「高音質なイヤホンが気になるけど、価格がちょっと高い……」という方や、「スマートフォンに付属するものよりも音質にすぐれるイヤホンを、できる限り安く手に入れたい」という方に注目してほしい今回の特集。「安くていいイヤホン」を手に入れたいのなら「3,000円前後」のイヤホンが狙い目! というのも、この価格帯の製品の中には、価格以上の音質クオリティを持つ、コストパフォーマンスにすぐれた製品が隠れているからだ。「スマホの付属イヤホンからの買い替え」にうってつけの製品がいくつも用意されている。
本特集では、価格.com最安価格(2015年7月17日時点)で、3,000円±500円程度の価格のイヤホンの中から、音質を重視して5モデルをピックアップしてレビュー。いずれも、家電量販店やイヤホン専門店に足を運び、イベントなどでも、その音を実際に聴いてチェックしたモデルたちだ。
今回ピックアップしたのは以下の5モデル。
・PHILIPS「SHE9710」
・Muix「IX1000」
・ZERO AUDIO「CARBO BASSO」
・TDK「neo:n 03」
・MUSE「M1+」
デザイン性を考慮しつつ、「音質」をもっとも重視して選んだ。なお、音漏れ・遮音性については、構造上有利なカナル型を選ぶことでカバー。したがって、インナーイヤーと呼ばれるイントラコンカ型については省いた。
また、試聴時の再生環境は、Astell&Kernのハイレゾプレーヤー「AK Jr」とAppleの「iPhone 6」で、それぞれダイレクトにイヤホンを接続している。AK JrとiPhone 6をオーディオプレーヤーとして比較すると、間違いなく、AK Jrのほうが音質的には有利だ。AK Jrは、解像度感やS/Nがすぐれており、細かな音やニュアンスを表現できる。正直なところ、今回選んだ3,000円±500円程度のイヤホンでは、AK Jrはオーバースペックなプレーヤーであると思うが(プレーヤーの持つクオリティをすべて発揮できないという意味で)、イヤホンの素性を確認するために選択している。
音源については、音楽CD(44.1kHz/16bit)をリッピングしたものを使用。リッピングツールは「Exact Audio Copy」で、ファイルフォーマットはALAC。ALACへの変換は「dBpoweramp」を使用している。
あまり音質について語られることのないiPhoneだが、iPhone 6については、従来よりも音質が向上していると感じる。耳にすんなり入ってきて、聴きやすい。そんな印象のするサウンドだ。ただし、iPhone 6は、AK Jr と比ると、スタジオで使うような、音の細部まで見通せる原音に忠実なタイプではない。自然な帯域バランスをベースに、高音には響きを持たせ、沈み込むような低音は軽めに、中低音は少し重めに仕上げることで、メリハリやリズムを出している。ボーカルはグイグイと前に出てくるタイプではないが、帯域バランスのよさもあって、とてもとおりがいい。ノリよく音楽を楽しめる音だと思う。
そのため、重低音タイプのイヤホンで聴くと、中低音の表現が甘くなるが、いっぽうで迫力が底上げされる。iPhone 6に合うと思われるイヤホンは、低音をディープにし、ボーカルを際立たせるような製品だ。もしくは、音の余韻、響きがあるタイプや、逆にキレのよいサウンドでも相性がいいだろう。