能です。どんなテレビでも必ず壁掛けにできるわけではありませんが、多くの最新テレビの背面にはネジ穴が設けてあります。この穴の間隔は国際標準規格「VESA」に準拠していることがほとんど。「VESA」準拠のテレビであれば、同じく「VESA」準拠の金具などで壁掛けに対応できます。
「VESA」準拠にも「100×100」や「200×200」などいくつかサイズがあるので、詳細は取扱説明書を確認しましょう。
また、テレビの壁掛け時には壁の強度が必要です。特に大きなサイズのテレビを壁掛けしたい場合は専門業者に相談するとよいでしょう。
多くの場合は4Kテレビがおすすめです。8Kテレビとは、4Kテレビのさらに4倍の画素数を持った高精細映像を表示できるテレビのこと。シャープやソニー製の8Kテレビが販売されていますが、4Kテレビのように定期的に新モデルが発売されるわけではなく、製品数が少ないうえ高額になりがち。
8KのコンテンツはYouTubeなどにアップされていますが、まだまだ少数と言える状態です。明確に再生したい8Kコンテンツがある場合を除いて、8Kテレビをあえて選ぶ理由は薄いと言えます。
「HDR」とは、High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)の略。映像の最も暗い部分と最も明るい部分の差をダイナミックレンジと言うのですが、このレンジが従来の「SDR(Standard Dynamic Range)」よりも広い規格のことです。
明暗差をよりダイナミックに再現できるため、より高画質を期待できるのです。ただし、この恩恵を100%受けられるのは、同じく「HDR」対応のコンテンツを再生したときのみ。「HDR」対応映像作品は、NetflixやAmazonプライム・ビデオで配信されているほか、Ultra HDブルーレイにも収録されています。
有機ELテレビ、液晶テレビ、どちらにも使われる画質向上のための技術のことです。色の純度(再現性)が高い、より色彩豊かな映像を期待できます。
一般的な使い方をするならば、過度に心配する必要はありません。同じ映像を長時間表示し続けると、その跡が残ってしまう現象を「焼き付き」と言います。最新の有機ELテレビではしっかり「焼き付き」対策(人が認知できないレベルで画素をわずかにずらす、ロゴを検知して明るさを調整するなど)がされています。
ただし、原理的なリスクはゼロではありません。ゲームのステータス表示やテレビ局のロゴマークなど、まったく動かない同じ映像を一日中表示し続けるような使い方は避けたほうが安心ではあります。
問題ありません。テレビの新製品は主に夏から秋にかけて毎年発売されるのが一般的です。そのタイミングが、ひとつ前のモデル(型落ち)が値下がりするタイミングでもあります。発売されたばかりの高価な新製品よりもコストパフォーマンスが高い場合があるため、よい選択肢と言えます。
ただし、デジタルAV機器であるテレビは、基本的には「最新が最良」であることが多いと心得ましょう。液晶パネルが刷新されるなどのタイミングは必ず存在し、輝度(映像の明るさ)や視野角の広さ(斜めから見たときも色が変わらないこと)などの基礎的な能力に差がある場合もあります。