知っ得!納得!今旬デジタルキーワード事典

話題の次世代ディスプレイ「有機EL」って何?

このエントリーをはてなブックマークに追加

次世代ディスプレイのパネルとして話題の「有機EL」。近年ではLGエレクトロニクスが大型テレビでの採用を広げるなど、普及のきざしが見えてきた。そもそも有機ELとは何か? 液晶との違いは? どんな製品に採用されているのか? 今回は、そんな話題の有機ELについて、基礎知識、製品例、そして考えられる未来まで、くわしく解説する。

そもそも「有機EL」とは?

有機ELとは、「有機エレクトロ・ルミネッセンス」(Organic Electro-Luminescence)の略で、特定の有機化合物に電圧をかけると発光する “現象”のことを指す。世界的には「OLED/オーレッド」(Organic Light Emitting Diode)という呼称が一般的で、こちらは、有機EL現象を応用した「発光ダイオード」(LED)の意。厳密には「有機EL」と「OLED」は意味合いが異なるが、実質、スマホやテレビのディスプレイおよび照明などについて話す場合、両者は同義で扱われるケースが多い。また、日本では「有機EL」、海外では「OLED」と表記する場合が多く、国内外における呼び方の違いと考えても差し支えない。この記事では、以下「有機EL」と記す。

有機ELの発光原理と特徴を知ろう

まず有機ELがどうやって発光するのかについてだが、簡単に言うと、有機EL素子に電圧をかけることで光る。具体的には、電圧をかけて、有機物を重ねた発光層に正孔と電子を注入する。すると、発光層で両者が結合して高いエネルギーが生まれるのだが、これが元の低いエネルギー状態に戻る際、余剰なエネルギーを光となって放出するため、発光する仕組みになっている。この一連の発光現象をルミネッセンスと呼ぶ。原理としては、LEDときわめて近い。発光の際に熱をともなわないという点で、電子が動いた際の摩擦熱によって光る白熱電球とは大きく異なる。有機ELは、エネルギーが熱に変換されない分、光源として高効率になっているわけだ。

有機ELを発光させる構造イメージは上図を参照してほしい。有機発光層をプラス電極とマイナス電極でサンドイッチして、正孔と電子を注入する。正孔と電子が結合して有機発光層が高エネルギー状態になった後、それが元の低エネルギー状態に戻るときに発光する(参考:コニカミノルタhttp://www.konicaminolta.jp/oled/research/base.html)

なお、有機ELは、上述の通り発光原理はLEDに似ているが、LEDのほうは材料にサファイヤなどの単結晶基板を必要とするうえ、さらに製造装置が高価であるといったコスト上の課題を抱える。いっぽうの有機ELは、豊富に存在する有機化合物が利用でき、製造工程もシンプル。大量生産体制が整えば低コスト化が見込めるし、機能面では紙のように薄く軽量で、柔軟に曲げられるディスプレイも作れるなど、将来性が期待されている。

これまでに、有機ELや無機ELが普及していなかった大きな理由のひとつが「短寿命」だったのだが、近年、有機ELの耐年数は実用レベルにまで改良された。その結果、上述の特徴が大きなメリットとしてクローズアップされ、次世代の有力な発光体として浮上したというわけだ。スマホやテレビなどのディスプレイ用途はもちろん、照明用途の光源としても注目されている。

有機ELが使われている製品をチェック!

最近では、スマートフォンやヘッドマウントディスプレイ、テレビなど、有機ELを採用したさまざまな映像デバイスがすでに一般向けに製品化されている。その中でも、代表的なものをあげてみよう。

▼スマホ画面(小型ディスプレイ)
・サムスン「Galaxy S7 edge SC-02H」
有機ELパネルの薄く曲げられる特性を生かし、画面の両端をラウンド形状にデザインしているAndroidスマートフォン。ラウンドしている部分にも画面が表示されていて、新しいデザイン性と使い勝手を提案している。

▼VRゴーグル
・ソニー“PlayStation VR”「CUHJ-16000」
5.7インチ/1,980×1,080画素の有機ELパネルを採用したヘッドマウントディスプレイ。VRでは、体の動きに対する映像の追従のすばやさが、体験の満足度を大きく左右する。液晶よりも残像の少ない有機ELはこの点でアドバンテージが高く、採用されることで製品の価値を高めている。

▼AR端末
・エプソン“MOVERIO”「BT-300」
エプソン独自の0.43型/1,280×720画素シリコンOLED(Si-OLED)パネルを採用するメガネ型のウェアラブルディスプレイ(スマートグラス)。スマートグラスで重視される小型・軽量性と、1平方メートルあたり2,000cd以上の輝度、10万対1以上のコントラスト比を両立し、昼間の風景にも明るい映像を浮かび上がらせる。パネルは3,415ppiの高密度で、カラーディスプレイとしては世界最高水準だ。

▼照明
・パイオニア「OLE-B01」
太陽光に近いスペクトル(光の成分)で、面全体が発光するタイプの照明。やさしい光で色をキレイに引き出す。“メーキャップ用”をアピールしており、肌や化粧品の色・状態がわかりやすい光を作り出すことが特徴。
「OLE-B01」の製品情報をチェック!

▼業務用モニター
・ソニー「BVM-X300」
4K/30型の業務用マスターモニター。RGB塗り分け方式の高画質パネルで、4K/HDR映像の制作現場で基準器的な役割として使用されている。価格は428万円(税別)。

▼家庭用テレビ
・LGエレクトロニクス「OLED55E6P」
白色発光OLEDとカラーフィルターを組み合わせたLG社製パネルを搭載する55型4Kテレビで、HDRにも対応するハイエンドモデル。価格も液晶テレビに近づき、本格普及の兆し。65型もラインアップする。

有機ELディスプレイのメリットとは? 液晶ディスプレイとの違いは?

有機ELがディスプレイとして注目される理由は、画質に加え、薄型化できることと低消費電力であること。基本的にいいことづくめと言っても過言でない。液晶ディスプレイとの比較で、ポイントをくわしく見ていこう。

【画質面でのアドバンテージ】

液晶方式に対する有機ELの最大の特徴は、「自発光」であることだ。

液晶ディスプレイは、簡単に言うとカラーフィルターと液晶シャッターで作り出した映像を、バックライトで照らし出す構造。そのため、映像の黒い部分からもわずかにバックライトの光が漏れてしまい、白っぽく浮いて見える弱点(黒浮き)がある。

いっぽうの有機ELは、ひとつの画素を構成するサブピクセル自体が、それぞれ単体で独立して光る「自発光」の素子。そのおかげで「完全な黒」の再現が可能で、暗いシーンでも色純度を保つことができる。

液晶ディスプレイと有機ELディスプレイの最大の違いは、自発光デバイスであるかどうか。光が漏れないことで、有機ELディスプレイはコントラストを向上させられる

例えば満天の星空を映したシーンの場合、液晶方式では漆黒であるべき夜空にもバックライトの光が漏れ、都会の夜空のように明るく見えてしまう。その点、有機ELなら、夜空の漆黒と星の輝きをコントラスト豊かに再現し、肉眼で眺めたようなリアルで感動的な表現ができる。

また、暗い映像における色再現性にも違いが出る。液晶方式では、暗い赤色を表示しようとしても、緑と青のサブピクセルから漏れ光が生じ、赤色が白色方向にシフトして、色の純度が低下してしまうのだ。いっぽう、有機ELなら、赤色のサブピクセルだけを光らせ、緑と青を完全に消灯することができるので、純度の高い赤色が表示できるというわけだ。

そのほかにも自発光の有機ELは、複雑な構造を持つ液晶に比べ、斜めから見ても明るさや色味が変わりにくいなど、視野角特性の観点からも優秀といえる。

【薄型化と低消費電力】

液晶ディスプレイは映像を作り出す液晶パネルのほか、光源となるバックライト、その光を拡散する導光板、偏光フィルターなどが必要で、本体にある程度の厚みが必要になる。また、バックライトの光を液晶シャッターで遮って映像を作り出すため、光をロス、言いかえると無駄な電力を消費している。その点、有機ELは素子自体が自ら発光する「自発光」で、薄いフィルムに仕立てることが可能。ディスプレイ本体を薄型化できるうえ、無駄な戦力を使わない。

有機ELディスプレイの構造を簡易化すると、有機発光層と表面のガラス基板(正確にいうとこれに電極部が加わる)のみ。別途バックライト光源が必要で、液晶シャッターで光を調節する液晶ディスプレイと比べると、非常にシンプル(参考:株式会社OLED http://www.j-oled.com/oled/about_oled/)

具体的には、スマホに採用すれば、より薄型でバッテリーも長持ちに。大型テレビに採用すれば、大画面でも省エネ性能を高められるし、将来的には薄型・軽量性を追及して壁に貼り付けるといった製品も可能だろう。また、曲面であったり、折り畳んだり巻き取ってしまっておけるディスプレイなど、新しいデザインや使い勝手も期待できる。

原理、構造、製造工程などの面から微細化にも適していて、今後急激な普及が見込まれるVRやAR用ヘッドマウントディスプレイ向けの用途としても、注目されている。

有機ELディスプレイは2種類ある(3色、白+カラーフィルター)

さて、有機ELディスプレイはパネルの構造上、主に2種類が存在する。R(赤)、G(緑)、B(青)の3色に発光する有機EL素材を用いてカラーを表現する「RGB塗り分け方式」と、白色発光の有機EL素材のみを用い、カラーフィルターを組み合わせる「カラーフィルター方式」だ。

RGB塗り分け方式は、色ごとに異なる素材を用いて塗り分けるため、製造が難しく高価になりがちだが、RGBそれぞれの色純度と輝度を高めることができるので画質面で有利。ディスプレイとしては現在、映像制作の現場などでプロ用のマスターモニターとして製品化されている。

もういっぽうのカラーフィルター方式は、発光素材が白色単一なので、製造の難易度が比較的低く、低コスト化にも向く。韓国のLGエレクトロニクスでは、この白色発光の有機EL素子とカラーフィルター(R/G/B/W(白)のサブピクセル)を持つOLEDパネルの量産体制を整えており、すでに民生用の有機ELテレビでは、4Kモデルから2Kモデルまでラインナップを充実させている。実際に製品を見てみると、ディスプレイ部の厚さは数mmという極薄なデザインを実現しており、斜めから見ても色味の変化がほとんどないなど、デザイン面でも画質面でも有機ELならではの特徴を発揮している。

最後に

現時点において、日本国内で有機ELテレビを発売しているのは上述のLGエレクトロニクスのみで、価格も高価だ。しかし、将来的には画質だけでなく、コストの高さ・省スペース性・低消費電力性など、あらゆる面で有機ELテレビが液晶テレビを上回る可能性を秘めている。この先数年の間に、テレビ製品には徐々に有機EL採用の流れが広がっていきそうだ。そう遠くない未来に、「巻き取りできる超大型スクリーンタイプのディスプレイ」や、SF映画のように「空中に浮かぶディスプレイ」などの実現も夢ではないだろう。

いっぽう、有機ELだけが次世代ディスプレイではない。液晶も研究開発がさかんで、有機EL以上の特徴を持つ製品が登場する可能性がある。また、MEMSシャッターディスプレイなど、液晶や有機ELとは全く異なる仕組みのディスプレイも研究が進んでいて、この先、どれが主流になるかは判断が難しい。画面サイズや用途に応じて最適な方式が採用され、多様化が進むかもしれない。

鴻池賢三

鴻池賢三

オーディオ・ビジュアル評論家として活躍する傍ら、スマート家電グランプリ(KGP)審査員、家電製品総合アドバイザーの肩書きを持ち、家電の賢い選び方&使いこなし術を発信中。

このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事
連載最新記事
連載記事一覧
2017.5.23 更新
ページトップへ戻る