日立マクセルから、カナル型イヤホンの新モデル「Graphene MXH-GD200」「MXH-GD100」が8月25日に発売となった。先日、発売を記念してメディア向け試聴会が行われ、新モデル2機種をじっくりと聴くことができたので、ここでは新モデルの特徴や音質インプレッションをお届けしよう。
近年、ハイレゾ市場の拡大とともに、より高音質な音楽リスニングを求めるユーザーが増えてきている。そういった市場背景もあり、近年、マクセルもシンボルマーク「m」を冠した高音質なイヤホンやヘッドホン開発・販売に非常に力をいれている。そのシンボルマーク「m」を冠したイヤホンの新モデルとして8月25日に発売となったのが、MXH-GD200とMXH-GD100の2モデルだ。いずれも「Graphene」という製品名が冠され、ハイレゾ対応製品として展開される。
同社によると、ハイレゾ対応ヘッドホン/イヤホンの価格帯別販売推移では、8,000円-12,000円未満のカナル型イヤホンが市場の3割を占めるほどまで拡大しているという。新モデルも、市場をけん引するこの価格帯に投入するために開発したということで、市場想定価格もMXH-GD200が11,800円、MHX-GD100が8,980円と、ハイレゾ対応イヤホンの入門機として購入しやすい価格となっている。
上位モデルのMXH-GD200。市場想定価格は11,800円
下位モデルのMHX-GD100は、ホワイトとブラックの2色展開。市場想定価格は8,980円だ
製品の最大の特徴は、製品名にもなっているGraphene(グラフェン)と呼ばれる新素材でコートした振動板を採用したことだ。炭素素材の一種のGrapheneは、ダイヤモンド以上に炭素同士の結合が強く、平面内においてはダイヤモンドより硬度が高く、引っ張り強度や熱伝導率、電気伝導率もトップクラスとされている。こういったGrapheneの物質特性を生かすため、新モデルではPET素材の振動板の上からGrapheneをコーティングするという手法が用いられている。すぐれた硬度を誇るGrapheneをコーティングしたことで、ひずみの原因となる振動板の不要な分割振動を抑制し、クリアな音を実現できたという。
左が一般的なPET素材の振動板、右がGrapheneをコーティングした振動板
また、軽くて音の伝播速度の速いGrapheneをコーティング素材として採用したことで、音のレスポンスと高域の再生能力にすぐれているという特徴もある。実際、高域側の再生周波数帯域は、ハイレゾの定義の40kHzを大きく上回る70kHzを実現している。
新しいイヤホン用のドライバーユニットを開発するにあたり、さまざまな素材を試したという。ダイヤモンドをコーティングすることも検討したそうだが、最終的に上記のような特性を持ったGrapheneを採用したという
ハウジングには、金属だけでは取り除けない共振を効果的に抑えるため、金属と樹脂によるハイブリット構造を採用。MXH-GD200はステンレス合金と高剛性樹脂、MXH-GD100はアルミニウム合金と樹脂という組み合わせになっている。低域のバランスをコントロールするため、ハウジング前後にバスポートも設けられている。
ステンレス合金と高剛性樹脂によるハイブリットハウジングを採用するMXH-GD200。金属部分に塗装を施しておらず、メタルの光沢を生かしたカッコイイデザインに仕上がっている
アルミニウム合金と樹脂のハイブリットハウジングを採用するMXH-GD100。こちらは金属部分まで塗装されており、メタル感はない
ケーブルは1.2mのYタイプで、プラグにはL型の3.5mmステレオミニプラグを採用している。なお、上位モデルのMXH-GD200のみ、グランド信号を分離した4芯ケーブルを採用し、クロストークの低減を図っている。
MXH-GD200のプラグ部分。こちらにもメタル素材を使用している
今回の試聴会では、箱から出したばかりのエージング無し状態の製品を試聴させていただいた。組み合わせたDAPは、ONKYOの「DP-X1」で、音源には、花澤香菜さんの3rdアルバム「Blue Avenue」から「こきゅうとす」(96.0kHz/24bit)をチョイスした。
まずはMXH-GD200を試聴。筆者は普段、フラット寄りのイヤホンをこのんで使うことが多いのだが、MXH-GD200は明らかに高域寄りの音づくりで、その解像度の高さと高域成分の多さに驚いた。低域は若干軽く聴こえ、ボーカルはややおとなしい感じだったが、高域は煌びやかで、ハイハットの響きも気持ちいい。音場重視か音像重視と問われると明らかに後者。低域が若干タイトなため、音の厚みがやや薄く、ジャンルをけっこう選びそうな感じだが、あの高域のユニークな鳴り方はなかなかクセになりそうだ。
続いてはMXH-GD100を聴いてみた。MXH-GD200に比べて音の重心が下がった感じで、高域はMXH-GD200よりも少なめ。低域は重心が下がった分出ている印象だ。中域から高域へかけての煌びやかさや余韻の残り方は断然MXH-GD200なのだが、MXH-GD100のほうがバランスを整えた感じの音づくりになっており、MXH-GD200に比べるとジャンルを選ばず楽しめそう。
ユニークなサウンドキャラクターを持ったMXH-GD200と、バランス寄り高域重視のMXH-GD100。いずれも1万円前後の価格帯の製品ながら非常に面白い製品なので、ぜひ一度手にとってその音を楽しんでほしい。