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DDFAフルデジタルヘッドホンアンプ搭載! デノンから“本気”のネットワークプレーヤー「DNP-2500NE」が登場!

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試聴レポート:スピーカー編

試聴はデノン本社で行った。デノンサウンドを統括する山内氏が音決めを行う総本山と言える場所だ。本機のアナログ出力を利用し、プリメインアンプにPMA-2500NE、スピーカーは「B&W 801D」という組み合わせだ。

ポール・マッカートニー「I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter」(96kHz/24bit FLAC)は、静かでゆったりとした音調で、ボーカルや楽器の音色が引き立つ優秀音源。本機では、収録現場の空気を感じさせる音場の広がりと密度感が心地いい。間奏のピアノは、繊細なタッチと、浮き足立って踊るような躍動感がコントラストを生み、ダイナミックレンジの広さが体感できた。また、滑らかなグラデーションが目に浮かぶかのようなスムースな移行や、濁りなく正確に再現される余韻の美しさから得られる立体感も絶品で、本機およびプリメインアンプが、上位モデル譲りのワンクラス上のクオリティを備え、ハイレゾ時代のハイエンドオーディオと呼ぶに相応しい品格を備えていることがわかった。ほか、従来のデノンサウンドと比較すると、低域の力感がマイルドになったように感じるのだが、山内氏によれば、「機器側の主張を抑え、素材をありのままに引き出す」ことを狙ったという。

デノン山内氏

デノン山内氏

確かに、低域がきちんと収録されている音源は、質感をそのままに、グイグイと力強く鳴る。ハイレゾ音源は高域の再生能力向上に注目されがちだが、24bit化による低域の階調表現向上こそメリットが大きい。そうした美味しい部分をそのまま引き出すという考え方は、ユーザーとしても歓迎すべきだろう。より情報量の多いハイレゾ音源の特性を見極めた新時代のチューニングと言えそうだ。

レビュー&試聴レポート:ヘッドホン編

本機の音質を語るうえで外せない「ヘッドホンアンプ」について、技術および機能面での解説と、試聴レポートをじっくりお届けしたい。

従来、プレーヤーのヘッドホン端子は、音を聴くというよりは、確認するための性格が強かった。しかし近年はヘッドホンブームの台頭により、各社が音楽を楽しめるレベルまで注力するケースが増えている。本機で採用したDDFAは、スピーカーも楽々駆動できるほどのパワーを持つフルデジタルアンプで、2つの大きな特徴を備えている。

まず、DDFA本来の特徴である「フルデジタル処理」。本機では、入力したデジタル信号一度もアナログに変換することなく、デノン独自の高音質化技術「Advanced AL32 Processing Plus」やその多の処理を行って増幅まで行う。ハイレゾが持つ膨大の情報も欠落なく、言い換えると鮮度が落ちない。

もう1つはDDFAの真骨頂とも言える、デジタルフィードバック技術だ。元来DDFAは、豊富な演算能力を駆使した高精度なフィードバック機能がユニークで、音質を示す指標の一つである歪率は、アナログAB級アンプを超えてA級に迫る性能を発揮する。さらにフィードバック技術を応用して、アンプ出力のDCオフセットをキャンセルでき、カップリングコンデンサーを排除できるのも特筆に値する。

くわしく解説すると、一般的にアンプ回路は、音楽信号以外の直流成分を取り除くため、カップリングコンデンサーと呼ばれる部品を配置する。しかし、音質面での悪影響や色付きは少なくなく、ハイエンド機では非常に高価なコンデンサーを用いるなど気を使う部分だ。カップリングコンデンサーが不要になれば、どんなに高価なコンデンサーを使用するよりも音質面で有利と言える。具体的には、低域の位相遅れが解消でき、力強い低音が得られる。また特にヘッドホンやイヤホンは感度が高いため、僅かなDCオフセットでダイヤフラムの位置に偏りが生じ、この状態で音楽信号を再生すると歪んだ音につながる可能性がある。その点、DDFAなら、高精度なDCオフセットキャンセル機能が生きてくる。宮原氏によると、こうしたカップリングコンデンサーの排除、言い換えると「色付き」の排除は、デノンがヘッドホンアンプで実現したかった機能の1つで、DDFAを採用する決め手の1つになったと言う。

デノン発表資料より抜粋

デノン発表資料より抜粋

デノン発表資料より抜粋

デノン発表資料より抜粋

本機は、機能面の充実も見逃せない。組み合わせるヘッドホンや好みに応じた調整機能が充実していて、「ゲイン」を3段階、「ダンピングファクター」を4段階、掛け合わせることで12通りのセッティングができる。

ゲインとは駆動力にあたるもので、一部の海外製ハイエンドヘッドホンなど、インピーダンスが数百オームと高く鳴らしにくい製品は、高いゲインが必要になる。いっぽうでゲインは高ければいいというものではなく、組み合わせるヘッドホンに対してゲインが過剰だと、無音時に「サー」というノイズが気になるなど音質面で好ましくない。一般的なヘッドホンアンプは、ゲイン切り替えが2段階の製品が多く、本機のように3段階あれば、より幅広いヘッドホンに対し、きめ細かく最適化することが可能だ。

もう1つの「ダンピングファクター」は聞き慣れない言葉だが、端的にはブレーキ能力と考えればいい。ヘッドホンは、ダイヤフラムが振動して音が出る仕組みだが、音楽信号が止まっても振動を続けようとする性質があり、それが余計な音になってしまう。

特にダイヤフラムが大きいヘッドホンの場合、ダンピングファクターが低いと、ブレーキが十分に効かず、音調としてはやわらかく感じる。ではダンピングファクターは高い方がいいのだろうか?正解はノーだ。ダンピングファクターが高ければ制動力が高まって、入力した音楽信号により忠実な表現が可能に思えるが、音調が固くなり過ぎる心配もあるのだ。なぜならば、一般的なヘッドホンアンプの多くは、スピーカー用アンプと異なり、一定の出力インピーダンス、言い換えるとダンピングファクターを持つ場合が多い。ヘッドホンの設計時には、何らかのヘッドホンアンプが用いて音決めをしているため、設計者の意図した音を再現するには、音決めした際の出力インピーダンスに合わせるのが理想と言える。しかし、こうした情報は公開されることがなく、ヘッドホンとヘッドホンアンプの組み合わせで音質傾向が少なからず変化する理由の1つだ。相性と言ってしまえばそれまでだが、本機のようにヘッドホンアンプ側で調整できれば、何通りにも楽しめる。自身のヘッドホンの特性をふまえつつ、好みに応じて調整するのがベストと言えるだろう。

ではいよいよ、試聴レポートに移ろう。今回は筆者がリファレンスの1つとしているヘッドホン、ゼンハイザー「HD800」を用いて確認した。同モデルのインピーダンスは300Ωと高いので、ゲインを中間のMidに設定。ダンピングファクターを切り替えながら傾向を探ってみた。ちなみに同機のダンピングファクター切り替えは、1. Low(アンプの出力インピーダンスは100Ω)、2. Lower Mid(47Ω)、3. Upper Mid(33Ω)、4. High(0.1Ω)の4段階。Lowがもっともダンピングファクターが低く、Highになるほど高くなる。

ダンピングファクター設定の表示

ダンピングファクター設定の表示

楽曲はスピーカー試聴と同じく、ポール・マッカートニー「I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter」(96kHz/24bit FLAC)。冒頭、静寂なバックグランドにドラムを擦るブラシが粒立ちよく浮かび上がるのが印象的だ。フルデジタル処理による情報量と鮮度の維持が実感できる。ダンピングファクターを切り替えてそれぞれを確認すると、ベースの聴こえ方に大きな変化が現れた。「3. Upper Mid」では適度な弾力感とふくよかな音色が楽しい。「1. Low」では軟調で弦の質感が薄れ、「4. High」では引き締まり過ぎるのか、弦が痩せて存在感が薄れるように感じた。HD800の特性と筆者の好みからは、「3. Upper Mid」がもっとも好印象だった。この状態で聴き込んでいくと、特に低域において、揺るぎなく安定した厚みが新しい。しっかりと根を張った大木のような安心感が得られるのだ。DDFAによる潤沢な駆動力と、カップリングコンデンサーレスによる低域の忠実な再現能力のお陰だろう。低域、つまり土台が安定すると、中低域もストレスから解放されて、音源に込められている本来の音が湧き出してくる。従来のオーディオ性能を示す周波数特性、歪率、S/Nなどとは、また違った次元の進展と言って良いだろう。

近年ではヘッドホンアンプのバランス駆動が話題だが、本機のヘッドホンアンプは鮮度とパワーで突出した性能を誇り、バランス駆動と並ぶ面白い選択肢が登場したように思える。

さいごに

ネットワークプレーヤーとして高価格帯の本機が登場したことで、ユーザーの選択肢が広がったと言える。20万円クラスとなると、誰もが気軽に購入できる価格ではないが、本機は上位機モデルで開発された技術がふんだんに投入されていて、ワンクラス上と言える性能を勘案すると割安と言うこともできる。また、ヘッドホンアンプとしての利用価値もきわめて高い。外観の美しさ、作りの良さなど、物量面でもオーディオファンを満足させてくれるだろう。

ほか、筆者としては、オーディオのデジタル化で、ユーザーが手を加えられる部分が少なくなり、趣味として寂しく思っていた。その点、本機のヘッドホンアンプを利用すれば、ヘッドホンの特性や個性および好みに加え、音楽ジャンルや楽曲に応じてセッティングを追い込める可能性もあり、楽しみは無限に広がりそうだ。ハイレゾ時代のマニア諸君にぜひ試聴して欲しい好モデルである。

鴻池賢三
Writer
鴻池賢三
オーディオ・ビジュアル評論家として活躍する傍ら、スマート家電グランプリ(KGP)審査員、家電製品総合アドバイザーの肩書きを持ち、家電の賢い選び方&使いこなし術を発信中。
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