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Zシリーズ第1弾の本命モデル! ニコン「Z 6」実写レビュー

ニコン初のフルサイズミラーレスとしてこの秋冬に登場した「Zシリーズ」。「新次元の光学性能」の実現を目指し、新開発の「Z マウントシステム」を採用した大注目のカメラだ。第1弾として、高画素モデルの「Z 7」とオールラウンドモデル「Z 6」の2モデルがラインアップされた。本記事では、Z 7に続いて、11月23日に発売になったZ 6の操作性と画質をレビューしよう。

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11月23日に発売されたZ 6。画像は標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」を装着したイメージ

11月23日に発売されたZ 6。画像は標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」を装着したイメージ

Z 7と同じボディを採用し、ニコンらしい上質な操作性を実現

Z 6をレビューするうえで押さえておきたいのは、先に発売になったZ 7の存在だ。市場想定価格を見ると、Z 6は25万円前後、Z 7は44万円前後(いずれも税別)と価格差があるため、Z 6はZ 7に対して性能を抑えた下位モデルと思うかもしれないが、そうではない。両モデルのサイズ・重量はまったく同じで、電子ビューファインダー(EVF)や液晶モニターのスペックも同一。インターフェイスなど細かいところを見ても違いはない。端的に言えば、Z 6とZ 7のハードウェアで異なるのは撮像素子のみ。同じクオリティのボディに異なる撮像素子を搭載する兄弟機となっているのだ。

Z 6とZ 7を使い比べてみると、EVFや液晶モニター、グリップの使い勝手が同じというだけでなく、カメラをホールドした際に感じるボディの量感やシャッターフィーリングなど細かいところの操作感に至るまで、操作性にまったく違いがないことがわかる。Z 7は、ニコンらしい上質な使い心地で高く評価されているのが、Z 6はそのZ 7とまったく同じフィーリングで操作できるカメラだ。

Z 6はZ 7とまったく同じサイズ・重量のボディを採用。EVFやグリップだけでなく細かいところのフィーリングまでZ 7と同じ操作性だ。高い防塵・防滴性能も確保している。記録メディアもZ 7と同様、XQDカードのシングルスロット仕様となっている

光学系にこだわったというEVFは、倍率約0.8倍の大きな見えを実現しているうえ、隅々までクリアで歪みも少ない。色合いや明るさなどのチューニングが絶妙で、自然なイメージの映像を確認できるのがいい。表示のレスポンスは別として、EVFの見やすさについてはZ 7と並んでフルサイズミラーレスとして現時点でナンバーワンなのは間違いない。

コンパクトなミラーレスとしてはしっかりとした形状のグリップを採用し、ホールド感に優れるのもZ 6の特徴だ。全体的なデザインのバランスを損なわずに、ここまで握りやすいグリップ形状を実現できたのは、長年にわたり操作感に徹底的にこだわったカメラ作りをしてきたニコンだからこそ。シャッター音が小さく、心地よいフィーリングでシャッターを切れるのも他メーカーのフルサイズミラーレスにはない部分だ。

倍率約0.8倍のEVFを採用。光学系にこだわり、隅々までクリアで自然な見えのファインダーに仕上がっている

倍率約0.8倍のEVFを採用。光学系にこだわり、隅々までクリアで自然な見えのファインダーに仕上がっている

コンパクトなボディながらグリップのホールド感はすばらしい。シャッターやボタン類の操作フィーリングも上々だ

Z 7と同様、ボディ右肩に各種撮影情報を確認できる表示パネルを搭載する

Z 7と同様、ボディ右肩に各種撮影情報を確認できる表示パネルを搭載する

ロックボタン付きの撮影モードダイヤルなど操作部材もZ 7と同じ仕様を採用している

ロックボタン付きの撮影モードダイヤルなど操作部材もZ 7と同じ仕様を採用している

液晶モニターはチルト式の3.2型タッチパネル液晶(約210万ドット)。これもZ 7と同じスペックだ

液晶モニターはチルト式の3.2型タッチパネル液晶(約210万ドット)。これもZ 7と同じスペックだ

操作性とあわせて、AFと連写性能についてもレポートしておこう。

Z 6のAFは像面位相差AFとコントラストAFのハイブリッド方式で、273点のフォーカスポイントが画面の水平・垂直約90%をカバーする仕様。Z 7はフォーカスポイントが493点と多いためAF性能に大きな差があるように思うかもしれないが、実際は、Z 6のほうが若干迷うことが多いようにも感じたものの両モデルで差はほとんどない。通常のAFでの低輝度限界はZ 6が-2EV、Z 7が-1EVなのでZ 6のほうがスペック上は暗所AFの性能が高い(※ローライトAF時は両モデルとも-4EV)。

連写性能はZ 6がZ 7を上回っている。Z 6がAF追従/AE 1コマ目固定で約12コマ/秒(14ビットRAW時:約9コマ/秒)、AF/AE追従で約5.5コマ/秒(14ビットRAWの制約なし)なのに対して、Z 7はAF追従/AE 1コマ目固定で約9コマ/秒(14ビットRAW時:約8コマ/秒)、約5.5コマ/秒(14ビットRAW時:約5コマ/秒)。撮影可能コマ数もJPEG FINE記録時でZ 6が44コマ、Z 7が25コマとわずかだが連写の持続性もZ 6が上だ。とはいえ、Z 6はZ 7と同様、AF-Cの性能がそれほど高いわけではない。すばやく動く被写体を追従しながらの、本格的な動体撮影用に適したミラーレスでないことは付け加えておこう。

低感度から高感度までバランスのよい高画質

Z 6は、撮像素子に有効2450万画素のフルサイズ裏面照射型CMOSセンサー(FXフォーマット)を、画像処理エンジンに最新の「EXPEED 6」を採用している。有効4575万画素のZ 7とは異なり、ローパスフィルターを搭載し、感度は常用でISO100〜51200(拡張でISO50相当までの減感、ISO204800までの増感)に対応する。Z 7は常用でISO64〜25600(拡張でISO32相当までの減感、ISO102400までの増感)なので、感度の上限はZ 6が一段分上回っている。

実際の画質は以下に掲載する作例をご覧いただきたいが、最新のフルサイズ機らしく、広いダイナミックレンジと高い解像感を実現している。Z 7ほどではないものの、F8以上に絞ったときに解像感の低下がやや顕著になるのが気になるところだが、全体的には低感度から高感度まで非常にバランスのよい画質だ。「NIKKOR Z」レンズの光学性能の高さによって、画面全体でシャープかつ高コントラストな描写が得られるのもポイントである。また、画素数が抑えているためか、Z 7よりもボディ内手ブレ補正が効果を発揮するという印象も受けた。

標準レンズ「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」の絞り開放で撮影した1枚。暗い屋内で光を拾う感覚でシャッターを切った。絞り開放ながら高いコントラストが得られている。使ってみて驚いたのだが、NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sは、開放F1.8の標準レンズとしては、開放から非常に高い描写力は発揮するレンズに仕上がっている
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/25秒、ISO100、WB:オート1、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(4024×6048、8.95MB

ISO3200の高感度でガラス越しのグラスを撮影した1枚。高感度ながら気になるようなノイズは見られず、とてもクリーンな画質が得られた
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/60秒、ISO3200、WB:オート1、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4024、10.7MB

RAW現像ソフト「Capture NX-D」を使って、シャープネスやコントラストの設定を調整して仕上げた作例。日没直後の空気が霞んだ雰囲気が崩れないように、あまりシャドーを締めずに、少しハイキー気味のトーンにしてみた。絞りF4で撮っているが、周辺までシャープな描写になっている
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F4、1/4秒、ISO100、WB:4750K、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、RAW
撮影写真(6048×4024、15.7MB

出港前の大型客船の後部デッキを、標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」の望遠端70mmで手持ち撮影したもの。ボディ内手ブレ補正によって1/20秒のシャッタースピードながら手ブレを抑えることができた。こちらも開放F4で撮っているが画面の隅までシャープな画質に仕上がっている
NIKKOR Z 24-70mm f/4 S、70mm、F4、1/20秒、ISO400、WB:晴天、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4024、12.0MB

NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sは開放からシャープかつ高コントラストな標準レンズだが、自然なボケ味も魅力だ。1/10秒という遅いシャッタースピードで撮っているが手ブレが抑えられているのもポイント
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/10秒、ISO100、WB:オート2、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4024、12.3MB

ゆっくりと歩きながら近づいてきた猫をローポジションで撮影した1枚。Z 6のAFはけっして爆速というわけではないが、AF-Sのワンショットであればピント合わせにストレスは感じない
NIKKOR Z 24-70mm f/4 S、70mm、F4、1/1250秒、ISO100、WB:オート1、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4024、10.3MB

ありきたりの構図の夜景写真で申し訳ないが、この作例では暗部のノイズに注目してほしい。長秒時ノイズ低減はオフにしているが、2.5秒の遅いシャッタースピードながら暗部のカラーノイズがほとんど見られず、クリーンな画質が得られた
NIKKOR Z 24-70mm f/4 S、24mm、F8、2.5秒、ISO100、WB:オート0、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4024、13.3MB

まとめ 操作性と画質にすぐれたハイコストパフォーマンスモデル

Z 6の最大の魅力は、上位モデルZ 7とまったく同じボディと操作性を採用しながらも、25万円前後(市場想定価格、税別)という価格で手に入れられるコストパフォーマンスの高さだ。現時点でのフルサイズミラーレスのラインアップの中では、グリップの握りやすさや、EVFの見やすさ、心地よいシャッターフィーリングなど、Z 6の操作性のよさは際立っている。Z 7と同様、AFの速度やEVFの表示レスポンス、その他機能性では気になる点があるし、ライバル機となるソニーの「α7 III」ほどスペックが充実しているわけではない。だが、その操作感のよさはニコンでしか得られないもの。使えば使うほどによさがわかるカメラだと思う。

さらに、低感度から高感度までバランスがよい画質もZ 6の魅力。新開発のNIKKOR Zレンズによって、これまで以上に画面全体でクオリティの高い画質が得られるのも押さえておきたい点だ。

カメラを選ぶうえで操作性と画質はもっとも重要な部分。Z 6は、この2点をしっかりと押さえたカメラに仕上がっている。Z 7が先に発売になったためZ 7に話題が集中したところがあったが、比較的に手に入れやすい価格設定なども考慮すると、Z 6こそがZシリーズ第1弾モデルの“本命”と見ていいだろう。本格的な動体撮影に活用するにはAFと連写性能がやや力不足なところはあるものの、スナップやポートレートを中心に、幅広い撮影シーンに活用できる、ハイコストパフォーマンスなフルサイズミラーレスに仕上がっている。

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣を持つ。フォトグラファーとしても活動中。

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