皆さま、ソニーの「サイバーショット DSC-RX0(以降RX0と表記)」というカメラをご存じでしょうか? 2017年10月発売のカメラながら、多くの人はいまだ知らないと思います。
なぜならRX0は不幸なことに、その大きさや形からGoProと混同されて、ほとんどの人から「GoPro系カメラでしょ!?」的に思われているからだと推測されます(もっと言うと、GoProの偽物でしょ!? 的な思われ方まで……泣)。
アルミダイキャスト製の頑丈な小さなボディに、24mm/F4(35mm換算)の高性能単焦点レンズを搭載した、革新的でほかに代わるものがないカメラです
このように、RX0は悲しいほど日の目を浴びていません。当然ながら、売れているともいえません。なにせ発売されてから半年もたっているのに、私はRX0を使っている人、いや……持っている人を一度も見たことがありません(いまだ自分の以外はカメラ屋でしか見たことない……)。つまり見た目で判断されて、その実力がどうなのか? をまったくスルーされているという悲しい現実!
そんなワケのわからない小さなカメラが、エントリーモデルのデジタル一眼レフのレンズキットよりお高いのですから、この売れなさも納得はできるのですがね……。
プロカメラマンである私個人的には、発表があったときからα9(ソニー製ミラーレス一眼のフラッグシップモデル)と同様な革新性を感じ「Buy Now!」と即断でして、発売日(2017年10月27日)に予約購入しました。私はRX0のフィルムケース大で携帯便利な超小型頑強ボディ、レスポンスのよさ、広角画質のよさを大変に気に入っており、メインカメラのα9とともに、仕事でもバリバリ使っております。
すでにRX0を買った人は物事の本質を見抜いているといっても過言ではないとも思いますよ。売れなさすぎて、製造が中止になった後で評価されるような製品かもしれませんしね……。
個人的に、ほかに類を見ない革新カメラだと思うRX0。まったく売れていないが、実はものスゴいカメラということを、何回かにわたってお伝えしていければと思っています。
最初に、大きな声で言っておきます。RX0は超小型高性能写真機であると。
対してGoProは動画カメラ(アクションカム)です。
そもそも GoProとは種が違うという点をまずは覚えておいてください。
まずはRX0の概略として、各部の名称をサラッとお見せしましょう(興味のない方は、細かくは読まずにサラッと通ってくださいね……)。
小さなボディには、バッテリーとmicroSDカードスロットが装備されています(防水仕様)
極小カメラということで、設置場所を選ばず、より自由なアングルが楽しめます。ジュラルミンボディなので、プラ製のGoProと異なりずっしり感があり堅ろうです。
不幸にもこの大きさが故に、ジャンルの違うGoProと比較されることが多いのですが、GoProと比較することはナンセンスです! あくまでRX0はデジタルスチルカメラ。つまりRX0は写真機であり、動画メインのGoProとは切り離して考えてほしいわけです(とはいえ、高品質なFHD動画も撮れます)。
上がGoPro6、下が本機RX0
このサイズ感で携帯便利なうえ、あらゆるところに設置できるため、工夫次第で今までにない撮影技法を可能とします
起動の速さとAFの速さ、そしてシャッターレスポンスは天下一品!
起動までは約1.7秒(メーカー公称値)。AFが作動して1枚目のシャッターまで合計約4秒と快速スナップ撮影が可能。スマホだと指紋認証やカメラアプリ起動などをへて、シャッターが切れるので、10秒ほどかかってしまいます。その半分以下で写真が撮れるということはチャンスを逃さないカメラということになるのではないでしょうか!?
超広角24mmにもかかわらず、歪曲(わいきょく)の少なさ、ボケの美しさ、ピント面のシャープさなど、驚異的な高画質が特徴(Tessarの特徴でもあります)。単焦点に絞って設計した、名門 CarlZeissの本気が伝わってくるのです。
この小さなボディに1インチ大型センサーが詰め込まれています。スマホやアクションカムに比べてじはるかに大きなセンサーを搭載し、豊かな階調表現を実現します。※イラストはSONY公式ページより
余計な出っ張りがなく、余計な変形をしないという機能的な美しさ。直方体形状なので、水平な面(テーブルなど)に置くだけで、横位置のみならず縦位置でもレベルがとれるという、秀逸かつ機能的なプロダクトデザインです。また、シンプルな四角いデザインのため、クランプなどに挟み込んで固定したり、壁や床に四角い穴を開けて、仕込んだりすることも可能。つまり、より自由な撮影ができるカメラってわけです。スマホWi-Fiで、プレビューおよび操作もできちゃいます。
またレンズ、三脚ねじ穴がボディ中心に配置されており、カメラ固定には理想的な設計であることがわかります
通常のコンデジは、使用時に「にゅいーん……」と象の鼻のような鏡筒が突き出ます。
少しでも力が加われば、すぐ壊れそうなあの形が昔からどうにも許せない、その気持ちをくんでくれているよう……(いっそのこと、APS-C機やフルサイズ機も、この形になってほしい)。
「一体型ジュラルミン筐体(きょうたい)」採用により軽量と堅ろう性、10m防水や防じん性を備え、過酷な条件でも耐えうるカメラです。
このような、びしょぬれの中でも撮影できる防水性能
こんな小さなカメラなのにα7III(10コマ/秒)をはるかにしのぐ、16コマ/秒の連写性能には驚きます。(ちなみにα7IIIには「アンチディストーションシャッター」は非搭載)。新しく出たRX100M6の24コマ/秒には負けるけど……。
褒めたたえたい点はまだまだあるので、別の機会にご説明します。
RX0は、お伝えしているとおり斬新かつ革新的なカメラですが、その一方でやはり弱点もあります。RX0の主だった弱点とその対策を見ていきましょう。
極小ボディなのでやむをえないが700mAhと、かなり非力な専用バッテリー。
写真撮影の場合、カメラに装填された1個のバッテリーだけでは観光スナップ1日もこなせません! 少なくとも予備バッテリーがもう1個は必要でしょう。実用するにはバッテリーを1個は買い足す必要があると思います。
対策として私の場合、アクセサリーキット「ACC-TRDCJ」(バッテリーNP-BJ1+USB充電ケース)を用意し、カバンの中でモバイルバッテリー、予備のNP-BJ1を充電。RX0本体の電池がなくなれば、入れ替えでローテーションして使っています。
バッテリー単体(NP-BJ1)を買わずに、アクセサリーキット「ACC-TRDCJ」を追加購入されることを強くおすすめします。※注意!「USB充電ケース単体」の販売はありません
RX0には手ブレ補正は一切ありません。極小ボディであるが故に、手持ち撮影時の固定(ホールド)が難しく、広角24mmレンズとはいえ、気を付けないと思った以上に手ブレするので注意が必要です。
対策としてISOオートにし、ISO AUTO低速限界(シャッタースピード)を1/125秒くらいに設定するのがよいでしょう。疑似シャッター音(電子音)をONにすると、撮影者がシャッタータイミングを意識できるので、ブレ防止の効果があります
RX0の弱点の1つは撮影最短距離が0.5mということ。24mmレンズとしてはかなり寄れない部類になるでしょう。
たとえば、この至近距離ではまったくピントが合いません(スマホだったら、余裕で合う)
少し引きましたが、これでも後ピン気味。合焦しているとはいえません
ここまで離れて、やっとピントが合いました (AF合焦の緑ターゲットが表示される)
ピントが合うのはおよそ50cmの距離からです。かなり遠いですよね? ただ、超広角レンズなので、これより近寄ると画像がゆがみます。そこまで深く考えての仕様かもしれません。とはいえ、少しだけわがままをいうと、せめて40cmまでは寄れてほしかった……。こうなったのは鏡筒が突き出ないので物理的距離がとれなかったとも考えられます。なので、このカメラの構造ではこれより寄ることは不可能だったのかもしれません(カメラの厚みを増すと寄れるようになるかもですが、それは本末転倒ですしね)。
本機RX0には極小カメラだからこそできることがあります。
さんざん説明してきた小型軽量ボディを持つRX0。取り回しのよさを最大限に発揮したのがこちら。ポール状の機材にRX0を固定し、ぐいっと持ち上げます。小さくて軽いため、難なく持ち上げることができ、高いところからの撮影を可能にしてくれます。
おっと、モニターを見なければわからない? そりゃそうです。こういうケースを想定してかは知りませんが、RX0にはスマホでプレビューし、シャッターを切れるアプリがあるのです。
たとえば長い棒(機材)の先端にしっかり取り付け……、スマホアプリ(PlayMemories Mobile)で、プレビュー&シャッター!ほら、このとおり!
見てください、こんなハイアングル撮影が、大げさな機材を使わずに撮れてしまうのです。こういう使い方も、プロの現場ではそのうち必要になってくると思っています。マネする場合、カメラの固定は確実に! 落下防止用のストラップを必ず付けてください。間違っても、盗撮などは厳禁ですよ!
RX0の小型ボディはすり抜けの術が使えます。それは、柵の向こうに被写体があるときに活躍します。たとえば、フェンス越しに列車を撮影したいとしましょう。こういうシチュエーションで、あなたのカメラのAFはピントを柵に合わせてしまいませんか? 最新機種のAFはすばらしいのでそんなことにはならないのかもしれませんが、多くはそうなるのではないかと思います。野球場のバックネット裏から選手を撮る場合でも、そうなるに違いない……。
AFの難敵、柵……
ですが、RX0のすり抜けの術なら、柵の向こうから撮影することが可能です。
にゅきにゅきっと柵をすり抜け…
柵の向こう側へ!
柵を気にせず、このように新幹線を撮ることができました
このように、RX0は小型軽量ボディを生かして、今までのカメラではできない撮影を可能にしてくれる画期的な商品だと思っています。ボディが非常に小さい分、欠点もありますが、それは使い手側の工夫でなんとかなるもの。それよりも、次回以降で余りある魅力をお伝えしたくて待ちきれません。
どうですか、この写真。こんなきれいな写真が、あんなちっこいカメラで撮れるなんて、びっくりしませんか?
次回はRX0の「写真機としての実力」についてご紹介します。
→ 超小型デジカメ「RX0」の写りを徹底検証! 小物や上手な使いこなし方も。
有限会社パンプロダクト代表
中居中也(なかい・なかや)のショップとブログ