準備が整ったところで夜が訪れるのを待ちます。今回は、スマホアダプターにセットした「iPhone 6s」を活用して、実際に月と火星を観測してみました。
地平線から迫る雲に焦りつつ、月(写真右)と火星(写真左の点)が見える夜に観測をスタート
肉眼で観測する場合、昼間のうちに取り付けたファインダーで観測したい天体を見つけてから、アイピースをセットした望遠鏡本体を覗くことになります。
RXA125にはスマホアダプターがあるので、ファインダーを使わずに天体を探すこともできます。まずは、アダプターにセットしたiPhone 6sで「星どこナビ」を起動して、観測したい天体を選びます。最初は、大きくて探しやすい月をターゲットにしてみました。
「星どこナビ」を起動したら、「天体一覧」をタップします。天体に関するマメ知識や天文イベントカレンダーの参照もできます(左)/一覧には惑星や著名な恒星などが揃っています。今回は月を選びます(右)
天体を選ぶと解説を読むことができます。一番下のコンパスマークをタップしましょう(左)/スマホの取り付け方法を選ぶ画面では、RXA125の場合は右の「スマホアダプター」をタップします(右)
「星どこナビ」では、スマホの加速度センサーと電子コンパスを使って、天体の向きをガイドします。円周上の黄色い部分が真上に、中央で上下に動く赤いプラスマークが中央にくるように、望遠鏡本体を手で動かしましょう。
スマホアダプターの使い方が解説されます。ひと通り目を通したら「スタート」をタップ(左)/円周上の黄色い部分と赤いプラスマークを目安に望遠鏡を動かします。調整できたら右下のカメラマークをタップしましょう(右)
カメラマークをタップすると、アイピースを通してスマホのカメラがとらえた景色が画面上に表示されます。アイピースホルダーのノブを回してピントを合わせつつ、画面をピンチアウトしてデジタルズームの倍率を上げると、月が鮮明に映し出されました!
カメラが起動したところ。ピントを合わせながら画面をピンチアウトして拡大してみます(左)/5倍に拡大してピントを合わせたところ。月の表面が鮮明に見えます(右)
この画面で一番下の中央にあるカメラマークをタップすると、そのまま写真を撮影できます。薄雲がかかってしまいやや赤みがかっていますが、RXA125があればiPhone 6sでもこんなに大きく月を撮影できるのです。
「星どこナビ」で撮影した月の写真。餅をつくウサギにたとえられる月の海や、右上には内部が明るいティコ・クレーターなどが写っています
次に、アイピースを倍率の大きなものに交換してみました。望遠鏡が月を向いたままならそのまま観測に移れますが、ピントがずれているので再度合わせ直します。
アイピースを交換した直後の画面。何が見えているのかもわからないので、拡大してピントを合わせます(左)/この日は雲が出ていたこともあり、うまくピントを合わせられずに苦労しました(右)
雲が厚くなってきてしまったため、なかなかピントが合わせられず、なんとか撮影できたのが下の写真。先に掲載した低倍率のアイピースで撮った写真における、右上の明暗境界線付近を拡大したものになります。
肉眼では地形がもっとはっきりと見えていたので、雲さえなければ、よりきれいに撮影できたかもしれません。75倍に拡大された月の表面がどんなふうに見えるのか、想像していただけますでしょうか?
高倍率のアイピースで撮影した写真。地形がくっきりと写るように昼夜の境界線付近を狙ってみましたが、徐々に雲のコンディションが悪くなってしまい、これが限界でした
雲に隠されないうちにと、火星の観測にも挑戦してみました。観測方法は月と同じで、ガイドを目安に望遠鏡の向きを合わせ、iPhone 6sの画面でピントを調整します。
アイピースの視野に輝く火星は、一粒の光の点。「大接近」という言葉のイメージから、表面の模様や白い極冠が見えるのでは……と期待していたのですが、とてもそこまで拡大することはできません。
レイメイ藤井のWebサイトでは、倍率が70倍までは火星の全体像が観測可能で、表面の模様が見えるのは100倍からとされています。RXA125のアイピースは高倍率でも75倍なので、火星の模様を識別する性能はもともと持ち合わせていないのです。
それでも、スマホの画面上では白っぽい点にしか見えませんが、肉眼ではほのかにオレンジがかっています。酸化鉄(つまり鉄サビ)を豊富に含んだ火星の地表から跳ね返ってきた光なんだ、と実感した瞬間でした。
ピントを合わせる前(左)と、5倍に拡大してピントもなるべく合わせた状態(右)。火星はこれ以上大きく見ることはできませんでした
実際に観測して気になったのは、視野の微調整がしづらいこと。RXA125の向きを調整するには手でじかに動かす方法しかないため、高倍率のアイピースで観測中に向きを変えようとして動かしすぎてしまい、特に小さな火星の観測中は何度も位置を見失ってしまいました。
天体望遠鏡のなかには、常に移動する恒星や惑星を視野にとらえ続けるために、向きを微調整するための「微動ハンドル」という機構を備えているものがあります。微動ハンドルはギヤを介して望遠鏡につながっていて、人の手の動きを減速させることで望遠鏡の向きを微調整しやすくしています。そのため、高い倍率での観測中にも天体を見失いにくいのです。
実は、RXA125に同梱されている「2倍バローレンズ」というアダプターを使えば、75倍のアイピースで150倍の倍率を確保することが可能です。これなら火星の表面が見えるかもしれないと思いチャレンジしてみましたが、微動ハンドルを備えていないRXA125では150倍の視野でも手動で向きを合わせなければならず、残念ながら筆者には火星を視野に入れることができませんでした。
同梱の2倍バローレンズを使うと、アイピースの倍率を2倍に高めることができます(写真は15倍のK20mmに装着したところ)
RXA125は約1万円で購入できるリーズナブルさと、三脚のセッティングが不要でサッと観測を始められる手軽さが最大の魅力です。月の地形もよく見えますし、低倍率の接眼レンズなら惑星や恒星の色もしっかり見分けられます。
アダプターを使ってスマホを固定すれば、専用アプリの「星どこナビ」を利用して観測したい天体に望遠鏡を向けたり、スマホのカメラを使った天体写真を撮影したりすることも可能。今後の天文イベントも簡単に調べられるので、望遠鏡を活用できるタイミングを事前にチェックしておけます。
ただし、手軽に扱える半面、微動ハンドルがないので向きの微調整が難しいというデメリットもあります。主な観測対象は月の表面として、火星などの惑星は低倍率のアイピースで光の色や衛星の位置を探るのに使うと割り切るくらいがいいでしょう。
なお、レイメイ藤井の天体望遠鏡で微動ハンドルを備えているのは、最も倍率が高い「RXA190」のみ。天体観測に適した赤道儀式の三脚が付属していますし、適正倍率も惑星の観測に向く114倍。より本格的な天体観測に挑んでみるなら、こちらがよさそうです。