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写真がどう変わる? 今話題の「35mmフルサイズ」のメリットとデメリット

「35mmフルサイズ」は、今、デジタルカメラでもっとも話題を集めているキーワードだ。ニコンが35mmフルサイズミラーレスの開発を発表したことで、「35mmフルサイズ」がどういったものなのか気になっている方も多いことだろう。そこで、本記事では「35mmフルサイズだと写真がどう変わるのか?」に注目して、撮像素子のサイズによる3つの違いを解説。メリットだけでなくデメリットも紹介し、35mmフルサイズの特徴を掘り下げよう。

撮像素子のサイズによる違い その1「画角」

デジタル一眼カメラに採用されている撮像素子は、一部の例外を除いて、大きく3つのサイズに分けられる。サイズが大きい順に「35mmフルサイズ」「APS-C」「マイクロフォーサーズ」の3つだ。

35mmフルサイズは、その名称からもわかるように、フィルムカメラでもっとも一般的な35mm判フィルムとほぼ同じサイズの大型フォーマット。メーカーによってわずかにサイズの違いがあるが、約36.0×24.0mmの大きさの撮像素子となる。画質面でメリットが多く、プロや中上級者向けの一眼レフやミラーレスで採用されている。

APS-Cは、35mmフルサイズよりもひとまわり小さいフォーマット。フィルムカメラ時代のAPS-Cシステム(23.4×16.7mm)に近いサイズのため、こう呼ばれている。実際のサイズはメーカーや機種によって微妙に異なっているが、最新モデルを見るとニコンやソニーなどは23.5×15.6mm前後、キヤノンはそれよりわずかに小さい22.3×14.9mm前後となっている。35mm判換算の画角はニコンやソニーでは焦点距離の1.5倍相当、キヤノンでは1.6倍相当。エントリーから上級者向けまで、一眼レフやミラーレスで幅広くモデルが用意されている。

マイクロフォーサーズは、パナソニックとオリンパスが採用しているミラーレスを前提とした規格のこと。撮像素子のサイズは4/3型(17.4×13.0mm)で、35mm判と比べて対角線は半分となる。35mm判換算の画角は焦点距離の2倍相当。こちらもAPS-Cと同様、エントリーから上級者向けまで用意されている。

35mmフルサイズ、APS-C、マイクロフォーサーズのサイズの違いを表した画像。参考に高級タイプのコンデジに採用されている1インチ(1.0型)と、一般的なコンデジや高画質カメラをうたうスマートフォンが採用する1/2.3型もあわせて掲載しておく

撮像素子のサイズによって画質などに違いが出るが、まず知っておきたいのは画角(写る範囲)が変わることだ。同じ焦点距離のレンズを使った場合、撮像素子が大きいほど画角は広くなり、逆に小さくなると狭くなる。同じ焦点距離なら35mmフルサイズがもっとも広角で、次いでAPS-C、その次がマイクロフォーサーズとなるわけだ。

デジタルカメラは慣例的に35mm判を基準にして画角を表記するようになっている。35mmフルサイズより小さい撮像素子では、画角を35mm判の焦点距離に換算し直すのが一般的だ。これが「35mm判換算」と言われるもの。焦点距離は短いほど広角、長いほど望遠になるが、35mm判換算で計算すると、APS-Cは1.5倍相当(キヤノンは1.6倍相当)の焦点距離と同じ画角、マイクロフォーサーズは2倍相当の焦点距離と同じ画角となる。

たとえば焦点距離が24mmのレンズを例にすると、35mmフルサイズではそのまま24mmの画角となるが、APS-Cでは35mm判換算で焦点距離36mm相当(1.5倍の場合。1.6倍なら38mm相当)の画角、マイクロフォーサーズでは2倍の焦点距離48mm相当の画角となる。焦点距離24mmはフルサイズでは広角レンズだが、APS-Cでは準広角、マイクロフォーサーズでは標準域の画角のレンズとなるのだ。APS-Cやマイクロフォーサーズで焦点距離の短い超広角レンズがないわけではないのだが、35mmフルサイズはAPS-Cやマイクロフォーサーズと比べるとよりワイドな画角が得やすいのは事実。レンズのスペック通りの画角で撮れる点を35mmフルサイズのメリットとする声も多い。

焦点距離12mmのレンズを使って35mmフルサイズ機で撮影した写真をもとに、同じ12mmレンズを使った場合のAPS-C(1.5倍の場合)とマイクロフォーサーズの画角を表してみた。青枠がAPS-Cで35mm判換算の画角は焦点距離18mm相当、オレンジ枠がマイクロフォーサーズで同24mm相当となる

ただ、望遠のほうに視点を変えると、逆に撮像素子のサイズが小さいほうが有利となる。たとえば、焦点距離200mmのレンズを使う場合、APS-Cでは35mm判換算で焦点距離300mm相当(1.5倍の場合)、マイクロフォーサーズでは同400mm相当の画角が得られる。特に、レンズ焦点距離の倍の画角が得られるマイクロフォーサーズは望遠になればなるほど威力を発揮する。比較的コンパクトな超望遠レンズも用意されており、カメラシステムとして小型・軽量で望遠に強いことをアピールしている。

こちらは、焦点距離400mmのレンズを使って35mmフルサイズ機で撮影した写真をベースにしたもの。同じ焦点距離だとAPS-Cでは35mm判換算で焦点距離600mm相当(1.5倍の場合)の画角、マイクロフォーサーズでは同800mm相当の画角が得られることになる

なお、35mm判換算の考え方は、焦点距離や後述するボケ量などレンズのスペックで勘違いを生みやすいので注意してほしい。具体的には、APS-C専用レンズ/マイクロフォーサーズ用レンズに対して「35mm判換算の焦点距離=レンズ設計上の実際の焦点距離」と捉えてしまうことだ。焦点距離とはレンズ中央から撮像素子の結像面までの距離のことで、レンズ固有のもの。撮像素子の大きさよって変わるのは「写る範囲=画角」であって焦点距離は一定だ。

たとえば、焦点距離35mmのレンズは、APS-C機で使うと画角は35mm判換算で焦点距離52.5mm相当(1.5倍の場合)と狭くなるが、レンズの焦点距離は35mmのままなのである。少々混乱するところではあるが、「撮像素子によって画角は変わるが、レンズの焦点距離は変わらない」と覚えておけば、次項目で説明するボケの量の違いも理解しやすくなるはずだ。

撮像素子のサイズによる違い その2「ボケの量」

撮像素子の大きさは得られる「ボケの量」も左右する。ボケの量は、レンズの「焦点距離」「絞り値」に加えて、撮影時の「被写体までの距離」と「背景(前景)の距離」によって決まる。焦点距離は長いほど、絞り値は小さいほど、被写体までの距離は短いほど、背景(前景)の距離は長いほどボケの量は大きくなる。この説明だと「撮像素子とボケの量は関係がない」と捉えるかもしれないが、同じ焦点距離でも撮像素子のサイズによって画角が変わるため、フルサイズ/APS-C/マイクロフォーサーズを同じ画角で比較すると、得られるボケの量が変わることになるのだ。端的に言えば、同じ画角であれば撮像素子が大きいほうがボケの量も大きくなる。

具体的に、35mm判換算で焦点距離50mm近辺の画角で、開放絞り値がF1.8の標準レンズで比較してみよう。実際に商品化されているものでピックアップすると、35mmフルサイズはそのまま「50mm/F1.8」、APS-Cは「35mm/F1.8」、マイクロフォーサーズは「25mm/F1.8」の単焦点レンズが当てはまる。フルサイズ対応の50mm/F1.8はレンズのスペックどおり焦点距離50mmの画角で、50mm/F1.8のボケ量が得られる。APS-Cの35mm/F1.8は、35mm判換算で焦点距離52.5mm相当(1.5倍の場合)の画角となるが、レンズの焦点距離は変わらないのでボケは35mm/F1.8で得られる量となる。マイクロフォーサーズの25mm/F1.8は、35mm判換算で焦点距離50mm相当の画角で、ボケ量は25mm/F1.8となる。同じ画角で比較すると、撮像素子が小さいフォーマットだとレンズの焦点距離が短くなるため、その分ボケの量が小さくなることが伝わるだろうか。

以下に、35mmフルサイズ対応の50mm/F1.8レンズと、APS-C用の35mm/F1.8レンズを使って、ほぼ同じ被写体距離、かつ同じ絞り値(F1.8)で撮り比べた2枚の作例を掲載しよう。レンズを画角でそろえると35mmフルサイズのほうがAPS-Cより大きなボケが得られることがわかるはずだ。

同じ画角かつ同じ絞り値で得られるボケ量の差を段数で表すと、くわしい計算式は割愛するが、フルサイズとAPS-Cは1段分強、フルサイズとマイクロフォーサイズは2段分(APS-Cとは1段分弱)の差となる。ボケの量を35mm判基準にするときは、APS-Cでは1段分、マイクロフォーサーズでは2段分絞り値を大きくすると理解していい。標準レンズの例で言い直すと、APS-Cの35mm/F1.8は「35mm判換算で焦点距離52.5mm相当(1.5倍の場合)の画角/絞り開放でF2.5相当のボケ量」、マイクロフォーサーズは「35mm判換算で焦点距離50mm相当の画角/絞り開放でF3.5相当のボケ量」のレンズに相当するのだ。

逆に、同じ画角でのボケの量を35mmフルサイズと同等にする場合に、APS-C/マイクロフォーサーズのレンズでどのくらいの絞り値が必要かというと、F1.8を得るにはAPS-CではF1.2、マイクロフォーサーズではF0.9が求められるスペックとなる。F1.4になるとAPS-CではF1.0、マイクロフォーサーズではF0.7が必要だ。35mmフルサイズ用には大口径タイプで開放絞り値がF1.2のレンズがあるが、APS-C/マイクロフォーサーズで、35mmフルサイズと同じ画角でF1.2と同じボケ量を得るのは実質的に不可能となっている。

このように説明すると、「APS-Cやマイクロフォーサーズはボケの量が少ないので35mmフルサイズに劣っている」と感じるかもしれない。確かに、APS-Cやマイクロフォーサーズは同じ画角/同じ絞り値で見ると35mmフルサイズに比べてボケの量は少ない。撮影は焦点距離ではなく画角をイメージして行うため、使い比べてみると「35mmフルサイズはボケやすい」と感じるのも正しい。

ただ、「ボケ表現を徹底的に追及して作品作りをしたい」というのであれば別だが、「被写体が浮き上がるようなボケを生かした写真を撮影してみたい」というのであれば、APS-Cでもマイクロフォーサーズでもボケの量は十分。単にボケを大きくしたいだけなら、被写体までの距離や背景の距離を工夫することで満足する結果が得られるはずだ。また、ボケ表現は単純に大きくボカせばいいというわけではなく、滑らかさやエッジの色付きのなさなど“ボケの質”も重要。APS-Cやマイクロフォーサーズでもボケ設計を重視したレンズを使うことで、美しいボケ味を楽しめる。

とはいえ、35mmフルサイズは、高性能な大口径レンズをそのままのスペックで利用できるので、ボケ表現の幅が広いのも事実。絞りを開けて大きなボケ味を得ることもできるし、少し絞って自然なボケ味に調整することもできる。使い古された言い方だがフィルムカメラ時代の35mm判の感覚そのままで撮ることができるのだ。実際に使ってみると、標準レンズで絞りを開けて被写体距離1〜3m程度撮った場合に得られるボケ方など、ちょっとしたことで35mmフルサイズのよさを感じるときがある。35mmフルサイズでないと得られないボケのニュアンスがあるのもまた事実なのだ。

撮像素子のサイズによる違い その3「画質」

続いて、撮像素子の大きさによる画質の違いに目を向けていこう。「35mmフルサイズ=高画質」という認識が高いと思うが、基本的にはその認識で間違っていない。

撮像素子のサイズは先に見たとおり、35mmフルサイズが一番大きく、次いでAPS-C、その次がマイクロフォーサーズとなる。撮像素子のサイズが大きいことの画質面でのメリットは、受光量が大きくなること。サイズが異なる撮像素子で画素数が同じだと仮定すれば、撮像素子が大きいほうが1画素のサイズは大きく、1画素あたりが受け取れる光の量で優位になる。その結果、よりダイナミックレンジが広く、豊かな階調表現や色再現が得やすくなるのだ。あわせて、高感度耐性も向上するので、高感度でもよりノイズの少ないクリーンな画質を実現しやすくなる。

以下に、有効画素数が2400万画素相当となる35mmフルサイズ機とAPS-C機を使って、同じ夜景をISO6400の高感度で撮り比べた写真の等倍切り出し画像を掲載する。いずれも2017〜2018年発売の最新モデルで、レンズには高倍率ズームレンズを使用。画角は35mm判換算で焦点距離35mm相当にそろえ、回折や被写界深度の差が少なくなるように絞り値は35mmフルサイズ機がF8、APS-C機がF5.6とし、全体の明るさがそろうようにシャッタースピードで露出を調整した。

撮像素子だけの違いではないものの、この画像を見ると、35mmフルサイズのほうが暗部のノイズが少なく、かつ解像感が高いことが読み取れるはずだ

さらに、撮像素子が大きいほうが高画素化でも有利になる。サイズの異なる撮像素子で、同じ画素ピッチ(隣り合う画素の間隔)になるようにすると、撮像素子が大きいほうが画素数が多く、解像度が高くなる。

最新モデルの有効画素数に目を向けてみると、35mmフルサイズではニコンが「D850」、ソニーが「α7R III」「α7R II」といった4000万画素台のモデルをリリースしている。少し古いモデルになるが、キヤノンは「EOS 5Ds/5Ds R」という5000万画素機も用意している。APS-Cでは今のところ2400万画素台、マイクロフォーサーズでは2000万画素台が最高画素となっており、高画素化でもフルサイズのほうが優位に立つ。

数年前は、高画素化はカメラファンから嫌煙されるところがあった。画質は撮像素子のサイズではなく画素ピッチ(隣り合う画素の間隔)のほうが重要で、画素数を上げると画素ピッチが狭くなるため、特に高感度の画質が悪化すると言われていた。事実、そうだった時期もあったが、最近では、裏面照射型など集光率を上げる技術革新が進んでいて、以前のような高画素化の弊害は見られない。35mmフルサイズではむしろ高画素のほうがトータルで良質な画質が得られるようになっており、D850やα7R III/α7R IIといった4000万画素台の高画素機は、低感度だけでなく高感度でも十分なダイナミックレンジが得られると評判だ。

左がニコンの一眼レフD850、右がソニーのミラーレスα7R III。いずれも4000万画素台の高画素センサーを搭載し、低感度から高感度まで高画質を実現している

画質は、光を受光する撮像素子だけでなく、光を取り込むレンズ、画像データを生成する画像処理エンジンも重要で、撮像素子だけで決まるわけではない。だが、撮像素子が大きいほうが高画質を得やすいのは確かで、特にその差は高感度で顕著になる。あくまでも個人的な印象になるが、スナップ撮影での写真作品作りにおいては、35mmフルサイズであればISO6400でも十分に活用できる。APS-Cだと機種によるがISO3200程度が限界で、マイクロフォーサーズではISO1600〜ISO3200程度までといったところ。このあたりの感覚は個人差があり、風景やポートレートなどでより緻密な描写を求める場合はさらにシビアになるのだが、35mmフルサイズが高感度で良質な画質が得られるのは、35mmフルサイズを使ったことのある多くの方が実感することだ。

いっぽうで、APS-Cやマイクロフォーサーズの画質が極端に劣るのかというとそういうわけではない。低感度で比べる限りでは、4000万画素台の最新の35mmフルサイズ機は頭ひとつ抜けている感はあるが、APS-Cやマイクロフォーサーズでもそん色のない画質が得られる。低感度という条件はあるものの、有効2000万画素程度のモデルでA4程度までのプリントであれば、ブランドテストをしたらパッと見では撮像素子のサイズによる解像感の違いはわからないのではないだろうか。

差がわかりやすくなるのは、先にも言ったように高感度時と、大きな画面のモニターで鑑賞したり、A3を超えるような大きな用紙で印刷する場合だ。「画質に徹底的にこだわって写真作品を制作したい」という場合は別だが、APS-Cやマイクロフォーサーズでも十分に高画質な写真撮影が可能だ。

35mmフルサイズのデメリット

こうして撮像素子のサイズによる違いを見ていくと、望遠時の画角を除いて、35mmフルサイズにはメリットしかないように感じるかもしれない。だが、35mmフルサイズにもデメリットはいくつかある。

35mmフルサイズの主なデメリット
・ボディの価格が高くなる
・レンズにも高性能が求められる
・システム全体でサイズが大きく、価格が高くなる

35mmフルサイズは、APS-Cやマイクロフォーサーズと比べると、どうしてもカメラボディの価格は高くなる。撮像素子そのもののコストが高いこともあるが、サイズが大きい分、シャッターユニットなどメカ機構にもパワーと精度が求められ、性能を出すためにコストがかかる。一眼レフの場合、ミラーや光学ファインダーといった部分でもより高い性能が必要となる。使用するデバイスに加えて、製造・生産にもコストがかかるため、どうしてもボディの価格は高くなってしまうのだ。

どのくらいの価格かというと、2012〜2013年に発売になった旧モデルでは価格.comで10万円程度の最安価格となっているものもあるが、2014年以降に発売になった現行モデルでは安くても13万円程度。最新モデルでは下位モデルでも15〜22万円程度で、ハイアマチュア向けの高画素機では30〜40万円程度のプライスとなっている。APS-Cやマイクロフォーサーズはエントリー向けであれば現行モデルでも5〜6万円程度、フラッグシップ級の上位機種でも価格に幅があるが15〜25万円程度だ。全体的にカメラのクラスが違うとはいえ、APS-Cやマイクロフォーサーズと比べると35mmフルサイズ機の価格は全体的に高い。

また、画質面でも35mmフルサイズには気を付けておきたい点がある。それは画像周辺部の画質。撮像素子が大きいため、撮像素子の周辺までしっかりと光を届けるには、レンズにも相応の光学性能が求められる。特に高画素機になるとレンズ性能の差がより顕著に出る。35mmフルサイズの画質のポテンシャルを引き出すには、より高性能なレンズが必要になるというわけだ。35mmフルサイズ対応の高性能レンズはどうしても大きくなり、価格も高額になる。レンズと組み合わせてのカメラシステムとして見ると、35mmフルサイズはAPS-Cやマイクロフォーサーズと比べてサイズが大きく、価格も高くなるのである。

まとめ 使い方にあわせて最適なフォーマットを選ぼう

ニコンの35mmフルサイズミラーレスは、2018年8月23日に製品の発表が予定されている。どういったカメラになるのか楽しみにしているニコンファン、ならびにカメラファンの方も多いことだろう。また、このタイミングで、35mmフルサイズに興味を持ち、APS-Cからのステップアップや、はじめての一眼カメラとして35mmフルサイズ機の購入を検討している方もいるはずだ。

本記事ではそうした方に向けて、撮像素子のサイズによる3つの違いと、35mmフルサイズのデメリットを紹介したが、どう感じただろうか? 「やはり35mmフルサイズは高感度など画質に魅力を感じる」「35mmフルサイズで大きなボケのある写真を撮ってみたい」というのであれば、35mmフルサイズの購入を検討していいだろう。35mmフルサイズはレンズにも性能が求められるため、その分、カメラシステムとしてサイズが大きくなるし、価格も高くなる。それに見合う価値を感じるのであれば、35mmフルサイズは満足度の高い選択になるはずだ。

いっぽう、そこまでの魅力を感じなかったのであれば、APS-Cやマイクロフォーサーズでも十二分に高画質な撮影を楽しめるはず。APS-Cやマイクロフォーサーズは35mmフルサイズと比べると全体的に価格が安く、購入しやすい。レンズのラインアップも、一部の新規マウントは別だが、広角から望遠、マクロまでひととおりそろっている。むしろ望遠撮影ならAPS-Cやマイクロフォーサーズのほうが有利だし、ボケの部分でも被写界深度が深くなるので、スナップ撮影などでは使いやすいところもある。無理に35mmフルサイズのカメラを手に入れて、安いレンズで撮影するくらいなら、APS-Cやマイクロフォーサーズに描写力の高いレンズを組み合わせたほうが画質の満足度も高くなるだろう。

主にどういったシーンや被写体を撮影するのか? 画質をどこまで重視するのか? 画質よりもサイズのほうが重要なのか? といったように「カメラで何を撮るのか。どういった使い方をするのか」を整理して、35mmフルサイズ/APS-C/マイクロフォーサーズの中から最適なフォーマットを選んでほしい。

余談 なぜ35mm“フル”サイズと呼ぶようになったのか?

中判や大判といった35mm判よりもサイズの大きなフォーマットがあった中で、なぜデジタルカメラになって35mm判の撮像素子が「35mm“フル”サイズ」と呼ばれるようになったのであろうか。「35mmサイズ」でもいいように思う方もいることだろう。

「35mmフルサイズ」と呼ばれるようになった背景には、「フィルムカメラ時代は35mm判がもっとも一般的だった」ことと、「デジタルカメラの初期は35mm判よりも小さい撮像素子しかなかった」ことによるものと思われる。デジタルカメラ黎明期は35mm判サイズの撮像素子は一般向けのデジタル一眼レフでは搭載されず、大きくてもAPS-HやAPS-Cなど35mm判に満たないものであった。そのため、フィルム時代は一般的だった35mm判の価値が上がり、それを満たすという意味で“フル”サイズと呼ぶようになったと言われている。なお、画角を35mm判換算の焦点距離で表すようになったのは、多くのユーザーがフィルムカメラでの35mm判の画角に慣れていたことが大きい。小さなサイズの撮像素子だと画角の感覚がつかみにくかったため、35mm判に換算したものを表記するようになったのだ。

ちなみに、どのタイミングで「35mmフルサイズ」と呼ばれるようになったのかは定かではないが、京セラが35mm判と同じサイズの撮像素子(CCD)を搭載した世界初のデジタル一眼レフ「CONTAX N DIGITAL」を2001年11月に発表したときに、同社はこのCCDのことを「35mm判フィルムフルサイズ大型CCD」と呼んでいた。この時期にすでに「フルサイズ」というワードが使われていたようだ。その後、キヤノン初の35mmフルサイズデジタル一眼レフとして2002年9月に発表になった「EOS-1Ds」のリリースを見ると、「35mmフルサイズのCMOSセンサー」という表記が見られる。比較的早い段階から35mm判サイズの撮像素子は「35mmフルサイズ」と呼ばれていたようだ。

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。

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