続いて、COOLPIX P1000の使い勝手をレビューする。
ボディのサイズは約146.3(幅)×118.8(高さ)×181.3(奥行)mm(突起部除く)で、重量は約1415g(バッテリー、メモリーカード含む)。従来モデルと比べると約500g重く、レンズ一体型デジカメとしては最重量級のボディとなっている。フルサイズ一眼レフに大口径の標準ズームレンズを装着して使う場合よりもサイズ感は大きいが、全体の重量はそこまでではない。光学125倍ズームレンズを搭載していることを考慮すると納得できる範囲のサイズ・重量ではないだろうか。
使ってみて少し慣れが必要だと感じたのは、奥行が約4.5cm長くなったことで、従来モデルよりもレンズ側に重さを感じるレンズヘビーな重量バランスになったこと。使い始めは、望遠側へのズーム操作時に、レンズの伸びる動きにカメラをホールドする手が持っていかれるような感覚を覚えた。手持ち撮影の場合、落下防止も兼ねてストラップを付けて利用したほうがいいだろう。
奥行181.3mmの長いボディなので、手持ち撮影時はしっかりとホールドしながら使用したい
AFは、シングルAFのAF-Sでは思った以上に高速で、超高倍率ズームデジカメとしては十分な性能。三脚でカメラを固定した状態でコントラストのあるところを狙えば、望遠撮影時でもスムーズにピントを合わせてくれる。飛行機を画面内に収めたい場合はワイド、遠くの小さい野鳥を狙う場合はスポットといったように、AF枠を手動で移動・設定する場合に、被写体の大きさにあわせてAF枠のサイズを3種類(ワイド/標準/スポット)から選べるのも便利だ。AF枠の移動は、背面のOKボタンとロータリーマルチセレクターを使って、右手でグリップを軽くホールドしながら右手親指のみで操作できるようになっているので、それほどストレスも感じない。構図を変えても狙った被写体にフォーカスポイントをセットし続けてくれる「ターゲット追尾」も便利な機能だ。ただし、常時AFのAF-Fの動作はゆっくりとしているので、その点は注意。さすがに光学125倍の超高倍率ズーム機なので、動く被写体にピントを合わせ続けるような撮り方は難しいと考えてほしい。
左がワイド時のAF枠で、右がスポット時のAF枠。AF枠は、画面の中央部を広く移動して使える
操作性では、MF時はフォーカスリングとして機能し、AF時は、露出補正/感度/ホワイトバランスのどれかの機能を割り当てておけるコントロールリングをレンズ鏡筒に新搭載。上面のコマンドダイヤル、背面のロータリーマルチセレクターとあわせてダイレクトな操作性が3つになり、より直感的に設定を変更しながら使えるようになった。加えて、AF/MF切り替えスイッチを追加したのもトピック。AF/MFをすばやく切り替えられるのは、特に三脚利用での望遠撮影時にMFでピントを合わせたい・追い込みたいときに便利だった。MFに切り替えると自動で画面中央部が拡大表示となり、ピントの合っている部分がピーキング表示(白色で強調)になるのも使いやすいと感じた。また、手ブレ補正機能に追加された構図優先モードも効果が高い。露光前センタリングによる構図のずれを抑えるモードで、このモードを選択すれば望遠撮影時でも狙ったフレーミングで撮りやすくなる。
AF時に露出補正/感度/ホワイトバランスのいずれかの機能を割り当てられるコントロールリングをレンズ鏡筒に搭載。従来モデルと同様、望遠撮影をサポートする機能として、ボタンを押すと一時的に広角側にズームバックして被写体を捉えやすくする「クイックバックズームボタン」と、左手でホールドしながら親指でズーム操作ができる「サイドズームレバー」も備わっている
背面にAF/MF切り替えスイッチを用意。スイッチ中央のAE-L/AF-LボタンはAE/AFロック、AEロック、AFロックから機能を選べる。AF動作は割り当てられないので、いわゆる親指AFとしては機能しない
あらかじめ設定しておいた焦点距離にズームレバーの操作で切り替えられる「ズームメモリー」と、電源オン時のズーム位置(35mm判換算の焦点距離24〜135mmまで)を設定できる「起動ポジション設定」も搭載。利用する焦点距離が決まっている場合に便利な機能だ
従来モデルでは簡易的な印象があった電子ビューファインダー(EVF)も性能が向上。約92万ドットの0.2型液晶から約236万ドットの0.39型有機ELになり、くっきりとした表示になった。ファインダー倍率は0.68倍(35mm判換算)で見えも十分に大きく、野鳥など小さな被写体も確認しやすい。
このほか、アクセサリーシュー(ホットシュー)が追加され、外付けフラッシュなどの利用が可能になった。別売アクセサリーとして、アクセサリーシューに装着して利用する照準器「DF-M1」も新たに用意する。ワイヤレスリモートコントローラー「WR-1」「WR-R10」を接続できるアクセサリーターミナルも追加された。
約236万ドットの0.39型有機EL デバイスを使用したEVF。ファインダー倍率は0.68倍(35mm判換算)。従来よりも大きい表示で見やすいファインダーになった。なお、EVFとしては珍しく撮影時の視野率は約100%ではなく約99%となっている(※再生時は約100%)
約92万ドットの3.2型バリアングル液晶モニターを採用。タッチパネルは非搭載
アクサセリーシュー(ホットシュー)を搭載。望遠撮影時のフレーミングを補助する照準器DF-M1も利用できる
Bluetoothに対応しており、スマートフォンへの画像自動転送や、スマートフォンからのリモート撮影などが可能。Blutoothリモコン「ML-L7」も新たに用意する
COOLPIX P1000は、ズーム倍率が光学125倍にまで伸びたことで、望遠端では35mm判換算で焦点距離3000mm相当の画角で撮れるようになった。一眼カメラでは得られない画角での超望遠撮影に魅力を感じる方も多いと思うが、普段目にしているものを撮る分にはここまでの超望遠は必要ない。従来モデルでもそうだったが、遠くの被写体を大きく撮る目的がしっかりしている場合に威力を発揮するカメラだ。
具体的な被写体を挙げるなら月と野鳥(ならびに野生動物)になるだろう。さらに、綿密なロケハンと撮影プランによる、超望遠の圧縮効果を生かしたクリエイティブな撮影にチャレンジするのも面白い。月を被写体にするなら、遠くにいる人や物と昇ってくる月を重ねて撮ったり、遠くで飛行している飛行機が月の前を横切る瞬間を狙ったりといったような撮影になる。
使い方で気を付けたいのは、超望遠撮影時は三脚や一脚の利用が必須だということ。手ブレ補正効果は5.0段分と高く、構図優先の手ブレ補正モードも追加されたので手持ちでもある程度フレーミングしながら撮れるようになったが、さすがに1000mmを超えるような超望遠域では構図が安定しない。加えて、一眼カメラのようなハイレスポンスではないことも知っておいてほしい。AFは十分な速度で、撮影タイムラグも広角側で約0.1秒まで短縮したものの、操作に対する反応はそれほど速くない。SDカードへのデータ書き込み中にバッファが詰まった状態だと操作がいっさいできないのも付け加えておこう。状況にあわせて設定をすばやく変えながら撮るのではなく、事前に準備しておいて狙いを定めて撮るというスタイルで使いたいカメラだ。
2018年9月19日時点の価格.com最安価格は124,000円程度。従来モデルの発売当初の価格は7万円台半ばだったので価格帯は上がった。だが、3000mm相当の画角で撮れる唯一無二のカメラで、EVFなどの性能が向上したことを考えれば、この価格も納得できる。
フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。