昨年2017年のデジタルカメラ市場を振り返ると、ここ数年販売台数が減少し続けていたコンパクトデジカメ市場の下げ止まりが報道されたほか、メーカー各社が販売計画の上方修正を発表するなど、やや明るい兆しが見えた1年であった。本記事ではそんな2017年に登場したカメラを振り返りつつ、今年2018年に発売になる新モデルの展望を予想。一眼レフ、ミラーレス、コンパクトデジカメに分けて「2017年の振り返り」と「2018年の予想」をお届けしよう。
※本記事中の価格表記は2017年12月28日時点での価格.com最安価格(税込)を参考にしています。
2017年に登場した一眼レフの中でもっとも話題を集めたモデルは、ニコンの高画素フルサイズ機「D850」だ。
9月8日に発売になったD850は、従来モデル「D810」から大幅なスペックアップを果たしており、有効約4575万画素の裏面照射型CMOSセンサーの搭載や、最高約9コマ/秒(※縦位置グリップなど使用時)の高速連写を実現。高画素ながら高速性を兼ね備えた、これまでにはなかった高性能な一眼レフとして人気を集めている。その人気は、9月8日の発売から3か月が経った現在でも在庫が少ない状況が続いているほど。2017年12月28日時点での価格.com「デジタル一眼カメラ」カテゴリーの売れ筋ランキングは1位。その年に発売になったユーザー満足度の高い製品を選出する「価格.comプロダクトアワード2017」のカメラ部門において最高位の「大賞」も受賞している。2017年を代表するカメラと言っていいだろう。
有効約4575万画素の高画素と最高約9コマ/秒の高速連写を両立したD850
一眼レフでは、キヤノンから8月に登場したフルサイズ機の下位モデル「EOS 6D Mark II」も話題となった。約5年ぶりのリニューアルで、「EOS」シリーズのフルサイズ機として初めて最新の映像エンジン「DIGIC 7」を搭載し、従来モデルから大きく進化。重量約765g(バッテリー、カード含む)とフルサイズ機としては小型・軽量で、横開きのバリアングル液晶を採用するなど、初心者でも扱いやすい使い勝手を実現したのも特徴だ。約18万円という、最新のフルサイズ機としては比較的手に入れやすい価格も魅力。コストパフォーマンスにすぐれるフルサイズ一眼レフとして人気が高く、2017年12月28日時点の価格.com「デジタル一眼カメラ」カテゴリーでの売れ筋ランキングは3位に位置している。
小型・軽量なフルサイズ一眼レフとして人気が高いEOS 6D Mark II。バリアングル液晶も特徴だ
エントリーから中級機に目を向けると、キヤノンが積極的に新モデルを投入した1年となった。4月に2台のAPS-C機「EOS 9000D」「EOS Kiss X9i」を発売し、さらに7月、エントリー向けの下位モデルとなる小型・軽量な「EOS Kiss X9」もリリース。「EOS Kiss X」シリーズはここ数年、2013年、2015年と2年おきに新モデルをリリースしてきたので順当と言えば順当なのだが、もっとも下位となるEOS Kiss X9にいたるまで、最新の映像エンジンDIGIC 7や、高速なライブビューAFが可能な「デュアルピクセルCMOS AF」を採用するなど、出し惜しみ感がないのが話題となった。
キヤノンのエントリー向け一眼レフEOS Kiss X9。中級機にも採用されているデュアルピクセルCMOS AFなどを搭載している
中級機はそれほど大きな動きのない1年となったが、リコーから「PENTAX KP」、ニコンから「D7500」が登場。PENTAX KPは、最新のアクセラレーターユニットによる高度なノイズ処理によって高感度撮影時の高画質に定評のあるモデル。PENTAXブランドの一眼レフらしく、5軸対応のボディ内手ぶれ補正機能と防塵・防滴・耐寒性能も搭載しており、コストパフォーマンスにすぐれた一眼レフとして人気が高い。D7500は、上位モデル「D500」と同等の画質性能を継承しつつ、51点のAFシステムや、最高約8コマ/秒の連写性能を実現。トータルバランスにすぐれたモデルとなっている。
最高ISO819200の超高感度性能を実現した、リコーの中級機PENTAX KP
D7500は51点のAFシステムや最高約8コマ秒の高速連写を実現したニコンの中級機
2018年の一眼レフで注目したいのは、キヤノンのハイエンド機の動きだ。製品サイクル的には1年ほど早くなるが、高画素フルサイズ「EOS 5Ds/5Ds R」と、APS-C機の最上位「EOS 7D Mark II」の後継がリリースされるかもしれない。EOS 5Ds/5Ds RにはD850、EOS 7D Mark IIにはD500というニコンの強力なライバル機があるが、どのようなカメラが登場するか今から楽しみだ。どちらも、「EOS 5D Mark IV」に採用されたDPRAW(デュアルピクセルRAW)対応の新センサーを搭載すると考えられるので、よりダイナミックレンジが広く、高感度性能にもすぐれた高画質な撮影を楽しめそうだ。EOS 7D Mark IIの後継機にはD500に匹敵する持続性の高い連写性能にも期待したい。
また、キヤノンではAPS-Cセンサーの中級機「EOS 80D」の後継機がリリースされるかもしれない。2017年はキヤノンのエントリー機が底上げされたので、EOS 80Dの後継がどこまで性能を上げてくるのかに注目したい。
対するニコンは、ハイアマチュア向けの上位モデルとして、フルサイズはD850、APS-CはD500という強力なモデルをラインアップしており、2018年に新モデルが登場するとすれば、フルサイズの下位モデルになるだろう。複数のモデルが出るのか、「D750」と「D610」を統合したモデルになるのかはわからないが、最新の画像処理エンジン「EXPEED 5」を搭載した高画質なモデルの登場に期待したい。また、フラッグシップモデルについては、だいたい2年ごとに新モデルを発表してきているので、「D5」のリニューアルモデルが登場する可能性はある。
2017年にあまり大きな動きのなかったリコーについては、順当にいけば、2018年中にAPS-C一眼レフの最上位機「K-3 II」をリニューアルするはずだ。
フラッグシップ級のモデルが数多く発売になった2016年に引き続き、ミラーレスは2017年も活況だった。
特に積極的な動きを見せたのがソニー。5月に、フルサイズミラーレスの新しいフラッグシップモデル「α9」をリリース。この新モデルは、高速読み出しが可能なメモリー内蔵積層型「Exmor RS」CMOSセンサーを採用することで、最高約20コマ/秒の超高速連写と、ローリングシャッター歪みを抑える「アンチディストーションシャッター」を実現。キヤノンとニコンのフラッグシップ一眼レフを凌駕する、圧倒的な高速性能が話題となった。693点の像面位相差AFによるAFシステムやボディ内5軸手ブレ補正も搭載しており、ハイスペックなミラーレスとして、上半期に登場したデジタル一眼カメラの中でナンバーワンの注目を集めた。
ソニーα9はEマウントミラーレスのフラッグシップ。最高約20コマ/秒の超高速連写を実現した
さらにソニーは11月に、「α7」シリーズの第3世代の上位モデルとして「α7R III」も発売。画質面で評価の高い従来モデル「α7R II」と同様に、約4240万画素の裏面照射型「Exmor R」CMOSセンサーを採用した高画素タイプのフルサイズ機だが、メカ・電子シャッターの両方で最高約10コマ/秒の高速連写を実現。撮像素子を1画素分ずつずらして計4枚の画像を撮影し、PC用ソフトで合成・現像する「ピクセルシフトマルチ撮影」などの新機能も搭載している。高画素ながら高速性にもすぐれている点で、ニコンのD850と比較される高性能ミラーレスだ。2017年12月28日時点での価格.com「デジタル一眼カメラ」カテゴリーの売れ筋ランキングは、ミラーレスでは最上位となる5位。
約4240万画素の高画素ミラーレス、ソニーα7R III。最高約10コマ/秒の高速連写性能も兼ね備えている
パナソニックもミラーレスのフラッグシップをリニューアル。3月に「LUMIX GH5」を発売した。このモデルの大きな特徴となるのが、10世代目となる画像処理エンジン「ヴィーナスエンジン」を搭載することで、従来から定評のある高速性に磨きがかかったこと。静止画撮影では、約18Mの画素数で30コマ/秒の超高速連写撮影が行える「6K PHOTO」を新機能として搭載した。さらにLUMIXが得意とする動画撮影では4K/60p記録を実現。SDメモリーカードへの4:2:2 10bitでの4K/30p記録や、HLG(Hybrid Log Gamma)による4K HDR動画撮影も可能で、プロフェッショナル仕様の動画機能を持つミラーレスとなっている。なお、パナソニックは、静止画のフラッグシップモデルという位置づけで「LUMIX G9 PRO」を2018年1月25日に発売することを発表している。
4K/60p記録に対応するなど強力な動画撮影機能を持つ、パナソニックLUMIX GH5
ミラーレスでは、新しい展開として、フルサイズの約1.7倍の大きさとなる中判サイズのセンサーを採用する「GFX 50S」を富士フイルムがリリースしたのも見逃せない。富士フイルムはこれまでAPS-Cサイズのセンサーを採用するミラーレスを手がけてきたが、フルサイズを飛び越し、中判センサー機を商品化したのは大きな驚きであった。標準レンズとあわせて実売100万円を切るという、中判カメラとしては比較的抑えた価格になっており、プロだけでなく、風景やポートレートで作品作りを行うハイアマチュアからも高い注目を集めている。
中判サイズのセンサーを採用した富士フイルムGFX 50S
中級機に目を向けると、キヤノンが上位モデルと同等の画質・AF性能を持つ「EOS M6」を、富士フイルムがレンジファインダースタイルのコンパクトな「X-E3」をリリース。エントリー向けでは、パナソニック「LUMIX GF9」、富士フイルム「X-T20」、オリンパス「OM-D E-M10 Mark III」、キヤノン「EOS M100」といったモデルが登場した。
デュアルピクセルCMOS AFなどの高性能を搭載したキヤノンのミラーレスEOS M6。最新の映像エンジンDIGIC 7も採用している
オリンパスからは「OM-D」シリーズのエントリーモデルOM-D E-M10 Mark IIIが登場。フラッグシップ機「E-M1 Mark II」と同じ最新の画像処理エンジン「TruePic VIII」を採用する
2017年のミラーレスはソニーの積極的な製品展開が注目されたが、同社は2018年も引き続き、Eマウントミラーレスの新モデルを複数リリースするだろう。具体的には、超高感度性能と動画撮影機能に特徴のある「α7S II」と、下位モデルの「α7 II」の後継機が発売になると予想される。α7S IIの後継機は、4K/60p記録に対応する動画撮影が可能なモデルになるだろう。α7 IIの後継機はα9のAFシステムを採用する高コストパフォーマンスモデルになるのではないだろうか。
富士フイルムは、中判ミラーレス「GFX」シリーズの下位モデルと、ボディ内手ブレ補正機能を搭載したAPS-Cミラーレスの発売が噂されている。どちらも登場が待たれるモデルなので、発表になったら大きな話題を集めるだろう。
マイクロフォーサーズ機では、オリンパスからは「OM-D E-M5 Mark II」と「PEN E-PL8」の後継が登場すると予想する。パナソニックは、上でも述べたように、静止画のフラッグシップモデル「LUMIX G9 PRO」を2018年1月25日に発売する。また、パナソニックは、2018年内に小型の中級機もリニューアルするかもしれない。
ミラーレスは2016年から2017年にかけて高性能なモデルが続々とリリースされたこともあり、さすがに2018年は、ここ2年と比べると話題性に富むモデルのリリースは少ないかもしれない。ただ、あくまでも噂ではあるが、キヤノンとニコンがフルサイズミラーレスの開発を進めているという話もある。特にニコンはAPS-Cミラーレスも含めて2018年中にこの市場に参入するという噂だ。現行の一眼レフのマウントを継承したモデルになるのか、それとも新マウントになるのか興味は尽きないが、本当に登場したら、2018年のカメラ市場で最大級の話題を集める製品になるだろう。
2017年に発売になったコンパクトデジカメでもっとも話題を集めた1台を選ぶとすると、キヤノンの「PowerShot G1 X Mark III」になるだろう。「PowerShot G」シリーズの新しい最上位機種として11月30日に発売されたモデルだが、同社のコンデジでは初となるAPS-Cサイズの大型センサー採用したのが話題になった。さらに、APS-Cコンデジとしては珍しく光学3倍のズームレンズを搭載した点でも注目を集めている。
重量約399gのコンパクトボディにセンサーと光学3倍ズームレンズを搭載する、キヤノンPowerShot G1 X Mark III
人気という点では、2月発売の富士フイルム「X100F」は価格.comで高い人気を誇るモデルだ。同社の最新ミラーレスと同等の画質性能を持つAPS-C機で、開放F2の23mm単焦点レンズや、光学ファインダーと電子ビューファインダーの切り替えが可能なハイブリッドビューファインダーを採用するなど、通好みのスペックや機能を搭載。「価格.comプロダクトアワード2017」のデジタルカメラ部門において「金賞」を受賞している。
描写性能にすぐれた単焦点レンズを採用するAPS-Cコンデジ、富士フイルムX100F
ソニーは、光学25倍ズーム対応の1インチデジカメ「サイバーショット DSC-RX10M4」の性能の高さが話題となった。メモリー一体型1.0型積層型CMOSセンサー「Exmor RS」を採用するなどして、最高約24コマ/秒の超高速連写や、動体ゆがみを抑えて撮れる「アンチディストーションシャッター」、全画素読み出しの4K動画撮影といったハイスペックを実現している。また、ソニーのコンデジでは、10月27日に発売された1インチセンサー機「サイバーショット DSC-RX0」も、手のひらサイズの超コンパクトボディで話題の製品となっている。
最高約24コマ/秒の超高速連写などスペックの高さで話題の光学25倍ズーム機、サイバーショット DSC-RX10M4
オリンパスが6月に発売したタフコンデジの新モデル「Tough TG-5」が人気を集めたのも2017年のトピックだ。発売から高い人気をキープしており、2017年12月28日時点での価格.com「デジタルカメラ」カテゴリーの売れ筋ランキングは1位。人気の理由は、防水・防塵・耐荷重・耐低温・耐結露に対応しつつ、顕微鏡で覗いているような超マクロ撮影や、ハイスピードムービー撮影、4K動画撮影など多彩な機能を搭載していることが大きい。花や昆虫の撮影でアクティブかつクリエイティブに使えるカメラだ。
タフコンデジとして価格.comで高い人気を集めている、オリンパスTough TG-5
ここ数年のコンパクトデジカメは、どのメーカーも高付加価値な製品にシフトするようになっているが、2018年もこの傾向は続くだろう。
特にリリースが多くなりそうなのが1インチコンデジ。順当にいけば、キヤノンは「PowerShot G」シリーズにおいて、2015年に発売された高倍率ズーム機「PowerShot G3 X」とEVF内蔵の「PowerShot G5 X」をリニューアルするだろう。人気のコンパクトモデル「PowerShot G7 X Mark II」の後継機を出すかもしれない。ソニーは2017年に「サイバーショット DSC-RX100」シリーズの新モデルを出さなかったので、2018年には何か動きがあるはずだ。
APS-C機では、リコーの「GR」シリーズに注目したい。GRシリーズはフィルム時代から人気が高く、多くのファンがいるモデル。2015年発売の「GR II」の後継機種を待っている方も多いはずだ。
2017年に登場したハイエンド向けのデジタル一眼カメラを見ると、スペック面では「高速性」が大きなトピックになった1年であったと言えよう。ニコンのD850、ソニーのα9とα7R III、パナソニックのLUMIX GH5といった高性能モデルはいずれも従来以上のハイレスポンスが特徴のカメラだ。なかでも特に注目を集めたのはD850、α9、α7R IIIの3モデル。D850とα7R IIIについては高画素と高速性を両立するという、これまでにはない性能を実現。また、α9については、一眼レフのフラッグシップを超える圧倒的な連写性能を実現した。AF性能も非常に高く、ミラーレスの高性能化を象徴するカメラとなった。
メーカー別に2017年を振り返ると、キヤノンとソニーが積極的な製品展開を行った1年であった。キヤノンはフルサイズ一眼レフEOS 6D Mark IIのほか、エントリー向けのAPS-C機やミラーレスでも多くのモデルをリリース。コンデジでもAPS-Cセンサー採用のPowerShot G1 X Mark IIIなどを発売した。ソニーは、α9とα7R IIIという話題のミラーレスをリリースしたほか、コンデジでは高性能な高倍率ズーム機サイバーショットDSC-RX10M4などをラインアップ。両メーカーともメインのカテゴリー(キヤノンは一眼レフ、ソニーはミラーレス)以外でも注目度の高いモデルを出しており、出し惜しみ感が少ないのが特徴だ。2018年もこの2メーカーの動きに注目する1年になりそうだ。
2018年については、ニコンの動向にも目が離せない。2017年は、D850という渾身の一眼レフを発売したものの、2月に1インチコンデジ「DL」シリーズの発売中止という残念なニュースがあるなど、ニコンにとっては厳しい1年になった。現状では一眼レフ以外で高付加価値のモデルが少ない状況だが、今後はミラーレスにも注力していくと予想される。2018年に、ニコンから大型センサーを搭載したミラーレスの登場することに期待したい。
ほかのメーカーでは、富士フイルムは「GFX」シリーズの下位モデル、リコーは「GR」シリーズの新モデル、パナソニックはすでに発売が決定している「LUMIX G9 PRO」、オリンパスは「OM-D E-M5 Mark II」の後継モデルなどの登場に注目が集まる1年になりそうだ。
フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。